ポケットモンスター~波動の眼を持つ少年~   作:レイザル

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第32話 経験値を求める少年の連戦!

サント・アンヌ号のバトル大会。

最初の対戦相手としてシンヤの前に立ったのは、長年ポケモンと共に歩んできた年配の紳士だった。

その隣には、堂々たる体格を誇るウインディ。

炎のような橙色の毛並みは美しく、立ち姿には威厳がある。何より、トレーナーが少し視線を動かすだけで、ウインディもその意図を察しているかのように反応していた。

 

 

(このウインディ……相当な経験を積んでいるな)

 

 

シンヤは波動の眼を通して、ウインディの状態を確かめる。

身体能力は高く、技の扱いも安定している。そして何より、戦闘への集中力が素晴らしい。

一朝一夕で身につくものではない。

長い年月を共に過ごし、幾度となくバトルを重ねてきたからこその連携だろう。

 

 

「それでは、よろしくお願いします!」

 

 

「こちらこそ。君のポケモンがどんな戦いを見せてくれるのか、楽しみにしているよ」

 

 

互いに挨拶を交わし、二人はバトルスペースの両端へと移動した。

 

 

「では、始めよう! ウインディ!」

 

 

「頼んだぞ、ゼニガメ!」

 

 

シンヤがモンスターボールを投げると、青い身体に甲羅を背負ったゼニガメが飛び出した。

 

 

「ゼニッ!」

 

 

対するウインディは、地面を踏みしめながら雄々しく吠える。

 

 

「ウインディ、まずはしんそくです!」

 

 

ウインディの身体が一瞬で加速した。

 

 

「速い!?」

 

 

ゼニガメが身構えるより早く、ウインディはその横を駆け抜け、勢いを利用して体当たりを仕掛ける。

 

 

「ゼニガメ、横に跳べ!」

 

 

ゼニガメは間一髪で飛び退いた。

しかし、ウインディは着地と同時に方向を変え、再びゼニガメへと迫る。

 

 

「かえんほうしゃ!」

 

 

炎が一直線に放たれた。

 

 

「からにこもる!」

 

 

ゼニガメは甲羅の中へ身体を引っ込め、炎を受け止める。

だが、炎の勢いは強い。

 

 

「ゼニガメ、無理に耐え続けるな! 横に転がって抜け出せ!」

 

 

ゼニガメは甲羅のまま横へ転がり、炎の射線から逃れた。

 

 

「よし! みずでっぽう!」

 

 

反撃の水流がウインディを襲う。

しかし、ウインディは軽やかに身をひねり、水流をかわした。

 

 

「見事だ……」

 

 

シンヤは思わず感心する。

ウインディの動きは単純に速いだけではない。ゼニガメの技を見てから反応しているのではなく、相手の視線や身体の動きから、攻撃の方向を予測しているのだ。

経験の差が、はっきりと表れていた。

 

 

「ウインディ、もう一度! しんそく!」

 

 

「ゼニガメ、バブルこうせんで進路を塞げ!」

 

 

ゼニガメが泡を放ち、ウインディの進行方向を覆う。

だが、ウインディは地面を蹴り、泡の隙間を縫うように駆け抜けた。

 

 

「なっ……!」

 

 

回避したウインディが、ゼニガメの側面へと回り込む。

 

 

「かみくだく!」

 

 

「ゼニガメ!」

 

 

強烈な一撃。

ゼニガメの身体が地面を滑り、甲羅が床にぶつかって音を立てた。

観戦していたトレーナーたちから、どよめきが起こる。

 

 

「おお、あのウインディは強いな!」

 

 

「動きに無駄がない……!」

 

 

シンヤはゼニガメの様子を確認した。

負傷はしている。だが、まだ戦える。

 

 

(焦るな。相手は強い。でも、付き合いはまだ短いけどゼニガメだってここまで一緒に旅をしてきたんだ)

 

 

「ゼニガメ、こっちを見ろ!」

 

 

「ゼニ……?」

 

 

シンヤの声に、ゼニガメが顔を上げる。

 

 

「相手の動きが速いからって、全部に反応しようとしなくていい。ウインディの速さは確かにすごい。でも、どこに向かうかは、必ず動きに表れる!」

 

 

シンヤは右手を動かし、ウインディの走る軌道を示した。

 

 

「相手を追いかけるんじゃない。相手が来る場所を考えるんだ!」

 

 

ゼニガメはじっとウインディを見つめた。

そして、小さく頷く。

 

 

「ゼニッ!」

 

 

その表情から、先ほどまでの焦りが消えていた。

 

 

「いいぞ。それじゃあ、もう一度いこう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆反撃開始! 水の波動を重ねろ!

