◆ またもや父からの発明品!
クチバジムでマチスを破り、三つ目のバッジとなるオレンジバッジを手に入れたシンヤ。
ジム戦で活躍したフシギダネ、ニドキング、リザードをはじめ、ポケモンたちの回復が終わるまで、シンヤはポケモンセンターで待機していた。
その間、彼はいつものように実家へ連絡を入れる。
『もしもし、母さん?』
『あら、シンヤ! ちょうど連絡しようと思っていたところよ。オレンジバッジは取れた?』
「もちろん! ただ、今回はマチスさんがかなり強いポケモンを出してきてさ。特に最後のライチュウは本当に強かったよ」
『まあ! それは帰ってきてから詳しく聞かせてちょうだい』
画面の向こうでミサキが嬉しそうに微笑む。
すると、隣から父マサユキが顔を出した。
『おお、シンヤ! ちょうどいいところに!』
「父さん?」
『新しい発明品を作ったんだ! バックの中に入れておいたから、取り出してみてくれ!』
「……はい?」
シンヤは一瞬、固まった。
新しい発明品。
父親からこの言葉を聞くと、どうしても嫌な予感がする。
以前も、空間をつなぐリングを応用した特殊な旅行用バッグを渡されたばかりだ。
そのバッグには、食料や道具を収納できるだけでなく、特定の場所へとつながる仕組みまで組み込まれている。
普通の発明家が一生かけても実現できるかどうかわからないような代物を、父は比較的あっさり作ってしまうのだ。
「……また何かすごいものを作ったの?」
『ハッハッハ! まあ、使えばわかる!』
父の笑い声を聞きながら、シンヤはバッグに手を入れた。
そして取り出したものを見て、首を傾げる。
「……グローブ?」
それは、手の甲から手首にかけてを覆う、黒を基調としたグローブだった。
手のひらの中央には、まるでリングが埋め込まれているかのような円形の装置が取り付けられている。
装飾品にしては機械的で、作業用の道具にしては不思議な形状をしていた。
「これ、何に使うの?」
『それはな、ポケモン転送用グローブだ!』
「……ポケモン転送用?」
『そう! 以前渡したバッグと同じく、フーパのリングの仕組みを応用しているんだ。装着者が自分のポケモンを思い浮かべれば、そのポケモンが入っているモンスターボールを、手元へ転送できる!』
「…………」
シンヤは無言でグローブを見つめた。
『もちろん、登録した自分のポケモンに限るぞ。誰かのポケモンを勝手に呼び出したり、知らない場所にあるモンスターボールを無差別に引っ張ってきたりするようなものじゃない。転送先の安全性や、ボールの識別も考慮してある』
「………………」
『どうだ? 便利だろう!』
「……父さん」
『なんだ?』
「まーた、とんでもない発明をしてる……!」
『ハッハッハ! 褒め言葉として受け取っておこう!』
「いや、褒めてるけどさぁ……!」
シンヤは思わず頭を抱えた。
バッグだけでも十分に規格外だったのに、今度はモンスターボールそのものを手元へ転送するグローブである。
もはや、どこまで便利になれば気が済むのだろうか。
しかし、少し考えると、その有用性はすぐに理解できた。
「……これ、もしかして」
『おっ、気づいたか?』
「実家に預けているポケモンたちも、必要なときにすぐ呼び出せるってこと?」
『その通りだ! もちろん、呼び出すポケモンを選べるぞ。状況に応じて必要な仲間を手元へ転送できるようにしてある』
シンヤの表情が変わった。
今まで、実家に預けているポケモンをバトルへ連れていく場合、基本的には手持ちを入れ替えるためにポケモンセンターなどで手続きをする必要があった。
しかし、このグローブがあれば、状況に応じて必要なポケモンを呼び出せる。
もちろん、ジム戦などで定められた手持ちの制限や、公式戦のルールまで無視できるわけではない。転送できることと、実際にバトルへ出せることは別問題だ。
それでも、旅先でポケモンの選択肢が大きく広がることに変わりはない。
「これは……かなり便利だな」
『だろう? ただし、使うときは周囲の安全を確認するんだぞ。いきなり狭い場所に大きなポケモンを呼び出したら危ないからな!』
「それはそうだね……」
シンヤは苦笑した。
父の発明は、便利であると同時に、使う側にも相応の注意を要求する。
