ポケットモンスター~波動の眼を持つ少年~   作:レイザル

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第96話 決勝戦開幕! シンヤVSサトシ! 前編

◆決勝戦――二人の少年が立つ舞台

 

 

翌日。

 

 

セキエイリーグ、決勝戦当日。

 

 

使用ポケモンの登録を終えたシンヤとサトシは、それぞれ左右のフィールドに分かれ、試合開始の時を待っていた。

 

 

観客席は、朝から詰めかけた大勢の観客で埋め尽くされている。

 

 

長かったセキエイリーグも、残すところあと一試合。

 

 

その頂点を決める戦いが、いよいよ始まろうとしていた。

 

 

応援席には、それぞれの関係者たちが集まっている。

 

 

シンヤ側には、レン、ラム、レム。

 

 

シンヤの両親であるミサキとマサユキは、応援席ではなく一般観客席から息子の姿を見守っていた。

 

 

一方、サトシ側にはタケシとカスミ。

 

 

さらに別の観客席には、オーキド博士とハナコ、そしてシゲルの姿があった。

 

 

リーフも母親のブルーと一緒に観戦している。

 

 

それだけではない。

 

 

シンヤが予選で戦ったマームッシやタツマ。

 

 

サトシと戦ったコーム、カオルコ、ヒロシも、それぞれ別の場所から決勝戦を見学していた。

 

 

これまで戦ってきたライバルたちが、二人の最後の戦いを見届けようとしている。

 

 

そんな中――。

 

 

会場の一角では、まったく別の意味で盛り上がっている一団がいた。

 

 

ロケット団である。

 

 

しかも、彼らは試合を見ているわけではなかった。

 

 

「いやぁ! まさか、なんとなく始めた弁当売りが、ここまで大当たりするとはな!」

 

 

コジロウが満足そうに売り上げを確認する。

 

 

「そうねぇ。この子たちの気分転換になればと思って始めたことだったのに」

 

 

ムサシも、目の前の盛況ぶりに驚いていた。

 

 

「まさか、こんなにお客さんが来るとは思わなかったニャ!」

 

 

ニャースも嬉しそうに尻尾を揺らす。

 

 

そう。

 

 

彼らはポケモンリーグの会場で、弁当売りをしていたのだ。

 

 

しかも、元クロスのポケモンたちまで手伝っている。

 

 

まず、ガオガエン。

 

 

そのたくましい筋肉を惜しげもなく見せつけながら、弁当の暖簾を掲げている。

 

 

「ガオガオ!」

 

 

力強い声で客を呼び込む姿は、妙に様になっていた。

 

 

キテルグマは、子供たちの相手を担当している。

 

 

小さな子供たちに囲まれ、優しく相手をしているその姿には、どこか母親らしい雰囲気があった。

 

 

時折、かつての自分の子供のことを思い出しているのか、少しだけ遠くを見るような表情を浮かべる。

 

 

オニシズクモは、糸を使って作った綺麗なタオルを、弁当を購入した客へ手渡していた。

 

 

その出来栄えは見事なもので、ちょっとした人気商品になっている。

 

 

クワガノンは空中から弁当の暖簾を見せ、会場内を飛び回りながら宣伝。

 

 

そして、ダダリンとルガルガンは、弁当を持ち逃げしようとする者を捕まえる係だ。

 

 

「おいおい! そこのお客さん! 代金を払ってから持っていってくれよ!」

 

 

「ダダリン!」

 

 

「ルガルガン!」

 

 

二匹が逃げようとする客を捕まえる。

 

 

こうして、弁当売りは大盛況となっていた。

 

 

「いやぁ、いい感じだな!」

 

 

「そうねぇ」

 

 

「ニャハハ! まさに、なんだかいい感じぃ! ってやつだニャ!」

 

 

三人の気持ちは、まさに一致していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆決勝戦の開幕――紹介される二人のトレーナー

 

 

『さあ、皆さん! 大変長らくお待たせいたしました!』

 

 

会場に実況の声が響き渡る。

 

 

『長かったセキエイリーグも、ついに残すところこの一試合のみとなりました!』

 

 

観客席から大きな歓声が上がる。

 

 

『準決勝、そして決勝へと進んだ四人の選手! なんと、その全員が今年マサラタウンを旅立った同期のトレーナーたちです!』

 

 

『数々の激闘を乗り越え、ついに最後の二人が決まりました!』

 

 

『これより、その頂点を決める戦いが始まります!』

 

 

会場の熱気がさらに高まる。

 

 

『では、決勝戦に出場する二人を紹介しましょう!』

 

 

実況がまず、シンヤ側へ手を向けた。

 

 

『まずはシンヤ選手!』

 

 

シンヤの姿が大型モニターに映し出される。

 

 

『珍しいポケモンを数多く所持し、これまでの試合でも多彩な戦術を披露してきたトレーナーです!』

 

 

『さらに、現在でも珍しいメガシンカを複数操ることができるという、非常に高い対応力を持っています!』

 