 

 

「ウインディ、かえんほうしゃ!」

 

 

炎が迫る。

 

 

「ゼニガメ、右へ避けろ! そのままみずでっぽう!」

 

 

ゼニガメは炎をぎりぎりでかわし、すかさず水流を放った。

ウインディは身体をひねって回避する。

 

 

「ならば、次はしんそくだ!」

 

 

再びウインディが加速する。

しかし、ゼニガメは今度こそ慌てなかった。

相手の脚の向き、身体の傾き、視線。

シンヤの言葉を思い出しながら、ウインディが進む方向を予測する。

 

 

「そこだ! バブルこうせん!」

 

 

ゼニガメは、ウインディが飛び込んでくる位置へ向けて泡を放った。

ウインディは直撃を避けたものの、進路を変えざるを得なくなる。

 

 

「いいぞ、ゼニガメ!」

 

 

シンヤの声が響く。

ゼニガメは嬉しそうに鳴きながら、さらに攻撃を仕掛けた。

 

 

「みずのはどう!」

 

 

青白い波動が放たれる。

ウインディは横へ跳んだ。

 

 

「まだだ! ウインディ、かえんほうしゃ!」

 

 

年配のトレーナーは即座に指示を出した。

炎がゼニガメへと迫る。

 

 

「からにこもる!」

 

 

ゼニガメは甲羅で炎を受け流し、炎が途切れた瞬間に飛び出した。

 

 

「そのまま、みずのはどう!」

 

 

再び水の波動が放たれる。

ウインディは素早く身を翻し、攻撃をかわした。

 

 

 

 

だが――。

 

 

 

「よし、そこだ!」

 

 

シンヤの声に、年配のトレーナーが目を見開く。

ウインディが避けた先。

そこには、すでにもう一つの水の波動が放たれていた。

最初の攻撃を放った直後、シンヤはゼニガメに次の攻撃を準備させていたのだ。

ウインディが回避する方向を予測し、その逃げ道へ先回りするように攻撃を重ねていた。

 

 

「ウインディ!」

 

 

二つ目の水の波動が命中した。

 

 

「ウインッ!」

 

 

ウインディの身体が大きく揺らぎ、地面へと倒れ込む。

 

 

「今だ! みずでっぽう!」

 

 

ゼニガメは倒れたウインディへ向けて水流を放った。

ウインディは立ち上がろうとしたものの、力が入らず、その場に再び伏せる。

審判役が確認し、腕を上げた。

 

 

「ウインディ、戦闘不能! 勝者、ゼニガメ!」

 

 

一瞬の静寂。

 

 

そして――。

 

 

「ゼニィィィッ!」

 

 

勝利を喜ぶように、ゼニガメが大きく鳴いた。

 

 

「よくやった、ゼニガメ!」

 

 

シンヤは駆け寄り、ゼニガメを抱き上げる。

 

 

「最後までよく頑張ったな!」

 

 

「ゼニッ! ゼニッ!」

 

 

ゼニガメも嬉しそうに手足を動かした。

年配のトレーナーは、倒れたウインディを優しくボールへ戻してから、シンヤたちへと歩み寄った。

 

 

「素晴らしいバトルだったよ。最初はウインディの速さに翻弄されていたが、君の言葉でゼニガメが落ち着きを取り戻した。そして最後は、相手の動きを読んで攻撃を重ねた……実に見事だった」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

「ゼニガメ君もよく頑張ったね。これからが楽しみだ」

 

 

男性は笑顔で手を差し出した。

シンヤはその手を握り、しっかりと握手を交わす。

互いの健闘を称え合う、清々しい瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ゼニガメ、カメールへ進化!