それでも、このグローブがあれば、実家に預けている仲間たちとの距離が、今まで以上に近くなる。
シンヤはグローブを大切にしまった。
「ありがとう、父さん。大事に使うよ」
『おう! それから、もう一つ話があるんだが――』
「……まだあるの?」
『ハッハッハ! 今度は発明品じゃないぞ!』
シンヤは胸をなで下ろした。
少なくとも、今すぐ新しい発明品が飛び出してくるわけではないらしい。
……たぶん。
◆ サント・アンヌ号のチケット
『そういえば、バッグの中にサント・アンヌ号のチケットを入れておいたんだ』
「チケット?」
シンヤは首を傾げた。
サント・アンヌ号。
クチバシティの港から出航する、豪華客船だ。
ゲームの記憶を持つシンヤにとっては、なじみ深い名前だった。
「サント・アンヌ号って、あの豪華客船の?」
『そうそう。クチバから乗れる船だな』
「……それで、どうしてそのチケットが俺のバッグに?」
『実は、私の発明品がポケモンたちの生活や治療、育成に役立っているということで、ポケモン大好きクラブから招待されたんだ』
父は少しもったいぶるように続けた。
『サント・アンヌ号で開かれるパーティーと、そこで開催されるポケモンバトル大会の参加資格をもらってな』
「……バトル大会?」
シンヤの目が輝いた。
『そうだ。ポケモン大好きクラブの会員には、ポケモンを愛でたり世話をしたりするのが好きな人だけじゃなく、バトルを楽しむ人もいる。今回はそういう人たちも参加できる大会らしい』
「へえ……!」
『ただ、私はパーティーというものにあまり興味がなくてな。母さんも子供の頃にそういう集まりには散々参加して、もう飽きているそうだ』
『ええ。おいしいものを食べるのは好きだけれど、着飾って挨拶をして回るのは、もう十分だわ』
母ミサキが笑った。
『だから、シンヤに譲ろうと思ってな』
「俺に?」
『ああ。チケット一枚につき、同行者を一人まで連れていけるそうだ』
シンヤは画面の向こうにいる両親を見つめた。
つまり――。
「……レンを連れていけるってこと?」
『そういうことだな』
『せっかくの機会だもの。お友達と楽しんでいらっしゃい』
ミサキは、ちらりとレンの姿が画面に映っていることに気づきながらも、あえて余計なことは言わなかった。
「ありがとう! ちょうどクチバにいるし、行ってみるよ!」
『ああ。大会に出るなら、ルールをよく確認するんだぞ』
「わかってるよ!」
こうしてシンヤは、サント・アンヌ号で開催されるポケモンバトル大会への参加資格を手に入れたのだった。
なお、本人はまだ知らない。
この豪華客船での催しが、単なるパーティーと大会だけで終わるとは限らないことを。
◆ レンの目標
両親との通話を終えたシンヤは、グローブとチケットを手元に置いた。
その様子を、隣で見ていたレンが不思議そうに眺めている。
「それで、シンヤ。サント・アンヌ号ではバトル大会に出るつもりなの?」
「ああ。せっかく参加資格をもらったんだし、出てみたいな」
「そう……」
レンは少し考えるように目を伏せた。
「私は、バトル大会には参加しないつもりよ」
「そうなのか?」
「ええ。今の私は、まだ自分のポケモンたちを十分に鍛えられていないもの」
そう言いながら、レンは自分のモンスターボールを取り出した。
「無人発電所での一件もあったでしょう? あのとき、私のポケモンたちはシンヤのポケモンたちを支えてくれたけれど……もっと強くなれれば、できることも増えると思うの」
シンヤは頷いた。
確かに、あのときレンのラルトスは、負傷したポケモンたちをテレポートで安全な場所へ運び、いやしのはどうで心を落ち着かせていた。
イーブイやピッピ、プリンも、てだすけでシンヤのポケモンたちを支援していた。
彼女のポケモンたちは、単純に相手を倒すことだけを目的としているわけではない。
味方を助け、仲間を強化し、状況を整える。
そうした役割を大切にしているのだ。
「なるほどな。それなら、特訓に付き合うよ」
「本当?」
「もちろん。俺だって、レンのポケモンたちがどんなふうに成長するのか興味があるし」
「ふふっ、ありがとう」
レンは嬉しそうに微笑んだ。
「それで、鍛えるのは誰にする?」
「そうね……」
レンは指先を顎に当て、考え込む。
