悪役令嬢を殴ったらメス豚に覚醒させてしまった件 作:キバラッシー
「ここが、今日から通う魔法学院か……!」
俺――ノイマン・アルレルトは今日からの新生活にワクワクしていた。
何年も勉強して魔法学院の入学試験をクリアしたのだ。
故郷の村から王立魔法学院に入学できたのは俺が初めてのことらしい。
ただ、引っ越しに時間がかかってしまい、一か月ほど遅れて王都にやってきた。
「とりあえずは、このまま校内に入ろう……」
校門の前で突っ立っていても不審がられるだけなので、石畳がひかれた道を歩く。
皆が進んでいる方向に行けば、玄関には行けるだろう――そう思っていたのに。
「……ホーンラビット?」
角の生えた兎のような見た目をしている魔物。
首輪をしていることから、誰かの使い魔なのは何となく分かった。
それが、道端で人を探すかのように目をキョロキョロとさせているのだ。
他の生徒たちも気づいているはずなのに、どうしてか誰も反応しない。
何か困ってる……?
俺はホーンラビットに近づいた。
「キューキュー!」
そのホーンラビットは嬉しそうに鳴いた後、背を向けて走った。
少しだけ距離を取ると、また鳴く。
「ついて来いって言っているのか?」
そう言われているような気がしたので道から外れて後を追うことにした。
迷路みたいな庭園を抜けていくとそこには――。
「二人の女子……?」
ただその二人は尋常ではない様子だった。
金髪ロングの方の女子が、黒髪ショートヘアーの女子に杖を向けている。
すぐにでも割り込むべきなのは分かっていた。
しかし、事情が一切分からない。
今日が初めての登校、もう少し様子を伺う必要があると思った。だが――。
「キューキュー!」
足元のウサギがずっとどうにかしてくれと叫んでいる。
恐らくは黒髪ショートの女子の使い魔なんじゃないか。
「あ、あのー、お二人は何を……?」
とりあえずどちらかが悪いというスタンスを取らないためにも、おずおずと出ていくことにした。俺は何も知らないのだから。
「誰、あんた? 一年生?」
金髪ロングヘア―の女子が鋭い視線を向けてくる。
とんでもない美少女。それに加えて圧が凄い。
「はい。ノイマン・アルレルトと申します」
「ふーん、で? あたしに何の用?」
迷いなく自分に用件があると思っている。
黒髪の女子は唇を嚙みしめたまま一言も話そうとしない。
「いや、ここで何をしていたのか聞きたくて……物騒なことだったら止めた方がいいと思いまして」
「止める? もしかして、このあたしを?」
何か勘違いされているような。
確かに状況だけ見れば、この金髪女子が黒髪女子にちょっかいをかけているように見えなくもない。ただ何度でも言うが、何も俺は知らない。
「それは、今後のお話次第というか……」
「じゃあ聞いてよ~! この根暗女がさあ……あたしより試験の点数が高いの!」
金髪女子は愚痴を語り始めた。
根暗女とは、黒髪少女のことを指しているのだろう。
「……? それが一体?」
試験なんだから誰かに劣ることもあるだろう。
俺だって、入学試験では主席取れなかったし。
「だってあたしは公爵令嬢で次期聖女よ?」
「分かりましたけど、それで……?」
ヤバい本気で分からない。
試験の点数で劣ることと、地位が高いこと……何か関連性があるのか?
「あんた理解力低いわねえ……。馬鹿って言われない?」
「言われませんけど……?」
時期聖女の公爵令嬢は呆れたようにため息を吐いていた。
少なくとも村では神童と言われてたが? 都会では大したことないことは分かっているけど!
「こんなどこの馬ともしれない根暗娘が、私より高い点数取るなんてありえないの! そんなこと考えなくても分かるでしょ? だからこうして教育してるの」
「別にそんなことはないと思いますけど……それに教育って??」
お貴族様ってこんなんなのかな?
傲慢というか何というか……嫌われてそう。
「この根暗女を相応しい点数まで落とすのよ! ほら、こうやって!」
次期聖女の公爵令嬢は黒髪少女からカバンを奪い取って、放り投げた。
「フレイム!」
鞄が燃えていく。
それを見て、黒髪少女は泣き出してしまった。
「わ、私の教科書が……! ノートが……」
必死に手を伸ばすが、次期聖女の公爵令嬢が杖を向けて阻む。
「そうそう、お前みたいな田舎女に知恵なんていらないのよ!」
その光景を見て、俺は黒髪少女に感情移入が止まらなかった。
自分からすれば鞄に教科書、ノートは親が大金払って買ってくれた大切なもので。
目の前で燃やされて黙っていられるはずもなく。
「馬鹿なあんたも分かった? 次、あたしの行動にケチ付けてきたら――!」
思わず俺は公爵令嬢を平手打ちしていた。
「こんなことやっちゃいけないって、親御さんに教わらなかったのか!!」
殴られた本人はあり得ない……というような表情で俺を見つめていた。
「な、殴られた……こ、このあたしが」
公爵令嬢から強烈な敵意を向けられたのも一瞬で、それからは泣き始めた。
泣かれたことで俺も焦った。
思わずやってしまった! 何があろうと女子に手をあげるのは、相当マズい。
もうこれから先の学校生活やっていけない!
「…………」
「…………」
「…………」
三者三様に黙ってしまう。
俺は悪いことはしたと思っているが、自分から謝るのもなあと。
黒髪少女もまさか殴るとは思っていなかったのだろう、引いている。
ただ――さっきまであれだけ傲慢だった公爵令嬢も黙っている。なぜ?
烈火のごとく怒りを爆発させてもおかしくないような気もするのに。
「なんだか、いつものイライラが無くなったような……?」
最初に口を開いたのは公爵令嬢だった。
「ええっと、貴方、ノイマンさんと仰いましたか? なんだか殴られてからスッキリいたしまして……」
さっきまで悪そうな顔を浮かべていた公爵令嬢とは別の存在のように申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
ノリとテンションだけで本作は作りました。
作者としては気晴らしで書いてます。
もしかしたら続きを作るかもしれませんが、全ては未定です。