◆決勝リーグ5回戦――サトシVSヒロシ
決勝リーグ5回戦。
メインスタジアムには大勢の観客が集まっていた。
「それでは、決勝リーグ5回戦! サトシ選手対ヒロシ選手の試合を開始します!」
観客席から大きな歓声が上がる。
サトシとヒロシはフィールドの両端に立っていた。
「まさか、こんなところでサトシと戦うことになるなんてね」
ヒロシが笑顔で言う。
「俺もだよ! でも、せっかくここまで来たんだ。全力で勝負しようぜ!」
「ああ。僕も負けないよ!」
二人は拳を軽くぶつけ合う。
旅の途中で出会い、意気投合した二人。
互いのポケモンを知り、互いの戦い方を認めてきた友人同士だ。
だからこそ、この試合は二人にとって特別なものだった。
一方、その頃。
会場から離れた場所では、ロケット団の三人がモニターを眺めていた。
「ニャース、どうする?」
「いつもならジャリボーイを捕まえて、ピカチュウをいただくところだけどニャ」
「そうよね。あの子たちが試合に出られなければ、ピカチュウも手に入るかもしれないわ!」
ムサシとコジロウは、いつもの調子で作戦を考えていた。
しかし、ニャースだけは何かを考え込んでいる。
「……待つニャ」
「何よ、ニャース?」
「もしも、今回の作戦でシンヤが巻き込まれたらどうなるニャ?」
「え?」
「サカキ様の命令は、シンヤには手を出すニャというものだったニャ。直接狙わなくても、作戦に巻き込んだら命令違反になるかもしれないニャ」
ムサシとコジロウの表情が固まる。
「で、でも、今回はジャリボーイが相手でしょ?」
「そうだぜ。シンヤは関係ないじゃないか」
「そうとは限らないニャ。あいつらはマサラタウンの同期ニャ。シンヤが近くにいたら、作戦に巻き込む可能性があるニャ」
「……」
「……」
三人は顔を見合わせる。
本来なら、サトシとピカチュウを狙う絶好の機会。
しかし、万が一シンヤを巻き込めば、サカキの命令に背くことになる。
その結果、自分たちがどんな目に遭うかは想像したくもなかった。
「……今回はやめるニャ」
「ええっ!?」
「せっかくのチャンスなのに!?」
「命あっての物種ニャ。サカキ様の命令は絶対ニャ!」
こうしてロケット団は、苦渋の決断の末に何もしないことを選んだ。
その結果、サトシもピカチュウも、そして手持ちのポケモンたちも万全の状態で試合に臨むことになる。
原作とは異なる、小さな分岐点だった。
「それでは、先攻はヒロシ選手!」
「行こう、パピー!」
ヒロシがモンスターボールを投げる。
「フリー!」
現れたのは、バタフリーだった。
「バタフリーか!」
サトシは相手を確認し、最初のボールを手に取る。
「行くぞ! プテラ!」
「ギャオオオオッ!」
巨大な翼を広げ、プテラがフィールドへ降り立った。
「プ、プテラ!?」
ヒロシが目を見開く。
観客席からも驚きの声が上がる。
「化石ポケモンのプテラだ!」
「サトシ君、あんなポケモンまで持っていたの!?」
応援席のタケシとカスミは達観していた。
「グランパキャニオンで出会った個体だな」
「あのときは本当に大変だったわね……」
カスミが当時を思い出す。
◆新たな仲間――プテラとの出会い
サトシがプテラを手持ちに加えたのは、グランパキャニオンでの出来事がきっかけだった。
化石ポケモンの発掘調査に訪れていたサトシたちは、洞窟の奥で奇妙な化石を発見する。
その直後、地鳴りのような音が響き、巨大な影が洞窟の入口を横切った。
「な、なんだ!?」
「上だ、サトシ!」
タケシが叫ぶ。
洞窟の上空から姿を現したのは、太古の空を支配していたポケモン――プテラだった。
「ギャオオオオッ!」
「プテラだと!?」
驚く間もなく、プテラはサトシたちへ襲いかかってきた。
その攻撃は苛烈だった。
岩を砕き、木々をなぎ倒し、鋭い牙と翼で獲物を追い詰める。まるで目の前の人間を、自分の縄張りに侵入した敵と見なしているようだった。
「みんな、逃げろ!」
サトシたちは必死に走る。
しかし、プテラの速度は圧倒的だった。
「サトシ、危ない!」
カスミの声が響く。
プテラがサトシへ向かって急降下してきた。
その瞬間――。
「リザードン!」
サトシの前に、リザードンが飛び出した。
「グオオオッ!」
