30歳まで童貞を守ったら妖精が見えるようになった〜チートスキル「魔法少女」で美少女TS無双〜 作:へべれけ斉藤
30歳の誕生日を迎えたその日、自室で妖精を発見する。
ノーパンの妖精のスカートをめくろうとしたところを目撃される。
下ネタ注意!
この作品には下ネタが含まれています。嫌悪感のある方はブラウザバック推奨。
第4話 30歳になったら妖精が見える様になった件(マイルド版)
人間、本当に驚くと、まず「現実逃避」から入るらしい。
「……ええと」
俺は、椅子ごと後ずさりしながら、小さな来訪者を見つめた。
モニターの縁にちょこんと腰かけて、足をぶらぶらさせている。葉っぱのような服に、花びらをあしらった飾り。背中の蝶の羽が、ゆらゆらと揺れていた。
恐る恐る、指先でその小さな肩をつついてみる。温かい。柔らかい。
「きゃっ。くすぐったいよ、健二くん」
「……触れる。あ、いや、ごめん」
「触れるよー?」
にっこりと笑われて、俺はさらに混乱した。幻覚に触覚はないはずだが。
「……えっと?幻覚?」
「幻覚じゃないよー!ちゃんとここにいるもん!」
「じゃあ、どっきりか?由衣のやつ、このままじゃ俺の頭がおかしくなるって思わせようとして、精巧なロボットでも仕込んだのか?」
「由衣ちゃんって、だれ?私、そんな人知らないよー」
「……妹だよ、俺を何とかまともな道に更生させようとしている」
「へえー、妹さんがいるんだ!でも、私はどっきりじゃないもん!」
女の子は、ぷくっと頬を膨らませた。
……可愛い。
いや待て。冷静になれ、俺。相手は身長40センチの、羽の生えた謎の生き物だ。
「え、ええと。なんで俺の名前を」
「机の上に、宅配便の伝票があったから!佐藤健二くん、でしょ?」
「探偵か」
「ふふん、観察力には自信があるんだ」
胸を張る仕草があまりにも自然で、俺は言葉を失った。少なくとも、人形やトリックの類ではなさそうだ。
ちなみに伝票は、三日前に届いた、魔法少女のアクリルスタンドの受領書である。見られたくなかった。
*
しばらくして、俺はようやく現状を受け入れ始めていた。というか、受け入れるしかなかった。
女の子はモニターの縁からふわりと飛び上がり、俺の目の前を、くるくると旋回した。
「私はね、妖精なの!名前は、リャナンシー!」
「りゃ、りゃなんしー」
「うん!健二くんに、やっと見つけてもらえたから、すっごく嬉しい!」
リャナンシーは両手を広げて、にこにこと笑った。その笑顔の破壊力で、俺の動揺がさらに加速する。
「見つけてもらえた、って、どういう」
「あのね、妖精はね、見える人にしか見えないの!普通の人にはぜったい見えないんだよ!」
「……それは、魔法少女のマスコットも、そうだよな」
「うん、あの子たちも、契約した子にだけ姿を見せてるでしょ?私もそんな感じ!でもね、ちょっとだけ、違うの」
「違う?」
「うん。あの子たちとは、種類が違うんだ。それは、またあとで説明するね!」
説明は後回しらしい。
「ええと、じゃあ、なんで俺には見えたんだ?俺は、魔法少女でも何でもない、ただの30歳のおっさんだぞ。それともあれか?都市伝説にあるような、30歳まで童貞でいると魔法使いになって妖精が見えるようになるとか?」
「なにそれ、全然関係ないよ。……あ、でも、全然ってことはないのかな。純潔を守ってないと『キラメキ』を失っちゃう人も多いし」
「キラメキ……」
リャナンシーが、人差し指を立てて、得意げに言った。
「健二くんはね、生まれつき魔法の才能があったの。男の人が『キラメキ』を持っているのって、すごく珍しいんだけど。その才能が開花したのが、たまたまさっきだったんじゃないかな?」
「才能が……開花……」
