30歳まで童貞を守ったら妖精が見えるようになった〜チートスキル「魔法少女」で美少女TS無双〜 作:へべれけ斉藤
ブルーローズとの電話後、高城冴子部長は深夜の執務室で大熊次席から「AIアクションカムドローン」の納品と安全チェックの報告を受ける。
データのバックドアチェックを徹底させ、マスコットなどの外部存在による介入を厳重に警戒する。
「魔法少女ちゃんねる」の真の狙いは、インカムでの戦況指示によってマスコットの言葉から少女たちを切り離し、大人による管理保護と怪人対策の完全組織化へ繋げることにある。
かつてマスコットから「大人になれば姿が見えなくなる」と告げられた冴子だったが、いま目の前のソファには妖精「ケットシー」が当然のように鎮座していた。
マスコットたちが人間に嘘をついていた決定的な証拠を前に、冴子は自らが構築したシステムで少女たちを守り抜く決意を深める。
下ネタ注意!
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第13話 「泥沼」の健二
夜の八時。遮光カーテンをピッチリと閉め切った子供部屋で、俺――佐藤健二は、ベッドの上に深々と沈み込んでいた。
部屋の隅には食べた後のカップ麺の空き容器、エナジードリンクの空き缶、ポテチの袋が何層にも積み重なり、見事な地層を形成している。風呂は二日に一度、顎には無精髭、ヨレヨレのTシャツからは百キロ超の太鼓腹が主張している。一度沈めば二度と這い上がれない自堕落の底、それが俺の生きる「泥沼」だ。
「健二くん健二くん!このポテトチップス、すっごくパリパリして美味しいね!」
俺の横で、体長四十センチほどの小さな妖精が、ポテチの欠片を両手で大事そうに抱えてモシャモシャと頬張っていた。
鮮やかな蝶の羽を休め、花と葉をモチーフにした可憐な衣装を揺らすリャナンシー。屈託のない満面の笑顔は、お日様のように眩しい。
「おいおいリャナンシー君、あまりジャンクフードばかり食べていると、俺のように立派な肥満体型になってしまうぞ?」
「私、妖精だから太らないもんねー!健二くんと一緒に美味しく食べるのが楽しいんだよ!」
「くっ……その無邪気な笑顔、精神に効くんだが!?」
くるりと空中で一回転してみせる彼女の可憐さに、俺は胸を撃ち抜かれたように悶絶した。三十年間の人生で、これほど純粋に俺と接してくれる存在がいただろうか。
その時、デスクの上のスマホがブブッと無機質な振動音を立てた。画面を見ると、妹の由依からのメッセージが表示されている。
『お母さんから聞いたけど、今日も一歩も部屋から出てないらしいね。三十歳にもなって実家にパラサイトして恥ずかしくないの?生きてるゴミはゴミ箱に入っててね』
「相変わらず実の兄に対する暴言の切れ味がナイフ並みに鋭すぎるんだが!?尊厳破壊もいいところだろ!」
「健二くんの妹さん、会ったことないけどすごい毒舌だね……」
肩にふわりと降り立ったリャナンシーが、心底と同情の目を向けてくる。
「フッ……いいのだよ。俺のような底辺は、ただ静かに推しの輝きを遠くから拝めればそれで満足なのだ」
俺はため息をつきながら、昨日の残りのフライドチキンを口に放り込んだ。冷えた脂の旨味が広がっていく。うん、うまい。妹からの精神的ダメージを和らげるには、精神のデトックスが必要不可欠なのだ。
*
(……よし、やるか)
俺は心の中で「変身」と強く念じた。
溢れ出す黒と白の光の粒子。重苦しい肉体が羽毛のように軽くなり、瞬時に鏡の中に漆黒のゴスロリ衣装を纏った黒髪ぱっつん美少女、ブラックロータスが降り立つ。
「ふぅ……やっぱりこの姿は心が洗われるな。俺が俺のストライクゾーンど真ん中すぎる」
可憐な美声でうっとりと呟き、俺はティッシュ箱製のベッドでくつろぐリャナンシーへ向き直った。
「では、俺はこれから日課の自己啓発活動を始める。大変過酷な活動なので変身したままで行う。変な声が聞こえても気にしないように」
「うん、わかったよ。健二くん!」
リャナンシーは素直に頷き、タオルを被って目を閉じた。
完璧だ。俺はそっと布団の中に潜り込み、可憐で華奢な己の身体の感触を慈しみ始めた。鏡で見た神ショットの数々、そして手元に伝わる理想の美少女の柔らかさ。欲望のエネルギーが脳内で暴走していく。
