ポケットモンスター~波動の眼を持つ少年~   作:レイザル

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ちなみに作者、三鳥の中で一番好きなのサンダーなんですよね
皆さんは誰が好きですかね?


第26話 伝説の雷鳥サンダー!共闘するシンヤとポケモンたち!!

◆伝説のポケモンを救え!

 

 

無人発電所の入り口。

青白い電光をまとったサンダーが姿を現した瞬間、ロケット団員たちの目の色が変わった。

 

 

「サンダーだ……! 本物の伝説のポケモンだぞ!」

 

 

「ついに見つけた! これを捕まえれば、ボスも俺たちを認めてくださるはずだ!」

 

 

先ほどまでシンヤとレンを警戒していた団員たちも、今や二人のことなど眼中にない。

彼らの意識は、目の前の獲物――サンダーだけに集中していた。

その様子を横目で確認したシンヤは、隣にいるレンへ小声で話しかけた。

 

 

「レン。今のうちに頼みたいことがある」

 

 

「何かしら?」

 

 

「ラルトスにテレポートを使ってもらって、あそこに倒れているポケモンたちのところまで移動してほしい。フシギダネも一緒に連れていってくれないか?」

 

 

レンは一瞬だけ傷ついたポケモンたちへ目を向け、すぐに頷いた。

 

 

「わかったわ。ラルトス、お願いできる?」

 

 

「ラルッ!」

 

 

ラルトスは真剣な顔で頷いた。

 

 

「フシギダネも頼む。倒れているポケモンたちを、できるだけ安全な場所に集めてほしい。まだ戦闘が続いているから、くれぐれも無理はしないようにな」

 

 

「ダネネ!」

 

 

二匹の身体が淡い光に包まれる。

次の瞬間、ラルトスのテレポートによって、二匹の姿がその場から消えた。

 

 

「……よし」

 

 

シンヤは改めて前方へ視線を戻した。

サンダーはロケット団の攻撃を防ぎながら、発電所の奥へ追い詰められていた。

伝説のポケモンといえど、無制限に力を振るえるわけではない。

 

 

周囲には発電設備が密集している。高出力の電気技を放てば、設備を破壊し、さらに大規模な停電や事故を引き起こす恐れがある。

それを本能的に理解しているのか、サンダーは攻めあぐねているようだった。

対してロケット団は、その制約を利用して攻撃を続けている。

 

 

「どうした、サンダー! 伝説のポケモンってのは、その程度なのか!?」

 

 

「よし、怯んでいるぞ! 全員、攻撃を続けろ!」

 

 

サンダーは翼を広げ、迫りくる技を防いでいた。

だが、その身体から放たれる電気は不安定になりつつある。

シンヤは拳を握った。

 

 

(このままじゃ、サンダーの体力が先に尽きる……!)

 

 

しかし、今はまだ動けない。

先に、倒れているポケモンたちを助けなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ラルトスとフシギダネの救助活動

 

 

一方、テレポートで移動したラルトスとフシギダネは、傷ついたポケモンたちのそばに現れた。

 

 

最初に反応したのは、エレブーだった。

 

 

「エレ……ッ!」

 

 

傷だらけの身体を引きずりながら、二匹を警戒する。

知らないポケモンが突然目の前に現れたのだ。ロケット団に襲われた直後なら、警戒するのも当然だった。

 

 

「ラルトス……」

 

 

ラルトスは怯えさせないように、ゆっくりと近づいた。

そして、優しい光を放つ。

いやしのはどう。

淡い光がエレブーの身体を包み込んだ。

痛みが少しずつ和らぎ、荒かった呼吸が落ち着いていく。

 

 

「エレ……?」

 

 

エレブーは戸惑ったようにラルトスを見つめた。

ラルトスは小さく頷く。

自分たちは敵ではない。

傷ついたポケモンたちを助けに来たのだと、そう伝えるように。

やがてエレブーの肩から力が抜けた。

 

 

「エレブー……」

 

 

その様子を見たラルトスは、ほっとしたように微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、フシギダネはすぐに救助活動を始めていた。

 

 

「ダネ!」

 

 

