ポケットモンスター~波動の眼を持つ少年~   作:レイザル

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第15話「ニビジム攻略!掴め、最初のバッジ!」

「――挑戦者、シンヤ。ニビジムに挑戦します!」

 

 

シンヤはニビジムの扉を開けると、堂々とした声で宣言した。

すると、薄暗かったジム内の照明が、入口から奥へ向かって一つずつ点灯していく。

 

 

照らし出されたのは、広大な岩場を備えたバトルフィールド。そして、その奥に立つ一人の少年だった。

短い髪に、太い眉。落ち着いた表情ながら、鍛えられたトレーナーとしての雰囲気を漂わせている。

ニビジムのジムリーダー――タケシである。

 

 

「ニビジム、ジムリーダーのタケシだ。挑戦者か。バッジは?」

 

 

タケシが尋ねる。

シンヤは笑顔で答えた。

 

 

「ゼロ個だ! ここが最初の挑戦になる!」

 

 

「なるほど。初めてのジム戦か」

 

 

タケシはうなずき、シンヤを観察する。

そして、ふと周囲に目を向けた。

 

 

「それにしても――今日はギャラリーが多いな」

 

 

シンヤもつられて周囲を見渡す。

すると、観客席代わりのスペースには、見覚えのある顔が何人も並んでいた。

 

 

「おう、シンヤ! 頑張れよー!」

 

 

「午前中の勢いを見せてやれ!」

 

 

「ジムリーダー相手でも、あの連携が通用するか楽しみだぜ!」

 

 

彼らは午前中、シンヤとバトルしたトレーナーたちだった。

どうやら、シンヤのジム戦を見届けようと集まってくれたらしい。

 

 

「みんな……わざわざ応援に来てくれたのか!」

 

 

シンヤは嬉しそうに手を振った。

その様子を見ていたタケシが、ふむ、と顎に手を当てる。

 

 

「彼らには見覚えがある。なるほど……ジム戦で一度負けたトレーナーたちか。応援だけじゃなく、偵察も兼ねているというわけだな」

 

 

「まあ、そこは否定しません!」

 

 

スペースにりう1人があっさりと認めた。

 

 

「でも、せっかくなら本物のジム戦を見て勉強したいですからね」

 

 

「ははっ、正直でいいじゃないか」

 

 

タケシは笑った。

しかし、次の瞬間にはジムリーダーとしての真剣な表情に戻る。

 

 

「それじゃあ、ルールを説明する。よく聞いてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ ニビジム、公式戦開始!

 

 

タケシがフィールドの中央へ進み、シンヤも反対側のトレーナーエリアに立つ。

 

 

「このバトルで使用できるポケモンは、お互いに二匹。どちらかの手持ちがすべて戦闘不能になった時点で勝敗が決まる」

 

 

タケシは指を一本立てた。

 

 

「ただし、試合中にポケモンを交代できるのは挑戦者だけだ。ジムリーダーである俺には交代する権利はない。交代するかどうかも、挑戦者の判断に任せる」

 

 

「了解です!」

 

 

シンヤは力強く答えた。

二匹対二匹。

挑戦者だけが交代できるという、アニメでもおなじみのジム戦ルールだ。

シンヤは手持ちの中から、最初の一匹を選んだ。

 

 

「それじゃあ、いくぞ! マンキー!」

 

 

「マンキーッ!」

 

 

ボールから飛び出したマンキーが、両拳を構えてフィールドに立つ。

タケシも最初のポケモンを繰り出した。

 

 

「いけ、イシツブテ!」

 

 

「イシツブテ!」

 

 

両腕を持つ岩のポケモンが、地面から少し浮き上がる。

タケシはマンキーを見て、わずかに目を細めた。

 

 

「格闘タイプのマンキーか。岩タイプの俺に、相性で有利なポケモンをぶつけてきたわけだな」

 

 

「それだけじゃありませんよ!」

 

 

シンヤは笑顔で返した。

 

 

「マンキーの実力を、ここで試したいんです!」

 

 

「いいだろう。ならば、こちらも本気でいく!」

 

 

