ポケットモンスター~波動の眼を持つ少年~   作:レイザル

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番外編 約束のデート

 

ヤマブキシティ。

 

 

カントー地方の中心都市の一つであるこの街は、今日も大勢の人々で賑わっていた。

 

 

整然と並ぶ高層ビル。活気に満ちた商店街。行き交う人々の間を、ポケモンたちがトレーナーと一緒に歩いている。

 

 

そんな街の一角で、シンヤは待ち合わせの相手を待っていた。

 

 

「……そろそろかな」

 

 

腕時計を確認する。

 

 

約束の時間までは、まだ少し余裕がある。

 

 

普段の旅装とは違い、今日は少しだけ身なりを整えていた。派手な服装ではないが、いつもより落ち着いた色合いの上着を選び、髪も軽く整えている。

 

 

今日の予定は、ナツメとのデート。

 

 

きっかけは、シンヤのフーディンがテレポートを習得したことだった。

 

 

以前からシンヤは、フーディンの能力をもっと活用できないかと考えていた。特にテレポートは、移動手段としてだけでなく、バトルでも大きな可能性を秘めている。

 

 

しかし、空間を正確に認識し、目的地を定めて移動するという技術は、簡単に身につくものではなかった。

 

 

そこでナツメが、自分のフーディンに指導を頼んでくれたのだ。

 

 

ナツメのフーディンは、長年テレポートを使いこなしてきた実力者。シンヤのフーディンにとって、これ以上ない師匠だった。

 

 

最初は目的地の認識が曖昧で、思った場所に移動できなかったこともある。だが、ナツメのフーディンは根気強く手本を見せ、少しずつその感覚を伝えてくれた。

 

 

その結果、シンヤのフーディンは自力でテレポートを成功させるまでに成長した。

 

 

その指導の機会を作ってくれたナツメに、改めてお礼をしたい。

 

 

そう考えたシンヤが誘ったのが、今日のデートだった。

 

「待たせたわね」

 

 

不意に聞こえた声。

 

 

振り向くと、そこにはナツメが立っていた。

 

 

普段のジムリーダーとしての服装とは違い、今日は落ち着いた私服姿。長い黒髪を整え、控えめながらも上品な装いをしている。

 

 

「いや、俺も今来たところだよ」

 

 

「そう。ならよかった」

 

 

ナツメはシンヤの顔を見て、少しだけ目を細めた。

 

 

「……今日はいつもと雰囲気が違うわね」

 

 

「そうかな?」

 

 

「ええ。ちゃんとお洒落をしてきたのね」

 

 

「デートだからね。さすがに普段の旅装というわけにもいかないだろ」

 

 

「ふふ。そういうところは律儀なのね」

 

 

ナツメはどこか嬉しそうに微笑んだ。

 

 

「それじゃあ、行きましょうか」

 

 

「案内をお願いするよ」

 

 

「任せて。ここは私の街だもの」

 

 

そう言って、ナツメは自然な仕草でシンヤの手を取った。

 

 

「今日は私が案内してあげる」

 

 

「頼もしいな」

 

 

「当然よ」

 

 

そのまま二人は歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ヤマブキの街を歩いて

 

 

「まずは、こっちの通りに行きましょう」

 

 

ナツメが案内したのは、大通りから少し外れた商店街だった。

 

 

人通りは多いものの、中心街ほど混雑していない。小さな雑貨屋や洋服店、喫茶店などが並び、落ち着いた雰囲気が漂っている。

 

 

「こっちは初めて来たな」

 

 

「そうでしょうね。観光客は大通りの方に行くことが多いから」

 

 

「ナツメはよく来るの?」

 

「ええ。買い物をするときは、こちらの方が落ち着いていて好きなの」

 

 

ナツメは迷うことなく道を進んでいく。

 

 

「あのお店は紅茶の茶葉が豊富なの。向こうの本屋は専門書が多くて、少し珍しい本も置いてあるわ」

 

 

「詳しいな」

 

 

「住んでいる街だもの。お気に入りのお店くらいあるわ」

 

 

「なるほど。今日はナツメの行きつけを巡る日でもあるわけだ」

 

 

「そういうこと。せっかく私のホームでデートをするのだから、楽しんでもらわないとね」

 

 

少し得意げな表情を見せるナツメ。

 

 

普段、ジムリーダーとして接しているときとは違う一面だった。

 

 

