レンちゃんは作者、英雄伝説で一番好き。空の軌跡から界の軌跡までの
レンちゃんの成長などをマジでよかったのよ
ニビシティのポケモンセンター。
ポケモンたちの回復を終えたシンヤは、ジョーイさんからボールを受け取ると、さっそく待合スペースへ移動した。
「みんな、お疲れ様。今回はずいぶん激しい旅になったな」
ボールから出てきたポケモンたちを見渡す。
ヒトカゲ、ポッポ、コイキング、ニドラン♂、マンキー、キャタピー、ビードル、そしてピカチュウ。
合計八匹。
マサラタウンを出発してから、まだ一日も経過していない。それなのに、すでに八匹ものポケモンと出会い、仲間にしていた。
「改めて数えると、すごいことになってるな……」
シンヤは苦笑した。
もちろん、捕まえたポケモンの数を増やすことだけが目的ではない。
それぞれのポケモンと向き合い、個性や得意なことを知り、信頼関係を築く。それがトレーナーとして大切なことだ。
そして、彼には実家という心強い預け先がある。
「さて、今後の編成を決めようか」
シンヤはバッグからボールを取り出しながら、仲間たちに説明を始めた。
「まず、ポッポとコイキングには一度実家に戻ってもらう。二匹とも大切な仲間だけど、今は新しく加わったポケモンたちを育てたいんだ」
「ポッポー!」
ポッポは少し残念そうに鳴いた。
「もちろん、ずっと預けっぱなしにするわけじゃない。必要になったら呼び戻すし、実家でものびのび過ごしてくれ。コイキングも、向こうでしっかり食べて、元気にしていてくれよ」
「コイッ!」
コイキングは相変わらず元気よく跳ねた。
シンヤは二匹を安心させるように微笑み、それぞれのボールを専用の収納リングへと近づけた。
父マサユキが開発した、フーパのリングを応用した空間接続システム。
実家側に設置された対応リングを通じて、二匹を家へ送り届ける。
「よし。これで一旦、手持ちは六匹だな」
残る仲間は、ヒトカゲ、ニドラン♂、マンキー、キャタピー、ビードル、ピカチュウ。
今回のニビジムへの挑戦と、その後の旅を見据えた編成だった。
「それじゃあ、まずはキャタピーとビードルのことから考えよう」
シンヤは二匹の前にしゃがみ込んだ。
キャタピーは触角を揺らし、ビードルは小さな角を動かしている。
「二匹とも、進化が比較的早いポケモンだ。しっかり経験を積ませれば、早い段階で進化できる可能性がある」
キャタピーはトランセル、そしてバタフリーへ。
ビードルはコクーン、そしてスピアーへ。
どちらも進化を重ねることで、身体の形状だけでなく、移動方法や攻撃の幅も大きく変化する。
特にバタフリーは空中からの攻撃や状態異常を活用でき、スピアーは素早い接近と鋭い針による攻撃が期待できる。
今後の旅で、二匹がどのように成長するのか。
それを見届けるのも、シンヤの楽しみの一つだった。
「ただし、無理に進化させるつもりはない。二匹の体調や気持ちを見ながら、しっかり経験を積ませよう」
「キャタ!」
「ビード!」
二匹は元気よく返事をした。
「よし、その意気だ!」
シンヤは満足そうに頷いた。
もっとも、進化を目指すからといって、二匹をただ相手にぶつければいいわけではない。
現在、キャタピーが覚えている技は『いとをはく』と『たいあたり』。
ビードルは『いとをはく』と『どくばり』。
技の数だけ見れば、まだできることは限られている。
しかし、技が少ないからこそ、使い方を工夫する余地がある。
「糸は、相手の動きを制限するだけの技じゃない。足場を作ることもできるし、相手の視界を遮ったり、移動方向を変えたりすることだってできる」
シンヤは二匹を交互に見た。
「たいあたりだって、正面からぶつかるだけが正解じゃない。相手の体勢が崩れたときや、動きが止まった瞬間を狙えばいい。どくばりも、当てる場所やタイミングが大切だ」
キャタピーとビードルは、真剣な様子でシンヤの話を聞いていた。
「今日は、まず実戦を通して経験を積もう。相手の動きをよく見て、自分にできることを考えるんだ」
「キャタ!」
「ビード!」
二匹の目には、やる気が満ちていた。
シンヤはその様子を確認すると、次の仲間へ視線を移した。
「そして、ピカチュウ。君には少し協力してもらいたい」
「ピカ?」
ピカチュウは首を傾げた。
シンヤが注目していたのは、ピカチュウが野生の状態で使っていた二つの技だった。
『10まんボルト』。
そして、『かわらわり』。