 

 

そのときだった。

 

 

「……ん?」

 

 

シンヤの腕の中で、ゼニガメの身体が淡い光を帯び始めた。

 

 

「ゼニガメ?」

 

 

青白い光が身体を包み込み、徐々にその姿が変わっていく。

 

 

「おおっ! 進化か!」

 

 

観戦していたトレーナーたちが声を上げた。

ゼニガメの甲羅が大きくなり、頭部や手足の形も変化していく。

そして――。

光が弾けた。

 

 

 

「カメェェェッ!」

 

 

そこに立っていたのは、進化を遂げたカメールだった!

 

 

「おめでとう、カメール!」

 

 

シンヤは笑顔で声をかける。

カメールは嬉しそうに腕を振り、勢いよく鳴いた。

 

 

「カメッ!」

 

 

先ほどのバトルで得た経験が、進化という形で実を結んだのだ。

レンも少し離れた場所から、目を輝かせていた。

 

 

「すごいわ……! ゼニガメがカメールに進化したのね!」

 

 

「うん。あのバトルで、また一つ成長できたんだ」

 

 

シンヤはカメールの甲羅を軽く叩き、笑いかけた。

 

 

「これからも頼むぞ、カメール!」

 

 

「カメッ!」

 

 

そして、この進化の光景は、会場にいた多くのトレーナーたちの目を引いた。

 

 

「おい、見たか? あの少年!」

 

 

「ウインディを倒したうえに、ポケモンまで進化させたぞ!」

 

 

「さっきのバトル、かなり見応えがあったな……!」

 

 

次々と人が集まり始める。

気がつけば、シンヤの周囲には数十人ものトレーナーが集まっていた。

 

 

「君、次は私とバトルしてくれないか?」

 

 

「いやいや、先に私とお願いしたい!」

 

 

「うちのポケモンも、ぜひ君のポケモンと戦わせてくれ!」

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください! 一人ずつお願いします!」

 

 

シンヤは思わず苦笑した。

だが、内心では――。

 

 

 

 

(来た……!)

 

 

 

 

彼の目が、キラリと輝く。

 

 

(これだけのトレーナーと戦えるなら、実家で鍛えているポケモンたちにも最高の経験になる! しかも、勝利数の多い相手ならポイントも増える!)

 

 

シンヤは右手のグローブに目を落とした。

 

 

(父さんの発明品もある。回復の時間をきちんと確保しながら、いろいろなポケモンを出していける……!)

 

 

そして、彼の心の中で、何かが叫んだ。

経験値を――――経験値を寄越せぇぇぇぇぇっ!!

もちろん、そんな叫びは誰にも聞こえていない。

少なくとも、表面上のシンヤは落ち着いた少年そのものだった。

 

 

「皆さん、ありがとうございます。順番にお相手させていただきます!」

 

 

「本当か!」

 

 

「よし、頼むぞ!」

 

 

「うちのポケモンも負けないからな!」

 

 

次々と対戦希望者が名乗りを上げる。

その様子を見ていたレンは、額に手を当てた。

 

 

「……やっぱり、こうなるのね」

 

 

「レン、どうかしたか?」

 

 

「いいえ。あなたが楽しそうで何よりだと思っただけよ」

 

 

「そうか?」

 

 

「ええ。……でも、ちゃんとポケモンたちの休憩時間は確保するのよ?」

 

 

「ああ、もちろんだ」

 

 

シンヤは真剣な顔で頷いた。

彼にとって、これは単なる勝ち星稼ぎではない。

まだ実戦経験の少ないポケモンたちに、さまざまな相手と戦う機会を与えること。

 

 

そして、どんな相手にも対応できるトレーナーへと成長すること。

その両方を実現できる、絶好の機会なのだ。

シンヤはカメールをいったんボールへ戻し、端末でポイントを確認した。

 

 

画面には、確かに表示されている。

P:1

 

 

「よし……次だ!」

 

 

彼はグローブに意識を集中させる。

次に戦うポケモンを選び、対戦相手の前へと進み出た。

こうして、シンヤの連戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆サント・アンヌ号、バトル大会会場。

 

 

ゼニガメがカメールへと進化したことで、シンヤの周囲は大きな盛り上がりを見せていた。

 

 

「いやあ、素晴らしい試合だった!」

 

 

「次はぜひ私と戦ってくれ!」

 

 

「うちのポケモンも、あの少年と戦いたいと言っているぞ!」

次々と対戦を申し込んでくるトレーナーたち。

シンヤは端末を確認しながら、次の対戦相手を探していた。

その傍らでは、フシギダネがじっとカメールを見つめている。

 

