後々、登場するのでそこらへんは安心してください笑
ストックが残り3話あって、変な部分が見つからなかったら投稿していこうかなと考えてます。
翁が竹から金の延べ棒を手に入れて半月。
彼はすぐに金を使うことはしなかった。
理由としては、田舎の農村に住む老人が大量の金を使うと良くも悪くも目立ってしまうからだ。
急に羽振りが良くなれば盗賊に狙われる危険もあるし、どこから盗んできたのかと疑われかねない。
それに何より──
「お爺さ〜ん!村の子達と遊びに行ってくるー!」
あっという間に五歳ほどに成長した幼子の子育ての方針が明確に決まったからだ。当初は、手に入れた金で彼女に都での裕福な暮らしをさせようとしていた。しかし、幼少期を田舎や過酷な環境で過ごせば自然と強い子に育つが、甘やかされた都の暮らしに浸かれば軟弱になってしまう。
それが成長速度が異常な幼子にも当て嵌まると考えた翁と媼は逞しい娘になるよう、大人になるまでは村での暮らしを続けることを決めた。
なお、中身が千歳を超える月人である彼は、村の子供達と遊ぶと嘘をついて、土の中に埋まった『もと光る竹』を掘り起こそうとしていた。
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「もうちょっとなんだよなぁ」
土を手で掻き分け、掘っていくが見えているのは『もと光る竹』の底部。目的である信号部分は船の先っちょの方にあるので、あと少し掘り起こせば取り出せるだろう。しかし、いまの体では掘り起こせても持ち上げることはできない。
「仕方ない。続きはもう少し大きくなってからにしよう」
もう一ヶ月あれば体は十代まで成長する。
そのときになって掘り起こして、修理してしまえばいい。
お爺さんも俺がもう少し大きくなったら都に引っ越しするって言ってたから、なるべく早くしないと……
一ヶ月後
予想通り、十代まで成長した体は『もと光る竹』をなんなく持ち上げることができた。修理は流石にチートスペックの月人であったとしても時間がかかるので、家に持ち帰ることにした。
お婆さんが普通の筍と勘違いして『もと光る竹』を夕飯の食材に使おうとしていたこと以外は問題なく修理は済んだ。
月にはきちんと連絡が届いただろうし、お迎えに来てくれるはずだ。しかし、迎えに来るまでは最低でも五年はかかるだろう。なんせ、千年も前にタイムスリップしてくるのだから。
流石の月人も準備はかかるだろうし、迎えに来るまではのんびりしておこう。
そう思っていた矢先、都への引っ越しが決まった。
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都に引っ越ししたのは、『もと光る竹』を修理してから僅か一週間経ったときだった。
心身共に成熟したと判断した翁が、髪上げと呼ばれる成人儀式を行い、月人は名付けの専門家から「なよ竹の輝夜姫」と名付けられた。
三日間の宴のあと、引っ越しをトントン拍子で進め、いつの間にか輝夜はこれまでとは比べ物にならないほど豪華な小袖を身に纏って牛車の中にいた。
整備されているとは言え、現代のアスファルト舗装とは違い、土で押し固めた道は輝夜が乗る牛車をガタガタと揺らし、身体を痛めさせた。
「遅いし、揺れすぎて尻が痛い。こんなことなら歩いたほうがマシ」
輝夜は真面目にそう考えていたが、こんな動き辛い服装で動く方がしんどいことに気付いた輝夜は諦めて都まで我慢することにした。
こうして、三日掛けて都に着いた輝夜は引っ越し先の邸宅で生活することになった。
農村ときとは違い、側仕えの侍女が白粉とお歯黒を施し、重い着物を身に纏って、簾や几帳で囲まれた部屋の中で占いや教養で一日を過ごす。
夜這いは輝夜が断固として拒否したのでされることはなかったが、平安時代の老夫婦と現代の記憶を持つ輝夜との間で幸せというものが根本的に違っていたのだ。
これには輝夜も──
「金あげてよかったのかな…?」
と悩むほどだった。
だが、全てが悪いというわけではなかった。
老夫婦は輝夜の意見を第一に考えてくれていた。
翁が見ず知らずの者に嫁がせるわけにはいかないと言う考えもあったのだが、輝夜の望まない求婚は門を堅く閉じることで拒否してくれていた。
そんな生活を繰り返し、三年が経った頃。準備を終えた月人から「もうそろそろ行くよ〜」と連絡を受けて、帰る準備を密かにしていると厄介な問題が発生した。
──────
「求婚……ですか」
「そうじゃ。輝夜に五人の貴公子が求婚しておる」
輝夜が絶世の美女だという噂が都中で流れた結果、五人の貴公子達が輝夜に求婚したのだ。
今までは門を堅く閉ざしていれば、自然と諦めていくのでなんとかなったが、今回はそうもいかない。
貴公子達は朝廷でも位の高い貴族であり、無碍に断ればただの富豪でしかない翁達にどのような報復が来るのか分からない。
その上、老夫婦は輝夜の幸せを望んでいた。位の高い貴族と結婚すれば将来は安泰だろう、と。そのため、老夫婦は今回の求婚に乗り気だった。
しかし、輝夜にとって結婚は興味などなかった。
あと数年もしない内に月に帰るのだから、結婚などする必要がない。しかも、中身が男である輝夜にとって、前提として男相手がNGなのだ。
「どうじゃ?身分に容姿、共に申し分ないと思うのじゃが……」
明らかに乗り気じゃない輝夜に翁は必死に興味を持たせようと話し掛けるが、返事はない。
輝夜は頭の中でいかに上手く求婚を断る方法を模索していた。
プライドの高い貴公子達は、下手に断るとなにをするか分からない。こちらに非がなく、自然と断る方法はないだろうか。
そう悩んでいると、良い方法を思いついた。
『そうだ。結婚する条件に無理難題を押し付けたらいいじゃん』
結婚する条件を提示して、その条件をクリアした人と結婚する。しかし、その条件を無理難題にすればいい。
「……これでええやん」
「なにか言ったか?」
「いえ、なにも言ってませんよ」
内なる関西人が出てきた輝夜は口元に浮かんだ笑みを袖でそっと隠した。危ない危ない。つい心の声が出てしまった。
慌てて表情を引き締め、何事もなかったかのようにすまし顔を作ると、輝夜は穏やかな声音で告げた。
「お爺さん。結婚の件、私も真面目に考えてみることにします」
「ほう……そうか!」
輝夜の返答に嬉しそうに笑みを浮かべる翁。
そんな翁を見ながら輝夜は「ただし……」と付け加えた。
「一つ、お願いがあります」
「なんじゃ?」
「……五人の貴公子をここに呼んでください。彼等に伝えたいことがありますので」
地球産月人もとい輝夜姫
竹取物語?なにそれ美味しいの?
月で働いている内に竹取物語を忘れてしまった月人。
世話になってるお礼として老夫婦に金の延べ棒をあげたら、都でひたすら勉強ばかりさせられるし、翁が婚約者を作らせようとしてくるので真面目に帰りたくなってきた人。
片手間にかぐやを探してるが見つからないので、もう少し先の未来にいるのかもと思い始めている。