「まさか野生で、この二つを使いこなすピカチュウに出会うとはな……」
シンヤは感心したように息を吐いた。
トキワの森で戦ったピカチュウは、単純に電気技の威力が高いだけではなかった。
相手の動きを読み、技を使うタイミングを見極め、状況に応じて接近戦にも対応していた。
野生で生き抜いてきた経験が、その戦い方に表れていたのだろう。
そして、その技の数々は、ほかの仲間たちにとっても大きな学びになる。
「ピカチュウ。まずは10まんボルトを使うとき、どんなふうに電気を集めているのか見せてくれないか?」
「ピカ!」
ピカチュウは元気よく頷いた。
シンヤはヒトカゲとマンキーにも声をかける。
「二人とも、よく見ておくんだ。電気を集める感覚や、身体のどこに力を込めるのか。自分たちが同じ技を使うならどうすればいいか、考えながら見てみよう」
ヒトカゲはピカチュウの前へ移動し、マンキーも興味深そうに近寄った。
「じゃあ、ピカチュウ。お願いするよ」
「ピッカァ――!」
ピカチュウの頬にある電気袋が、パチパチと音を立て始めた。
黄色い身体の周囲に、細かな電光が走る。
やがて電気が身体の周りに集まり、空気を震わせるような音とともに、強烈な電撃が放たれた。
「ピカチュウ!」
電撃は十分に安全を確保した方向へと飛び、少し離れた岩場を明るく照らした。
「なるほど……」
シンヤは目を細めながら、電撃が放たれるまでの動作を観察する。
(電気を生み出すだけじゃない。身体に蓄えた電気を集めて、放出するまでの流れがある。マンキーが覚えようとしているかみなりパンチも、電気を拳に集中させる感覚が重要になるはずだ)
もっとも、ピカチュウの電気袋とマンキーの身体構造は異なる。
そのまま真似をすれば完成するというものではない。
それでも、電気を集める感覚や、放出する際の力の込め方を観察できれば、練習の手掛かりになるはずだ。
ヒトカゲも、目を輝かせながらピカチュウを見ていた。
「カゲ……!」
「そうだ、ヒトカゲ。君もだ。焦らず、自分の身体でどうすれば再現できるか考えてみよう」
続いて、シンヤはピカチュウにもう一つ頼んだ。
「次は、かわらわりを見せてもらえるか?」
「ピカ!」
ピカチュウは少し離れた岩の前に立った。
身体を低く構え、片腕を引く。
そして、一気に踏み込んだ。
鋭い動きとともに腕が振り抜かれ、岩に強烈な衝撃が走る。
乾いた音が響き、岩の表面にひびが入った。
「おお……!」
シンヤは思わず感嘆の声を漏らした。
(踏み込み、腰の回転、腕を振り抜くタイミング……ただ腕を振っているわけじゃない。全身の動きを連動させて、威力を生み出しているんだ)
マンキーは興奮した様子で両拳を握りしめた。
「マンキーッ!」
「おっ、興味津々だな。マンキーは格闘タイプだし、こういう動きは参考になるはずだ」
ヒトカゲも前のめりになっていた。
「カゲッ!」
「ヒトカゲも、身体の使い方という意味では参考になるだろう。ただし、無理に同じ動きをする必要はない。自分の身体に合ったやり方を探していこう」
シンヤは二匹の反応を確かめながら、心の中で考えた。
(マンキーは、すでに三種類のパンチ技を覚えようとしている。ほのおのパンチ、かみなりパンチ、れいとうパンチ。どれも未使用で未完成だが、戦いを見て自分なりに動きを理解しようとしているんだろう)
そして、ヒトカゲにも新たな可能性がある。
二匹がピカチュウの動作から何かをつかめれば、今後の戦術にも幅が生まれるはずだった。
「ありがとう、ピカチュウ。すごく参考になったよ」
「ピカピカ!」
ピカチュウは誇らしげに胸を張った。
シンヤはその頭を優しく撫でた。
「これからも、みんなで成長していこうな」
◆ヒトカゲの新たな炎技
一通りの確認を終えたところで、シンヤはヒトカゲに向き直った。
「さて、次は君の番だ」
「カゲ?」
「トキワの森での戦いを振り返ってみたんだが……どうやら、ひのこが新しい技に変化したみたいなんだ」
ヒトカゲが覚えていた『ひのこ』。
それは、比較的小さな炎を放つ基本的な炎技だった。
しかし、強敵のピカチュウとの戦いでは、以前よりも明らかに威力のある炎を放っていた。
シンヤは、ヒトカゲの状態を確認するため、もう一度技を使ってもらうことにした。
「ヒトカゲ、少し離れた場所に向けて、炎を放ってみてくれ」
「カゲーッ!」
ヒトカゲは前方へ向き直り、口を開いた。
次の瞬間。
ゴオオッ!