タケシが腕を振り下ろす。

 

 

「イシツブテ、ころがる!」

 

 

イシツブテは身体を丸め、岩場を勢いよく転がり始めた。

 

 

「マンキー、右の岩へ跳べ!」

 

 

「マンキー!」

 

 

マンキーは目の前に転がってくるイシツブテを見極め、横にあった大きな岩へ飛び乗った。

イシツブテはそのまま岩の下を通り抜ける。

 

 

「そのまま上から仕掛けろ!」

 

 

マンキーは岩の上から跳躍し、イシツブテへ接近した。

 

 

「イシツブテ、いわおとし!」

 

 

イシツブテが岩を持ち上げ、マンキーに向かって投げつける。

 

 

「マンキー、岩を蹴って左へ!」

 

 

マンキーは足場にしていた岩を蹴り、空中で身体をひねった。

投げつけられた岩がすぐそばを通過する。

さらにマンキーは、その岩が別の岩に衝突した瞬間を見逃さなかった。

砕けた岩片が飛び散る。

その破片を避けながら、マンキーは落下地点にある岩へ着地した。

 

 

「いいぞ! そのままイシツブテの動きを見ろ!」

 

 

シンヤの指示に、マンキーはすぐさま反応する。

イシツブテは再び転がろうと、身体を丸め始めていた。

 

 

「今だ! マンキー、岩場を使って跳べ!」

 

 

マンキーは岩から岩へと飛び移り、イシツブテの正面ではなく、側面へ回り込んだ。

 

 

「なにっ!?」

 

 

タケシが目を見開く。

マンキーはイシツブテが転がり始める直前に、さらに高い岩へ跳び乗った。

 

 

 

そして――。

 

 

 

「かわらわり!」

 

 

「マンキーッ!」

 

 

マンキーは岩を蹴り、上空から勢いをつけて急降下する。

狙うのは、転がり始める直前のイシツブテ。

イシツブテが身体を丸めるよりも早く、マンキーの腕が振り下ろされた!

 

 

 

ドガァッ!

 

 

 

かわらわりが直撃。

 

 

イシツブテは地面に叩きつけられ、動きを止めた。

 

 

「イシツブテ、戦闘不能!」

 

 

審判役の声が響く。

 

 

「よしっ! マンキー、ナイスだ!」

 

 

「マンキーッ!」

 

 

マンキーは拳を突き上げ、勝利を喜んだ。

タケシはイシツブテをボールに戻しながら、感心したように息を吐いた。

 

 

「なるほどな……」

 

 

彼の視線は、マンキーからシンヤへと移る。

 

 

「タイプ相性を理解しているだけじゃない。ポケモンの特徴や癖、戦い方までしっかり把握した上で指示を出している。岩場をただの障害物じゃなく、足場として利用する判断もいい」

 

 

そして、少しだけ笑みを浮かべた。

 

 

「新人にしては、やるじゃないか」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

シンヤは素直に礼を言った。

しかし、まだ勝負は終わっていない。

タケシは次のモンスターボールを手に取った。

 

 

「だが、ここからが本番だ。出てこい、イワーク!」

 

 

「イワァァーク!」

 

 

巨大な岩の胴体が、地面を揺らしながら姿を現した。

長い身体が岩場の上へと伸び、鋭い目がマンキーを見下ろす。

その圧倒的な大きさに、観客席からもどよめきが起こった。

 

 

「うわっ、でけえ……!」

 

 

「イワークか! あれは新人には厳しいぞ!」

 

 

「マンキーなら相性はいいけど、あの大きさ相手にどうするんだ?」

 

 

シンヤはイワークをじっくりと観察する。

その身体の長さ。岩のような外殻。巨体を支えるための動き。そして、攻撃の際に生じるわずかな隙。

 

 

(なるほど。こいつが本命か)

 

 

タケシはシンヤに尋ねた。

 

 

「どうする? 格闘タイプのマンキーなら、イワーク相手でも十分に戦える。交代せずに、そのまま戦わせるか?」

 

 

確かに、マンキーは格闘タイプだ。

岩タイプのイワークに対して、相性面で有利な攻撃を仕掛けられる。

しかし――。

 

