ポケットモンスター~波動の眼を持つ少年~   作:レイザル

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『ミュウツーの逆襲』編
番外編「業とは――古の巻物に記された技術」


 

◆ 思いがけない来客

 

 

――マサラタウン、シンヤの実家。

 

 

セキエイリーグが終わってから、しばらく経ったある日のこと。

 

 

「……ふぅ」

 

 

俺は、自宅のテラスで紅茶を飲みながら、のんびりと過ごしていた。

 

 

庭の向こうでは、ポケモンたちが思い思いの時間を過ごしている。

 

 

大きな木の下で昼寝をしているカビゴン。

 

 

池で泳いでいるシャワーズ。

 

 

そして、少し離れた訓練場では、リザードンが一人で身体を動かしていた。

 

 

「リザァ……!」

 

 

軽く翼を広げ、地面を蹴る。

 

 

その動きは、いつもの訓練と変わらない。

 

 

ただし、俺には分かる。

 

 

今のリザードンは、身体の使い方を細かく確認しているのだ。

 

 

(……相変わらず熱心だな)

 

 

俺は、小さく笑った。

 

 

「シンヤ」

 

 

隣から声がかかる。

 

 

「ん?」

 

 

「おかわり、いる?」

 

 

レンがティーポットを持ちながら尋ねてきた。

 

 

「ああ、頼む」

 

 

「はい、どうぞ♪」

 

 

「ありがとう」

 

 

そんな穏やかな時間を過ごしていると。

 

 

「シンヤー!」

 

 

屋敷の方から、母さんの声が聞こえてきた。

 

 

「お客様よー!」

 

 

「……客?」

 

 

俺は、首を傾げた。

 

 

「誰だろうな」

 

 

「さあ?」

 

 

レンも、不思議そうに首を傾げる。

 

 

やがて、母さんに案内されて二人の人物が姿を現した。

 

 

一人は、忍者装束を身に纏った男性。

 

 

鋭い眼差しと、隙のない立ち姿。

 

 

そして、もう一人は、同じく忍者装束を着た少女だった。

 

 

「……お?」

 

 

俺は、思わず目を瞬かせた。

 

 

「キョウさん? それに、アンズさんも?」

 

 

「久しいな、シンヤ殿」

 

 

「お久しぶりです、シンヤ殿!」

 

 

セキチクジムのジムリーダー、キョウ。

 

 

そして、その娘であるアンズ。

 

 

二人が、揃って俺の家を訪ねてきたのだった。

 

 

「珍しいですね。わざわざマサラまで」

 

 

「うむ。突然の訪問、失礼する」

 

 

キョウさんは、丁寧に頭を下げた。

 

 

「実は、どうしても確かめたいことがあってな」

 

 

「……確かめたいこと?」

 

 

俺が首を傾げると、キョウさんは真剣な表情で頷いた。

 

 

「セキエイリーグで、そなたのリザードンが見せた技術についてだ」

 

 

その言葉を聞いた瞬間。

 

 

(……ああ)

 

 

俺は、何となく察した。

 

 

「……早業と力業のことですか?」

 

 

「その通りだ」

 

 

キョウさんの目が、鋭く光った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ セキエイリーグで見せた二つの業

 

 

「早業……そして、力業」

 

 

キョウさんは、ゆっくりと二つの言葉を口にした。

 

 

「リーグの映像を見たとき、拙者は己の目を疑った」

 

 

「……そんなにですか?」

 

 

「当然だ」

 

 

キョウさんは、真剣な表情で続ける。

 

 

「あの技術は、拙者の家に伝わる古い巻物にも記されていたものだからな」

 

 

「……やっぱり」

 

 

俺は、頷いた。

 

 

以前、グンジョウシティで起こった一件。

 

 

その際、俺はキョウさんから報酬として、一つの古い巻物を受け取っていた。

 

 

巻物には、古い文字と図解が記されていた。

 