 

観客席から歓声が上がる。

 

 

『対するは、サトシ選手!』

 

 

今度はサトシの姿が映し出された。

 

 

『使用するポケモンの数こそ決して多くはありませんが、一匹一匹が予想外の戦い方を見せるトレーナーです!』

 

 

『そして何より、サトシ選手自身の優れた機転! その場の状況を瞬時に判断し、ポケモンたちと一緒に突破口を見つけるバトルスタイルが特徴です!』

 

 

サトシがピカチュウと一緒に拳を握る。

 

 

『どちらも、今後の活躍が大いに期待できる若きトレーナーたちです!』

 

 

『それでは――セキエイリーグ、決勝戦を始めましょう!』

 

 

『審判! よろしくお願いいたします!』

 

 

フィールド中央に立つ審判が、両者を確認する。

 

 

「はい! これよりセキエイリーグ、決勝戦を行います!」

 

 

審判の声が会場に響いた。

 

 

「使用ポケモンは六匹! どちらかのトレーナーのポケモンが全て戦闘不能になった時点で敗北となります!」

 

 

「また、どちらかのトレーナーのポケモンが三匹戦闘不能になった時点で、三分間のインターバルに入ります!」

 

 

「それでは、両者! 準備はよろしいですか!」

 

 

シンヤとサトシが、それぞれ頷く。

 

 

「はい!」

 

 

「ああ!」

 

 

審判が両手を上げる。

 

 

「それでは――ポケモンを!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆第一戦――ピカチュウVSピカチュウ

 

 

「よーし、いくぜピカチュウ! 君に決めた!」

 

 

「ピカ!」

 

 

サトシの足元にいたピカチュウがフィールドに出る。

 

 

一方、シンヤはボールを取り出した。

 

 

「頼むぞ、ピカチュウ!」

 

 

「ピッカ!」

 

 

両者の先発は、どちらもピカチュウ。

 

 

会場が大きく沸いた。

 

 

「おお! 両者ともにピカチュウだ!」

 

 

「同じポケモン同士の対決か!」

 

 

観客席からも期待の声が上がる。

 

 

シンヤは相手のピカチュウを見つめ、わずかに口元を緩めた。

 

 

(やっぱり先発はピカチュウで来たか)

 

 

サトシの戦い方には、ある程度の傾向がある。

 

 

基本的に、先発には素早い動きができるポケモンを選びやすい。

 

 

ピカチュウ。

 

 

ピジョット。

 

 

スピアー。

 

 

あるいは、指示への対応力が高く、火力と素早さを両立できるポケモン。

 

 

おそらく今回も、そうしたメンバーを中心に構成しているだろう。

 

 

シンヤはそこまで考えたうえで、今回の先発を決めていた。

 

 

一方、応援席ではレンが感心したように呟いていた。

 

 

「本当、シンヤの読みってどうなっているのかしら?」

 

 

「どういうことですか、レン様?」

 

 

ラムが首を傾げる。

 

 

「読みがどうって?」

 

 

レムも不思議そうに尋ねた。

 

 

レンは二人に説明する。

 

 

「シンヤは昨日、予想していたのよ。『おそらく明日のサトシの先発はピカチュウ、もしくはピジョット。素早い動きができるメンバーを中心に選んでくるだろう』って」

 

 

「それで、ピカチュウが出てくる可能性が高いと?」

 

 

「ええ。特に決勝戦だもの。最も信頼している相棒を先発にする可能性が高い、って」

 

 

「なるほど……」

 

 

ラムはフィールドのシンヤのピカチュウを見る。

 

 

そして、何かに気づいたように目を細めた。

 

 

「……なるほど。特性ね」

 

 

「特性?」

 

 

レムが首を傾げる。

 

 

ラムは小さく笑った。

 

 

「そうか! 坊ちゃまのピカチュウは――」

 

 

そのとき。

 

 

「試合開始!」

 

 

審判の声が響いた。

 

 

「先手必勝だ! ピカチュウ、十万ボルト!」

 

 

「ピカチュウ!」

 

 

サトシのピカチュウが、全身から電撃を放つ。

 

 

強烈な電撃がフィールドを走った。

 

 

しかし――。

 

 

「避けなくていい。わるだくみ」

 

 

「ピカ」

 

 

シンヤのピカチュウは、その場で腕を組んだ。

 

 

そして、どこか不敵な笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

バチチチチチチッ!