 

「マンキー、戻ってくれ!」

 

 

「マンキー?」

 

 

シンヤは迷わずマンキーをボールに戻した。

その判断に、タケシはわずかに眉を上げる。

 

 

「交代するのか? マンキーならイワークと戦えると思うが」

「ええ。マンキーなら、きっといい勝負ができると思います」

 

 

シンヤはボールを握りながら答えた。

 

 

「でも俺は、この先、タイプ相性だけで勝ち負けが決まるとは思っていません」

 

 

そして、次のボールを掲げる。

 

 

「だから――俺はこいつを出します!」

 

 

「出てこい、ヒトカゲ!」

 

 

「カゲーッ!」

 

 

小さな炎を尻尾に灯したヒトカゲが、フィールドへと飛び出した。

その姿を見たタケシは、驚いたように目を見開く。

 

 

「ヒトカゲ……! 炎タイプのポケモンで、イワークに挑むのか?」

 

 

岩タイプへの炎技は、相性面で有利とはいえない。

それどころか、ヒトカゲの身体ではイワークの巨体を正面から押し切るのも難しいだろう。

タケシは真剣な表情で尋ねた。

 

 

「イワークとの相性を理解した上で、そのヒトカゲを選んだんだな?」

 

 

「もちろん!」

 

 

シンヤは迷いなく答えた。

 

 

「最初のジム、最初の相棒で締めたいんで!」

 

 

彼はヒトカゲを見つめた。

 

 

「何よりも――俺はこいつを信じているんですよ!」

 

 

「カゲーッ!」

 

 

ヒトカゲもまた、シンヤを見上げて力強く鳴いた。

その瞳に、迷いはなかった。

タケシは二人の様子を見つめ、静かにうなずく。

 

 

「……いいだろう。ならば、その信頼がどこまで通用するか、確かめさせてもらう!」

 

 

こうして、ニビジムの第二戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ 第二戦!ヒトカゲ対イワーク!

 

 

「イワーク、しめつける!」

 

 

「イワァァーク!」

 

 

イワークが長い身体をくねらせながら、ヒトカゲへ迫る。

巨体が岩場を移動するたび、地面から小さな石が跳ね上がった。

 

 

「ヒトカゲ、左へ走れ!」

 

 

ヒトカゲは素早く横へ駆け出す。

イワークの身体がその後を追い、長い胴体が岩場を横切った。

 

 

「そのまま、えんまく!」

 

 

「カゲーッ!」

 

 

ヒトカゲが口から黒い煙を吐き出す。

煙は岩場の間を広がり、イワークの視界を覆った。

 

 

「イワーク、落ち着け! 相手の位置を探るんだ!」

 

 

タケシは慌てずに指示を出す。

イワークは身体を低くし、周囲の音や気配を探るように頭を動かした。

 

 

(視界を奪っただけじゃ、イワークの動きを止めることはできない。なら――)

 

 

「ヒトカゲ、かえんほうしゃ! イワーク本体じゃなく、足元の岩場を狙え!」

 

 

「カゲーッ!」

 

 

ヒトカゲの口から炎が放たれる。

炎はイワークの身体そのものではなく、その周囲の地面へと広がった。

岩の表面が熱せられ、煙が立ち上る。

もちろん、岩を一瞬で溶かしたわけではない。

だが、黒煙と炎の熱、舞い上がる粉じんによって、イワークが動きやすい場所とそうでない場所が少しずつ変わっていく。

 

 

「なるほど……! 煙で視界を奪い、炎で周囲の状況を変えるつもりか!」

 

 

タケシはシンヤの狙いに気づいた。

 

 

「だが、そんな小細工だけでイワークは倒せない! いわおとし!」

 

 

イワークが岩を持ち上げ、煙の中へ投げつける。

 

 

「ヒトカゲ、走り続けろ! 岩が落ちた場所を見て、次の進路を決めるんだ!」

 

 

ヒトカゲは煙の中を走り抜ける。

 

 

一つ、二つ、三つ。

 

 

