シンヤはオレンジ諸島には向かいません。というか向かう理由がほぼない。
オレンジ諸島にシンヤがいくと蹂躙するイメージしかないし
その代わり、この話の後はある話を入れていきます。ええ、無印といえば"あれ"ですから
歴代最高。
後にそう呼ばれることになる、カントー地方のポケモンリーグ。
特に準決勝と決勝は、これまでの大会と比べても異例の盛り上がりを見せていた。
シンヤ、サトシ、シゲル、リーフ。
同じマサラタウン出身でありながら、それぞれ異なる個性と実力を持つ四人のトレーナー。
彼らが繰り広げた戦いは、ポケモンバトルを愛する人々の間で大きな話題となった。
テレビ局もその熱狂を見逃さなかった。
大会の準決勝、決勝は特別番組として全国各地へ放送され、カントー地方のみならず、遠く離れた他地方の人々までもが画面に釘付けになっていた。
そして、この大会をきっかけに――。
まだ見ぬ地方で、新たな物語が動き始めようとしていた。
◆イッシュ地方――テレビに釘付けの少女
『ハガネール! すなあらし!』
『ハンガァァッ!』
『続いて、ステルスロック!』
『ハガァァァァ!』
テレビの中で、巨大な鋼の蛇が地面を激しく叩いた。
砂嵐が巻き起こり、フィールド全体を覆っていく。
さらに、地面から鋭い岩が次々と浮かび上がり、相手の行動範囲を制限していった。
「凄い! ハガネールで砂嵐を起こしながら、設置技まで使ってる!」
画面に夢中になっている少女がいた。
茶色の長い髪をお団子付きのツインテールに結び、サンバイザーを身につけた少女。
名前は――メイ。
年齢はシンヤたちと同じくらい。
同年代の少女たちからは、その発育の良さを羨ましがられたり、時には嫉妬されたりすることもある。
そんな彼女が今、食い入るように見つめているのは、セキエイリーグで行われたシンヤとリーフの試合だった。
母親から、
『カントー地方のポケモンリーグが生中継されるわよ』
と聞かされ、何気なくテレビをつけたのが始まりだった。
ところが、試合が進むにつれて、メイはすっかり画面から目を離せなくなっていた。
「凄いなぁ……。ただ攻撃するだけじゃなくて、相手の動きを制限して、次の行動まで読んでるんだ」
画面の中では、シンヤがハガネールの動きを見ながら、次々と指示を出している。
メイは思わず身を乗り出した。
「私、イッシュでトレーナーデビューするつもりだったけど……」
少し考えるように頬へ指を当てる。
「うーん……」
そして、ぽつりと呟いた。
「なんでかイッシュのトレーナーって、他の地方のトレーナーを田舎者扱いする人もいるし……。正直、そういう人たちのいるところで旅するのは向いてない気もするんだよねぇ」
そこへ、母親が声をかけた。
「何? メイ。あなた、生まれ故郷の地方を旅するつもりはないの?」
「うーん。正直、旅をするなら、生まれ育った地方よりも他の地方の方が自分のためになるかなって」
「そう……」
母親は少し考え込んだあと、ふと思い出したように口を開いた。
「それなら、ミサキに相談してみましょうか?」
「えっ?」
メイはテレビから目を離し、母親を振り返った。
「ミサキって?」
「ほら、今テレビに映っている男の子のお母さんよ」
「ええっ!?」
メイは思わず画面を見直した。
そこには、試合の合間に映し出されたシンヤの姿があった。
「シンヤ君のお母さんと知り合いなの!?」
「ええ。ママが子供の頃、旅をしていたときに出会ったトレーナーなの。何度か一緒に行動したこともあるし、バトルだってしたことがあるわ」
「そうだったんだ……!」
メイは驚きながらも、再びテレビへ目を向けた。
母親はその様子を見て、微笑んだ。
「今でもたまに連絡を取り合っているのよ。あなたが一人で他地方へ旅立つのなら、知り合いがいる方が安心でしょう?」
「そ、それはそうだけど……」
「それに、あの子なら強いし、メイを任せても安心できると思うわ」
母親は意味ありげにウインクした。
「ふふっ」
「……?」
メイは母親を見つめた。
(年相応に見えなくても、年齢を考えたら――)
「……何か言った?」
「ううん!? 何にも!」
メイは慌てて首を横に振った。
母親はくすくすと笑いながら、部屋の奥へ向かう。
「とりあえず、ミサキに頼んでみるわね。シンヤ君たちが次にどこを旅するのかも聞いてみましょう」
「う、うん!」