 

その内容こそが。

 

 

――早業。

 

 

――力業。

 

 

二つの特殊な技術だった。

 

 

「拙者も、あの巻物を何度も読み解こうとした」

 

 

キョウさんは、静かに語る。

 

 

「しかし、どうしても理解できなかったのだ」

 

 

「……そうだったんですね」

 

 

「うむ」

 

 

キョウさんは、深く頷いた。

 

 

「古い文字は、ある程度読めた。だが、肝心の内容が分からぬ」

 

 

「……内容、ですか」

 

 

「そうだ」

 

 

キョウさんは、腕を組んだ。

 

 

「技の威力を高める方法と、技の発動を早める方法。そのようなことが書かれているのは

理解できた」

 

 

「……はい」

 

 

「だが、どうすればそれが実現するのか、まるで分からなかった」

 

 

そこで、アンズが口を開いた。

 

 

「父上は、何年も研究していたんです!」

 

 

「……何年も?」

 

 

「はい!」

 

 

アンズは、力強く頷いた。

 

 

「古い文献を調べたり、忍術の資料と照らし合わせたり……それでも、どうしても分からなかったんです」

 

 

「……なるほど」

 

 

俺は、静かに頷いた。

 

 

確かに、あの巻物は難解だった。

 

 

単純に文字を読めば理解できるようなものではない。

 

 

それに。

 

 

(……あれ、説明がかなり省略されてたからな)

 

 

書かれているのは、技術の断片。

 

 

完成された手順書ではない。

 

 

「……だからこそ、聞きたいのだ」

 

 

キョウさんは、真っ直ぐに俺を見つめた。

 

 

「シンヤ殿」

 

 

「はい」

 

 

「そなたは、何故あの巻物を解読できた?」

 

 

「…………」

 

 

「拙者が長年理解できなかったものを、そなたは短期間で実戦に取り入れた」

 

 

キョウさんの声には、驚きと純粋な探究心が込められていた。

 

 

「一体、どのようにして?」

 

 

俺は、少しだけ考えたあと。

 

 

「……そうですね」

 

 

と、口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ 解読の方法

 

 

「まず、最初に言っておきますけど」

 

 

俺は、キョウさんとアンズを見た。

 

 

「俺も、あの巻物を読んですぐに理解できたわけじゃありません」

 

 

「……ほう?」

 

 

「むしろ、最初は何が書いてあるのか、さっぱりでした」

 

 

「……そうなのか?」

 

 

「はい」

 

 

俺は、苦笑した。

 

 

「古い言葉も多かったですし、図解もかなり抽象的でしたから」

 

 

「……確かに」

 

 

キョウさんが頷く。

 

 

「それで、どうしたのですか?」

 

 

アンズが、身を乗り出して尋ねてきた。

 

 

「他の資料を探したんだ」

 

 

「……他の資料?」

 

 

「ああ」

 

 

俺は頷いた。

 

 

「古いポケモンの育成記録とか、昔の戦闘技術に関する文献とか。そういうものを片っ端から調べた」

 

 

「……なるほど」

 

 

キョウさんが、興味深そうに目を細める。

 

 

「巻物そのものではなく、周辺の資料から意味を探ったというわけか」

 

 

「そうです」

 

 

俺は、頷いた。

 

 

「同じような言葉が使われている文献を見つけて、意味を比較したりしました」

 

 

「……ふむ」

 

 

「それに、あの巻物に書かれていた内容って、普通の技の使い方とは少し違うんですよ」

 

 

「……違う?」

 

 

「はい」

 

 

俺は、テーブルの上に置いてあった紙を取り出した。

 

 

そして、簡単な図を描き始める。

 

 

「普通、ポケモンが技を使うときって、技の威力や速度は、そのポケモン自身の能力や熟練度に左右されますよね?」

 

 

「うむ」

 

 

「でも、早業と力業は、技そのものを別の方向へ調整する技術なんです」

 