 

「ダネ……」

 

 

先ほどまで一緒に旅をしていた仲間が、バトルで勝利し、進化を遂げた。

それはフシギダネにとっても、決して他人事ではなかった。

自分だって、もっと強くなれる。

もっとシンヤの役に立てる。

そして、いつか自分も――。

 

「フシギダネ?」

 

 

シンヤが声をかけると、フシギダネは勢いよく振り返った。

 

 

「ダネッ!」

 

 

その目には、いつも以上の闘志が宿っていた。

 

 

(……なるほど。カメールの進化に刺激を受けたか)

 

 

シンヤは波動の眼でフシギダネの様子を確認し、口元を緩めた。

普段から真面目なフシギダネだが、今は特にやる気が高まっている。

仲間の成長を見て、自分も負けていられないと思ったのだろう。

 

 

「よし。フシギダネ、お前にも出番を用意してやるからな」

 

 

「ダネフシッ!」

 

 

フシギダネは嬉しそうに鳴いた。

その反応を見たレンも、微笑ましそうに目を細める。

 

 

「ふふっ。カメールの進化が、フシギダネにもいい刺激になったみたいね」

 

 

「ああ。これは期待できそうだ」

 

 

シンヤはそう答え、次の対戦相手へと視線を向けた。

すると、ちょうど一人の男性トレーナーが近づいてきた。

整えられた髪に、上品な服装。立ち振る舞いにも余裕があり、いかにも自信に満ちた人物だった。

 

 

「君が、先ほどウインディを倒した少年かい?」

 

 

「はい。シンヤです」

 

 

「私はアダム。いやあ、君のバトルは実に見事だったよ。特に、相手の回避先を予測して攻撃を重ねた判断力には感心した」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

アダムは微笑みながら、モンスターボールを三つ取り出した。

 

 

「そこで、ぜひ私とも勝負してもらいたい。今回は三対三でどうだろう?」

 

 

「三対三、ですか?」

 

 

「ああ。せっかくの大会だ。お互いのポケモンを存分に活躍させようじゃないか」

 

 

シンヤは一瞬考えたあと、頷いた。

 

 

「分かりました。よろしくお願いします!」

 

 

「決まりだね!」

 

 

アダムは満足そうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆三対三のバトル! フシギダネ、出陣!

 

 

バトルスペースに立った二人は、それぞれのポケモンを選出する。

アダムは三つのモンスターボールを手にした。

 

 

「私のポケモンは、ニャース、ロコン、ガーディだ!」

 

 

三つのボールから、順番にポケモンが飛び出す。

 

 

「ニャー!」

 

 

「コーン!」

 

 

「ガーディ!」

 

 

三匹とも、よく手入れされた身体つきで、アダムの指示を待っている。

 

 

対するシンヤは、端末で自分のポケモンたちの状態を確認していた。

 

 

(最初はフシギダネ。次にタッツー。そして、ユンゲラーを試してみよう)

 

 

フシギダネは、先ほどからバトルをしたくてたまらない様子だ。

タッツーは水中での動きを活かした戦闘が得意であり、ユンゲラーはテレポートやエスパー技を用いた戦術を試すにはうってつけのポケモンだった。

 

 

「俺のポケモンは、フシギダネ、タッツー、ユンゲラーです!」

 

 

「ほう。どんな戦いを見せてくれるのか楽しみだ」

 

 

審判が二人の間に立つ。

 

 

「それでは、三対三のバトルを開始します! バトル中のポケモンの交代は自由です!」

 

 

両者が頷いた。

 

 

「では――バトル開始!」

 

 

「行け、フシギダネ!」

 

 

「ニャース、頼んだよ!」

 

 

最初に飛び出したのは、フシギダネとニャースだった。

 

 

「ニャース、ひっかく!」

 

 

ニャースが地面を蹴り、鋭い爪を振りかざす。

 

 

「フシギダネ、横に跳んで避けろ!」

 

 

フシギダネは軽やかに身をかわした。

 

 

「つるのムチ!」

 

 

背中のつぼみから伸びた二本のつるが、ニャースへと迫る。

 

 

「ニャース、後ろへ!」

 

 

ニャースは身をひねり、つるを避けた。

 

 

「いいね! そのまま、ねこだまし!」

 

 

ニャースが一気に間合いを詰める。

 