母親の背中を見送ったメイは、再びテレビへ視線を戻した。
画面には、優勝者として紹介されるシンヤの姿が映っていた。
「マサラタウンのシンヤ君……かぁ」
メイは頬に手を当てる。
そして、少しだけ顔を赤くした。
「……ちょっと、いいかも」
テレビの中では、まだセキエイリーグの熱狂が続いていた。
しかし、メイの心には、それとは別の小さな期待が芽生え始めていた。
◆ホウエン地方――センリの注目
また別の地方。
ホウエン地方のとあるシティにある一軒家。
そのリビングでも、テレビに映るセキエイリーグの決勝戦が注目を集めていた。
『避けることも、防ぐことも許さない。一瞬で終わらせよう』
『……メガシンカ!』
『メガスピアー!』
『スピィィィ!』
「凄い凄い! あれがメガシンカなんだぁ!!」
少年が、興奮した様子でテレビに身を乗り出した。
名前はマサト。
その隣には、呆れた表情で弟を見つめる少女がいる。
姉のハルカだ。
「もう! マサト! うるさいかも! 静かにテレビぐらい見なさいよ!」
「何を言ってるのお姉ちゃん!?」
マサトは振り返り、興奮したまま言葉を続ける。
「ここホウエンでも、メガシンカはあまり見られない現象なんだよ!? パパだって、メガシンカさせるポケモンはいないのに!」
「そうなの? パパ」
ハルカは父親へ視線を向けた。
そこにいたのは、ホウエン地方でも最強クラスと謳われるジムリーダー――センリだった。
センリはテレビを見ながら、ゆっくりと頷く。
「そうだな。メガシンカは、ポケモンとトレーナーの深い絆が必要になる現象だ。誰でも簡単に扱えるものではない」
「へぇ……」
ハルカも画面を見る。
そこには、メガシンカしたスピアーとリザードンが激しくぶつかり合う姿が映っていた。
「でもさぁ、メガスピアーじゃなくて、もっと格好いいポケモンでメガシンカしてくれたらよかったのに!」
マサトがぽつりと呟く。
「……そういうことは言わない方がいいわよ、マサト」
「えぇ!? なんで? 格好いいポケモンのメガシンカの方が印象に残るし、いいじゃん!」
「もう……」
ハルカは呆れたようにため息をついた。
そんな二人を見ながら、センリは再びテレビへ目を向ける。
その表情から、父親としての穏やかさが少しずつ消えていく。
ジムリーダーとしての目になっていた。
(……新人トレーナーとして旅立ったばかりだというのに、この練度か)
画面にはシンヤのリザードンが映っている。
メガシンカの力だけではない。
そこに至るまでの育成。
技の選択。
相手の動きへの対応。
そして、ポケモン自身の判断力。
どれを取っても、並の新人トレーナーの域を超えている。
センリは、シンヤという少年の戦い方を注意深く観察していた。
(ポケモンの力を引き出すだけではない。自分自身もまた、戦術の一部として動いている)
シンヤの判断には無駄が少ない。
相手が何を狙っているのかを読み、行動を制限し、選択肢を狭めていく。
それでいて、状況が変われば柔軟に対応する。
(もし、彼が私のところへ来たら――)
センリは懐へ手を伸ばした。
そこには、ある道具が大切にしまわれていた。
まだ簡単に使うつもりはない。
だが、目の前の少年が相手ならば。
(解禁する必要があるかもしれないな)
センリは、その道具にそっと触れた。
「パパ?」
ハルカが不思議そうに声をかける。
「ん? どうした?」
「何か考え事?」
「いや、少しな」
センリは微笑み、二人の子供へ歩み寄った。
「さあ、二人とも。テレビを見るのはいいが、騒ぎすぎないようにな」
「はーい!」
「はーい!」
返事をする二人。
しかし、マサトの目はまだ画面に釘付けだった。
彼の頭の中では、メガシンカという未知の力が大きな存在感を放っていた。
そして、センリは心の中で思う。
(いつか、彼らと直接戦う機会があれば面白いだろうな)
ホウエン地方でもまた、シンヤという少年の名が一つの注目を集め始めていた。
◆ジョウト地方――赤髪の少年
一方、カントー地方の隣に位置するジョウト地方。
とある街の路地裏では、少々物騒な追いかけっこが繰り広げられていた。
「見つけましたよ、坊ちゃん!」
「ちっ! しつこい奴らだ!」
追われているのは、赤く長い髪を持つ少年だった。
その後ろには、『R』と書かれた団服を着た複数の人物がいる。
少年は走りながら、懐から黒い塊を取り出した。
そして――。
バンッ!