俺の中のメロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。
メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此このシラクスの市にやって来た。
そして、メロスの凶刃が暴君ディオニスの元に届かんとしたその時、それは起きた。
時間が早すぎたのである。
親友セリヌンティウスにその凶行を阻止されることとなる。
「……ん、健二くん?何をやって、ピギャアアァァァ!?なにやってんの!?」
寝ぼけ眼のリャナンシーと、開いた股越しにバッチリ目が合ってしまった。熱中するあまり布団をはだけてしまっていたようだ。
そして俺の手は、まさに自家発電の真っ最中であった。
「え!ちょっと、なんで続けてるの!?」
「ん……!あっあぁぁぁぁ……!!!!!」
しかし、メロスの激情はそこで留まることかなわず、かくして凶行は決行されることとなったのであった。
*
「……見られたか」
「『見られたか』じゃないよ!?なんで変身してオ〇ニーしてんの!?バカなの?死ぬの?精神の冒涜だよ!」
パタパタと空中で乱舞し、小さな両手で必死に目を覆うリャナンシー。
俺は変身を解除することなく、布団から上半身を起こして堂々と胸を張った。
「失礼な。これは冒涜などではない『美の自家栽培』だ。ブラックロータスちゃんが可愛いから俺が萌え、自家発電する。外部資源を一切消費せず、己の中で完璧に完結したエコな循環社会の形だぞ?」
「全然エコじゃないよ!自給自足の変態だよ!エコの使い方を間違えてるよ!」
「ふっ、凡人にはこの高度なリサイクル精神が理解できんか」
「自慢気に語らないでよーーー!!」
子供部屋に響き渡る絶叫と、可憐な美声での不毛な口論。小一時間ほど押し問答を繰り広げた末、俺はようやく変身を解除してPCの前に座り直した。
「ふぅ……まあいい。エネルギーの発散も済んだことだし、ネットの巡回でもするか」
「もう、健二くんの変態……。私、本気でびっくりしたんだからね……」
赤く染めたほほをぷくっと膨らませてパソコンのモニターの縁に腰掛けるリャナンシー。そんな彼女を適当にあしらいつつ、俺はブラウザを起動して大型ネット掲示板とニュースサイトを開いた。
「ん?なんだこれ」
トップニュースのヘッドラインに踊る、大きな見出しが目に飛び込んできた。
『魔法少女省、新事業「魔法少女ちゃんねる」を正式発表!専用ドローンによるリアルタイム戦闘配信システムを導入へ』
「まほうしょうじょちゃんねる?」
リャナンシーが身を乗り出して画面を覗き込む。
「なんだこれは!国が、魔法少女の戦いを公式動画配信コンテンツとしてリアルタイム中継するだと!?」
記事を読み進めるにつれ、俺のオタクとしての血が激しく沸き立った。
今までニュースの断片や目撃者のブレブレな画像でしか見られなかった魔法少女たちの活躍が、最新鋭のAIドローンによって高画質・高音質で生配信されるというのだ。しかも、先行して配信活動を開始する「選ばれし10名」の特別メンバーが発表されているらしい。
「どれどれ……先行配信メンバーのリストは……」
マウスをスクロールし、顔写真と魔法少女名が並ぶ一覧ページを開く。
そして、その上から三番目に掲載された名前を見た瞬間、俺はデスクを激しく叩いて立ち上がった。
「チェリーブロッサムちゃんだあああああッ!!!!」
「わっ!?健二くん、急に大声出さないでよ!」
「見ろリャナンシー君!我が最推し、チェリーブロッサムちゃんが先行配信メンバーに選ばれている!明日の午後三時から、記念すべき初配信が行われるぞ!!」
画面には、桜色の衣装に身を包み、眩しい笑顔を見せるチェリーブロッサムの公式スチールカットが輝いていた。
「へえー!健二くんの好きな子だね!すっごく可愛い子だよね!」
「当たり前だ!我が誇り高き推しだからな!ああ、明日が楽しみすぎる、全裸待機だ、全裸待機するしかないッ!いや、靴下は履いていたほうがいいか……?」
リャナンシーのため息を聞き流しながら、明日の配信に思いを馳せるのであった。