岩が地面にぶつかる音を聞き分け、落下地点を避けながら進む。

しかし、イワークの攻撃は広範囲に及ぶ。

逃げ続けるだけでは、いつか追い詰められてしまう。

 

 

「ヒトカゲ、りゅうのいぶき!」

 

 

「カゲーッ!」

 

 

ヒトカゲの口から、青みを帯びた不思議なエネルギーが放たれた。

煙の向こうから飛んできた攻撃が、イワークの頭部に命中する。

 

 

「イワーク!」

 

 

イワークが頭を揺らす。

大きなダメージとまではいかない。だが、イワークの注意を引きつけるには十分だった。

 

 

「よし、続けてかわらわり!」

 

 

ヒトカゲは岩場を蹴り、イワークの身体へ接近した。

小さな身体から繰り出される一撃が、イワークの側面に叩き込まれる。

 

 

 

ガンッ!

 

 

 

しかし――。

 

 

 

 

「イワァァーク!」

 

 

イワークの身体は、びくともしなかった。

むしろ、硬い岩の表面に弾かれたように、ヒトカゲの腕が押し戻される。

 

 

「ヒトカゲ!」

 

 

シンヤは思わず声を上げた。

ヒトカゲは着地に失敗しかけたものの、尻尾を振って体勢を立て直す。

 

 

「カゲ……!」

 

 

「そうだ。無理に押し切ろうとするな。相手はあの巨体だ!」

 

 

シンヤは冷静に指示を出す。

ヒトカゲはうなずくように鳴いた。

 

 

(やっぱり、パワー差は大きい。技の種類が多くても、それだけで勝てるわけじゃない。イワークの防御力を突破するには、もっと工夫が必要だ……!)

 

 

タケシはヒトカゲの様子を見ていた。

 

 

「イワーク、しっぽでたたく!」

 

 

イワークの長い身体がしなり、巨大な尾がヒトカゲに迫る。

 

 

「ヒトカゲ、岩を使って跳べ!」

 

 

ヒトカゲは足元の岩を蹴り、跳躍した。

尾が地面を打ちつけ、岩片が飛び散る。

ヒトカゲは空中で身体をひねり、イワークの頭部に近い岩へ着地した。

 

 

「その位置を維持しろ! かえんほうしゃ!」

 

 

「カゲーッ!」

 

 

炎が至近距離から放たれる。

イワークは頭を引き、身体をくねらせて炎を受け流そうとした。

それでも、炎の一部は頭部や身体の隙間に当たる。

イワークがうなり声を上げた。

 

 

「イワーク、かたくなる!」

 

 

イワークの身体に力が入り、岩の外殻がさらに堅牢になる。

 

 

「ここで守りを固めるか……!」

 

 

シンヤはすぐに次の指示を考えた。

 

 

(真正面からの攻撃は効きにくい。なら、動きを制限しながら、同じ場所に攻撃を集中させる!)

 

 

「ヒトカゲ、えんまく!」

 

 

ヒトカゲが再び黒煙を吐き出す。

煙はイワークの頭部付近に広がり、タケシからもヒトカゲの位置が見えにくくなった。

 

 

「また煙か……!」

 

 

タケシは目を細める。

 

 

「イワーク、身体を振って煙を散らせ!」

 

 

イワークが長い身体を大きく動かす。

その動きで煙が流され、少しずつ視界が開けていく。

だが、煙が完全に晴れる前に――。

 

 

「ヒトカゲ、りゅうのいぶき! 同じ場所を狙え!」

「カゲーッ!」

 

 

青みを帯びたエネルギーが、先ほど炎を受けた部分へと再び命中した。

イワークの身体がわずかに揺れる。

 

 

「イワーク、いわおとし!」

 

 

「ヒトカゲ、地面に降りろ!」

 

 

ヒトカゲはすぐに岩場から飛び降りた。

投げられた岩が頭上を通り過ぎ、地面に激突する。

ヒトカゲは着地すると、岩の陰へ走り込んだ。

 

 

「よし、今度は反対側から接近だ!」

 

 

ヒトカゲは岩陰を利用しながら、イワークの側面へ回り込む。

 

 

「かわらわり!」

 

 

小さな拳が再びイワークに叩き込まれた。

硬い外殻が衝撃を受ける。

イワークは身体を揺らしたが、まだ倒れない。

それでも――。

 

 

(効いている! 最初よりも、確実に動きが鈍くなっている!)