勢いよく噴き出した炎が、前方へと伸びていく。
それは、以前の『ひのこ』とは明らかに異なっていた。
炎は一瞬だけ散るのではなく、一定の時間、まとまった流れとなって放出されている。
シンヤは目を見開いた。
「やっぱり……かえんほうしゃだ!」
『かえんほうしゃ』。
ヒトカゲが、新たに使えるようになった炎技だった。
「すごいじゃないか、ヒトカゲ!」
「カゲーッ!」
ヒトカゲは嬉しそうに鳴いた。
しかし、シンヤは喜ぶだけでは終わらなかった。
「よし、威力だけじゃなくて、射程と範囲も確認しよう。どれくらいの距離まで届くのか、どの程度まで方向を変えられるのか。それから、連続して使ったときの疲労も調べたい」
技を覚えたことと、その技を実戦で使いこなせることは別問題だ。
『かえんほうしゃ』は、強力な技である一方、炎を放出し続けるための集中力や体力も必要になる。
また、直線的に放つのか、扇状に広げるのか、途中で方向を変えられるのかによっても、戦術は大きく変わってくる。
「まずは遠くの目印を狙ってみよう。次は少し横へずらす。その次は、短く放ってすぐ止めてみるんだ」
「カゲ!」
ヒトカゲはシンヤの指示を受け、慎重に炎を放ち始めた。
最初は勢いよく炎を伸ばし、次に狙いを少しずつ変えていく。
何度か繰り返すうちに、炎の広がり方や放出を止めるタイミングに、少しずつ違いが見えてきた。
ただし、まだ完全に制御できているわけではない。
炎が思った以上に広がることもあれば、狙いを変えた際に威力が落ちることもある。
それでも、確かな成長だった。
「いいぞ、ヒトカゲ。今のはよかった。だけど、無理はするなよ」
「カゲ!」
シンヤは満足げに頷いた。
(ひのこから、かえんほうしゃへ。技の威力が上がっただけじゃなく、使い方そのものも変わっている。これならニビジムでも、大きな武器になるかもしれない)
ただし、相手は岩タイプの使い手だと予想されるジムリーダー。
炎技が通用しにくい場面も考えられる。
だからこそ、シンヤはヒトカゲが持つほかの技にも注目していた。
『アイアンテール』、『げんしのちから』、『りゅうのいぶき』、『ほのおのキバ』。
炎以外の技も活用すれば、戦い方はさらに広がるはずだ。
そして、今回のジム戦でヒトカゲを選んだ理由は、単純に技の種類が多いからだけではなかった。
(ヒトカゲは、確実に進化へ近づいている)
トキワの森で戦った強敵のピカチュウ。
あの戦いで、ヒトカゲは最後まで諦めず、相手の動きを見極め、自分にできることを考え続けた。
その経験が、今の成長につながっているのかもしれない。
ゲームのように、決められた数値が一定に達したから進化する。
この世界では、必ずしもそれだけではないのだろう。
ポケモンの成長には、身体の成熟だけでなく、強くなりたいという気持ちや、困難を乗り越えようとする意志も関わってくる。
もちろん、強い気持ちがあれば必ず進化できるというわけではない。
それでも、強敵との戦いがヒトカゲに大きな刺激を与えたことは確かだった。
「ニビジムでは、君にも頑張ってもらうことになる。けれど、進化するかどうかは君自身の成長次第だ。俺は、君がどんな姿になっても、君のトレーナーであることに変わりはない」
「カゲ……!」
ヒトカゲは、まっすぐシンヤを見つめた。
そして、力強く鳴いた。
「カゲーッ!」
その声には、次の戦いへの意欲が満ちていた。
◆ニビジムへの準備開始!