シンヤがそれを眺めていると、ナツメが小さく首を傾げた。

 

 

「何かしら?」

 

 

「いや。こうしていると、ナツメも普通に街を楽しむ女の子なんだなと思って」

 

 

「……それはどういう意味?」

 

 

「普段はジムリーダーとしての姿を見ることが多いからさ」

 

 

「ふふ。そうね。今日はジムリーダーとしてではなく、一人の女の子として来ているつもりよ」

 

 

「それなら、俺も一人のトレーナーとしてじゃなく、ただのシンヤとして楽しませてもらうよ」

 

 

「ええ。そうしてちょうだい」

 

 

二人は顔を見合わせ、穏やかに笑った。

 

 

その後、ナツメが足を止めたのは、小さなアクセサリーショップだった。

 

 

「少し見てもいいかしら?」

 

 

「もちろん」

 

 

店内には、髪飾りやブレスレット、ネックレスなどが並んでいる。

 

 

ナツメは商品を眺めながら、いくつか手に取って確かめていた。

 

 

やがて、星を模した小さな髪飾りに目を留める。

 

 

「これ……」

 

 

銀色の縁取りに、小さな青い石が埋め込まれた星形の髪飾りだった。

 

 

ナツメはそれを手に取り、自分の髪にそっと当ててみる。

 

 

「どうかしら?」

 

 

「似合っていると思うよ」

 

 

「本当に?」

 

 

「ああ。落ち着いた色合いだし、ナツメの髪にもよく映えている」

 

 

「……そう」

 

 

ナツメは少しだけ視線を逸らした。

 

 

そして、髪飾りを持ったまま店員のところへ向かう。

 

 

「これをお願いします」

 

 

会計を済ませると、店を出る前に髪飾りを身につけた。

 

 

「どう?」

 

 

「うん。やっぱり似合っている」

 

 

「ありがとう。せっかくだから、今日はこれをつけていくわ」

 

 

ナツメは髪飾りにそっと触れた。

 

 

その表情は、普段よりも少しだけ柔らかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆二人だけの時間

 

 

昼を過ぎた頃、二人は商店街の奥にある喫茶店に入った。

 

 

窓際の席に向かい合って座り、それぞれ飲み物を注文する。

 

 

ナツメは紅茶。シンヤはコーヒーだった。

 

 

「このお店もお気に入りなのか?」

 

 

「ええ。静かで落ち着けるでしょう?」

 

 

「確かに。街の中心部にいることを忘れそうだ」

 

 

「人が多い場所も嫌いではないけれど、こういう場所の方が好きなの」

 

 

運ばれてきた紅茶を、ナツメは丁寧に口へ運ぶ。

 

 

「本を読んだり、紅茶を飲んだり。家でゆっくり過ごす時間も好きよ」

 

 

「意外だな。もっと外に出ているイメージがあった」

 

 

「ジムの仕事があるから、そう見えるのかもしれないわね。でも、休日まで忙しく動き回りたいわけではないの」

 

 

「家で過ごす時間も大切にしているんだな」

 

 

「ええ。好きな本を読んで、気に入った茶葉を選んで、お花の手入れをして……そういう時間が好きなの」

 

 

「花も育てているのか」

 

 

「大げさなものではないわ。部屋に飾る花を少しだけね」

 

 

「いいと思うよ。ナツメらしい」

 

 

「私らしい?」

 

 

「落ち着いていて、細かいところまで気を配っている感じがする」

 

 

「……あなたは、よく人を見ているのね」

 

 

「トレーナーだからね。ポケモンだけじゃなく、人を見ることも大切だと思っているよ」

 

 

「ふふ。そういうところも、あなたらしいわ」

 

 

ナツメはカップを置き、窓の外へ視線を向けた。

 

 

「こうして誰かとゆっくりお茶を飲むのも、久しぶりかもしれないわ」

 

 

「ジムの仕事が忙しい?」

 

 

「そうね。挑戦者の相手もあるし、ジムの運営もある。気づけば一日が終わっていることも多いわ」

 

 

「今日は時間を作ってくれてありがとう」

 

 

「お礼を言うのはこちらよ」

 

 

ナツメはシンヤに視線を戻す。

 

 

「こうして誰かと一緒に出掛けるのは久しぶりだもの」

 

 

「楽しんでもらえているならよかった」

 

 

「ええ。とても」

 

 

その言葉に、シンヤは少し照れくさそうに笑った。

 

