朝食を食べ終えたシンヤは、食器を片付けてから父親――マサユキのいる工房へと向かっていた。
廊下を歩きながら、シンヤはふと思った。
(そういえば、父さんってどんな顔をしていたっけ……って、いや、もちろん覚えてるけどさ)
記憶を取り戻したばかりのシンヤにとって、この世界の家族を改めて見つめるのは、なんとも不思議な感覚だった。母のミサキは、上品で美しい女性。
そして父のマサユキは――。
「おっ、シンヤ!」
工房の扉を開けた瞬間、シンヤは思わず足を止めた。
そこにいたのは、作業台に向かって何やら道具を組み立てている若い男性だった。
整った顔立ちに、柔らかい雰囲気。知的でありながら、どこか親しみやすさを感じさせる容姿。
(……あれ?)
シンヤは父親の顔をじっと見つめた。
(この人、どことなく『ポケモンSV』のアカデミーで生物学を教えてるジニア先生に似てない?)
もちろん、似ているだけだ。
髪型も服装も違うし、そもそも目の前にいるのは自分の父親である。
(うん。似てるだけだよね! うん!)
そう自分の中で納得していると、父が笑顔で声をかけてきた。
「あ、シンヤ。起きてきたか! 早速、明日からの旅に持っていくものを受け取りに来たんだな?」
「うん。母さんから、父さんが俺に明日からの旅に役立つ特別な道具を作ったとかなんとか」
「そうだ! この俺――マサユキ渾身の作品だ!」
父は胸を張り、作業台の下から何かを取り出した。
「ま、これは量産できるものじゃないから、息子であるお前専用の道具になるけどな!」
そう言って、彼がシンヤの前に置いたのは――。
「……え?」
レザー製のボストンバッグだった。
落ち着いた色合いに、丈夫そうな革。旅行に使うバッグとしては、かなり上質なものに見える。
しかし、シンヤが目を奪われたのは、その形状だった。
(……んん? この形……)
見覚えがある。とても見覚えがある。
(これ、ガラル地方を旅する主人公が持ってたバッグにそっくりじゃないか!?)
ゲームで何度も見たデザイン。
まさか、自分の父親がそれに似たバッグを作っているとは思わなかった。
「どうだ、いいだろう!」
「う、うん。すごくいいバッグだと思うけど……」
「だろう? だがな、シンヤ。このバッグの真価は、見た目じゃないんだ!」
父はニヤリと笑った。
その表情を見た瞬間、シンヤは嫌な予感がした。
この父親、ただのバッグを作って満足するような人ではない。
発明家という肩書きは伊達ではないのだ。
「このバッグにはな、父さんと母さんが出会って、一緒に旅をしていた頃に手に入れた、あるポケモンに関係するものが使われているんだ!」
「あるポケモン?」
「ああ! 輪っかを操る、不思議なポケモンだったんだが……そのポケモンが使っていた
リングを研究に研究を重ねてな!」
「…………え?」
シンヤの笑顔が固まった。輪っかを操るポケモン。不思議なリング。
それを研究して作った、特殊なバッグ。
(……待って)
(輪っかを操るポケモンって……)
シンヤの脳裏に、一匹のポケモンの姿が浮かんだ。
いたずら好きな性格。空間にリングを作り出し、そこを通じて物を運んだり、遠く離れた場所へつないだりする能力。幻のポケモン。
「……フーパ?」
思わず口から名前が漏れた。
「ん? おお、そうだ! 確か、そんな名前だったな!」
父はあっさりとうなずいた。
(やっぱりフーパじゃねえか!!)
シンヤは心の中で叫んだ。
前世の知識が正しければ、フーパは空間を超えて物体を移動させることができる、非常に特殊なポケモンだ。
その能力に関係するリングを、研究して再利用したというのか。
(いや、ちょっと待ってくれ……)
(うちの父親、何を拾って何を研究してるんだ!?)