 

 

シンヤは見逃さなかった。

イワークが身体を動かすたび、その反応がほんの少し遅れている。

最初は滑らかだった身体のうねりも、今はわずかに重い。

ヒトカゲの攻撃は、一撃でイワークを倒せるほど強力ではない。

しかし、煙で視界を乱し、炎で攻撃できる位置を探り、りゅうのいぶきとかわらわりで繰り返し攻める。

その積み重ねが、確実にイワークの体力を削っていた。

 

 

「ヒトカゲ、あと少しだ! 焦るな!」

 

 

「カゲーッ!」

 

 

ヒトカゲは疲労しながらも、シンヤの声に応える。

タケシもまた、その戦い方に驚きを隠せなかった。

 

 

(ヒトカゲの火力では、イワークの防御を正面から突破するのは難しい。だが、挑戦者はそれを理解している。だからこそ、攻撃を重ね、動きを制限し、少しずつ削っているのか……!)

 

 

タケシは拳を握った。

 

 

「イワーク、負けるな! しめつける!」

 

 

「イワァァーク!」

 

 

イワークが身体を伸ばし、ヒトカゲを囲い込もうとする。

 

 

「ヒトカゲ、跳べ!」

 

 

ヒトカゲは岩を蹴り、イワークの身体を飛び越えた。

だが、疲労が蓄積している。

着地した瞬間、足元がわずかにふらついた。

 

 

「ヒトカゲ!」

 

 

シンヤの声が響く。

イワークはその隙を逃さず、頭部を振り上げた。

 

 

「いわおとし!」

 

 

岩がヒトカゲへ迫る。

ヒトカゲは咄嗟に身体をひねったものの、完全には避けきれなかった。

岩が肩をかすめ、ヒトカゲは地面を転がる。

 

 

「カゲーッ!」

 

 

「ヒトカゲ!」

 

 

観客席から悲鳴が上がった。

だが、ヒトカゲは倒れなかった。

身体を震わせながら立ち上がり、イワークを見据える。

尻尾の炎は、まだ力強く燃えていた。

 

 

「カゲ……ッ!」

 

 

その瞳には、闘志が宿っている。

まだ戦える。

まだ、終わっていない。

シンヤはヒトカゲの姿を見て、静かにうなずいた。

 

 

「……そうだな。ここまで来たんだ。最後まで一緒に戦おう!」

 

 

ヒトカゲが大きく鳴いた。

 

 

「カゲーッ!」

 

 

そして、その瞬間だった。

ヒトカゲの身体が、まばゆい光に包まれた。

 

 

「なっ……!?」

 

 

シンヤが目を見開く。

ヒトカゲの身体が光の中で変化していく。

身体が大きくなり、手足が伸び、頭部の形も変わっていく。

尻尾の炎が揺らめき、光が徐々に晴れていった。

そこに立っていたのは――。

 

 

 

「リザァァード!」

 

 

進化したポケモン、リザードだった!

 

 

「ヒトカゲが……進化した!?」

観客席から大きな歓声が上がる。

シンヤは驚きながらも、すぐに笑顔を浮かべた。

 

 

「ヒトカゲ……いや、リザード! おめでとう!」

「リザァード!」

 

 

リザードは力強く声を上げた。

その身体には、ヒトカゲの頃よりも明らかに強い力がみなぎっている。

腕も脚も大きくなり、鋭い爪を備えた手が開閉する。

尻尾は長く伸び、先端の炎が勢いよく揺れていた。

タケシもまた、驚きを隠せなかった。

 

 

「進化したのか……! あの激戦の中で!」

 

 

しかし、すぐに気を引き締める。

 

 

「だが、進化したからといって、勝負が決まったわけじゃない! イワーク、全力でいくぞ!」

「イワァァーク!」

 