リザードンはプテラの攻撃を正面から受け止める。
「リザードン!」
サトシが叫ぶ。
かつてはサトシのあまり言うことを聞かなかったリザードン。
あまりというのは指示に従う頻度と従わない頻度があったのだ。
だが、今は違う。
サトシを守るため、自分の意思で前に立っていた。
プテラは一度距離を取り、再び急降下する。
「リザードン、かえんほうしゃ!」
リザードンの炎がプテラの進路を塞ぐ。
しかし、プテラは翼を大きく広げて炎を避け、そのままリザードンへ突撃した。
「くっ、速い!」
「サトシ、プテラは正面からの攻撃を避けている! 空中での方向転換もかなり速いぞ!」
タケシが叫ぶ。
サトシはリザードンとプテラの動きを見比べる。
(正面からぶつかるだけじゃ駄目だ……!)
「リザードン、上昇だ!」
リザードンは一気に高度を上げる。
プテラも追いかけてくる。
「今だ! かえんほうしゃ!」
リザードンが炎を放つ。
プテラはそれを避けるため、横へ大きく旋回した。
その瞬間、リザードンが反転する。
「ドラゴンクロー!」
鋭い爪がプテラの翼の付け根を捉えた。
「ギャオッ!」
プテラの飛行が乱れ、地面へと降下する。
それでもプテラは立ち上がり、再び牙をむいた。
「まだやる気なのか……」
サトシはモンスターボールを握る。
だが、リザードンが一歩前に出た。
「グオオッ!」
リザードンはサトシを背にして、プテラと向き合う。
それは、相手を倒すためだけの姿勢ではなかった。
自分が守るべきものを守るための立ち姿だった。
プテラはしばらくリザードンを睨んでいたが、やがて翼を広げて飛び上がる。
「ギャオオオッ!」
今度は攻撃ではなく、上空を大きく旋回した。
そして、サトシたちの前へと降り立つ。
「……?」
サトシは警戒しながらも、ゆっくりと近づいた。
「もう襲ってこないのか?」
プテラはサトシを見つめる。
その視線は、先ほどまでの敵意とは少し違っていた。
リザードンがサトシの隣に立つ。
プテラはリザードンを見た後、サトシへ視線を戻した。
「……そうか。お前、俺たちを試していたのか?」
返事はない。
ただ、プテラは翼を一度大きく広げた。
その様子を見て、サトシはボールを取り出す。
「なあ、プテラ。俺たちと一緒に来ないか?」
プテラはしばらくボールを見つめていた。
そして、サトシの手元へと自分から頭を近づける。
ボールが開き、赤い光がプテラを包み込んだ。
一度、二度とボールが揺れる。
やがて、静かになった。
「……よしっ!」
サトシは拳を握った。
こうして、プテラはサトシの仲間となった。
最初は気性が荒く、指示を聞かせることにも苦労した。
だが、サトシは無理に従わせようとはしなかった。
餌を与え、飛行訓練に付き合い、バトルではプテラ自身の判断を尊重する。
リザードンも、プテラが仲間として加わったことを認めたのか、時折一緒に空を飛ぶようになった。
そして、プテラは少しずつサトシの指示を理解するようになった。
今では、サトシにとって頼れる空の仲間となっている。
カスミが当時を思い出す。
だが、今のプテラはサトシの仲間だ。
サトシの声に反応し、翼を広げて構えている。
「パピー、まずはかぜおこし!」
「フリー!」
パピーが羽ばたき、強い風を巻き起こす。
「プテラ、翼で受け止めろ!」
「ギャオッ!」
プテラが大きな翼を広げた。
その一度の羽ばたきで、パピーの風を押し返す。
「えっ!?」
ヒロシは驚いた。
「パピー、ねむりごな!」
パピーの羽から粉が舞い上がる。
「プテラ、上昇だ!」
プテラは一気に高度を上げた。
さらに翼を大きく動かし、周囲に強烈な風圧を生み出す。
舞い上がった粉はプテラへ届く前に吹き散らされた。
「そんな……!」
「よし、今度はこっちだ! 沢山いわなだれ!」
プテラが翼を振り上げる。
フィールド上空に岩が次々と現れ、パピーの周囲へ降り注いだ。
「パピー、よけて!」
パピーは素早く飛び回り、岩を避けようとする。
だが、岩はパピーを直接狙うだけではなかった。
逃げ道を塞ぐように、周囲へ次々と降り注いでいる。
右へ逃げれば岩が落ち、左へ逃げれば別の岩が進路を塞ぐ。
上昇しようとしても、プテラが上空から圧力をかけている。
(しまった……!)