一連の確認を終えたシンヤは、手持ちのポケモンたちを見渡した。
ヒトカゲは『かえんほうしゃ』を覚え、マンキーは格闘技に加えて新しいパンチ技の習得を目指している。
キャタピーとビードルは、進化を目指して経験を積む段階。
ニドラン♂は豊富な技の可能性を秘めているが、まだ実戦で確認すべきことが多い。
そして、ピカチュウは野生で培った経験と技術を持つ、新たな仲間だ。
「よし。まずはニビジムに向けたトレーニングだな」
シンヤは拳を軽く握った。
「今回のジム戦に出てもらうのは、ヒトカゲとマンキー。この二匹で挑むつもりだ」
マンキーが反応し、拳を打ち合わせた。
「マンキーッ!」
「やる気十分だな」
シンヤは笑った。
マンキーを選んだ理由は、まず格闘タイプであること。
岩タイプのポケモンに対して、格闘技は有効な攻撃手段になり得る。
それに、マンキーは身体能力が高く、岩場のような不安定な地形でも動き方を工夫できる可能性がある。
岩を足場にして移動したり、相手が岩を動かした瞬間に間合いを詰めたり、地形を利用して攻撃を避けたりすることも考えられる。
ただし、岩タイプだからといって、格闘技を使えば簡単に勝てるわけではない。
相手の身体の大きさや攻撃力、地形の利用方法によっては、こちらが不利になる場面もあるだろう。
だからこそ、マンキーには攻撃だけでなく、相手の動きを見て判断する力も身につけてほしい。
「マンキー、君の持ち味は攻撃力と積極性だ。でも、勢いだけで突っ込むと反撃を受ける。相手の攻撃を見て、避けるべきときは避ける。攻めるときは、一気に攻めるんだ」
「マンキー!」
マンキーは力強く拳を突き上げた。
「うん、その意気だ」
そして、シンヤはヒトカゲへと目を向けた。
「ヒトカゲを選んだ理由は、技の種類が多いこと。それに、今は進化が近いように感じるからだ」
ヒトカゲは首を傾げた。
「カゲ?」
「もちろん、俺の予想が必ず当たるとは限らない。でも、強敵と戦うことで、自分の限界を超えるきっかけになるかもしれないだろ?」
シンヤは優しく微笑んだ。
「ニビジムの相手がどれほど強いのか、実際に戦ってみないと分からない。だからこそ、今のうちにできることを増やしておこう」
ヒトカゲは頷いた。
「カゲッ!」
「よし!」
シンヤは立ち上がると、ポケモンセンターの外へと視線を向けた。
街の外には、トレーナーたちが行き交う道が続いている。
ニビジムへ挑戦する前に、実戦経験を積むにはうってつけの場所だ。
そして、シンヤにはもう一つ、やっておきたいことがあった。
キャタピーとビードルの進化である。
「さて……」
シンヤは周囲を見渡した。
ちょうど、近くの広場では何人かのトレーナーがポケモンを連れて歩いている。
その姿を見て、シンヤの口元にいたずらっぽい笑みが浮かんだ。
「おーっす、その辺のトレーナーさんたち!」
彼は軽く手を上げた。
「悪いけど、少し経験値になってもらおうか!」
もちろん、相手のポケモンを道具のように扱うつもりはない。
互いに全力で戦い、その経験を自分たちの成長につなげる。
それがシンヤの考えだった。
「まずはキャタピーとビードルを中心に戦ってもらおう。二匹とも、準備はいいか?」
「キャタ!」
「ビード!」
二匹は元気よく返事をした。
「よし。じゃあ、行こう!」
こうして、ニビジム攻略に向けたトレーニングが始まった。
◆キャタピーとビードル、初めての実戦連戦!