 

「……別の方向へ?」

 

 

俺は、二つの言葉を書いた。

 

 

早業――発動と動作の迅速化。

 

 

力業――威力を引き出すための集中と増幅。

 

 

「例えば、早業」

 

 

俺は、最初の文字を指差した。

 

 

「これは、単純に素早く動くだけじゃありません」

 

 

「……ほう?」

 

 

「技を発動するまでの動作や、エネルギーを扱う過程を調整することで、通常よりも早く

技を繰り出すんです」

 

 

「……なるほど」

 

 

「ただし、その分、技に込められる力は小さくなることがあります」

 

 

「……つまり、威力を犠牲にして速度を得るわけか」

 

 

「そういうことです」

 

 

俺は頷いた。

 

 

「そして、力業」

 

 

今度は、もう一つの文字を指差す。

 

 

「こっちは逆です」

 

 

「……逆?」

 

 

「技を発動するまでに、普段よりも多くの力を集中させる」

 

 

「……ふむ」

 

 

「その結果、技の威力を高めることができる。ただし、発動までに時間がかかったり、動作が大きくなったりするんです」

 

 

「……なるほど」

 

 

キョウさんは、腕を組みながら考え込んだ。

 

 

「つまり、どちらも技の性質を調整する技術ということか」

 

 

「はい」

 

 

俺は頷いた。

 

 

「ただ、これはあくまで、俺が文献を比較して立てた解釈です」

 

 

「……解釈?」

 

 

「巻物に、ここまで詳しく書かれていたわけじゃありませんから」

 

 

「……なるほど」

 

 

キョウさんは、深く頷いた。

 

 

「だからこそ、他の資料が必要だったのだな」

 

 

「そうです」

 

 

俺は、軽く笑った。

 

 

「それから、リザードンと何度も試しました」

 

 

「……試行錯誤か」

 

 

「はい」

 

 

「……どれほど?」

 

 

アンズが尋ねる。

 

 

俺は、少し考えた。

 

 

「……正直、数えてないな」

 

 

「……え?」

 

 

「失敗した回数も、かなり多かったから」

 

 

「……そんなに?」

 

 

「ああ」

 

 

俺は、苦笑した。

 

 

「最初は、早く技を出そうとして威力が落ちすぎたり、力を込めすぎて発動が遅くなったり……」

 

 

「……なるほど」

 

 

「でも、少しずつ調整していった結果、ようやく形になったんだ」

 

 

「…………」

 

 

キョウさんは、しばらく黙っていた。

 

 

そして。

 

 

「……見事だ」

 

 

静かに、そう呟いた。

 

 

「……え?」

 

 

「拙者は、あの巻物を解読することばかり考えていた」

 

 

キョウさんは、少しだけ苦笑した。

 

 

「しかし、そなたは巻物を手掛かりとして、別の資料を調べ、実際に試した」

 

 

「……はい」

 

 

「なるほど。拙者が理解できなかったのも、無理はないのかもしれぬ」

 

 

「……いや、そんなことは」

 

 

俺が言いかけると、キョウさんは首を横に振った。

 

 

「謙遜する必要はない」

 

 

その表情には、純粋な感心が浮かんでいた。

 

 

「そなたは、古い技術を現代に蘇らせたのだ」

 

 

「……そこまで大げさなものじゃないですよ」

 

 

俺は、苦笑した。

 

 

だが。

 

 

キョウさんは、真剣な表情のままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ 早業と力業の実演

 

 

「……シンヤ殿」

 

 

「はい?」

 

 

「一つ、お願いがある」

 

 

キョウさんは、静かに頭を下げた。

 

 

「可能であれば、その技術を実際に見せてもらえぬだろうか?」

 

 

「……実演、ですか?」

 

 

「うむ」

 

 

アンズも、期待に満ちた目でこちらを見つめていた。

 

 

「私も、ぜひ見てみたいです!」

 