つるのムチを伸ばし、倒れているコイルやビリリダマ、ベトベターたちを、戦闘の影響が及びにくい場所へ慎重に移動させる。

力任せに引っ張ることはしない。

 

 

傷ついているポケモンの身体に負担がかからないよう、相手の状態を確かめながら運んでいく。ラルトスも、必要に応じていやしのはどうを送り、ポケモンたちを落ち着かせた。

こうして、二匹は協力して救助活動を進めていった。

 

 

 

 

 

 

だが――。

 

 

 

 

 

 

「ラ、ラル……!」

 

 

最後の数匹を移動させた頃には、ラルトスの呼吸は明らかに荒くなっていた。

負傷したポケモンたちが多かっただけでなく、今のテレポートでは複数のポケモンをまとめて移動させていた。

小さな身体にかかる負担は、決して小さくない。

それでも、ラルトスは最後まで仕事をやり遂げた。

 

 

「ダネフシ!!」

 

 

フシギダネがラルトスのそばへ寄り添う。

二匹は互いに頷き合い、再びテレポートを使った。

淡い光が二匹を包み込み、次の瞬間にはシンヤとレンのそばへ戻っていた。

 

 

「ラルトス!」

 

 

レンはすぐに駆け寄った。

ラルトスは疲れ切った様子で、彼女の腕の中へ倒れ込む。

 

 

「ありがとう、ラルトス。本当によく頑張ったわね」

 

 

レンは優しく抱きしめ、その頬に小さくキスをした。

 

 

「ラル……♪」

 

 

ラルトスは嬉しそうに目を細める。

 

 

「今はゆっくり休んでね」

 

 

レンはラルトスをモンスターボールへ戻した。

その表情には、信頼する仲間への感謝が浮かんでいた。

シンヤもフシギダネの頭を撫でる。

 

 

「フシギダネもありがとう。助かったよ」

 

 

「ダネ!」

 

 

フシギダネは誇らしげに胸を張った。

 

 

「それじゃ、レン。回復薬を渡す。倒れているポケモンたちの治療を頼めるか?」

 

 

「もちろんよ」

 

 

シンヤはバッグから回復薬や治療用の道具を取り出し、レンに渡した。

レンはそれを受け取ると、すぐに負傷したポケモンたちのもとへ向かった。

シンヤはその背中を見送り、再びロケット団へ視線を戻す。

 

 

 

 

 

 

――ここから先は、自分の仕事だ。

 

 

 

 

 

 

レンとフシギダネたちが助けたポケモンを、二度と傷つけさせるわけにはいかない。

ロケット団、異変に気づく!

 

 

「……ん?」

 

 

ロケット団員の一人が、ふと周囲を見回した。

 

 

「おい、待て。さっきまでそこにいたコイルたちはどこへ行った?」

 

 

「はあ? 何言ってんだ。そんなの、そこらへんに――」

 

 

「いねえんだよ! ビリリダマもベトベターも、エレブーまでいなくなってる!」

 

 

「何だと!?」

 

 

団員たちは慌てて周囲を見渡した。

つい先ほどまで倒れていたポケモンたちが、忽然と姿を消している。

 

 

「まさか……あのクソガキどもか!?」

 

 

彼らの視線が、ようやくシンヤとレンへ戻った。

しかし、すでに手遅れだった。

レンは回復薬を使い、負傷したポケモンたちの治療を進めている。フシギダネもそのそばで、つるのムチを使ってポケモンたちを安全な場所へ移動させていた。

 

 

「てめえら! 何をしやがった!」

 

 

「何って、傷ついたポケモンたちを助けただけだが?」

 

 

シンヤは平然と答えた。

 

 

「ふざけるな! そいつらは俺たちが利用するために――」

 

 

「利用するため?」

 

 

シンヤの声が低くなる。

 

 

「ポケモンを傷つけて、無理やり利用することが当たり前だと思っているのか?」

 

 

「うるせえ! ガキが偉そうに説教するんじゃねえ!」

 

 

団員たちは怒声を上げ、再びポケモンたちに攻撃を命じた。

 

 

「マタドガス、ヘドロばくだん!」

 

 