ヒロシはようやく気づいた。
サトシは最初からプテラの攻撃力だけで勝とうとしていたわけではない。
パピーの飛行範囲を狭め、攻撃を避ける選択肢を一つずつ奪っていたのだ。
「プテラ、突撃だ!」
「ギャオオオッ!」
プテラが一気に加速する。
パピーが逃げようとした先には、すでに岩が落ちていた。
進路を変える余裕もない。
「フリー!」
プテラの巨体がパピーへと突っ込む。
「パピーッ!?」
強烈な一撃を受け、パピーは地面へと落下した。
審判が確認する。
「パピー、戦闘不能! サトシ選手の勝利です!」
「よしっ! やったな、プテラ!」
「ギャオッ!」
サトシが拳を握る。
一方、ヒロシはパピーをボールへ戻し、優しく声をかけた。
「お疲れ様、パピー。よく頑張ったね」
そして、サトシへ視線を向ける。
「……すごいね、サトシ。プテラの力だけじゃない。岩で逃げ道を塞いでから攻撃するなんて」
「へへっ。プテラの力をどう使うか、考えただけだよ!」
ヒロシは額の汗を拭う。
(サトシ……予選の頃よりも、さらに成長している)
強いポケモンを持っているだけではない。
その力をどう活かすのか。
サトシ自身が考え、指示を出している。
◆第二戦――ジッポとリザードン
「次は君だ! ジッポ!」
ヒロシが二体目のモンスターボールを投げる。
「カゲーッ!」
現れたのはヒトカゲ。
ヒロシの仲間であるジッポだ。
「ヒトカゲか!」
サトシはプテラを見た後、次のボールへ手を伸ばす。
「プテラ、戻れ! よくやったぞ!」
プテラをボールへ戻す。
そして、サトシが選んだのは――。
「行くぞ! リザードン!」
「グオオオオッ!」
巨大なリザードンがフィールドに降り立つ。
その姿を見たジッポは、思わず一歩後ずさった。
体格が違う。
身体の大きさも、放つ威圧感も、明らかに自分より上だった。
「ジッポ……!」
ヒロシは仲間の様子を見つめる。
「大丈夫だよ。僕たちなら戦える。頑張ろう!」
「カゲーッ!」
ジッポは気持ちを立て直し、前を向いた。
「リザードン、かえんほうしゃ!」
「ジッポ、かえんほうしゃ!」
二匹が同時に炎を吐き出す。
二つの炎が正面からぶつかり合った。
だが、結果は明白だった。
サトシのリザードンの炎が、ジッポの炎を押し返していく。
「なっ!?」
ヒロシが驚く。
リザードンの炎はジッポの炎を飲み込み、そのまま勢いを増して襲いかかった。
「ジッポ!」
炎を受けたジッポは後方へ吹き飛ばされる。
「まだだ! ジッポ、立ち上がれ!」
ヒロシの声に、ジッポは何とか立ち上がろうとする。
しかし、受けたダメージは大きかった。
リザードンがゆっくりと近づく。
そのとき、リザードンはジッポを見下ろしたまま、ほんの一瞬だけ動きを止めた。
自分もかつてはヒトカゲだった。
小さな身体で、思うように炎を吐けなかった頃がある。
進化した後も、サトシの指示を聞かず、好き勝手に振る舞っていた時期があった。
強さだけを求められ、期待に応えられないと見なされることが、どれほど苦しいのか。
リザードンは、そのすべてを知っている。
目の前のヒトカゲも、まだ成長の途中なのだ。
「リザードン……?」
サトシは、リザードンのわずかな変化に気づいた。
無理に攻撃を促すことはしない。
ただ、静かに声をかける。
「リザードン。お前の好きにしていい。でも、俺たちは一緒に戦ってるんだ」
リザードンはサトシを振り返った。
そして、再びジッポへ視線を戻す。
「グオッ!」
リザードンは尻尾を大きく振り上げる。
「ジッポ、避けて!」
ヒロシの声が響く。