 

「……そうですね」

 

 

俺は、少し考えたあと。

 

 

「分かりました」

 

 

と、頷いた。

 

 

「ただし、先に言っておきます」

 

 

「……何だ?」

 

 

「今のところ、早業と力業を使えるのは、リザードンだけです」

 

 

「……リザードンだけ?」

 

 

「はい」

 

 

俺は、頷いた。

 

 

「他のポケモンには、まだ習得させられていません」

 

 

「……何故だ?」

 

 

「……そこが難しいところなんですよ」

 

 

俺は、苦笑した。

 

 

「早業と力業は、技の名前を変えたり、単純に力を込めたりするだけで使えるものじゃありません」

 

 

「……ふむ」

 

 

「技を使うときの感覚や、エネルギーの扱い方を細かく調整する必要があるんです」

 

 

「……なるほど」

 

 

「それに、ポケモンによって身体の構造も違いますし、技の発動方法も違いますから」

 

 

「……確かに」

 

 

キョウさんは、頷いた。

 

 

「つまり、一匹が習得したからといって、他のポケモンにも同じ方法が通用するとは限らないわけか」

 

 

「そうです」

 

 

俺は、頷いた。

 

 

「リザードンは、俺と長い間一緒に訓練してきた相棒ですからね」

 

 

「……ふむ」

 

 

「お互いに、どういう感覚で技を使っているのか、ある程度分かるんです」

 

 

「……なるほど」

 

 

「だから、何度も試行錯誤できた」

 

 

俺は、訓練場の方へ視線を向けた。

 

 

「でも、他のポケモンだと、まだそこまで調整できていません」

 

 

「……そういうことか」

 

 

キョウさんは、納得したように頷いた。

 

 

「では、仮に拙者たちがそなたから教えを受けたとしても……」

 

 

「……正直、すぐに理解するのは難しいと思います」

 

 

俺は、率直に答えた。

 

 

「俺自身も、完全に理論化できているわけじゃありませんから」

 

 

「……ほう?」

 

 

「リザードンと一緒に試して、感覚を掴んだ部分が大きいんです」

 

 

「……なるほど」

 

 

「だから、俺が説明した通りにやれば使える、というものではないんですよ」

 

 

「…………」

 

 

キョウさんは、しばらく考え込んだ。

 

 

そして。

 

 

「……実に興味深い」

 

 

と、呟いた。

 

 

「技術として成立しているが、まだ体系化されていないというわけか」

 

 

「……そうですね」

 

 

俺は頷いた。

 

 

「今のところは、そんな感じです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ リザードンの業

 

 

俺たちは、屋敷の訓練場へ移動した。

 

 

「リザードン!」

 

 

俺が声をかけると、訓練していたリザードンがこちらへ振り向いた。

 

 

「リザァ!」

 

 

「ちょっと、見せてほしいものがあるんだ」

 

 

「リザ?」

 

 

俺は、キョウさんとアンズを紹介した。

 

 

「セキチクジムのキョウさんとアンズだ。リーグで使った早業と力業を見たいんだってさ」

 

 

「リザァ!」

 

 

リザードンは、力強く頷いた。

 

 

「……では、まず早業から」

 

 

俺は、訓練場の奥に設置された標的を指差した。

 

 

「リザードン。鋭く早く―――『かえんほうしゃ』!」

 

 

「リザァッ!」

 

 

その瞬間。

 

 

リザードンが、素早く息を吸い込んだ。

 

 

そして。

 

 

 

 

ボウッ!!