「ゴルバット、つばさでうつ!」

 

 

「ドククラゲ、バブルこうせん!」

 

 

複数の攻撃が、シンヤとサンダーへと襲いかかる。

サンダーは翼を広げ、迫りくる技を防いだ。

だが、攻撃は止まらない。

 

 

「はははっ! どうした、サンダー! 防いでばかりじゃ何もできねえぞ!」

 

 

「このまま押し切れ! 伝説のポケモンだろうが、体力が尽きれば終わりだ!」

 

 

サンダーは守るを使い、攻撃を防ぎ続けていた。

しかし、守るにも限界がある。

技を維持するための集中力も必要だ。何度も攻撃を受け続ければ、いつか防御を突破されてしまう。

 

 

サンダー自身もそれを理解しているのだろう。

苛立たしげに翼を震わせながらも、周囲の設備を巻き込まないよう、反撃の機会をうかがっていた。

 

 

 

そして、その様子を見ていたシンヤは――。

 

 

「……もう十分だ」

 

 

静かに呟いた。

サンダーは伝説のポケモンだ。

圧倒的な力を持ち、ロケット団員たちを一掃することも不可能ではないだろう。

 

 

それでも、今のサンダーは発電所の設備を気遣い、思うように戦えずにいる。

その制約につけ込んで、一方的に攻撃を続けるロケット団。

シンヤが黙って見ている理由は、もうなかった。

 

 

「レン!」

 

 

「ええ、準備はできているわ!」

 

 

レンは治療の手を止めず、顔を上げて答えた。

彼女のそばには、イーブイ、ピッピ、プリンの三匹が控えている。

 

 

「みんな、お願い! シンヤのポケモンたちを援護してあげて!」

 

 

「イーブイ!」

 

 

「ピッピ!」

 

 

「プリン!」

 

 

三匹が一斉に声を上げた。

彼女たちが使うのは、味方の攻撃を助ける技――てだすけ。

イーブイがシンヤのリザードたちへ向けて声援を送り、ピッピとプリンも続く。

その気持ちを受け取った六匹のポケモンたちが、一斉に前へ出た。

 

 

「よし……!」

 

 

シンヤは六つのモンスターボールを順番に確認するように見渡した。

 

 

リザード。

ピジョン。

バタフリー。

ニドキング。

フシギダネ。

ゼニガメ。

 

 

それぞれの目には、戦う意志が宿っていた。

 

 

「みんな、いくぞ!」

 

 

シンヤの声が響き渡る。

 

 

「リザード! ドラゴンクロー!」

 

 

「ピジョン! つばめがえし!」

 

 

「バタフリー! エアスラッシュ!」

 

 

「ニドキング! れいとうビーム!」

 

 

「フシギダネ! やどりぎのタネ!」

 

 

「ゼニガメ! みずのはどう!」

 

 

六匹が一斉に動いた。

 

 

「リザァァッ!!」

 

 

リザードの爪が光り、目の前にいたゴルバットへと鋭く振り下ろされる。

 

 

「ピジョォォッ!!」

 

 

ピジョンは翼をたたみ、急角度で旋回。リザードの攻撃に続くように、つばめがえしを叩き込んだ。二匹の攻撃を受けたゴルバットは、体勢を崩して地面へ落下する。

 

 

「ゴルバット!」

 

 

ロケット団員が叫んだ。

しかし、攻撃はまだ終わらない。

 

 

「バタフリー!」

 

 

「フリィィッ!」

 

 

バタフリーが大きく羽ばたく。

鋭い風の刃――エアスラッシュが、ロケット団のポケモンたちを横から襲った。

 

 

「うわっ!?」

 

 

「避けろ!」

 

 

逃げようとしたポケモンたちの前へ、ゼニガメが飛び出した。

 

 

「ゼニッ!」

 

 

放たれたみずのはどうが地面を滑るように広がり、相手の足元を崩す。

その隙を逃さず、フシギダネが頭のつぼみから種を飛ばした。

 

 

「フシギダネ!」

 

 

やどりぎのタネが次々と命中する。

蔓が伸び、ロケット団のポケモンたちの身体へ絡みついた。

 