地面に叩きつける。
次の瞬間、辺り一面に煙が広がった。
「げほっ! げほっ!?」
「煙幕だと!?」
「古典的な道具で逃げるとは……!」
「追え! まだ遠くへは行っていない!」
団員たちは煙の中を駆け抜けていく。
だが、彼らは気づいていなかった。
追うべき少年が、すぐそばの草むらに身を潜めていることに。
「…………」
少年は息を潜め、団員たちの足音が遠ざかるのを待った。
やがて、周囲が静かになる。
「……行ったか」
少年は草むらから這い出し、服についた葉を払った。
「なんだってんだ、あのバカ親父……!」
苛立ちを隠すことなく舌打ちする。
頭に浮かぶのは、つい先ほど聞かされた父親の言葉だった。
――今から再度、教育してお前を強くする。
その言葉を思い出すだけで、少年の怒りは再燃する。
「ざけんな!」
ガンッ!
少年は足元の石を蹴り飛ばした。
「今まで父親らしいことなんか何一つしなかったくせに! 今更父親面しやがって!」
少年の父親。
それは、ロケット団を率いている男。
サカキ。
少年は、その名前を思い浮かべるだけで歯を食いしばった。
自分を放っておいたくせに。
自分のことなど顧みなかったくせに。
今になって、父親として教育し直すなどと言い出した。
そんな勝手な話を受け入れられるはずがない。
「ふざけるな……!」
少年は団員たちが走っていった方向とは逆へ歩き始めた。
(お前らの力なんか借りなくても、俺だけで強くなってやる)
その目には、強い反発心が宿っていた。
だが、現実は厳しい。
強くなるためには、ポケモンが必要だ。
自分の手持ちを揃え、育て、戦う。
そのためには、まず仲間となるポケモンを探さなければならない。
「……そうだ。ポケモンだ」
少年は顔を上げた。
(俺だけで強くなってやる。そのためには――)
拳を握る。
(ポケモンが必要だな)
少年は歩き出した。
父親の命令から逃げるためではない。
誰かに認めてもらうためでもない。
ただ、自分の力で強くなるために。
その背中には、まだ幼さと未熟さが残っていた。
しかし、彼の歩む先には、いずれ大きな運命が待ち受けている。
◆飛行船――ライジングボルテッカーズの視線
また別の場所。
空を進む一隻の飛行船。
その一室では、大画面のテレビに映し出されたセキエイリーグの決勝戦を、少年少女と大人たちが見つめていた。
「凄い! 僕たちとそんなに年齢も変わらないのに!」
褐色の肌に赤い瞳。
黒髪に赤い前髪が特徴的な少年が、興奮した様子で画面を見ていた。
ロイである。
その隣には、ネイビーのミディアムヘアーに青いインナーカラーを入れた少女、リコが座っている。
リコもまた、画面に映る二人の戦いを真剣に見つめていた。
さらに、その近くには紫色の天然パーマタンクトップにパジャマと思われる上着を羽織った、いかにもインドア派の恰好をしている少女、ドットの姿もある。
「ねえねえ! フリード!」
ロイが隣に座る男性へ声をかけた。
「フリードのリザードンやキャップと、あの二人のポケモンだったら、どっちが強いの?!」
「おいおい、ロイ。落ち着けって。隣に座っているリコやドットが驚くだろ?」
苦笑しながらロイをなだめたのは、白髪にゴーグルを乗せた男性。
フリードだった。
しかし、ロイの興奮は収まらない。
「だって凄いんだよ! あんなに激しいバトル、初めて見た!」
「……確かにね」
リコも小さく頷く。
画面の中では、メガシンカしたリザードンが圧倒的な力を見せていた。
「特に、あのシンヤって人……」
リコが呟く。
「相手の動きをよく見ているし、ポケモンへの指示もすごく的確。あれだけ激しいバトルの中でも、落ち着いているんだね」
「うん。サトシって人も凄いけど、シンヤって人は特に戦い方が完成されている感じがする」
ドットも画面を見ながら分析する。
フリードは腕を組み、二人の意見を聞いていた。
その視線は、画面に映るシンヤとサトシへ向けられている。
二人が使っているポケモン。
その中には、フリード自身も手持ちにしているポケモンと同じ種族がいた。
だからこそ、余計に興味深かった。
「……こりゃ、俺たちも久々に特訓するしかねえかもな」
フリードは肩に乗る相棒へ声をかけた。
「なあ、キャップ?」
「ピカチュウ!」
船長帽子を被ったピカチュウ――キャップが元気よく返事をする。
その目は、画面に映るシンヤのピカチュウを見つめていた。
キャップは、あのピカチュウの動きに興味を持っていた。