 

 

 

 

 

電撃が直撃する。

 

 

だが。

 

 

「ピッカ!」

 

 

シンヤのピカチュウは、まったくダメージを受けていなかった。

 

 

むしろ、全身に電気を吸収している。

 

 

「ピピカッチュ?!」

 

 

サトシのピカチュウが目を丸くした。

 

 

そう。

 

 

シンヤのピカチュウの特性は――ひらいしん。

 

 

電気技を無効化し、そのエネルギーを吸収して特攻を上げる特性である。

 

 

さらに、わるだくみによって火力を高めていた。

 

 

「なっ!? 効いてない?!」

 

 

サトシが驚く。

 

 

「マチスさんのライチュウにも、電気技は通じたのに!」

 

 

そのとき、応援席からタケシの声が飛んできた。

 

 

「サトシ! おそらくシンヤのピカチュウは、特性『ひらいしん』だ!」

 

 

「ひらいしん?!」

 

 

カスミも続ける。

 

 

「簡単に言えば、電気技を無効化して、自分の力に変えちゃう特性よ!」

 

 

「なっ……!」

 

 

サトシはシンヤを見る。

 

 

まさか、そこまで読まれていたのか。

 

 

そんな表情だった。

 

 

シンヤは小さく笑う。

 

 

「気づいたか、サトシ」

 

 

そして、静かに告げた。

 

 

「この重要な決勝戦。お前のことだ。流れを自分に引き寄せるために、最も信頼しているピカチュウを出してくると読んでいたぞ」

 

 

読み合い。

 

 

シンヤはこれまで、見せ合いを行い、複数のポケモンから選出する形式のバトルを数多く経験してきた。

 

 

相手の手持ちと戦術を分析し、どのポケモンを出してくるかを予想する。

 

 

そして、相手が選びそうなポケモンに対して有利なメンバーを用意する。

 

 

リーフとの準決勝でも、その力を発揮していた。

 

 

一方、シゲルのように育てているポケモンの種類が多く、個体ごとに違った育成をしている相手は、選出を読むのが難しい。

 

 

だからこそ、シゲルと戦う場合は、特定のポケモンへの対策だけでなく、対応力を重視したメンバーを選ぶつもりだった。

 

 

しかし、サトシの場合は違う。

 

 

サトシの戦い方には、はっきりとした特徴がある。

 

 

そして、シンヤはそこを読んでいた。

 

 

「くっ……! なら、でんこうせっか!」

 

 

「ピカチュウ!」

 

 

サトシのピカチュウが一気に距離を詰める。

 

 

「かわして、かみなりパンチ!」

 

 

「ピカ!」

 

 

シンヤのピカチュウは、最小限の動きで攻撃をかわした。

 

 

そして、横から雷をまとった拳を叩き込む。

 

 

 

 

 

ドゴォッ!

 

 

 

 

 

「ピカッ?!」

 

 

サトシのピカチュウが吹き飛ばされる。

 

 

だが、地面に足をつけ、しっかりと着地した。

 

 

「大丈夫か、ピカチュウ!」

 

 

「ピピカッチュ!」

 

 

まだまだいける!

 

 

そう言わんばかりに、元気よく鳴く。

 

 

しかし、サトシは状況を理解していた。

 

 

主力となる十万ボルトが無効化される。

 

 

しかも、相手のピカチュウはすでに火力を上げている。

 

 

このままでは不利だ。

 

 

「……!」

 

 

サトシが次の手を考えた、その瞬間。

 

 

「お前は、こちらの動きを止められるポケモンを出す」

 

 

シンヤが小さく呟く。

 

 

そして――。

 

 

「戻ってくれ、ピカチュウ!」

 

 

「ピカ??ピッカ」

 

 

サトシのピカチュウはフィールドからサトシの足元に戻る。

 

 

サトシはすぐに次のボールを取り出した。

 

 

「いけ! フシギダネ!」

 

 

「ダネフッシ!」

 

 

小柄ながらも頼りになる、皆の兄貴分。

 

 

フシギダネがフィールドに現れた。

 

 

目の前にいるシンヤのピカチュウを見つめる。

 

 

その厄介さを、仲間のピカチュウとは違うものとして感じ取っているようだった。

 

 

「フシギダネ! やどりぎのタネ! 周りにばら撒け!」

 

 

「ダネ!」

 

 

蕾の中心から、いくつもの種が発射される。

 

 

種はフィールドのあちこちに落ち、そこから植物が成長していく。

 

 

相手の移動範囲を制限し、自由に動かせないようにする狙いだ。

 

 

「なるほどな……」

 

 

シンヤはその動きを見ていた。

 

 

「つるのムチ!」

 

 

「ダーネ!」

 

 

フシギダネがつるを伸ばす。

 

 

「ムチを利用してジャンプ」

 

 

「ピカ!」

 

 

シンヤのピカチュウは、自分に向かって伸びてきたムチの先端に足を乗せた。

 

 

そして、その反動を利用して大きく跳び上がる。

 

 

空中で両腕を組む。

 

 

「その状態で、十万ボルトォォォォォ!」

 

 

「ピィィィカァァァァ!」

 

 

 

 

 

バチバチバチバチッ!!