 

イワークが身体を持ち上げる。

リザードはその姿を見据え、拳を握りしめた。

シンヤは進化したばかりの相棒を見て、力強く指示を出す。

 

 

「リザード! まずは距離を取れ! 相手の動きをよく見ろ!」

 

 

「リザァード!」

 

 

リザードは岩場を駆け、イワークの攻撃をかわす。

進化によって身体能力が向上したことで、動きはヒトカゲの頃よりも力強く、鋭くなっていた。

 

 

「かえんほうしゃ!」

 

リザードの口から炎が放たれる。

イワークは身体をひねって受け流そうとしたが、先ほどよりも勢いのある炎が、その身体を広く包み込んだ。

 

 

「イワーク!」

 

 

炎が収まる。

イワークはまだ倒れていない。

だが、その身体は明らかに疲弊していた。

タケシは歯を食いしばる。

 

 

(進化によってパワーが上がった……! 今までなら受け流せていた攻撃も、簡単にはいかない!)

 

 

「イワーク、しめつける!」

 

 

イワークがリザードへ迫る。

 

 

「リザード、岩場を駆け上がれ!」

 

 

リザードは目の前の岩を蹴り、斜面を駆け上がった。

イワークの身体が追いかけてくる。

しかし、リザードは岩場の起伏を利用し、身体を左右に振りながら進む。

イワークの長い身体が岩にぶつかり、進路がわずかに乱れた。

 

 

「今だ! りゅうのいぶき!」

「リザァード!」

 

 

青みを帯びたエネルギーが放たれ、イワークの頭部を直撃する。

 

 

「イワーク!」

 

 

イワークが頭を振る。

それでも、まだ立っている。

 

 

「すごいな、タケシさんのイワーク……!」

 

 

シンヤは思わずつぶやいた。

何度も攻撃を受けているのに、まだ倒れない。

さすがはジムリーダーのポケモンだ。

だが、リザードも負けてはいなかった。

進化によって得た力を確かめるように、拳を握り直す。

シンヤはその様子を見て、最後の指示を出した。

 

 

「リザード! これで決めるぞ!」

 

 

「リザァード!」

 

 

「イワーク、いわおとし!」

 

 

イワークが岩を持ち上げる。

 

 

「リザード、岩を避けながら接近! 最後は――かわらわりだ!」

 

 

リザードは走り出した。

投げつけられた岩が地面に落ちる寸前、リザードは横へ跳ぶ。

岩の破片が飛び散る中を駆け抜け、イワークとの距離を一気に詰めた。

 

 

「リザァァード!」

リザードが拳を大きく振り上げる。

狙うのは、何度も攻撃を受け、疲労が蓄積しているイワークの頭部。

 

 

「かわらわりィィッ!」

 

 

 

 

ドゴォォォン!!

 

 

 

 

 

強烈な一撃が、イワークの頭頂部に直撃した。

巨体が大きく揺れる。

イワークは身体を支えようとしたが、ついに力尽き、岩場へと倒れ込んだ。

 

 

 

 

ドォォォン……!

 

 

 

 

ジム内に地響きが響き渡る。

そして――。

 

 

「イワーク、戦闘不能!」

 

 

審判の声が響いた。

 

 

「勝者、挑戦者シンヤ!」

 

 

一瞬、静寂が訪れた。

その次の瞬間。

 

 

「やったああああっ!」

 

 

シンヤは思い切り拳を突き上げた。

 

 

「勝ったぞ、リザード!」

 

 

「リザァァード!」

 

 

リザードもまた、勝利の雄叫びを上げた。

観客席からは、割れんばかりの拍手が巻き起こる。

 

 

「すげえ! 本当に勝っちまった!」

 

 

「ヒトカゲが進化した瞬間、鳥肌が立ったぞ!」

 

 

「タイプ相性が不利でも、あそこまで戦えるのか……!」

 

 

午前中に戦ったトレーナーたちも、興奮した様子で声を上げていた。

シンヤはリザードのもとへ駆け寄る。

 

 