「うん!『キラメキ』を持っている人って、魅力っていうのかな、そういうのがにじみ出ちゃうんだ。だから周りがほうっておかなくて、才能が開花する前に純潔を失って、『キラメキ』もなくなっちゃう人がほとんどなんだよ」
「……つまり」
「男の人が才能を開花させるまで、それも三十歳になるまで純潔を守っているなんて、すごいことなんだよ、健二くん!」
魔法少女達も少女の『キラメキ』を持った者だけがマスコットと契約して魔法少女になれるという。
「……つまり俺は、童貞の『キラメキ』を持った30歳の少年ということか……」
……俺は、椅子の上で、静かに天を仰いだ。
しかも、どうやら俺は人を惹きつけるフェロモン的な何かを、生まれつき発散していたらしい。なのにもかかわらず、年齢イコール彼女いない歴だと……。
この豊満ボディが原因なのか?それとも体臭?マジカルフェロモンをものともしないようなマイナス要因が、俺にはあるというのか?それとも……。やばい、思い当たる節がありすぎる。
死にたい
\ /
言葉に詰まってぐったりする俺を見て、リャナンシーは首をかしげた。
「あれ?私、変なこと言った?」
「い、いや、その、なんでもない」
「そう?あ、もしかして、ちょっと恥ずかしかった?」
「恥ずかしいというか、その、死にたいというか」
「えっ!?死なないでー!」
小さな手で、俺の指先を必死に握りしめてくる。
温かい、ような気がした。
……純粋な瞳が、逆にこちらの罪悪感を刺激する。
「しかし、人を引き付ける、か。……もしかしてこれから、街を歩けば女の子が振り返るみたいな。モテ期が到来したりして、何もしなくても美少女たちが勝手に群がってくるハーレム主人公になれるってことか!?」
「あはは、そんなに都合のいいものじゃないよ。そのことは、健二くんが一番よく分かってるんじゃないかな?」
「……ぐっ……!身も蓋もない正論で刺すな!誕生日くらい少しは夢を見させろ!」
「だって、健二くんのこと、私がいちばん見て……あ、いや、えっと。ごめんごめん。でもね、夢ならここにいるよ!」
*
それから俺たちは、長い時間、話し込んだ。
リャナンシーは、とにかく明るくて、元気で、好奇心旺盛だった。
部屋の中をあちこち飛び回っては、目についたものについて質問してくる。
わずかに言いよどむことがある気もしたが、能天気な笑顔の前では、深追いする気も起きなかった。
「これは何?」「ブルーローズ様のフィギュアだ」
棚の一番上、髪の流れまで作り込まれたブルーローズを指さして、目を輝かせている。
「こっちは?」「会場限定のアクリルスタンド、俺は引きこもりだからヤ〇オクで落としたんだ」
「この丸いのは?」「ソシャゲの推しキャラの缶バッジ」
「これは?仮面?」「アイリスちゃんのマスクだ、少し前のアニメの敵役のヒロインでな」
質問のたびにぱたぱたと場所を移動するので、こちらの視線が追いつかない。どうやらこのオタク趣味全開の子供部屋は妖精の目には遊園地か何かに映るらしい。
元気な事は良いことだがそのせいでスカートの隙間からチラチラと覗くΨ様が気になって若干返事がおざなりに成る。
先ほどの寝姿を見た時に薄々感づいていたがこの妖精ノーパンだ。
「じゃあ、この床に落ちてる、この袋は?」「それはポテチの空き袋だ!拾うな!」
「えー、ちゃんと捨てなきゃだめだよー」「妖精にゴミ捨てを注意される30歳児……」
自分でも、情けなくなってくる。
ちなみにリャナンシーは、魔法少女のグッズにも大いに興味を示した。
「わあ!この子、ピンクの髪!可愛い!」
「それは、チェリーブロッサムちゃんだ。最近人気急上昇の新人魔法少女で、俺の一番の推し」
「へえー、健二くんは、この子が好きなんだ!」
「好きというか、応援してるというか……その、遠くから見守ってるというか」