 

 

 

 

 

不規則な動きをする電撃が、フィールド全体へと広がっていく。

 

 

その電撃は、やどりぎのタネによって成長していた植物を次々と焼き、さらにムチを伸ばしていたフシギダネにも襲いかかった。

 

 

「ダネネネネネッ?!」

 

 

効果はいまひとつ。

 

 

しかし、わるだくみによって特攻が上昇している。

 

 

その威力は、タイプ相性による半減をものともしないほどだった。

 

 

「フシギダネ! つるのムチで地面を叩いて、その場から離れるんだ!」

 

 

「ダ……ネッ!」

 

 

 

 

 

バチンッ!

 

 

 

 

 

フシギダネがムチを地面に叩きつける。

 

 

その反動を利用して後方へ跳び、電撃の範囲から脱出した。

 

 

シンヤのピカチュウは電撃を止め、地面へ降り立つ。

 

 

一方、強烈な電撃を受けたフシギダネは、荒い息を吐いていた。

 

 

「ダッネ……」

 

 

その瞬間。

 

 

 

 

 

バチチチッ!

 

 

 

 

フシギダネの身体に、再び電気が走った。

 

 

「ダネ?!」

 

 

追加効果による麻痺。

 

 

フシギダネは一瞬、身体の自由を失い、目を閉じる。

 

 

その隙を逃す二人ではなかった。

 

 

「ピカ」

 

 

シンヤのピカチュウが、一瞬で距離を詰める。

 

 

「アイアンテール」

 

 

「ピカァ!」

 

 

硬質化した尻尾が光る。

 

 

でんこうせっかによる加速も乗せた一撃。

 

 

 

 

 

ガキィィン!

 

 

 

 

 

そのアイアンテールが、フシギダネの頭部へ直撃した。

 

 

「ダネッ……!」

 

 

フシギダネはそのまま地面へ倒れ、動かなくなった。

 

 

「フシギダネ?!」

 

 

「フシギダネ、戦闘不能!」

 

 

審判の声が響く。

 

 

サトシはフシギダネをボールへ戻した。

 

 

そう、サトシの作戦そのものは間違っていなかった。

 

 

やどりぎのタネをばら撒き、相手の動きを制限する。

 

 

それは、素早い相手への対策として十分に有効な手段だった。

 

 

しかし、相手はシンヤのピカチュウ。

 

 

実家のポケモンたちの中で「番長」と呼ばれ、主力や控えのポケモンたちと絶えず訓練を重ねてきた存在である。

 

 

草タイプのポケモンが使う技も、数多く見てきた。

 

 

何より、シンヤの主力にはフシギバナもいる。

 

 

フシギダネの戦い方を理解し、対処するだけの経験があった。

 

 

「……すげえな、シンヤ」

 

 

サトシは驚きながらも、笑みを浮かべた。

 

 

「何もできなかった! でも、ここからだ!」

 

 

帽子を被り直す。

 

 

そして、次のボールを手に取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆第二戦――ドサイドンVSスピアー

 

 

「頼む! スピアー!」

 

 

「スピッ!」

 

 

スピアーがフィールドへ飛び出す。

 

 

その姿を確認したシンヤは、すぐに指示を出した。

 

 

「戻れ、ピカチュウ」

 

 

「ピカ!」

 

 

シンヤのピカチュウがボールへ戻る。

 

 

火力を上げた状態ではあるが、無理に居座らせる必要はない。

 

 

サトシがピカチュウを戻したのなら、こちらも次の相手に合わせて交代すればいい。

 

 

シンヤは次のボールを投げた。

 

 

「いけ、ドサイドン!」

 

 

「ドッサイ!」

 

 

巨大な身体がフィールドに現れる。

 

 

その姿を見た実況者が驚きの声を上げた。

 

 

『な、なんでしょうか、あの巨体のポケモンは!?』

 

 

『どことなくサイドンに酷似しているようですが……ここで情報が入りました!』

 

 

『あのポケモンは、サイドンの進化系であるドサイドンというそうです!』

 

 

観客席から驚きの声が上がる。

 

 

「ドサイドンか……」

 

 

タケシはその姿をじっと見つめた。

 

 

「あのドサイドン、かなり鍛えられているな。佇まいが違う」

 

 

「そんなに?」

 

 

カスミが尋ねる。

 

 

「ああ。俺のジムにもドサイドン、サイドンやサイホーン系統はいるからな。あの体つきと立ち方を見れば分かる。相当な耐久力を持っているはずだ」

 

 

タケシは真剣な表情で続けた。

 

 

「正面から力比べをするのは危険だぞ、サトシ」

 

 

「試合再開!」

 

 

審判の声が響く。

 

 

「スピアー! まずは攻撃と素早さを上げるぞ! つるぎのまいから、こうそくいどう!」

 

 

「スピ!」

 

 

スピアーが羽を震わせ、身体の周囲に風を巻き起こす。

 

 

つるぎのまいによって攻撃力を高め、こうそくいどうによってさらに加速する。

 

 

そのままドサイドンへ接近した。

 

 

しかし、ドサイドンは動かない。

 

 

「動くな。そのまま、ステルスロック」

 

 