「よく頑張ったな! 最後まで諦めずに戦ってくれて、ありがとう!」

「リザァード!」

 

 

リザードは嬉しそうに鳴いた。

その身体は疲れている。それでも、勝利の喜びが全身から伝わってくる。

シンヤはその額にそっと手を置いた。

 

 

(最初に選んだポケモンが、最初のジム戦で進化して勝利する……。ゲームでも嬉しい瞬間だけど、実際に目の前で見ると、まるで違うな)

胸の奥が熱くなる。

ただ勝っただけではない。

リザードと一緒に戦い、苦戦し、工夫し、最後まで諦めなかったからこそ得られた勝利だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ グレーバッジ、獲得!

 

 

イワークをボールに戻したタケシは、シンヤのもとへ歩み寄った。

 

 

「シンヤ。見事なバトルだった」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

「最初は、ヒトカゲでイワークに挑むと聞いて驚いたよ。だが、君は相性だけに頼らず、煙で視界を奪い、地形を利用し、攻撃を重ねてイワークの動きを制限していった」

 

 

タケシはリザードにも目を向ける。

 

 

「そして、最後まで戦い抜いたヒトカゲ……いや、リザードの粘り強さも見事だった。進化するまでの戦い方を含めて、君たち二人の勝利だ」

 

 

「はい!」

 

 

シンヤはリザードと顔を見合わせた。

タケシはポケットから、灰色の石を思わせるデザインのバッジを取り出した。

 

 

「これを受け取ってくれ。ニビジムのグレーバッジだ!」

 

 

シンヤは両手でそれを受け取る。

 

 

「グレーバッジ……!」

 

 

初めて手にするジムバッジ。

それは、単なる記念品ではない。

ニビジムのジムリーダーに挑み、ポケモンたちと力を合わせて勝ち取った証だった。

 

 

「ありがとうございます、タケシさん! 大切にします!」

 

 

「次のジムでも、その調子で頑張れよ。ただし、今日の勝利に満足せず、ポケモンたちの体調管理も忘れるな」

 

 

「もちろんです。まずは全員をポケモンセンターで休ませます!」

 

 

「ははっ、それなら安心だな」

 

 

タケシは満足そうに笑った。

シンヤはグレーバッジを大切にしまい、リザードを見上げた。

 

 

「リザード。俺たちの最初のバッジだ!」

 

 

「リザァード!」

 

 

リザードは胸を張り、誇らしげに鳴いた。

その様子に、観客席から再び拍手が送られる。

 

 

「おめでとう、シンヤ!」

 

 

「次のジムも頑張れよ!」

 

 

「またバトルしようぜ!」

 

 

シンヤは一人ひとりに手を振った。

 

 

「みんな、ありがとう! また会ったら勝負しよう!」

 

 

旅立ってから、まだそれほど時間は経っていない。

それなのに、シンヤにはすでに多くの出会いがあった。

新しい仲間。初めてのバトル。家族との連絡。そして、初めてのジム戦。

その一つひとつが、これからの旅を形作っていく。

 

 

シンヤはグレーバッジをしまったバッグを肩にかけ、リザードとともにジムの出口へ向かった。

(まずは一つ。次はハナダシティだな)

その先には、まだ見ぬポケモンたちとの出会いが待っている。

そして、いつか再会することになるサトシやシゲル、旅の途中で出会うさまざまなトレーナーたちとの物語も――。

シンヤの旅は、まだ始まったばかりだった。

 

 




【シンヤの手持ち一覧】

・リザード LV:20→LV:21
ヒトカゲはリザードに進化した!
リザードはほのおのパンチ、ドラゴンクローを覚えた!


・ピジョン LV:16→18


・コイキング LV:18


・マンキー LV:15→16


・バタフリー LV:15


・ピカチュウ LV:15→18


【実家のポケモン】
・コラッタ LV:15

・コダック LV:12

・ヤドン LV:15

・ニョロモ LV:12

・トサキント LV:12

・ニドラン♀ LV:15

・オニスズメ LV:12

・ポニータ LV:15

・ドード LV:12

・ニドラン♂ LV:17

・スピアー LV:15
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