 

「なっ、何だこりゃ!?」

 

 

「動けねえ!おいお前ら動け?!」

 

 

ポケモンたちが身動きを取れなくなった、その瞬間――。

 

 

「ニドキング! れいとうビーム!」

 

 

「ニドォォキングッ!!」

 

 

ニドキングが口を開き、冷気を帯びた光線を放った。

凍てつく光が戦場を走り抜ける。

やどりぎの蔓によって拘束されたポケモンたちに、れいとうビームが次々と命中した。

蔓の周囲から氷が広がり、複数のポケモンたちが氷に覆われていく。

 

 

もちろん、シンヤは発電設備へ攻撃が届かないよう、ニドキングに射線を調整させていた。それでも、戦場の光景は一変した。

ロケット団のポケモンたちは、拘束され、凍りつき、ほとんど身動きが取れなくなっていた。

 

 

「なっ……!?」

 

 

「こ、こんなガキに……!?」

 

 

「おい、どうするんだよ! このままじゃ、ボスに知られたら大変なことになるぞ!」

 

 

ロケット団員たちの顔から血の気が引いていく。

そのとき、一人の団員が周囲を見回して叫んだ。

 

 

「おい! 誰かドガースか、マタドガスをまだ連れてねえか!?」

 

 

「何をする気だ!?」

 

 

「決まってんだろ! こうなったら大爆発で――」

 

 

その団員は、言葉の途中で空を見上げた。

そして、動きを止めた。

 

 

「…………」

 

 

ほかの団員たちも、彼の視線を追う。

 

 

 

 

 

そこには――。

光り輝くサンダーが、翼を広げて佇んでいた。

その全身から、凄まじい電気が放たれている。

青白い光が羽毛を縁取り、周囲の空気が震える。

そして、その眼には。

ロケット団への、明確な怒りが宿っていた。

 

 

「さ、サンダー……?」

 

 

サンダーはゆっくりと翼を大きく広げる。

その身体が、さらに強い光に包まれる。

シンヤは思わず目を見開いた。

 

 

 

 

(あの技は――!)

 

 

 

 

伝説のポケモンの全身に、凄まじいエネルギーが集まっていく。

 

 

「ピィィィィィィィッ!!」

 

 

サンダーが天へ向かって飛び上がった。

そして、光の塊となって急降下する。

 

 

 

 

ゴッドバード。

 

 

 

 

伝説のポケモンの力を凝縮した、渾身の一撃だった。

 

 

「う、うわああああああっ!!」

 

 

次の瞬間。

轟音と閃光が、無人発電所の入り口を包み込んだ。

爆発のような衝撃波が地面を走り、ロケット団員たちと、その場に残っていたポケモンたちをまとめて吹き飛ばした。

 

 

「ぎゃああああああっ!!」

 

 

「覚えてろおおおおおおっ!!」

 

 

ロケット団員たちの叫び声が、遠ざかっていく。

黒い服の集団は、空の彼方へと吹き飛ばされていった。

やがて、轟音が静まる。

発電所の入り口に残ったのは、シンヤとレン、そしてポケモンたち。

その中央に、サンダーが静かに降り立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆伝説のポケモンが選んだ道

 

 

「…………」

 

 

サンダーはしばらくの間、何も言わずにシンヤたちを見つめていた。

シンヤもまた、サンダーを見つめ返す。

波動の眼を通して伝わってくるのは、強い警戒心と怒り。そして、戦いを終えたことによる疲労だった。

レンは最後のポケモンに回復薬を使い終え、ゆっくりと立ち上がった。

 

 

「これで、ひとまず治療は終わったわ。みんな、まだ疲れているけれど、さっきよりはずっと落ち着いたみたい」

 

 

「ありがとう、レン」

 

 

「ふふっ。お礼なら、この子たちにも言ってあげてちょうだい」

 

 

レンはラルトスの入ったモンスターボールに手を添えた。

 

 

「ラルトスもフシギダネも、本当によく頑張ったもの」

 

 

シンヤは頷き、傷ついていたポケモンたちを見渡した。

コイルも、ビリリダマも、ベトベターも、そしてエレブーも。

全員がまだ万全とはいえないものの、命に関わるような状態からは脱しつつあった。

 