「ドッサイ!」

 

 

ドサイドンが地面へ力を込める。

 

 

目に見えない岩が、フィールドに設置されていく。

 

 

リーフとの準決勝でも猛威を振るった、ステルスロック。

 

 

サトシのポケモンたちが交代するたびに、ダメージを与えるための仕掛けだった。

 

 

「なっ! そいつもステルスロックを使えるのか!」

 

 

サトシが驚く。

 

 

シンヤは構わず続けた。

 

 

「そのまま、ストーンエッジ。生やすタイプで展開」

 

 

「ドッサイ!」

 

 

ドサイドンが片腕を掲げる。

 

 

すると、地面から巨大な岩の刃が次々と生えていった。

 

 

スピアーへ向かって、地面を突き破るように岩が伸びていく。

 

 

しかし、素早さを上げたスピアーには当たらない。

 

 

「ドリルライナーだ!」

 

 

「スピッ!」

 

 

スピアーが身体を丸め、回転しながら突進する。

 

 

地面から生える岩を次々とかわし、ドサイドンへ接近していく。

 

 

「なら、こうするまでだ」

 

 

シンヤは冷静に指示を出す。

 

 

「ドサイドン! 自分の真下に――ストーンエッジ!」

 

 

「ドッサイ!」

 

 

 

 

 

ドゴゴゴゴゴッ!

 

 

 

 

 

今度はドサイドンの足元に、特大サイズのストーンエッジが展開された。

 

 

巨大な岩が地面を突き破り、ドサイドンの身体を押し上げていく。

 

 

その巨体が、少しずつ上空へと移動する。

 

 

「逃がすな、スピアー! そのまま追いかけろ!」

 

 

「スピ!」

 

 

スピアーはドリルライナーの回転を維持したまま、上昇していくドサイドンを追う。

 

 

その途中、進路を塞ぐように設置されたステルスロックも、ついでとばかりに破壊していった。

 

 

しかし――。

 

 

「ジャンプだ、ドサイドン」

 

 

「ドッサ!」

 

 

 

 

 

ドスンッ!

 

 

 

 

 

ドサイドンが岩場を蹴り、空中へ跳び上がる。

 

 

そして、スピアーの進行方向へ回り込んだ。

 

 

「上空から落ちる、その重量を利用して――」

 

 

シンヤの口元が上がる。

 

 

「ヘビーボンバーァァァァァ!」

 

 

「ドッサイ!」

 

 

 

 

 

ズドォォォォン!!

 

 

 

 

 

巨大なドサイドンが、重力を利用して一気に落下する。

 

 

その全重量を乗せたヘビーボンバーが、ドリルライナーで突進していたスピアーへ真正面から叩き込まれた。

 

 

「いかん! サトシ、回避させろ!」

 

 

タケシが思わず叫ぶ。

 

 

しかし――。

 

 

「間に合わないよ」

 

 

観客席にいたシゲルが冷静に呟いた。

 

 

 

 

 

ガァァァン!!

 

 

 

 

 

スピアーのドリルライナーが、ドサイドンの圧倒的な重量によって無理やり止められる。

 

 

そして、そのまま地面へ叩きつけられた。

 

 

スピアーは、元々それほど耐久力に優れたポケモンではない。

 

 

どれだけ攻撃力と素早さを上げていても、この重量差は埋められない。

 

 

「スピィィィィィッ?!」

 

 

ドサイドンが地面に降り立つ。

 

 

その真下には、目を回して気絶したスピアーがいた。

 

 

「ス、スピアー……」

 

 

「スピアー、戦闘不能!」

 

 

サトシはスピアーをボールへ戻した。

 

 

これで二匹目。

 

 

そして、目の前にはまだ傷らしい傷も見せていないドサイドンが立っている。

 

 

サトシの額に汗がにじんだ。

 

 

 

 

 

(この展開……)

 

 

 

 

 

脳裏に浮かぶのは、準決勝でのリーフとの戦い。

 

 

相手の行動を先読みし、対策を用意し、こちらの戦術を次々と潰していく。

 

 

まるで、同じ展開を繰り返しているかのようだった。

 

 

「サトシ。一つ、俺から言っておこうか」

 

 

シンヤが声をかける。

 

 

「な、なんだよ?」

 

 

スピアーをボールへ戻したサトシが顔を上げる。

 

 

「お前のバトルスタイルは速攻型だ。身軽なポケモンや素早いポケモンを使って、その場の機転を利かせながら戦う」

 

 

「……!」

 

 

「特に今回の決勝。お前なら、相棒のピカチュウで流れを掴みにくると考えた」

 

 

シンヤはドサイドンを見ながら続ける。

 

 

「だが、それを封じられたらどうする?」

 

 

サトシは答えない。

 

 

「お前は、頭の中で何通りもの戦術を組み立ててから戦うタイプじゃない。実際に戦いながら、状況に合わせて答えを見つけるタイプだ」

 

 

「……っ!」

 