しかし、マサユキは息子の内心など気にする様子もなく、得意げに説明を続けた。
「このバッグと、特定の場所に置いてあるものを自由自在に取り出せるようにしてみたんだ!」
「……は?」
「ま、片方ずつのリングを置いておく必要はあるけどな!」
そう言うと、マサユキはバッグの口を大きく開いた。
「ほれ、見てみろ!」
シンヤは恐る恐る、中を覗き込んだ。
バッグの内部は、外見から想像できる普通の空間だった。
だが、奥底には――古びていながらも、まだ十分に使えそうなリングが、広げるように設置されていた。
それは装飾品というより、何らかの機能を持つ装置のようだった。
「これを家の中にある物置や食料保管庫なんかに置いておくと繋がった状態になるんだ!だから、出したいものを念じれば取り出せる優れものだ!」
「…………」
「もちろん、念じなければリングは作動しない。だから普通のバッグと同じ要領で使えるぞ!」
「………………」
「ハーッハッハッハ!」
高らかに笑う父親。
一方のシンヤは、バッグを見つめたまま固まっていた。
(いやいやいやいや……!)
(なんだこの父親!?)
(フーパが使っていたリングを研究して、異次元収納バッグを作ったってこと!?)
もちろん、シンヤはフーパの能力をゲームや映像作品で知っている。
しかし、それを人間が作った道具で再現しているとなれば話は別だ。
リングの性質を分析し、バッグと特定の場所をつなぐ仕組みを構築する。
しかも、必要なものを念じるだけで取り出せるようにする。
(……これ、普通にすごい発明じゃないか?)
いや、普通どころではない。
ポケモンの能力を研究し、人間が利用できる道具へと応用しているのだ。
この世界の技術水準や研究事情にもよるだろうが、少なくともシンヤには、とんでもない発明に思えた。
「そんなわけで、必要最低限のものをこの中に入れておけば、あとは取り寄せればいい! 無駄なく動いていけるぞ!」
「……父さん」
「ん?」
「これ、すごすぎない?」
「だろう!?」
父は満面の笑みを浮かべた。
(あ、今、父さんの後ろに鼻が伸びる幻影が見えた……)
シンヤは思わず遠い目をした。
しかし、冷静に考えてみれば、父がこうした発明を生計の柱にしていることにも納得できる。生活を便利にする道具を作り、それを企業に売り込む。
実用性が高ければ、それだけ需要もあるだろう。
母の実家も裕福らしいため、家庭の経済事情にも余裕がある。
(……うち、思っていた以上にすごい家庭なのでは?)
転生したばかりのシンヤは、まだ自分の家の規模や両親の経歴を完全には把握していなかった。だが、このバッグだけでも十分に理解できる。
父親は、ただの発明好きではない。本物の天才発明家なのだ。
「ちなみに、バッグの中には旅に必要なものを一通り入れておいたぞ!」
「一通り?」
「そうそう!」
マサユキは指を折りながら説明した。
「俺と母さんがトレーナー時代に使っていたものより、はるかに優れているテントに寝袋! 軽い調理器具と道具、水筒、ポケモンフーズと、その容器!」
「おお……」
「それに、きのみを粉末にしたものもあるぞ。ポケモン用と人間用、それぞれの傷薬もな!」
「えっ、そこまで?」
「当然だろう! 旅先で何が起きるかわからないからな!」
父はさらに続ける。
「なんだったら、ジョウト地方を旅したときに、ガンテツって爺さんに作ってもらったボールや、多種多様なボールも入っているぞ!」
「…………」
「それから、ポケモンに技を教えるときに使える技マシンもある!」
「………………」
シンヤは無言でバッグを見つめた。
(……この親、完全に子煩悩だわ)
十歳の息子が一人旅に出る。心配するのは当然だ。
だが、その準備として異次元収納バッグを用意し、寝具や調理道具、食料、薬、さらに多種多様なモンスターボールや技マシンまで揃えるとは。