 

「……ナツメにそう言われると、誘ってよかったと思うよ」

 

 

「あら。照れているの?」

 

 

「それはまあ、相手によるかな」

 

 

「相手による?」

 

 

「誰とでもこういう時間を過ごしたいわけじゃないからね」

 

 

ナツメは一瞬だけ目を丸くし、それから口元を緩めた。

 

 

「そう。なら、今日は特別な時間ということね」

 

 

「そういうこと」

 

 

「ふふ。覚えておくわ」

 

 

紅茶の香りが漂う店内で、二人はしばらく他愛のない話を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆もう少し一緒に

 

 

喫茶店を出た二人は、近くの公園へ向かった。

 

 

大きな木々に囲まれた公園は、街の喧騒から少し離れた静かな場所だった。

 

 

ベンチに腰掛け、二人で並んで景色を眺める。

 

 

「今日は楽しかったわ」

 

 

「それならよかった」

 

 

「あなたは?」

 

 

「俺も楽しいよ。ナツメの知らなかった一面も見られたし」

 

 

「知らなかった一面?」

 

 

「家で本を読んだり、花の手入れをしたり。そういう話を聞けたのは新鮮だった」

 

 

「ジムにいるときの私とは違うでしょう?」

 

 

「違うけど、どちらもナツメだろ」

 

 

「……そうね」

 

 

ナツメは小さく頷いた。

 

 

「あなたは、私のことをどう見ているの?」

 

 

「どうって?」

 

 

「ジムリーダーとしてではなく、一人の人間として」

 

 

少しだけ真剣な声だった。

 

 

シンヤはすぐには答えず、少し考える。

 

 

「真面目で、責任感が強くて、ポケモンのことを大切にしている人」

 

 

「それだけ?」

 

 

「それに、思っていたよりもよく笑う人だと思った」

 

 

「……そうかしら」

 

 

「今日は何度も笑っていたよ」

 

 

「あなたと一緒にいたからかもしれないわね」

 

 

ナツメはそう言って、シンヤの方へ少し身体を向けた。

 

 

「私は、あなたのことをもっと知りたいと思っているわ」

 

 

「俺のことを?」

 

 

「ええ。トレーナーとしてのあなたは、これまでにも見てきた。でも、それ以外のあなたについては、まだ知らないことが多いもの」

 

 

「それは俺も同じだよ」

 

 

「なら、これから少しずつ知っていけばいいわね」

 

 

「そうだな」

 

 

短い沈黙が流れる。

 

 

ナツメは少しだけ迷うように視線を落とし、それから口を開いた。

 

 

「……この後、もし時間があるなら、私の家に来ない?」

 

 

「ナツメの家に?」

 

 

「ええ。今日はもう少し一緒にいたいの」

 

 

いつもより控えめな声だった。

 

 

シンヤはその言葉を受け止め、穏やかに微笑む。

 

 

「それなら、お邪魔させてもらおうかな」

 

 

「ありがとう。お茶くらいなら用意できるわ」

 

 

「さっきも飲んだばかりだけど?」

 

 

「私の家で飲む紅茶は、また別よ」

 

 

「それは楽しみだ」

 

 

ナツメは嬉しそうに立ち上がる。

 

 

二人は並んで公園を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ナツメの家

 

 

ナツメの自宅は、ヤマブキシティの中心部から少し離れた、静かな住宅街にあった。

 

 

落ち着いた外観の家で、周囲には手入れされた植木が並んでいる。

 

 

「ここが私の家よ」

 

 

「落ち着いた雰囲気の家だな」

 

 

「ありがとう。あまり飾り立てるのは好きではないの」

 

 

玄関の扉を開け、ナツメが先に入る。

 

 

「どうぞ。上がって」

 

 

「お邪魔します」

 

 

シンヤは靴を揃えて家に上がった。

 

 

室内も外観と同じく、落ち着いた雰囲気だった。

 

 

余計な装飾は少ないが、家具や小物の一つ一つに統一感がある。棚には専門書や小説が並び、窓辺には小さな花が飾られていた。

 

 

「本当に本が多いんだな」

 

 

「好きなの。仕事に関係する本もあるけれど、普通の小説も読むわ」

 

 

「どんな本を読むんだ?」

 

 

「推理小説や、少し不思議な物語が多いかしら」

 

 

「意外と幅広いんだな」

 

 