 

 

 

 

炎が、一直線に放たれた。

 

 

通常の『かえんほうしゃ』よりも、明らかに発動が早い。

 

 

「……っ!?」

 

 

アンズが、目を見開いた。

 

 

「は、速い……!」

 

 

「……むう」

 

 

キョウさんも、驚いた表情を浮かべている。

 

 

炎は標的へ命中し、表面を焼いた。

 

 

だが、その威力は通常よりも控えめだった。

 

 

「……今のが早業です」

 

 

俺は、説明した。

 

 

「発動までの時間を短くする代わりに、威力を少し抑えています」

 

 

「……なるほど」

 

 

キョウさんは、真剣な表情で頷いた。

 

 

「確かに、通常の技とは違う」

 

 

「……次は力業です」

 

 

俺は、リザードンへ向き直った。

 

 

「リザードン。力強く『かえんほうしゃ』!」

 

 

「リザァァァ……!」

 

 

リザードンが、大きく息を吸い込む。

 

 

その口元に、炎が集まり始めた。

 

 

 

ゴォォォ……!

 

 

 

空気が震える。

 

 

周囲の温度が、じわりと上昇した。

 

 

そして。

 

 

「リザァァァァァッ!!」

 

 

 

ゴオオオオオオッ!!

 

 

 

凄まじい炎が、標的へ向かって放たれた。

 

 

先ほどとは、比較にならないほどの火力。

 

 

標的は、一瞬で炎に包まれた。

 

 

 

ドォォォンッ!!

 

 

 

「……っ!?」

 

 

アンズが、思わず後ずさる。

 

 

「す、凄い……!」

 

 

キョウさんも、驚きを隠せない様子だった。

 

 

「……これほどとは……」

 

 

俺は、リザードンへ声をかけた。

 

 

「よし、ありがとう」

 

 

「リザァ!」

 

 

リザードンは、満足そうに頷いた。

 

 

俺は、二人へ向き直る。

 

 

「……こんな感じです」

 

 

「…………」

 

 

キョウさんは、しばらく言葉を失っていた。

 

 

そして。

 

 

「……なるほど」

 

 

と、静かに呟いた。

 

 

「これが、古の巻物に記されていた業か」

 

 

「はい」

 

 

俺は、頷いた。

 

 

「ただし、まだ完成形とは言えません」

 

 

「……何?」

 

 

「早業も力業も、使い方によっては隙が生まれますから」

 

 

「……ふむ」

 

 

「早業は、威力が落ちる。力業は、発動までに時間がかかる」

 

 

「……なるほど」

 

 

「だから、使いどころを間違えると、逆に不利になります」

 

 

「……確かに」

 

 

キョウさんは、深く頷いた。

 

 

「力業を使おうとしている間に、相手に攻撃される可能性もある」

 

 

「そうです」

 

 

俺は頷いた。

 

 

「逆に、早業なら相手の隙を突けるけど、決定打にならないこともあります」

 

 

「……つまり」

 

 

キョウさんは、静かに目を細めた。

 

 

「重要なのは、状況に応じた使い分けということか」

 

 

「はい」

 

 

俺は、笑った。

 

 

「それが、一番大事だと思います」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ 忍の心得と、古の技術

 

 

実演を終えたあと。

 

 

俺たちは、再びテラスへ戻った。

 

 

「……実に勉強になった」

 

 

キョウさんは、静かに頭を下げた。

 

 

「礼を言う、シンヤ殿」

 

 

「いえ、こちらこそ」

 

 

俺は、軽く笑った。

 

 

「元々、キョウさんから貰った巻物がきっかけですから」

 

 

「……そうだったな」

 

 

キョウさんは、少しだけ笑った。

 

 

「グンジョウシティの一件で、そなたに渡した巻物が、まさかこのような形で蘇るとは」

 

 

「……俺も、最初は思ってませんでしたよ」

 

 

「ふっ」

 

 

キョウさんは、楽しそうに笑った。

 

 

「だが、これで分かった」

 

 

「……何がですか?」

 

 

「技術というものは、ただ受け継ぐだけでは意味がないということだ」

 

 

「……なるほど」

 

 

「理解し、試し、己のものとして初めて価値を持つ」

 

 

キョウさんは、静かに頷いた。

 

 

「それは、忍術も同じだ」

 