しかし、ジッポはまだ十分に動けなかった。
リザードンの尻尾がジッポへ叩きつけられる。
「ジッポーッ!」
ジッポはそのまま倒れ、動かなくなった。
「ジッポ、戦闘不能! サトシ選手、二匹目も勝利!」
「……よし」
サトシはリザードンを見上げる。
リザードンは何も言わず、静かにサトシの方を向いた。
「ありがとう、リザードン」
「グオッ」
そのやり取りを見ていたヒロシは、少しだけ表情を緩めた。
サトシとリザードンの間には、確かな信頼関係がある。
ただ命令に従うだけではない。
互いに相手の気持ちを理解しようとし、共に戦っているのだ。
「まだ終わりじゃないよ!」
ヒロシは最後のモンスターボールを握る。
「最後まで諦めない! 行こう、レオン!」
「ピカピ!」
現れたのはピカチュウ。
ヒロシの相棒、レオンだ。
「ピカチュウか!」
サトシはリザードンを見た。
そして、交代することなく、そのまま戦うことを選ぶ。
「リザードン! このまま行くぞ!」
「グオオッ!」
◆最終戦――リザードンVSレオン!
「それでは、最終戦を開始します!」
審判の合図と同時に、ヒロシが指示を出す。
「レオン、10まんボルト!」
「ピカチュウ!」
レオンの身体から電撃が放たれる。
狙いは空中のリザードン。
「リザードン、回転しながらかえんほうしゃ!」
「グオオオッ!」
リザードンは空中で身体を回転させながら、炎を放った。
その炎は、ただ一直線に飛んでいくのではない。
リザードンの回転に合わせ、円を描くように広がっていく。
炎がリザードンの周囲を覆い、まるで防護壁のような形を作り出した。
そこへレオンの10まんボルトが直撃する。
しかし、電撃は炎の壁に阻まれ、軌道を逸らされていった。
「なっ……!」
ヒロシが目を見開く。
「すごい……! 電撃を炎で弾いたのか!」
「そのままだ! リザードン、かえんほうしゃ!」
「グオオオオッ!」
リザードンは回転を続けながら、今度はレオンへ向けて炎を放つ。
円を描くように広がる炎は、不規則な軌道でレオンへと迫った。
「レオン、よけて!」
「ピカッ!」
レオンは素早く横へ飛び、炎を避けようとする。
しかし、炎の軌道は単純ではない。
右へ避ければ左から炎が迫り、左へ避ければ別の炎が進路を塞ぐ。
「ピカッ!?」
炎がレオンの身体をかすめ、強烈な熱が襲う。
さらにリザードンは上空から攻撃を続けた。
レオンは何とか耐えていたが、すでにかなりのダメージを受けている。
「レオン!」
ヒロシは相棒の姿を見つめる。
まだ戦える。
レオンも、目を逸らしてはいない。
しかし、ヒロシには分かっていた。
このまま続ければ、レオンはさらに傷つく。
「……レオン、もういいよ」
「ピカ……?」
「ここまでよく頑張ってくれた。僕は君と一緒に戦えて嬉しかったよ」
ヒロシは審判へ向き直った。
「すみません。僕は棄権します」
「ヒロシ……?」
サトシは驚いた表情を浮かべる。
「レオン、もう十分頑張ってくれたよ。これ以上、君が傷つく姿を見たくないんだ」
ヒロシはレオンのもとへ駆け寄り、優しく抱き上げた。
「ピカ……」
「ありがとう、レオン」
審判は二人の様子を確認し、試合終了を宣言する。
「ヒロシ選手の棄権により、サトシ選手の勝利! サトシ選手、決勝リーグ5回戦突破です!」
会場から大きな歓声が上がった。
「やったあああっ!」
サトシは両手を上げて喜ぶ。
リザードンも大きく吠えた。
「グオオオオッ!」
こうして、サトシは決勝リーグ5回戦を突破した。
◆仲間たちの驚き