いくらなんでも手厚すぎる。
(いや、でも……)
シンヤはバッグの持ち手に触れた。
(それだけ愛されているってことなんだよな)
そう思うと、胸の奥がじんわりと温かくなった。
前世の記憶が戻った今だからこそ、なおさら感じる。
自分はこの世界でも、家族に大切にされているのだ。
その事実が、何よりも嬉しかった。
◆この世界の技マシン
(……そういえば)
シンヤはバッグの中に入っているという技マシンについて考えた。
この世界にも、技マシンは存在する。
ただし、ゲームのように使用した瞬間、ポケモンが技を習得するという仕組みではない。
ポケモンに技マシンを使うと、その技の動きや感覚、エネルギーの扱い方などをイメージしやすくなり、習得を助けてくれる。
言うなれば、技を覚えるための補助教材に近い。
例えば、サトシがポケモンにタネマシンガンを練習させるとき、スイカの種を飛ばす練習をさせることがあったり。あれを思い出すとわかりやすい。
技マシンは、その練習をさらに効率化するために、ポケモンの頭の中に技のイメージや感覚を補ってくれるのだ。
ただし、使えば必ず覚えられるわけではない。
ポケモン自身の適性や学習能力、練習量も関係してくる。
(なるほど……ゲームとは仕組みが違うんだな)
シンヤは頭の中で情報を整理した。
この世界では、ゲームの仕様をそのまま当てはめるのではなく、実際のポケモンに合わせて考える必要がある。
そして、技の習得に関して、もう一つ大きな違いがあった。
◆四つの技しか使えないわけではない
ゲームでは、ポケモンが覚えている技のうち、基本的に四つを選んでバトルに臨む。
だが、この世界は違う。
ポケモンが覚えていられる技の数は、個体によって差があるものの、ゲームのように一律四つで制限されているわけではない。
つまり、長い時間をかけて多くの技を習得しているポケモンなら、四つを超える技を覚えていることもある。
ただし、バトル中に一度に使用できる技は、基本的に四つまで。
トレーナーは、覚えている技の中から状況に応じて使う技を選び、指示を出すことになる。
(これ、かなり重要だな……)
ゲームのように、バトル前に四つの技を選び直す必要がない。
その代わり、相手の動きやフィールドの状況を見ながら、瞬時に判断しなければならない。
トレーナーの知識や観察力、判断力が、そのままバトルの結果に影響するのだ。
(前世の知識は使える。でも、それだけじゃ勝てない)
シンヤはそう考えた。実際のポケモンは、生き物だ。
同じ技でも、個体によって威力や使い方が違う。
技の習得数にも個体差がある。
そして、相手がどんな戦術を取るかによって、最適な選択肢も変わる。
(……面白いじゃないか)
思わず、口元が緩んだ。
ゲームで培った知識が、どこまで現実で通用するのか。
そして、自分の目がどこまでポケモンの可能性を見抜けるのか。
確かめたいことが、次から次へと湧いてくる。
◆父と母が歩んだ旅路
「まあ、シンヤ」
マサユキは少しだけ声の調子を落とした。
「俺とミサキは、ポケモンリーグにはあまり興味がなかったんだ。旅そのものが目的だったからな!」
「旅そのものが?」
「ああ! 知らない土地を歩いて、見たことのないポケモンに出会って、現地の人たちと交流して……そういうのが楽しかったんだよ!」
父は懐かしそうに笑った。
「だから、お前も自分の好きな道を選べばいい。リーグに挑戦するもよし、ポケモンコンテストに出るコーディネーターになるもよし! 研究者になったっていいんだ!」
「……うん」
「旅をしていれば、やりたいことが変わるかもしれない。最初に決めた目標にこだわりすぎる必要はないんだぞ!」
その言葉に、シンヤは素直にうなずいた。確かに、その通りだ。
前世ではゲームの中で、いろいろな地方を旅してきた。
しかし、実際に自分がこの世界を旅するとなれば、きっと想像もしなかった出来事が待っている。