 

「……確かに」

 

 

俺も、頷いた。

 

 

「……シンヤ殿」

 

 

キョウさんが、真剣な表情で言った。

 

 

「一つ、頼みがある」

 

 

「……何でしょう?」

 

 

「もし、今後そなたが早業と力業をさらに研究し、他のポケモンでも使えるようになったなら……」

 

 

「……はい」

 

 

「そのときは、拙者にも教えてもらえぬだろうか?」

 

 

俺は、少しだけ考えたあと。

 

 

「……もちろんです」

 

 

と、答えた。

 

 

「ただし、いつになるか分かりませんよ?」

 

 

「構わぬ」

 

 

キョウさんは、力強く頷いた。

 

 

「古の技術を理解するには、時間が必要なのだろう」

 

 

「……そうですね」

 

 

「拙者も、改めて文献を調べ直してみるつもりだ」

 

 

「……それがいいと思います」

 

 

俺は、笑った。

 

 

「もしかしたら、俺が見落としていることもあるかもしれませんし」

 

 

「ふっ。そうだな」

 

 

キョウさんは、満足そうに頷いた。

 

 

その横で。

 

 

「……私も!」

 

 

アンズが、勢いよく声を上げた。

 

 

「私も、もっと勉強します!」

 

 

「……アンズ?」

 

 

「父上が長年研究していた技術を、シンヤ殿が使えるようにしたんです!」

 

 

アンズは、真剣な表情で続けた。

 

 

「だったら、私も諦めたくありません!」

 

 

「……なるほど」

 

 

俺は、微笑んだ。

 

 

「いいと思うよ」

 

 

「……はい!」

 

 

アンズは、嬉しそうに頷いた。

 

 

キョウさんも、娘の姿を見て満足そうに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ 業とは

 

 

やがて、キョウさんとアンズは帰ることになった。

 

 

「本日は、世話になった」

 

 

「いえ。またいつでも来てください」

 

 

「うむ」

 

 

キョウさんは、深く頷いた。

 

 

「次に会うときは、拙者も何か新しい発見を持ってこよう」

 

 

「楽しみにしてます」

 

 

「シンヤ殿!」

 

 

アンズが、元気よく声を上げた。

 

 

「次は、ぜひ私とも勝負してください!」

 

 

「……ああ。もちろん」

 

 

「約束ですよ!」

 

 

「分かった」

 

 

二人は、満足そうに笑った。

 

 

そして、屋敷を後にしていった。

 

 

その背中を見送りながら。

 

 

「……ふぅ」

 

 

俺は、小さく息を吐いた。

 

 

「……何だか、思ったより大ごとになったな」

 

 

「ふふっ」

 

 

隣にいたレンが、楽しそうに笑う。

 

 

「でも、よかったじゃない」

 

 

「……何が?」

 

 

「シンヤが頑張って研究したことを、ちゃんと認めてもらえたんだもの」

 

 

「……まあな」

 

 

俺は、少しだけ照れくさくなって笑った。

 

 

「でも、まだまだだよ」

 

 

「……そう?」

 

 

「ああ」

 

 

俺は、訓練場の方へ視線を向けた。

 

 

そこでは、リザードンが再び身体を動かしていた。

 

 

 

早業。

 

 

 

力業。

 

 

 

 

古い巻物に記されていた、二つの技術。

 

 

その可能性は、まだ完全には解明されていない。

 

 

(……今は、リザードンだけ)

 

 

他のポケモンにも応用できるのか。

 

 

そもそも、どこまで技を調整できるのか。

 

 

まだ、分からないことは多い。

 

 

けれど。

 

 

(……だからこそ、面白いんだよな)

 

 

俺は、小さく笑った。

 

 

「……業、か」

 

 

レンが、首を傾げる。

 

 

「……どうしたの?」

 

 

「いや」

 

 

俺は、静かに答えた。

 

 