最初に声をかけたのは、ニビシティの広場でポケモンの練習をしていた少年トレーナーだった。
「えっ、バトル? いいよ! こっちは準備できてるぜ!」
少年はモンスターボールを構えた。
「行け、コラッタ!」
「コラッ!」
現れたのは、すばしっこそうなコラッタだった。
シンヤはキャタピーの前にしゃがみ、目を合わせた。
「キャタピー、君からだ。相手は動きが速そうだから、正面から追いかけるだけじゃ追いつけないかもしれない。まずは相手の動きを観察しよう」
「キャタ!」
「じゃあ、バトル開始!」
少年の声とともに、コラッタが勢いよく走り出した。
「コラッタ、たいあたり!」
コラッタは地面を蹴り、キャタピーへと突進する。
「キャタピー、いとをはく! 相手の進路を狙って!」
キャタピーの口から糸が放たれた。
糸はコラッタの身体に直接絡みつかなかったものの、進路の先に張り巡らされ、コラッタは慌てて方向を変える。
その一瞬。
「今だ、たいあたり!」
キャタピーは小さな身体を動かし、横からコラッタへぶつかった。
「コラッ!?」
コラッタの身体がわずかに傾く。
だが、相手も経験のあるポケモンだった。
すぐさま体勢を立て直し、もう一度キャタピーへ向かってくる。
「キャタピー、無理に受け止めなくていい! 少し横へ!」
キャタピーは身体をひねり、突進をぎりぎりでかわした。
コラッタが通り過ぎたところで、キャタピーは張っていた糸を引く。
糸がコラッタの足元に触れ、動きが一瞬だけ鈍った。
「今だ!」
キャタピーは、もう一度たいあたりを繰り出した。
小さな身体がコラッタにぶつかり、今度こそ相手を後退させる。
「コラッタ、もう一度だ!」
少年も負けじと指示を出した。
コラッタは駆け出す。
しかし、先ほどまでのように真っすぐ突っ込めば、糸に引っかかる可能性がある。
コラッタは途中で進路を変え、横からキャタピーへ迫った。
「キャタピー、糸を足元に!」
キャタピーは地面へ向けて糸を吐いた。
コラッタが踏み込んだ瞬間、足元に糸が触れ、わずかにバランスを崩す。
その隙を逃さず、キャタピーは身体をぶつけた。
「コラッ!」
コラッタが倒れ込み、動きを止める。
少年は驚いた表情を浮かべた。
「やるじゃないか! キャタピーなのに、糸をそんなふうに使うなんて!」
シンヤはキャタピーのそばへ歩み寄り、優しく頭を撫でた。
「よくやったな、キャタピー! 相手の動きを見て、ちゃんと考えて戦えたぞ!」
「キャタキャタ!」
キャタピーは嬉しそうに身体を揺らした。
(よし。技が少なくても、工夫すれば十分に戦える。あとは経験を積みながら、動きの精度を上げていけばいい)
シンヤは心の中で頷いた。
そして、次のトレーナーを探す。
「次、誰かバトルしないかー?」
「おっ、俺がやるぜ!」
すぐに別の少年が名乗りを上げた。
「今度は俺のイシツブテが相手だ!」
「なるほど。岩タイプか」
シンヤは笑みを浮かべた。
ニビジムを見据えるうえでも、ちょうどいい相手だ。
「よし、次はビードルだ!」
「ビード!」
ビードルは元気よく前へ出た。
相手のイシツブテは、空中に浮かぶように身体を持ち上げ、ビードルを見下ろしている。
「イシツブテ、たいあたり!」
イシツブテは勢いをつけて接近してきた。
「ビードル、いとをはく! 地面と岩に糸を張って、動きを制限しよう!」
ビードルは素早く糸を吐いた。
糸が地面の岩に絡み、イシツブテの進路に張り巡らされる。
しかし、イシツブテは勢いを落とさず、そのまま突っ込んできた。
糸が引っ張られ、岩がごろりと動く。
「ビードル、右へ避けろ!」
ビードルは小さく跳ねるようにして、イシツブテの突進をかわした。
イシツブテは糸に引っかかりながら、動きを止める。
「今だ、どくばり!」
ビードルは針を構え、イシツブテへと突き出した。
だが、相手の身体は硬い岩でできている。
針が当たったものの、思ったほどの効果はなかった。
「イシツブテ、もう一度たいあたりだ!」
イシツブテが身体を引き、再び突進する。
シンヤは状況を見て、すぐに指示を変えた。
「ビードル、真正面で受けるな! 糸を岩に巻きつけて、横へ逃げろ!」
ビードルは地面の岩へ糸を吐き、身体を引っ張るようにして横へ移動した。
イシツブテの突進が目の前を通り過ぎる。
その勢いで、イシツブテ自身が張られた糸を引っ張り、岩が動いた。
足場が崩れたことで、イシツブテの姿勢が乱れる。
「今だ、もう一度どくばり!」
ビードルは素早く近づき、今度は相手の動きが止まったところへ針を突き出した。
イシツブテは衝撃に耐えようとしたが、姿勢が崩れていたため、うまく踏ん張れない。
「イシツブテ、戻れ!」