「俺のとりあえずの目標は、ポケモンリーグかな?」
「おお! いいじゃないか!」
父の顔がぱっと明るくなる。
「なら、まずはバッジ八個を集めることだな! そのためにも、しっかりポケモンを仲間にするんだぞ!」
「もちろん!」
「仲間の数だけ、ジム攻略の選択肢も増えるからな!」
「……まあ、そうだね」
(父さん、ゲームを遊んでいたわけじゃないだろうに、妙に戦術的なことを言うな……)
もっとも、実際に旅を経験したトレーナーなら、仲間のポケモンが増えることの重要性はよく理解しているのだろう。
タイプの相性だけでなく、個体ごとの得意分野や技の組み合わせによっても、戦い方は変わる。
ポケモンの数が増えれば、それだけ対応できる状況も増えるのだ。
そのとき、工房の入口から母の声がした。
「二人とも、ずいぶん盛り上がっているわね」
振り返ると、ミサキが微笑みながら立っていた。
「母さん」
「ふふっ。シンヤ、あなたも知っているでしょう? うちが普通の家庭より少し広い理由」
「ああ。父さんの工房があるからだよね?」
「それもあるけれど、もう一つあるでしょう?」
ミサキは窓の外を指さした。
工房の奥には、広い敷地が広がっている。
そこには木々や草地、池などがあり、ポケモンたちが暮らせる環境が整えられていた。
「お父さんが発明に使う素材には、ポケモンから得られるものもあるでしょう? だから、ポケモンたちが安心して暮らせる場所も用意してあるの」
(……そうだった)
シンヤは記憶をたどった。
父の発明には、ポケモンが落とす素材や、ポケモンの生態から着想を得た材料が使われることがある。
そのため、家にはオーキド研究所にも負けないほどの広い敷地があり、両親がトレーナー時代に仲間にしたポケモンたちが暮らしていた。
もちろん、素材を得るためだけにポケモンを扱っているわけではない。
長年一緒に旅をした、大切な仲間たちだ。
今では、それぞれのペースでのんびり過ごしている。
「それでね、シンヤ」
ミサキは続けた。
「あなたが旅先でポケモンを捕まえて、手持ちが六匹を超えた場合は、オーキド博士の研究所ではなく、うちに転送されるようにしてあるの」
「……えっ?」
シンヤは目を丸くした。
「博士にも話を通してあるわ。もちろん、捕まえたポケモンの数やデータは報告してもらうことになるけれどね」
「ポケモンたちのケアもあるからね。うちに送られてきた子たちは、私たちが責任を持って世話をするわ。手持ちを入れ替えたいときも、連絡してくれれば大丈夫よ」
「…………」
シンヤはしばらく黙り込んだ。
(つまり……)
(ポケモンの預かりシステムが、最初から自宅に実装されているってこと!?)
前世のゲームでは、手持ちがいっぱいになったとき、捕まえたポケモンがボックスへ送られる仕組みがあった。
この世界では、その役割を両親が担ってくれるらしい。
しかも、ただ預かるだけではない。
ポケモンの健康や生活環境まで配慮してくれる。
(……うちの両親、どこまで準備してくれてるんだよ)
ありがたい。
ありがたいのだが、あまりにも手厚い。
十歳で旅に出る息子を心配する両親の気持ちが、ひしひしと伝わってくる。
「もちろん、旅先で捕まえたポケモンを必ず送らなきゃいけないわけじゃないわ。あなたが一緒に連れていきたいなら、そのまま手持ちにしてもいいのよ」
「うん、わかった。ありがとう、母さん」
「どういたしまして」
ミサキは嬉しそうに微笑んだ。
「それに、私たちのポケモンもいるから、初めて預けられる子が寂しくならないようにできると思うわ」
その言葉を聞いて、シンヤは改めて感心した。
(……なるほど。両親が旅をしてきた経験が、そのまま俺の旅の支えになってくれるんだ)
ポケモンを捕まえることは、ゴールではない。
仲間にした後も、食事や健康管理、訓練、休息など、やるべきことはたくさんある。