フィギュアを指さす手が、つい熱を帯びる。リャナンシーは興味深そうに、その横顔を見上げていた。
「ふうん。じゃあ、ぜんぜん話しかけたりはしないの?」
「するわけないだろう。推しは、遠くから愛でるものだ」
「へえー!健二くんって、すごく紳士なんだね!」
「そ、そうか?」
言われて悪い気はしなかった。
リャナンシーは、にこにこと笑いながら、ふわりと俺の肩の上に降りてきた。小さな体重が、かすかに感じられる。
「健二くんは、いい人だね」
「いい人、というか、ただの引きこもりのオタクだぞ」
「ううん。すごく、優しい人だよ」
その声が思いのほか静かで、俺は少しだけ言葉に詰まった。
……妖精というのは、みんなこんな風に、人の心を温かくしてくれる存在なのだろうか。
*
「そろそろ寝ようよ、健二くん」
リャナンシーが、ふわふわとあくびをした。深夜というのに元気いっぱいだった妖精も、さすがに疲れたらしい。
「そうだな。あ、いや、俺はこの後、大切な交流会があるから、お前は先に寝てなよ」
「交流会?こんな夜中に?」
「……ああ。国際的な、ワールドワイドなヤツだ」
「ふーん。おやすみなさい、健二くん」
「……おやすみ」
「明日も、いっぱいお話ししようね!」
「ああ。楽しみにしてる」
部屋の明かりを消す。暗闇の中で、小さな羽が、ほのかに光っていた。
それは、決して悪い気分ではなかった。
*
……しばらくして、枕元から、すうすうという寝息が聞こえてきた。
体を丸めて眠っているせいで、小さなお尻がスカートの隙間からちらりとのぞいてしまっている。
一瞬、まためくってやろうかと思ったがやめておいた。起こしちゃったらかわいそうだしな。……うん、それだけだ。本当だ。
午前一時を過ぎたころ。
俺は、ふと、あることを思いついた。
「そうだ。ネットに、書き込んでみるか」
パソコンに向かい、匿名掲示板の新規スレッド作成画面を開く。枕元のリャナンシーは気づく気配もなく、幸せそうに眠っている。
タイトルは、悩んだ末に、こうした。
『【悲報】ワイ氏30歳まで童貞を守ったら妖精が見える様になった件【幻覚?】』
「これ、送信していいのか、俺……?」
意を決して、送信ボタンを押す。画面に、スレッドが立ち上がった。
そして俺は、表示されているIDを見て、固まった。
『ID:hENtaIdT』
ヘンタイDT
「……運命って、残酷だな」
*
スレでの会話の導入も一段落付き、ふとベッドの方に視線を向ける。
葉っぱのような衣装から伸びる、やけに生々しい肉感の脚。無防備に丸められた背中と、小さく露出した生尻。
見抜き、宜しいでしょうか……?
なんていうか……その……お恥ずかしながら……フフ……
勃起……しちゃいましてね………
『しょうがないにゃぁ……』←裏声
『いいよ』←裏声
「ふぅ……」
いろいろあって、しばらく掲示板から離れていたが、その後戻ってみると、思いのほかスレが伸びていた。
流れの中で、リャナンシーの名前を聞かれたので、枕元で眠っている本人を横目に、正直に答えた。
『リャナンシーだって』
『へー、珍しい名前だな』
そんな返事が続いたあと、誰かが、妙な書き込みをした。
『確かアイルランドの伝承に出てくる妖精で、男に取り』
その書き込みは、不自然に途切れていた。
『この投稿は不適切なため削除されました。』
「……あれ?」
俺は、首をかしげた。
「不適切って、何が不適切だったんだ?」
枕元では、リャナンシーが気持ちよさそうに寝息を立てている。小さな羽根が、寝返りに合わせてふるふると震えた。
……まあ、いいか。どうせ、掲示板の拾い知識だ。
俺はそう考えて、深く追求するのをやめた。
*
……この時の俺は、まだ知らなかった。
彼女が、本当は何者なのか。
そして、この出会いが、俺の人生を、根底から変えてしまうことを。