トレーナーが声を上げたものの、イシツブテはすでに地面へ落ち、動きを止めていた。
「そこまで! ビードルの勝ち!」
シンヤが宣言すると、ビードルは嬉しそうに鳴いた。
「ビード!」
「よくやったな。相手の硬さを見て、正面からの攻撃にこだわらなかったのがよかった」
シンヤはビードルを撫でた。
「ただし、今のどくばりが相手にどれくらい効いたかは、相手の体質や状態によって変わる。次も同じようにいくとは限らない。そこは覚えておこうな」
「ビード!」
ビードルは元気よく返事をした。
シンヤは満足そうに頷く。
(いいぞ。二匹とも、技の数は少なくても工夫する力がある。経験を積ませれば、もっと戦えるようになるはずだ)
こうして、シンヤはニビシティの広場で出会ったトレーナーたちに、次々とバトルを申し込んでいった。
キャタピーとビードルを交互に出し、相手のポケモンや地形に応じて戦い方を変える。
糸で進路を塞ぐ。
岩に糸を巻きつけて移動する。
相手の突進を利用して体勢を崩す。
そして、隙を見つけてたいあたりやどくばりを当てる。
勝てることもあれば、相手の動きについていけず、攻撃を受けることもあった。
そんなとき、シンヤはすぐに戦い方を見直した。
「今のは相手を追いすぎたな。次は、もう少し相手の動きを見てから仕掛けよう」
「キャタ……」
「大丈夫だ。失敗したっていい。そこから学べばいいんだから」
キャタピーは、再び顔を上げた。
ビードルもまた、疲れを見せながらも、次の戦いに向けて気持ちを切り替えていた。
シンヤは二匹の様子を確かめながら、無理のない範囲でトレーニングを続けた。
そして――。
何度目かのバトルを終えたとき、キャタピーの身体に変化が起き始めた。
「……ん?」
キャタピーの身体が、淡い光に包まれる。
その光は少しずつ強くなり、周囲を照らしていった。
シンヤは目を見開いた。
「まさか……!」
キャタピーの身体が光の中で変化していく。
小さな身体が形を変え、やがて光が収まったとき――そこにいたのは、以前とは違う姿のポケモンだった。
「トランセル……!」
進化だった。
「やったな、キャタピー! いや、これからはトランセルだな!」
シンヤは思わず声を弾ませた。
トランセルは少し身体を揺らし、嬉しそうに鳴いた。
「トラ……!」
その姿を見て、シンヤは笑顔になった。
「よく頑張った。ここまでの戦い、ちゃんと君の力になったんだな」
だが、進化したのはキャタピーだけではなかった。
少し離れた場所で、ビードルの身体にも淡い光が灯り始めていた。
「おっ、ビードルもか!?」
ビードルは身体を震わせ、光の中で姿を変えていく。
やがて光が消えたとき、そこには硬い殻を持つポケモンが立っていた。
「コクーン!」
「よし! ビードルも進化したな!」
シンヤは喜びながら、二匹の様子を確認した。
キャタピーはトランセルへ。
ビードルはコクーンへ。
二匹とも、旅の中で最初の大きな成長を遂げたのだった。
ただし、進化したからといって、すぐに戦い方が大きく変わるわけではない。
トランセルもコクーンも、身体が硬い殻に包まれた状態であり、動きには制約がある。
ここからさらに成長し、バタフリーやスピアーへと進化するまでには、もう少し時間が必要だろう。
「二匹とも、本当によく頑張った。今日はここまでにしよう。進化したばかりだし、身体の状態も確認しないとな」
「トラセル!」
「コクーン!」
二匹は、それぞれ元気に返事をした。
シンヤは満足げに頷き、仲間たちを見渡す。
「よし。次は、ヒトカゲとマンキーのトレーニングだ。ニビジムに向けて、まだまだやることは多いぞ!」
そうして、ニビシティでのトレーニングは続いていく。
キャタピーとビードルが進化を遂げたことで、シンヤの仲間たちはまた一歩、成長した。
だが、ニビジムのジムリーダーがどれほどの実力を持つのかは、まだ分からない。
ヒトカゲの進化は訪れるのか。
マンキーは新たな技を完成させられるのか。
そして、岩タイプの強敵を相手に、シンヤはどのような戦術を見せるのか。
ニビジムへの挑戦が、少しずつ近づいていた。
【シンヤの手持ち一覧】
・ヒトカゲ LV:18→LV:19
・ニドラン♂ LV:10→15
・マンキー LV:10→15
・トランセル LV:9
・コクーン LV:9
・ピカチュウ LV:15
【実家のポケモン】
・コラッタ LV:9
・コダック LV:10
・ヤドン LV:10
・ニョロモ LV:10
・トサキント LV:10
・ニドラン♀ LV:10
・オニスズメ LV:10
・ポニータ LV:10
・ドード LV:10
・ポッポ LV:16
・コイキング LV:15