「読んでみたい本があれば貸してあげるわよ」

 

 

「それはありがたいな」

 

 

ナツメは上着を脱いでハンガーに掛ける。

 

 

その後、シンヤにもくつろぐよう促し、自分はキッチンへ向かった。

 

 

「紅茶を淹れるわね。少し待っていて」

 

 

「手伝おうか?」

 

 

「大丈夫。ここは私の家だから」

 

 

そう言って、ナツメは棚から茶葉の入った缶を取り出した。

 

 

いくつかの缶を見比べ、今日はどれにしようかと考えている。

 

 

「今日はこれにしましょう」

 

 

選んだ茶葉をティーポットに入れ、湯を注ぐ。

 

 

その手つきは慣れたものだった。

 

 

お湯を注いでいる間に、ナツメは窓辺の花に目を向ける。花瓶の水を確かめ、少し傷んだ葉を取り除いていく。

 

 

「いつもそうやって手入れしているのか?」

 

 

「ええ。毎日少しずつね。大きなことをする必要はないわ。気づいたときに手を入れてあげればいいの」

 

 

「ポケモンの世話にも通じるところがあるな」

 

 

「そうね。よく見て、変化に気づいてあげることが大切なの」

 

 

ナツメは花の向きを整え、満足そうに頷いた。

 

 

やがて紅茶ができあがり、二人はテーブルについた。

 

 

「どうぞ」

 

 

「ありがとう」

 

 

シンヤは一口飲み、香りを楽しむ。

 

 

「美味しいな」

 

 

「よかった。今日は少し香りの強い茶葉にしてみたの」

 

 

「さっきの店で飲んだものとは、また違う味だ」

 

 

「茶葉によって香りも味も変わるでしょう? そういう違いを楽しむのも好きなの」

 

 

ナツメは自分のカップを手に取り、ゆっくりと紅茶を味わった。

 

 

外で見せていた表情とはまた違う、穏やかな時間。

 

 

シンヤは、彼女がこの家でどんな日々を過ごしているのか、少しだけ分かった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆フーディン同士の再会

 

 

そのときだった。

 

 

部屋の一角で、空間がわずかに揺らいだ。

 

 

次の瞬間、二体のフーディンが姿を現す。

 

 

一体はナツメのフーディン。

 

 

そして、もう一体はシンヤのフーディンだった。

 

 

「おや。来ていたのか」

 

 

シンヤは自分のフーディンに目を向ける。

 

 

フーディンは穏やかに頷き、ナツメのフーディンへ視線を向けた。

 

 

ナツメも二体の様子を見て、微笑む。

 

 

「どうやら、二人とも元気そうね」

 

 

ナツメのフーディンが、シンヤのフーディンへと近づいた。

 

 

シンヤのフーディンも、それに応えるようにスプーンを軽く掲げる。

 

 

二体の間に、穏やかな空気が流れた。

 

 

「そういえば、二人がこうして顔を合わせるのも久しぶりだな」

 

 

「ええ。指導を終えてからは、なかなか会う機会がなかったものね」

 

 

シンヤは自分のフーディンに視線を向けた。

 

 

「改めて、ありがとうな。テレポートを使えるようになったのは、お前が頑張ったからだ」

 

 

フーディンは静かに頷く。

 

 

「それから、ナツメのフーディンにもお礼を言わないとな」

 

 

シンヤはナツメのフーディンへ向き直った。

 

 

「うちのフーディンに、テレポートを教えてくれてありがとう。最初はなかなか上手くいかなかったらしいけど、根気強く付き合ってくれたんだろ?」

 

 

ナツメのフーディンは、穏やかな表情で頷いた。

 

 

「ナツメにも感謝しているよ。指導を頼んでくれたおかげで、うちのフーディンも新しい力を身につけられた」

 

 

「いいえ。私のフーディンも、教えることを楽しんでいたわ」

 

 

ナツメは二体を見比べた。

 

 

「最初は、あなたのフーディンも苦労していたみたいね」

 

 

「そうなんだ。目的地を正確にイメージすることや、移動先の空間を把握することが難しかったらしい」

 

 

「テレポートは、ただ瞬間移動すればいいという技ではないもの。移動先を正確に認識し、そこへ意識を集中させる必要があるわ」

 

 

「それを実際に見せてくれたのが、ナツメのフーディンだったんだ」

 

 