「技っていうのは、ただ強ければいいわけじゃないんだなって」

 

 

「……ふうん?」

 

 

「速さも、威力も、使うタイミングも。全部含めて、一つの技なんだよ」

 

 

「……なるほどね」

 

 

レンは、微笑んだ。

 

 

「つまり、シンヤとリザードンは、まだまだ強くなれるってこと?」

 

 

「……そういうことだな」

 

 

俺は、笑った。

 

 

「……ふふっ」

 

 

レンも、楽しそうに笑った。

 

 

「じゃあ、これからも楽しみね♪」

 

 

「ああ」

 

 

俺は、頷いた。

 

 

そして、訓練場のリザードンへ視線を向けた。

 

 

「……なあ、リザードン!」

 

 

「リザ?」

 

 

「また、明日も付き合ってくれよ!」

 

 

「リザァァァ!!」

 

 

リザードンが、力強く吠えた。

 

 

その声を聞きながら。

 

 

俺は、静かに笑った。

 

 

古の巻物から蘇った、二つの業。

 

 

その技術が、これからどこまで進化するのか。

 

 

それは、まだ誰にも分からない。

 

 

ただ一つ、確かなことがある。

 

 

――強さとは、決して完成するものではない。

 

 

――学び、試し、磨き続けるものなのだ。

 

 

そして。

 

 

俺とリザードンの挑戦は、これからも続いていく。

 




さて番外編はここまで。次からの話、それはどう進むのか、お楽しみに
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転生したサトシは、波動と絆で最強のポケモンマスターを目指す(作者:kousinn)(原作:ポケットモンスター)

社畜として生涯を終えた男は、前世の記憶とポケモンの知識を持ったまま、サトシとして転生する。波動の力を目覚めさせ、ピカチュウをはじめとする仲間たちと絆を深めながら、各地方を巡る旅へ。未来を知る知識と独自の戦術を武器に、ポケモン図鑑の完成と最強のポケモンマスターを目指す。運命を変える出会いと新たな冒険が、今始まる!▼−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−…


総合評価:119/評価:-.--/連載:3話/更新日時:2026年10月18日(日) 12:00 小説情報

逆行サトシの大冒険(作者:鉄壁拡散)(原作:ポケットモンスター)

サトシとその仲間達はそれぞれの夢に向かって歩みを進めたが、寿命には勝てず一生を終えてしまう。▼だがある日、サトシは気が付くと前世の記憶を持って逆行していた。▼サトシ「俺は今度こそポケモンマスターになるぜ!ピカチュウ、君に決めた!」▼ピカチュウ「ピッカ!」


総合評価:550/評価:8.11/連載:37話/更新日時:2026年11月07日(土) 21:17 小説情報

めざせ、ポケモンマスター!(作者:瓶詰め蜂蜜)(原作:ポケットモンスター)

アニポケのサートシくんに転生した。▼けど、この世界はどうやら前世で見ていたアニポケのものとは違うようで……。▼どうせサートシくんに転生したのなら、全ての種類のポケモンと出会い、ポケモンマスターになる事を目指してもいいよな!▼


総合評価:1091/評価:7.89/連載:31話/更新日時:2026年10月18日(日) 10:03 小説情報

ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド(作者:ガチャガチャクツワムシ)(原作:ポケットモンスター)

サトシと同期の5人目の新人トレーナーとして主人公が旅に出て成長していく物語。▼オリジナルキャラが多めに出る上、原作キャラの強化もしようと考えています。▼生成AI使用して作成してします。


総合評価:191/評価:6.25/連載:156話/更新日時:2026年11月07日(土) 07:00 小説情報

映像機画版携帯獣世界転生物語(作者:こうすけ増田劇場版)(原作:ポケットモンスター)

なんか知らんがアニポケの世界に転生してた。


総合評価:3170/評価:7.47/連載:51話/更新日時:2026年11月08日(日) 18:05 小説情報


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