 

「だからこそ、素早いポケモンや、機転を利かせやすいポケモンを選んでくると踏んでいた」

 

 

サトシの額に、さらに汗が浮かぶ。

 

 

当たっていた。

 

 

実際、シンヤのポケモンの数や戦術の幅を崩すためには、速攻を仕掛ける必要があった。

 

 

そのため、ピカチュウやスピアーのように素早いポケモン。

 

 

フシギダネのように、相手の動きを制限しながら、つるのムチなどで臨機応変に動けるポケモンを選んでいた。

 

 

しかし、シンヤはその選出そのものを予想していたのだ。

 

 

シンヤの戦い方は、まるで詰将棋に近い。

 

 

このポケモンが来たら、こちらはこのポケモンで対応する。

 

 

相手がこう動けば、次はこうする。

 

 

相手の行動を予測し、その先に待ち受ける手を用意しておく。

 

 

前世でゲームをやり込んでいた頃から、シンヤが得意としてきた戦い方だった。

 

 

もちろん、現実のポケモンバトルはゲームとは違う。

 

 

予想外の動きもある。

 

 

ポケモン自身の意思や判断もある。

 

 

それでも、相手の行動を予測し、対応するという根本は変わらない。

 

 

特にサトシは、将来「意外性ナンバーワン」と呼ばれるほど、何をしてくるか分からないトレーナーになる。

 

 

だからこそ、シンヤはその前に選択肢を潰す。

 

 

予想できない行動をされるのなら、その行動が成立する前に封じればいい。

 

 

「……っ!」

 

 

サトシは悔しそうに拳を握る。

 

 

だが、すぐに顔を上げた。

 

 

「頼む!」

 

 

次のボールを投げる。

 

 

「ゼニィィィ!」

 

 

ゼニガメがフィールドへ飛び出した。

 

 

しかし――。

 

 

 

 

 

ガガガッ!

 

 

 

 

 

まだ残っていたステルスロックが、ゼニガメの身体を襲う。

 

 

「ゼニッ!」

 

 

交代直後からダメージを受ける。

 

 

シンヤはその様子を見て、ドサイドンを戻した。

 

 

「戻れ」

 

 

「ドッサイ!」

 

 

そして、次のボールを投げる。

 

 

「いけ、フーディン!」

 

 

「ディン」

 

 

スプーンを構えたフーディンが、静かにフィールドへ現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆第三戦――フーディンVSゼニガメ

 

 

「試合再開!」

 

 

審判の声が響く。

 

 

「ゼニガメ! みずでっぽう!」

 

 

「ゼニィィィ!」

 

 

ゼニガメが口から水を勢いよく放つ。

 

 

しかし――。

 

 

「テレポート」

 

 

「ディン」

 

 

フーディンの姿が消えた。

 

 

水流は何もない場所を通り過ぎる。

 

 

そして、フーディンが現れたのは――。

 

 

「っ!? ゼニガメ、後ろだ!」

 

 

「ゼッ?!」

 

 

ゼニガメが振り返る。

 

 

その背後には、すでに緑色の球体を用意したフーディンが立っていた。

 

 

「エナジーボール」

 

 

 

 

 

シュドォォォン!

 

 

 

 

 

緑色のエネルギー弾が炸裂する。

 

 

ゼニガメは背後から攻撃を受け、吹き飛ばされた。

 

 

「ゼニィッ!」

 

 

何とか空中で水を噴射し、姿勢を立て直す。

 

 

だが、着地した場所にフーディンの姿はなかった。

 

 

ゼニガメが周囲を見回す。

 

 

その瞬間、再び背後から気配がした。

 

 

「エナジーボール」

 

 

 

 

 

ドゴォォォン!

 

 

 

 

 

「ゼニィィガッ?!」

 

 

再び直撃。

 

 

甲羅を背負っているゼニガメは、真後ろを確認するのが難しい。

 

 

シンヤとフーディンは、その身体的な特徴を利用していた。

 

 

正面から攻撃するのではなく、テレポートによって死角へ移動し、相手が振り向く前に攻撃する。

 

 

そして、フーディンのテレポートがここまで正確なのには、ある理由があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ヤマブキジム――ナツメの協力

 

 

一方、その頃。

 

 

ヤマブキジム。

 

 

ジムリーダーの私室では、ナツメが紅茶を片手に試合の様子を見ていた。

 

 

画面には、フーディンがテレポートを使い、ゼニガメの背後へ移動する姿が映っている。

 

 

ナツメはその光景を見ながら、静かに呟いた。

 

 

「そう。次にお前は『お前の仕業か?!』と言う」

 

 

「お前の仕業か?!」

 

 

……ハッ!?