シンヤのフーディンが、ナツメのフーディンへ向けて一度深く頭を下げた。

 

 

それに応えるように、ナツメのフーディンも軽く頷く。

 

 

「ふふ。お互いに良い経験になったみたいね」

 

 

「ああ。おかげで、これからの戦術の幅も広がりそうだ」

 

 

シンヤは自分のフーディンに視線を向ける。

 

 

「せっかくだ。今のテレポートを見せてくれないか?」

 

 

フーディンは頷くと、部屋の少し離れた場所へ視線を向けた。

 

 

次の瞬間、姿が消える。

 

 

そして、シンヤが目を向けていた場所に、何事もなかったかのように現れた。

 

 

「うん。安定しているな」

 

 

シンヤは満足そうに頷いた。

 

 

ナツメも、その様子を見て目を細める。

 

 

「見事ね。私のフーディンも安心したと思うわ」

 

 

ナツメのフーディンは、どこか誇らしげにスプーンを動かした。

 

 

「本当にありがとう。お前のおかげだ」

 

 

シンヤのフーディンは、師匠であるフーディンへもう一度頭を下げた。

 

 

それを見たナツメは、柔らかく微笑む。

 

 

「良かったわね。あなたのフーディンが、こうして成長した姿を見られて」

 

 

「うん。俺も嬉しいよ」

 

 

二体のフーディンは、その後もしばらく互いに念話を交わしているようだった。

 

 

シンヤとナツメは、その様子を邪魔しないよう、静かに見守った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆また約束を

 

 

しばらくして、フーディンたちはそれぞれの場所へ戻っていった。

 

 

シンヤは改めてナツメに向き直る。

 

 

「今日は本当にありがとう」

 

 

「こちらこそ。私も楽しかったわ」

 

 

「街を案内してもらえたし、ナツメの家にも招いてもらえた。思っていた以上に充実した一日だったよ」

 

 

「そう言ってもらえると嬉しいわ」

 

 

ナツメは空になったカップを片付けながら、ふと窓の外に目を向けた。

 

 

夕暮れが近づき、街並みが柔らかな色に染まり始めている。

 

 

「もうこんな時間なのね」

 

 

「そろそろ帰った方がよさそうだな」

 

 

「ええ。でも……」

 

 

ナツメは少しだけ言葉を止めた。

 

 

「また、こうして出かけてもいいかしら?」

 

 

「もちろん。俺もまたナツメに会いたいよ」

 

 

その答えに、ナツメは嬉しそうに微笑んだ。

 

 

「約束よ」

 

 

「ああ。約束だ」

 

 

玄関まで見送りに来たナツメは、今日買った星形の髪飾りにそっと触れた。

 

 

「今日はありがとう。これも、大切にするわ」

 

 

「気に入ってもらえたならよかった」

 

 

「ええ。今日のことを思い出せそうだから」

 

 

シンヤは少し照れくさそうに笑う。

 

 

「それじゃあ、また」

 

 

「ええ。また会いましょう」

 

 

扉が閉まる。

 

 

ナツメはしばらくその場に立ち、今日一日のことを思い返していた。

 

 

街を歩き、買い物をして、お茶を飲み、自分の家で過ごした時間。

 

 

どれも特別な出来事ではない。

 

 

けれど、隣にいた相手がシンヤだったからこそ、いつもとは違う一日になった。

 

 

「……楽しかったわね」

 

 

ナツメは髪飾りに触れ、静かに微笑む。

 

 

 

 

 

 

 

一方、帰り道を歩くシンヤも、今日のことを思い返していた。

 

 

ナツメの新しい一面を知ることができた。

 

 

彼女の好きな場所や、家での過ごし方も知ることができた。

 

 

そして、フーディン同士が再会する姿も見ることができた。

 

 

「誘ってよかったな」

 

 

そう呟くシンヤの表情は、自然と柔らかくなっていた。

 

 

次に会うときは、どんな時間を過ごすことになるのだろう。

 

 

そんなことを考えながら、シンヤは夕暮れのヤマブキシティを歩いていった。

 




ヒロイン候補現在3人の内、2人は同年代。
それに対し、ナツメは17歳設定。そのため2人よりは大人なので結構ドキマギしてるシンヤ君である

原作ではないチャンピオンリーグをするべきか、それともその後の話を進めてジョウトなどに行くか

  • チャンピオンリーグやっていくか
  • いいやここはジョウトなどにいくだろう
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