応援席では、タケシとカスミが試合の余韻に浸っていた。
「サトシ……本当に強くなったな」
タケシが感心したように呟く。
「プテラを使った戦い方も、リザードンの炎の使い方も、以前とは全然違ったわ」
カスミも驚きを隠せない。
観客席には、サトシの母ハナコとオーキド博士もいた。
「サトシ……あんなに立派になって……」
ハナコは嬉しそうに目を細める。
「うむ。ポケモンの力を引き出すだけでなく、相手の動きやフィールドを見て戦術を組み立てておる。実に成長したものじゃ」
オーキド博士も満足そうに頷いた。
そして、既に5回戦を勝利していたシゲルも、控室からモニターを見ていた。
「……やるじゃないか、サトシ」
以前なら、ポケモンの力に頼り切った戦い方をすることも多かった。
だが、今のサトシは違う。
プテラのいわなだれで相手の逃げ道を塞ぎ、リザードンでは相手との火力差を見極めて攻める。
さらに、ポケモンの状態を見ながら試合を続けるかどうかを判断するヒロシの姿勢も、シゲルの印象に残った。
「……あいつも、ちゃんと成長しているんだな」
シゲルは小さく笑った。
一方、次の試合を待つリーフも、サトシの戦いを見ていた。
「サトシ君も、随分と強くなったわね」
彼女は視線をトーナメント表へ向ける。
マサラタウン出身の同期たちが、次々と勝ち進んでいる。
それぞれが異なる戦い方を持ち、異なる強さを見せている。
この先、誰と誰がぶつかるのか。
リーフもまた、自分の戦いに向けて気持ちを引き締めた。
◆友人との約束
試合終了後。
サトシはヒロシのもとへ歩み寄った。
「ヒロシ!」
「サトシ!」
二人は笑顔で向き合う。
「すごいバトルだったよ、ヒロシ!」
「僕もだよ。サトシ、強くなったね」
「へへっ! まだまだこれからだぜ!」
ヒロシはレオンの頭を撫でながら、サトシへと告げる。
「僕の分まで頑張ってくれ、サトシ!」
「ああ! 目指すは優勝だ!」
サトシは力強く答えた。
二人は拳を合わせる。
勝敗は決まった。
しかし、二人の友情に変わりはない。
むしろ、互いの全力をぶつけ合ったことで、より強い絆が生まれたようにも感じられた。
「またいつか、バトルしようね」
「ああ! 今度は絶対に負けないぜ!」
「僕だって!」
二人は笑い合った。
その様子を少し離れたところから見ていたタケシとカスミも、安心したように笑みを浮かべる。
こうして、サトシは決勝リーグ5回戦を突破。
ヒロシは敗退したものの、友人の勝利を心から喜び、次の旅へ向けて前を向いていた。
そして、マサラタウン出身の4人のうち、決勝リーグを勝ち進んだのはシンヤ、シゲル、サトシの3人となった。
本来ならば、サトシはここで敗退していたはずだった。
ロケット団の妨害によって疲弊したポケモンたち。
言うことを聞かないリザードン。
そして、ヒロシとの別れ。
しかし、今回は違った。
シンヤの存在を警戒したロケット団が動かなかったことで、サトシは万全の状態で友人との戦いに臨むことができた。
そして、プテラという新たな仲間と、成長したリザードンの力を示した。
かつてグランパキャニオンで出会った荒々しい翼は、今やサトシの指示を受けて空を駆ける仲間となった。
かつて自分の意思だけで戦っていたリザードンも、今ではサトシと共に戦う相棒となっている。
その成長を見届けた者たちにとって、この勝利は単なる一勝ではなかった。
サトシのポケモンリーグ挑戦は、まだ終わらない。
その先に待つのは、さらなる強敵たちとの戦い。
そして、いつか訪れるかもしれない――シンヤとの対決だった。