自分と同じ種族。
それなのに、戦い方は随分と違う。
技の選択肢も多く、状況に応じて戦い方を変えている。
(あいつ……なかなかやるな)
そんな感情が、キャップの胸に芽生えていた。
一方、フリードは内心で冷静に実力を測っていた。
(……正直、今の俺たちじゃ厳しいな)
自分のリザードンも、キャップも、決して弱くはない。
むしろ、実力には自信がある。
しかし、画面に映るシンヤとサトシの二人は、経験と育成の積み重ねが違う。
特にシンヤ。
あの少年のポケモンたちは、個々の能力だけでなく、トレーナーとの連携や状況判断まで高い水準にある。
(あの年齢で、あそこまで仕上げているのか……)
フリードはわずかに悔しさを覚えた。
だが、それ以上に胸の奥が熱くなる。
強い相手を見たときに湧き上がる、挑戦者としての気持ち。
「よし。決めた」
フリードは立ち上がった。
「俺たちも、もう一段階上を目指すぞ!」
「おおっ!」
ロイが勢いよく声を上げる。
「僕も特訓する!」
「ロイ、まずは落ち着いて」
リコが苦笑する。
ドットは小さく息を吐きながらも、画面から目を離さなかった。
キャップもまた、胸を張って鳴く。
「ピカチュウ!」
その表情には、シンヤのピカチュウへの対抗心が見え隠れしていた。
ただし、キャップはサトシのピカチュウにも別の印象を抱いていた。
(あのピカチュウも、まだまだ伸びるな)
今の時点では自分の方が上だと思っている。
だが、これから経験を積めば、いつか互角に渡り合う相手になるかもしれない。
キャップはそう感じていた。
こうして、セキエイリーグの熱狂は、飛行船の中にも新たな刺激をもたらしていた。
◆アローラ地方――取り残された男
そして――。
華やかな祝福とは無縁の場所。
アローラ地方。
とある場所に、一人の青年がいた。
薄汚れた服。
乱れた髪。
そして、虚ろな目。
クロス。
かつて、ポケモンの力を自分の力と信じ、自分の強さを誇示していたトレーナー。
だが、今の彼に、かつての傲慢さはほとんど残っていなかった。
手持ちの六匹。
それだけではない。
彼が所持していた他のポケモンたちも、次々と彼のもとを去っていった。
彼を信じていたはずのポケモンたちが、彼のもとから離れていったのだ。
中でも、相棒だったガオガエンとルガルガンに見放されたことは、クロスにとって大きな打撃だった。
「…………」
クロスは、ぼんやりと地面を見つめていた。
何が悪かった。
何が間違っていた。
何度考えても、答えは出ない。
いや、答えなど最初から決めていた。
(俺は間違ってねえ……)
(悪いのは、あいつらだ)
(俺の力を発揮できなかった、あいつらが悪い……)
そう考えなければ、自分を保てなかった。
だが、その言葉に以前のような力はない。
誰かに言い返す気力もない。
再びポケモンを捕まえようという気持ちも湧いてこない。
トレーナーとしてやり直すには、彼の心はあまりにも深く折れていた。
故郷であるアローラへ戻ってきたものの、周囲の人々は以前のクロスの面影がないことに不気味さを覚え、次第に距離を置くようになっていた。
知人たちも、彼に声をかけようとはしない。
かつての傲慢な青年は、今や誰からも相手にされない存在になりつつあった。
「…………」
クロスは、顔を上げた。
その視線の先には、何もない。
ただ、遠くの景色が広がっているだけだった。
「……俺は」
何かを言いかける。
だが、言葉は続かなかった。
そのとき、彼の足元に暗い影が伸びる。
それは夕暮れの影だったのか。
それとも、彼自身の心の奥から広がってきたものだったのか。
誰にも分からない。
「――――」
クロスは、再び俯いた。
彼の周囲を覆う暗い何かは、ゆっくりと、確実に広がっていく。
そして――。
彼がそこから抜け出せるのかどうか。
それを知る者は、まだ誰もいなかった。
カントーリーグ編も終わったのである話を書きたいので連日の更新はストップするかもしれません。
まあ、番外編というかおまけ話をいくつか書いてくと思います
原作ではないチャンピオンリーグをするべきか、それともその後の話を進めてジョウトなどに行くか
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チャンピオンリーグやっていくか
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いいやここはジョウトなどにいくだろう