「まずはラルトス。将来はサーナイトに進化させたいと思っているの。それからイーブイはニンフィアに、クチートも大切に育てたいわ。
マリルも、いずれはマリルリに進化させたいと思っているのよ」
「その四匹が主力候補か」
「ええ」
レンはモンスターボールを四つ、順番に並べた。
ラルトス。
イーブイ。
クチート。
マリル。
彼女が今後の旅で、特に力を入れて育てていきたいポケモンたちだ。
「もちろん、ほかの子たちも大切よ。プリンとピッピは、まだ仲間になったばかりだもの」
レンはプリンとピッピのボールを手に取った。
「この二匹は、しばらく進化させないつもりなの」
「そうなのか?」
「ええ。今の姿がとてもかわいいでしょう? それに、抱きかかえるのにもちょうどいい大きさなのよ」
「……なるほど」
「何か言いたそうね?」
「いや、レンらしいなって思っただけだよ」
「ふふっ。褒め言葉として受け取っておくわ」
レンは満足そうに笑った。
シンヤはその様子を見て、ふと思い出したように尋ねる。
「そういえば、レン」
「何かしら?」
「レンは、将来何を目指しているんだ?」
「……私の目標?」
「ああ。俺はポケモンリーグに挑戦するつもりだけど、レンはどうなのかなって。今まで、ちゃんと聞いたことがなかったからさ」
レンは少しだけ驚いた顔をした。
確かに、二人は一緒に旅をしてきたが、互いの目標について詳しく話したことはなかった。
やがて、レンはゆっくりと口を開いた。
「私はね……もう少しポケモンたちを鍛えたら、ポケモンコンテストに出てみたいと思っているの」
「ポケモンコンテスト?」
「ええ。ポケモンの強さだけではなく、技の美しさや魅せ方、ポケモンとトレーナーの息の合った演技などを競うものよ」
「なるほど。ポケモンコーディネーターを目指しているってことか」
「そういうことね」
レンは嬉しそうに頷いた。
「私は、ポケモンの持つ美しさや魅力を、もっとたくさんの人に知ってもらいたいの。もちろん、バトルで勝つことも大切だけれど、それだけがポケモンの魅力ではないでしょう?」
「ああ、そうだな」
シンヤは納得した。
言われてみれば、レンは旅の途中でもポケモンたちの身だしなみを整えたり、体調や気分を気にかけたりしていた。
ポケモンが技を使うときも、単純に威力を重視するのではなく、味方を回復させたり、能力を強化したりする技を大切にしている。
彼女にとって、ポケモンとの旅は勝利だけを追い求めるものではないのだ。
「それにね、私には尊敬しているトレーナーがいるの」
「へえ、誰なんだ?」
「カロス地方のチャンピオンよ」
「カロスのチャンピオン……!」
シンヤは思わず反応した。
レンの故郷であるカロス地方。
その地方のチャンピオンといえば、ポケモンの強さだけでなく、美しさや気品を備えたトレーナーとしても知られている存在だ。
「カロスチャンプというと――――女優もしているカルネさんか。カルネさんに憧れているのか」
「ええ。だからこそ、私も自分のポケモンたちと一緒に成長して、いつか胸を張れるコーディネーターになりたいの」
レンはラルトスのボールをそっと撫でた。
「この子は、私にとって最初の大切なパートナーなの。だから、いつかサーナイトに進化させたいと思っているわ」
その表情は、普段のいたずらっぽい笑顔とは少し違っていた。
優しく、真剣で、ポケモンへの深い愛情が感じられる表情だった。
シンヤは静かに頷いた。
「いい目標だと思うよ。レンなら、きっと素敵なコーディネーターになれる」
「……本当に?」
「ああ。俺が保証する」
「ふふっ……ありがとう、シンヤ」
レンの頬が、わずかに赤くなった。
◆ 波動の眼が見抜く、三匹の成長
シンヤは改めて、レンのポケモンたちに視線を向けた。
波動の眼が働き、彼女たちの状態が少しずつ見えてくる。
ラルトス。
イーブイ。
マリル。
この三匹は、すでに進化に必要な条件をかなり満たしているように感じられた。
もちろん、進化は単純な数値だけで決まるものではない。
ポケモン自身の気持ちや、トレーナーとの信頼関係、経験、そして進化するための条件が関わってくる。
それでも、今の三匹には確かな成長が感じられた。
「……レン」
「何かしら?」