 

 

ナツメは小さく笑った。

 

 

もちろん、誰かに向けた独り言である。

 

 

実は、ナツメはレンの知らないところで、シンヤと連絡を取っていた。

 

 

フーディンのテレポートを、戦闘中に正確に使う方法。

 

 

それをシンヤに教えたのは、ほかでもないナツメだった。

 

 

エスパータイプのポケモンが使うテレポート。

 

 

レンのサーナイトとは異なり、フーディンはサイコパワーの扱いに非常に長けている。

 

 

しかし、だからといって、戦闘中に自由自在に使えるわけではない。

 

 

特に、相手の動きに合わせて瞬時に位置を変え、正確に攻撃を当てるには高度な制御が必要になる。

 

 

ただ場所を移動するだけならともかく、相手の死角へ正確に転移するとなれば、難易度はさらに上がる。

 

 

そのため、ナツメはシンヤにテレポートの応用方法を教えていた。

 

 

その代わり――。

 

 

リーグが終わった後、デートをする約束を取り付けている。

 

 

ナツメは紅茶のカップを皿に置いた。

 

 

「サトシ君。貴方も、かつて私のフーディンの子供であるユンゲラーを倒したからこそ、バッジを渡したわ」

 

 

目を細め、画面の中のサトシを見る。

 

 

「けれど……」

 

 

ナツメは小さく息を吐いた。

 

 

「前世でランクマッチという魔窟を経験している私やシンヤからすれば……」

 

 

カップを持ち上げ、紅茶を一口飲む。

 

 

「今の経験の少ない貴方が勝てる相手ではないわよ」

 

 

静かな部屋に、ナツメの声だけが響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆フーディンの連続攻撃――ゼニガメ、反撃!

 

 

場面は再び決勝戦へ戻る。

 

 

フーディンはテレポートを繰り返しながら、ゼニガメの死角へ移動していた。

 

 

「エナジーボール」

 

 

「ディン!」

 

 

 

 

 

シュドォン!

 

 

 

 

 

ゼニガメが攻撃を受ける。

 

 

またテレポート。

 

 

そして、背後からエナジーボール。

 

 

正面から攻撃を仕掛けても、フーディンはその場にいない。

 

 

ゼニガメは少しずつダメージを蓄積していった。

 

 

「くっ……!」

 

 

サトシは歯を食いしばる。

 

 

だが、ゼニガメもまだ諦めてはいない。

 

 

その身体から、青白いオーラが立ち上り始めた。

 

 

「おっ……!」

 

 

タケシが気づく。

 

 

「サトシ、ゼニガメの特性が発動したぞ!」

 

 

そう。

 

 

ゼニガメの特性は、げきりゅう。

 

 

体力が減少したとき、水タイプの技の威力が上昇する。

 

 

サトシはその力を利用することにした。

 

 

「ここから勝負をかけるしかない!」

 

 

サトシが拳を握る。

 

 

「ゼニガメ! こうそくスピンから、ハイドロポンプだぁ!」

 

 

「ガーメメメメメメメメ!!」

 

 

ゼニガメが高速回転を始める。

 

 

そして、強化された水流を四方へ放出した。

 

 

巨大な水の奔流が、フィールド全体を覆う。

 

 

フーディンの逃げ道を塞ぐような広範囲攻撃。

 

 

しかし――。

 

 

フーディンは、すでにテレポートで退避していた。

 

 

水流は何もない場所を通り過ぎる。

 

 

「よし! そのまま近づけ!」

 

 

サトシが指示を出す。

 

 

ゼニガメは高速スピンを維持したまま、フーディンへ接近する。

 

 

だが、シンヤは冷静だった。

 

 

「エナジーボール。そして、それをサイコキネシスで操って――水の発射口を塞げ」

 

 

「ディン」

 

 

フーディンがスプーンを動かす。

 

 

四つのエナジーボールが展開された。

 

 

それらはゼニガメのハイドロポンプの発射口を狙い、正確に飛んでいく。

 

 

「ゼニッ?!」

 

 

 

 

 

バシャァァァァ!

 

 

 

 

 

四つのエナジーボールが発射口を塞ぐように命中。

 

 

水の流れが止まった。

 

 

内部で水圧が乱れ、ゼニガメの身体が大きく揺れる。

 

 

さらに――。

 

 

 

 

 

ドゴゴゴゴッ!

 

 

 

 

 

エナジーボールが連続して炸裂する。

 

 

「ゼニガッ?!」

 

 

水を出すことができず、攻撃の勢いを失ったゼニガメ。

 

 

そのまま爆発の衝撃に巻き込まれた。

 

 

「ゼ、ゼニィィィ……」

 

 

ゼニガメは地面へ倒れ、動かなくなった。

 

 

「ゼニガメ、戦闘不能!」

 

 

審判が声を上げる。

 

 

そして、続けて宣言した。

 

 

「サトシ選手のポケモンが先に三匹戦闘不能となったため、ここで三分間のインターバルに入ります!」

 

 

会場にアナウンスが響き渡る。

 

 

シンヤはフーディンをボールへ戻した。

 

 

サトシもゼニガメを戻す。

 

 

その表情には、悔しさが浮かんでいた。

 