 

「……よかった」

 

 

シンヤが安堵の息を吐いた、そのとき。

サンダーが、静かに一歩前へ出た。

 

 

「サンダー……?」

 

 

サンダーはまず、シンヤを見た。

次に、レンを見た。

そして最後に、傷ついていたポケモンたちへと視線を向けた。

シンヤは、サンダーが何を考えているのかを慎重に読み取ろうとした。

 

 

サンダーは知能が高い。

自分を捕らえようとしたロケット団と、傷ついたポケモンを助けたシンヤたちの違いを、十分に理解しているようだった。

しかし、それでもサンダーは簡単に人間を信用するわけではない。

 

 

長い時間をかけて築かれた警戒心が、すぐに消えるはずもなかった。

シンヤはモンスターボールを手に取ることもなく、ただ静かに声をかけた。

 

 

「俺たちは、お前を捕まえに来たわけじゃない」

 

 

サンダーの翼が、わずかに動いた。

 

 

「街の電気が止まっていたから、原因を調べに来ただけだ。結果的にお前を助けることになったけど……別に、何かを要求するつもりもない」

 

 

レンも、穏やかな声で続ける。

 

 

「あなたがどこへ行くのかも、私たちが決めることじゃないわ。あなた自身が決めればいいのよ」

 

 

サンダーは二人を見つめたまま、しばらく動かなかった。

 

 

 

 

 

やがて――。

 

 

 

 

 

 

バサッ!

 

 

 

 

 

 

大きく翼を広げる。

その羽ばたきが、周囲の空気を震わせた。

サンダーは最後にもう一度、シンヤとレン、そして傷ついたポケモンたちを見渡した。

 

 

そして、何も言わずに空へと舞い上がった。

青白い光が遠ざかっていく。

やがて、その姿は空の彼方へ消えていった。

 

 

「……行っちゃったわね」

 

 

レンが空を見上げる。

 

 

「ああ」

 

 

シンヤも、サンダーが消えていった方角を見つめていた。

伝説のポケモンを捕まえる機会だった、と考えるトレーナーもいるかもしれない。

だが、シンヤにとっては違った。

サンダーが自分の意思で飛び立っていったこと。それが何より大切だった。

 

 

「元気でな、サンダー」

 

 

小さく呟いたシンヤの隣で、レンが微笑む。

 

 

「ふふっ。あなたらしいわね、シンヤ」

 

 

「そうか?」

 

 

「ええ。だって、もし捕まえようとしていたら、今ごろ私が止めていたもの」

 

 

「……それは勘弁してくれ」

 

 

(けどバッジ8個集め終わったらまた来て、居たらゲットはしたいかな?)

 

 

二人は顔を見合わせ、少しだけ笑った。

こうして、無人発電所での戦いは幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ジュンサー、再び!

 

 

それから、しばらくして。

ハナダシティでは、もう一つの戦いが繰り広げられていた。

ロケット団の別働隊が、街の各所で騒ぎを起こし、ジュンサーたち警察官の動きを封じていたのだ。

 

 

しかし、そこへ思いがけない助っ人たちが現れた。

それは、シンヤがハナダ岬へ向かう途中で戦った、あの百人連続バトルのトレーナーたちだった。

 

 

「おい、警察が動けないなら、俺たちが手を貸すぜ!」

 

 

「シンヤのやつなら、ここにいたら同じことをするはずだ!」

 

 

「だったら、俺たちもできることをやろうぜ!」

 

 

彼らはそれぞれのポケモンと協力し、ロケット団の別働隊を追い払うことに成功した。

やがて街の混乱が収まり、停電の原因を調べるための応援も到着する。

ジュンサーは無人発電所へ急行した。

そして、そこで見た光景に目を丸くした。

 

 

「……これは、一体?」

 

 

発電所の入り口付近には、傷ついたポケモンたちが集まっていた。

その中心にいたのは、シンヤとレンだった。

 

 

「シンヤ君! レンちゃん!」

 

 

「ジュンサーさん!」

 

 