父の発明品も、母の知識も、そして広い敷地で暮らすポケモンたちも。
これからの旅で、きっと大きな助けになるだろう。
◆旅立ち前の贈り物
「さて、と」
マサユキは壁に掛けていた時計を見た。
「そろそろ、俺は出かけないとな」
「出かけるの?」
「ああ。これからヤマブキシティまで行って、新商品の開発企画書を提出しなきゃならないんだ」
シンヤは少しだけ表情を曇らせた。
ヤマブキシティといえば、カントー地方でも有数の大都市だ。
マサユキの発明品は、そこで企業や関係者に評価され、商品化されることもあるらしい。
「……じゃあ、明日の見送りは?」
シンヤが尋ねると、父は申し訳なさそうに頭をかいた。
「すまんな。どうしても外せない仕事なんだ」
「そっか……」
「だからこそ、せめてこれだけは今日、渡しておきたかったんだよ」
マサユキは、改めてボストンバッグをシンヤに差し出した。
「シンヤ。これは、お前の旅のために作ったものだ。必要なものを取り出せるからといって、何でもかんでも持ち歩く必要はない。自分で考えて、本当に必要なものを選ぶんだぞ」
「……うん」
「それから、ポケモンたちを大切にな。強くなることも大事だが、それ以上に、仲間を信じることを忘れるなよ」
父の声は、いつもの陽気な調子とは少し違っていた。
発明家としての言葉ではなく、一人のトレーナーとしての言葉だった。
「旅先では、困ったこともあるだろう。失敗することだってある。そんなときは、ちゃんと考えて、周りの人にも頼るんだ」
シンヤはバッグを受け取った。
両手でしっかりと抱きしめる。
「……ありがとう、父さん」
自然と言葉がこぼれた。
前世の記憶を思い出したばかりだからこそ、その言葉には、今まで以上の気持ちがこもっていた。
自分はこの世界で、愛されて育った。
そして、これから旅立とうとしている。
その旅を、両親は心から応援してくれているのだ。
「いいってことよ!」
マサユキはいつもの調子に戻り、豪快に笑った。
「ハッハッハ! んじゃ、俺は出かけるぞ、ミサキ!」
「ええ、行ってらっしゃい、あなた」
ミサキが近づき、マサユキと軽く口づけを交わす。
長年連れ添った夫婦らしい、自然なやり取りだった。
それを見ていたシンヤは、バッグを抱えたまま固まった。
(……うん。仲がいいのはいいことだ)
(いいことなんだけど……目の前でやられると、ちょっと反応に困るな!?)
そんなシンヤの内心をよそに、マサユキは工房の出口へ向かった。
「シンヤ! 明日から、思いっきり楽しんでこいよ!」
「うん! 父さんも仕事頑張って!」
「ああ、任せとけ!」
父は笑顔で手を振り、家を出ていった。
扉が閉まる。工房には、母とシンヤだけが残された。
シンヤは改めて、腕の中にあるバッグを見下ろした。
普通のバッグに見える。
だが、その内側には、父が長い時間をかけて研究した不思議なリングがある。
旅の道具だけではない。
父の技術と、母との思い出。そして、自分への愛情が込められた贈り物だ。
「……大事に使わないとな」
シンヤが呟くと、ミサキが隣から微笑んだ。
「ええ。きっと、あなたの旅を助けてくれるわ」
「うん」
シンヤは顔を上げた。明日、オーキド博士の研究所へ行く。
そこで、最初のパートナーとなるヒトカゲと出会う。
前世の知識も、波動の眼も、まだ使いこなせているわけではない。
それでも、これから始まる冒険が楽しみで仕方なかった。
(……待ってろよ、ポケモンの世界)
(ゲームでは出会えなかった、本物の仲間たちに会いに行くんだ)
シンヤは、バッグの持ち手を握り直した。
その瞳の奥で、かすかな波動が揺らめいた。
まだ誰も知らない。
この少年が、どれほど多くのポケモンの可能性を見抜くことになるのか。
そして、明日出会う一匹が、彼にとってどれほど大切な存在になるのか。
旅立ちまで、あと一日。