「ラルトスとイーブイ、それにマリル。この三匹、かなり成長していると思う」
「本当?」
「ああ。俺の目から見ても、進化に向けて十分なところまで来ているように感じるんだ。あとは経験を積んで、もっと自信をつけていけばいいと思う」
「まあ……!」
レンは三匹のボールを見つめた。
「そうなのね……。私、毎日一緒にいるからこそ、少しずつ成長していることはわかっていたけれど……」
「今の状態なら、実戦を経験するのもいい刺激になると思う」
「実戦……」
レンは考え込んだ。
彼女が目指しているのはポケモンコンテストだ。
だからといって、バトルを避ける必要はない。
むしろ、ポケモンの能力を理解し、技の使い方を工夫し、どんな状況でも落ち着いて行動できるようになることは、コンテストでも役立つはずだ。
シンヤは、そこで一つの提案をした。
「だったらさ。サント・アンヌ号のバトル大会に参加してみないか?」
「……え?」
「もちろん、優勝することだけが目的じゃない。今のレンのポケモンたちに、実戦の経験を積ませるいい機会になると思うんだ」
シンヤは指を折りながら説明した。
「相手のポケモンを観察すること。技を使うタイミングを考えること。自分のポケモンの得意なことを理解すること。そういう経験は、きっとこれからの旅にも役立つはずだ」
「でも……私、バトル大会には出ないつもりだったのよ?」
「うん。それは聞いたよ。でも、レンはバトルで勝つことだけを目指しているわけじゃないだろ?
だったら、勝敗だけにこだわらず、経験を積むために参加するのも悪くないと思うんだ」
レンは黙って考えた。
サント・アンヌ号での大会。
そこには、さまざまな地方からトレーナーたちが集まるかもしれない。
普段の旅では出会えないようなポケモンや、思いもよらない戦術に触れる機会もあるだろう。
そして何より――。
自分のポケモンたちが、どれほど成長したのかを確かめることができる。
「……そうね」
レンは顔を上げた。
「それも、いいかもしれないわね」
「本当か?」
「ええ。私の目標はポケモンコンテストだけれど、だからといってバトルを経験しなくていいわけではないもの」
彼女は四つのモンスターボールを大切そうに手に取った。
「ラルトスも、イーブイも、クチートも、マリルも……みんな、もっといろいろな経験をさせてあげたいわ」
「じゃあ、一緒に参加するってことでいいんだな?」
「ええ。ただし――」
レンは、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
「特訓には、あなたも付き合ってもらうわよ? シンヤ」
「もちろん!」
「それから、私のポケモンたちが困っていたら、きちんと助けてちょうだいね」
「わかってるよ」
「ふふっ。頼りにしているわ」
こうしてレンもまた、サント・アンヌ号で開催されるポケモンバトル大会への参加を決めた。
シンヤにとっては、未知のトレーナーたちと戦う絶好の機会。
レンにとっては、将来の夢へ向かうための新たな一歩。
そして二人にとっては、旅の仲間として互いの成長を確かめ合う機会となるだろう。
「よし! それじゃあ、まずはポケモンセンターで回復を済ませて、特訓を始めよう!」
「ええ。よろしくね、シンヤ」
レンは微笑み、シンヤと並んで歩き出した。
クチバシティの港には、豪華客船サント・アンヌ号が待っている。
その船で待ち受けるものが何なのか――二人はまだ知らない。
ただ一つ確かなのは、彼らの旅がまた新しい局面へと進もうとしていることだった。
【レンの手持ち一覧】
・イーブイ(♀) LV:23(フェアリー技取得済)
・ラルトス(♀) LV:25(進化レベル到達済み)
・クチート(♀) LV:24
・マリル(♀) LV:22(十分なつき度)
・プリン(♀) LV:20
・ピッピ(♀) LV:20
感想でもあったのですが特性を出すか出さないかについて。期限はある程度表が集まり次第まで
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出す。セキエイリーグから出す
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出さないか。ホウエンからでいいやろ