ジュンサーは二人のもとへ駆け寄った。

 

 

「無事だったのね! いったい何があったの?」

 

 

シンヤは、ロケット団の目的から戦闘の経緯、サンダーが現れたこと、そして最後に飛び去っていったことまで、順を追って説明した。

ジュンサーの表情は、話を聞くにつれて険しくなっていった。

 

 

「ロケット団が……伝説のポケモンを捕獲しようとしていたなんて」

 

 

「はい。街で起こした騒ぎも、警察がこちらへ来られないようにするためだったようです」

 

 

「そう……。それで、あなたたちは二人だけで、こんな危険な場所に……」

 

 

ジュンサーは深く息を吸った。

 

 

 

 

 

そして――。

 

 

 

 

 

「シンヤ君! レンちゃん!」

 

 

「は、はい!」

 

 

「どうしてそんな危険なことをしたの!?」

 

 

二人は思わず背筋を伸ばした。

 

 

「あなたたちが無事だったからよかったものの、相手は犯罪組織なのよ! 伝説のポケモンまで関わっていたなんて……! もし大怪我でもしていたら、どうするつもりだったの!?」

 

 

「……すみません」

 

 

シンヤは素直に頭を下げた。

 

 

「私も、軽率だったわ。ごめんなさい」

 

 

レンも謝る。

ジュンサーはしばらく二人を見つめていたが、やがてため息をついた。

 

 

「……でも、あなたたちが負傷したポケモンたちを助けてくれたことは、本当に感謝しているわ。発電所の設備にも大きな被害は出ていないようだし、街の方も応援のおかげで落ち着いたみたい」

 

 

彼女は二人に向き直り、改めて頭を下げた。

 

 

「ありがとう。あなたたちのおかげで、たくさんのポケモンが救われたわ」

 

 

「いえ。俺たちだけの力じゃありません」

 

 

シンヤは周囲のポケモンたちへ目を向けた。

 

 

「レンも、ポケモンたちも、みんな頑張ってくれましたから」

 

 

「ふふっ。そうね」

 

 

レンが微笑む。

ジュンサーも、ようやく表情を和らげた。

 

 

「それと、今回の件は私たち警察で責任を持って調査するわ。あなたたちは、これ以上無理をしないこと。約束できる?」

 

 

「はい」

 

 

「もちろんよ」

 

 

こうして、無人発電所の事件はひとまず解決した。

街への電力供給も、設備の点検と復旧作業を経て、順次回復していくことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆新たな仲間たち

 

 

さて、事件は解決した。

だが、シンヤにとっては、まだ終わっていないことがあった。

 

 

「……みんな、俺と一緒に来たいのか?」

 

 

シンヤの目の前には、何匹ものポケモンたちが集まっていた。

コイル。

ビリリダマ。

ベトベター。

そして――エレブー。

 

 

彼らは、シンヤとレンをじっと見つめていた。

今回の戦いを通して、シンヤたちの戦い方やポケモンへの接し方を見ていたのだろう。

その中には、シンヤと一緒に旅をし、バトルを経験してみたいと考えている個体がいた。

シンヤは一匹ずつ、波動の眼で状態と意思を確かめた。

 

 

「なるほど……。みんな、バトルに興味があるんだな」

 

 

コイルが、身体を小さく震わせる。

ビリリダマは、ころころとシンヤの足元へ転がってきた。

ベトベターも、嬉しそうに両手を上げる。

 

 

「わかった。俺と一緒に来るか?」

 

 

三匹は、そろって嬉しそうに反応した。

シンヤはモンスターボールを取り出し、それぞれの意思を確認してから仲間に迎えた。

そして最後に、エレブーへ向き直る。

エレブーは腕を組み、堂々とシンヤの前に立っていた。

 

 

「エレブー!」

 

 

「……君もか?」

 

 

「エレブ!」

 

 

エレブーは、力強く頷いた。

どうやら、シンヤの戦い方に興味を持ったらしい。

あのロケット団を相手に、仲間たちと連携して戦った姿。それが、エレブーの心を動かしたのだろう。

 

 

「わかった。これからよろしくな、エレブー!」

 

 