 

ここまでの展開。

 

 

ピカチュウは特性によって電気技を封じられた。

 

 

フシギダネは高火力の電撃と麻痺によって倒された。

 

 

スピアーはドサイドンの圧倒的な重量に押し潰された。

 

 

そしてゼニガメは、フーディンのテレポートとエナジーボールによって攻撃の機会を奪われた。

 

 

サトシのポケモンが三匹戦闘不能。

 

 

シンヤのポケモンは、まだ一匹も倒れていない。

 

 

会場は、決勝戦とは思えないほどの一方的な展開に騒然としていた。

 

 

六対三。

 

 

しかも、シンヤの戦い方はまるで詰将棋のようだった。

 

 

相手が何をしようとしているのかを読み、その行動が成立する前に潰していく。

 

 

観客たちは、その戦術にただただ驚いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆三分間のインターバル――読み切る者

 

 

三分間のインターバル。

 

 

サトシは自分のポケモンたちを労い、次の戦いに備えていた。

 

 

一方、シンヤもフーディンを戻し、応援席へ向かう。

 

 

レンはシンヤの姿を見て、小さく呟いた。

 

 

「恐ろしいまでの対応想定ね……」

 

 

「はい。先発のピカチュウを予想して、交代するタイミングまで読んでいました」

 

 

ラムが頷く。

 

 

「しかも、交代で出てきた相手には別のポケモンをぶつけて、ほとんど何もさせずに倒してしまう……」

 

 

レムも驚きを隠せない。

 

 

レンはフィールドを見つめた。

 

 

「昨日、独り言で言っていたことが、そのまま現実になっているわね」

 

 

シンヤは昨日、サトシの先発や選出について何度も考えていた。

 

 

その予想が、ここまで的中している。

 

 

もちろん、すべてが偶然ではない。

 

 

サトシのこれまでの戦い方。

 

 

使用してきたポケモン。

 

 

試合中の判断。

 

 

そうした情報を積み重ねた結果なのだ。

 

 

「本当に、すごい読みですね……」

 

 

レムが感心したように呟く。

 

 

ラムも頷く。

 

 

「坊ちゃま、あれだけポケモンを育てているのに、相手のことまでよく見ているわね」

 

 

だが、レンは少し違うことに気づいていた。

 

 

「……でも、シンヤ」

 

 

「はい?」

 

 

ラムとレムがレンを見る。

 

 

レンはフィールドのシンヤを見つめたまま、微笑んだ。

 

 

「楽しそうね」

 

 

「楽しそう、ですか?」

 

 

「ええ。あそこまで圧倒しているのに、相手が次に何をしてくるのか、楽しみで仕方ないって顔をしているわ」

 

 

レンは、シンヤの表情をよく知っている。

 

 

ニビシティで出会ってから、ずっと一緒に旅をしてきた。

 

 

バトル中の真剣な顔。

 

 

ポケモンたちと接するときの優しい顔。

 

 

何かを思いついたときの楽しそうな顔。

 

 

そして、強敵と戦うときの、あの少しだけ口元が緩む表情。

 

 

今のシンヤは、まさにそれだった。

 

 

「勝つために徹底的に考えている。でも、予想外のことが起きるかもしれないという期待もある……そんな顔ね」

 

 

レンがそう言うと、ラムがニヤリと笑った。

 

 

「レン様は、本当に坊ちゃまのことが好きすぎなのね」

 

 

「んなっ?!」

 

 

レンの顔が一気に赤くなる。

 

 

「な、何を言っているのよ!」

 

 

「だって、坊ちゃまの表情をそこまで細かく分かるんですから」

 

 

ラムは楽しそうに笑う。

 

 

レムも少し微笑んだ。

 

 

「ま、まあ、そうでなければ坊ちゃまの表情を読むことなんてできませんよね」

 

 

「レムまで……!」

 

 

レンは顔を真っ赤にして二人を見た。

 

 

そのとき。

 

 

「ん? どうした、レン?」

 

 

シンヤが戻ってきた。

 

 

「な、ななななな、何でもないわよ?!」

 

 

「……?」

 

 

シンヤは首を傾げる。

 

 

「そうか?」

 

 

「そ、そうよ!」

 

 

レンは慌てて視線をそらした。

 

 

その様子を見て、ラムとレムは顔を見合わせる。

 

 

二人とも、笑いをこらえるのに必死だった。

 

 

シンヤはそんな三人の様子を不思議そうに眺めていたが、やがてフィールドへ視線を戻した。

 

 

三分間のインターバルは、まだ続いている。

 

 

サトシもまた、次の戦いに向けて準備を進めていた。

 

 

シンヤは静かに拳を握る。

 

 

 

 

 

(さあ、ここからだ)

 

 

 

 

 

サトシがどんな手を打ってくるのか。

 

 

その答えを、シンヤは楽しみにしていた。

 

 

そして――。

 

 

決勝戦の後半が、始まろうとしていた。

 

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