なので、投稿が不定期になります。
ごめんなさい。
あ、曇らせタグ追加します。
太陽の光が一切通らない、深海の世界。
そこでは、過酷な環境に適応すべく、深海生物が独自の進化を遂げていた。
海底付近では、チョウチンアンコウのメスが獲物を捕らえるべく、提灯を光らせて周囲の生物をおびき寄せていた。
その怪しい光に引き寄せられた一匹の生物が、暗闇の中で佇む『もと光る竹』の船体へと激しく激突する。
ドン、と深く響いたその衝撃と振動が、長く途絶えていた私の意識を呼び覚ました。
「……あれ? 私は、彩葉に会うために26年前の地球に向かっていたはずなのに………なんで、こんな場所に、いるんだろう」
朧気な記憶の中、なぜ海底にいるのか必死に思い出そうとする。
「あっ………! 私、あのとき隕石と衝突して……」
航路上に侵入してきた隕石と衝突して、一緒に地球に向かっていた月人と離れ離れになって、墜落したんだ。
「──そうだ。彼を見つけないと…!」
急いで彼を探すために『もと光る竹』を発進させようとするが、船は微動だにしなかった。
「な、なんで!?」
発進しない原因を調べたところ、いまの『もと光る竹』の機能は、不時着した際の衝突で壊れて、ほとんどが機能せず、深海から出るために発進することもできなかった。
幸い、思念体は現実の影響を受けないので、深海から脱出すること自体は容易くできる。
「現実は無理でも電子の世界……ツクヨミなら!」
そう思って、地上に出た私に待っていたのは、人で溢れた現代の都市ではなく、人の手が一切加えられていない大自然だった。
「………えっ」
────
タイムスリップしたのが、人のいない過去の日本だと気付いたのはそう時間はかからなかった。どこに行っても人の痕跡がなくて、あるのは動物達の姿のみ。
そのような時代に取り残された私にできることはただひたすら耐えることのみだった。
誰にも認知されず、消えることすら許されない幽霊のような状態。
朝と夜が何度も入れ替わり、季節が巡るのをただ見ていることしかできない。何もできないまま、時間の感覚すら狂っていった。
(ねえ……ヤチヨ。どこかにいるんでしょ、助けて……)
声にならない助けを何度も何度も叫んでいた、地獄のような日々。
それからどれだけの時間が経っただろう。
『もと光る竹』は壊れたままで、月とは連絡も取れず、ほとんどの機能が使えない。
けれど、かろうじてウミウシに擬態した犬DOGEの身体に入ることができた。
そうして、海底から地上に上がったのはいいものの、ウミウシの身体は移動するだけで一苦労だった。
何度か野生動物に襲われ、ようやく会えた人も数十年で私を残して消えていった。
何度も出会い、別れを繰り返した。
そして今も子供の時から共に過ごした少年は、最期まで私を安心させようと、シワだらけの手でウミウシの身体を優しく包み込んでくれる老人になってしまった。
彼はゆっくりと大きな息を吐き出すと、それを最後に静かに動かなくなった。
優しく撫でて、共に過ごした温もりのあった身体は、あっという間に冷たくなっていく。何度も共に過ごした人を看取ったけど、このときの喪失感は変わらずつらいものだった。
小さなウミウシの身体じゃ、目の前で途絶えていく命に何ひとつ届かない。救うことも、引き止めることもできない。
そうして静まり返った庵をそっと抜け出し、夜空を見上げる。
──また、一人ぼっちだ。
さっき看取った彼は、今いる時代で私と共に過ごした人達の最後の一人だった。
彼が住んでいた村の人達は良い人ばっかりだった。
ウミウシの姿で喋る存在なんて、恐れて殺しに来てもおかしくないのに、彼らは怖がるどころか家族のように受け入れてくれた。
……ほんと、お人好しで、優しすぎたせいで隣村から来た人達に殺されて………
生き残ったのに、彼は私のために残された時間まで使い切って………
気がつくと、地面にポタポタと水滴が落ち始めた。
「私、もうつらいよ……人の命はすぐ消えちゃうのに私だけ、取り残されて消えることもできなくて──」
「ねぇ、君はどこにいるの……? 早く会いたいよ……」
満月を眺めながら、悲しさと寂しさのあまり、離ればなれになった月人の姿を思い出し、消えそうな声で呼んだ。
────
一方その頃、件の月人は────
『マジでどうしよ』
地中で行き詰まっていた。
かぐや
百年で人の醜さと美しさ。そして、生と死を目の当たりにした月人。初めに迎え入れてくれた村の人々は村同士の争いに巻き込まれて、ほとんどが死に絶えた。
月で過ごした百年よりも、地球での百年は本当に長く感じて、半ば心が折れている。いまは地球産月人と再会するために、日本各地を移動している。