シンヤはモンスターボールを掲げ、エレブーを仲間に迎えた。

 

 

「エレブーッ!」

 

 

エレブーの元気な声が、発電所に響き渡った。

 

 

「また増えたわね、シンヤのポケモン」

 

 

レンが苦笑する。

 

 

「……そうだな」

 

 

シンヤは自分のバッグを見た。

すでにかなりの数のポケモンを仲間にしている。

もちろん、全員を同時に連れ歩くことはできない。

だからこそ、両親の家で待っている仲間たちにも、しっかりと面倒を見てもらう必要がある。

 

 

「この子たちも、家にいるみんなと仲良くなれるといいな」

 

 

シンヤは、新しく仲間になったポケモンたちへ笑顔を向けた。

彼らがどんな成長を見せるのか。

これからどんなバトルを経験するのか。

それを考えるだけで、シンヤの胸は期待でいっぱいになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆棚からぼた餅?

 

 

無人発電所での手続きとポケモンたちの確認を終えた二人は、帰路についた。

ところが、その途中。

 

 

「……ん? 何か聞こえないか?」

 

 

シンヤが足を止めた。

遠くから、何かがぶつかるような音が響いてくる。

 

 

「確かに……。この先からかしら?」

 

 

二人は音のする方へ向かった。

すると、岩山へ続く道の近くで、二匹のポケモンが姿を現した。

一匹は、鍛え上げられた腕を持つワンリキー。

もう一匹は、巨大な身体と鋭い角を持つイワークだった。

 

 

本来なら、イワヤマトンネルなどで見かけることの多いポケモンたちだ。

どうやら無人発電所での激しい戦闘音が響き、普段いる場所から出てきてしまったらしい。

 

 

「ワンリキーに、イワーク……!」

 

 

シンヤの目が輝いた。

 

 

「まさか、こんなところで出会えるとは!」

 

 

レンは、そんなシンヤを見てくすりと笑った。

 

 

「ふふっ。さっき事件を解決したばかりなのに、もう新しい出会いを楽しみにしているのね」

 

 

「もちろん! せっかく出会えたんだから、ちゃんと挨拶しないとな!」

 

 

シンヤは二匹の様子を観察した。

どちらも警戒しているが、こちらへ攻撃を仕掛けてくる様子はない。

 

 

「よし……。まずは、落ち着いて話をしてみよう」

 

 

シンヤはポケモンたちへ向き直った。

新しい出会いは、まだまだ続いていく。

こうしてシンヤは、ワンリキーとイワークも仲間に迎えることになった。

思いがけない出会いが続いた一日。

まさに、棚からぼた餅である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆次なる目的地へ

 

 

無人発電所での事件を解決し、新たなポケモンたちを仲間にしたシンヤとレン。

ハナダシティへ戻る道すがら、二人は今日の出来事を振り返っていた。

 

 

「それにしても、伝説のポケモンに会えるなんて思わなかったわ」

 

 

「俺もだよ。サンダーが無事に飛び立ててよかった」

 

 

「ふふっ。あなた、最後まで捕まえようとしなかったものね」

 

 

「捕まえることだけが、ポケモンとの出会いじゃないからな」

 

 

シンヤは空を見上げた。

そこには、もうサンダーの姿はない。

それでも、あの伝説のポケモンと過ごした時間は、きっと忘れられないものになるだろう。

 

 

「さて、街に戻ったら、みんなの状態を確認して、家に送るポケモンたちの記録も整理しないとな」

 

 

「本当に忙しいわね、シンヤは」

 

 

「それがトレーナーだからな」

 

 

「はいはい。ふふっ」

 

 

レンは楽しそうに笑い、シンヤの隣を歩き続けた。

二人の旅は、まだ始まったばかり。

新しい仲間との出会いも、未知の冒険も、これから先に待っている。

 

 

そして、シンヤのバッグには、今回仲間になったポケモンたちのモンスターボールが増えていた。

というかどんどん実家にいるポケモンは増えていく。

またオーキド博士がデータを受け取ったら、どんな悲鳴を上げるのだろうか。

そんなことを考えながら、シンヤは小さく笑った。

 

 

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