 

しかし――。

 

 

「フシギダネ、足元にはっぱカッター!」

 

 

フシギダネは地面すれすれに葉を飛ばした。

 

 

「ニャッ!?」

 

 

足元を狙われたニャースは、とっさに跳び上がる。

その瞬間、フシギダネが前へ踏み込んだ。

 

 

「たいあたり!」

 

 

「ニャース!」

 

 

勢いの乗った体当たりが直撃する。

ニャースは地面を転がり、起き上がろうとしたが、すぐに力尽きた。

 

 

「ニャース、戦闘不能!」

 

 

「おおっ!」

 

 

周囲から歓声が上がる。

 

 

「フシギダネ、いいぞ!」

 

 

シンヤが声をかけると、フシギダネは嬉しそうに鳴いた。

「ダネッ!」

 

 

その表情は、まだまだ戦えると言わんばかりだった。

アダムは倒れたニャースをボールへ戻し、次のボールを取り出した。

 

 

「なるほど。なかなかやるね。次はロコンだ!」

 

 

「コーン!」

 

 

ロコンがバトルスペースに現れ、フシギダネと向き合う。

 

 

「ロコン、ひのこ!」

 

 

小さな炎が飛んでくる。

 

 

「フシギダネ、横へ避けろ!」

 

 

フシギダネは素早く横へ跳んだ。

 

 

「そのまま、どくのこな!」

 

 

紫色の粉が風に乗って広がる。

 

 

「ロコン、かえんほうしゃで吹き飛ばせ!」

 

 

ロコンは炎を吐き、粉を散らした。

だが、その攻撃こそシンヤの狙いだった。

 

 

「今だ! つるのムチで地面を叩け!」

 

 

フシギダネのつるが地面を強く打つ。

土埃が舞い上がり、ロコンの視界を遮った。

 

 

「ロコン、落ち着いて!」

 

 

アダムが声をかける。

しかし、視界が戻るよりも早く――。

 

 

「はっぱカッター!」

 

 

フシギダネの葉が、土埃の向こうから飛んできた。

ロコンは反応が遅れ、まともに攻撃を受ける。

 

 

「ロコン!」

 

 

それでもロコンは踏みとどまり、炎を放とうとした。

 

 

「フシギダネ、突っ込め!」

 

 

フシギダネは炎が放たれる直前に飛び込み、体当たりを叩き込んだ。

 

 

「コーン……!」

 

 

ロコンが倒れる。

 

 

「ロコン、戦闘不能!」

 

 

再び歓声が上がった。

 

 

「二匹目も倒したぞ!」

「なんて勢いだ!」

 

 

シンヤは目を細めた。

 

 

 

(これは……予想以上だな)

 

 

 

フシギダネの闘志が、まだ衰えていない。

むしろ、戦えば戦うほど調子が上がっているように見える。

 

 

もちろん、無理をしている可能性もある。

シンヤは波動の眼でフシギダネの状態を確認した。

疲労は蓄積しているものの、まだ戦闘を続けられる。集中力も高く、闘志は非常に強い。

 

 

 

 

(よし。まだいける。ただし、最後まで状態を見極めるぞ)

 

 

 

 

アダムは少し驚いた表情を浮かべながらも、最後のモンスターボールを手にした。

 

 

「素晴らしい! だが、私の最後のポケモンはそう簡単には倒せないよ!」

 

 

「ガーディ、行け!」

 

 

「ガウッ!」

 

 

炎をまとったような橙色の身体。

堂々としたガーディが現れ、フシギダネを見据えた。

 

「さあ、ガーディ! かえんほうしゃ!」

 

 

炎が迫る。

 

 

「フシギダネ、避けろ!」

 

 

フシギダネは横へ跳んだが、炎の一部が身体をかすめた。

 

 

「フシギダネ!」

 

 

「ダネー……!」

 

 

フシギダネは一瞬よろめいたものの、すぐに体勢を立て直す。

 

 

「ガーディ、ひのこ!」

 

 

炎の弾が連続して飛んでくる。

フシギダネは左右に跳びながら、攻撃をかわしていく。

 

 

「よし、つるのムチで反撃だ!」

 

 

つるが伸びる。

ガーディは後ろへ跳び、つるを避けた。

 

 

「そのまま、かえんほうしゃ!」

 

 

再び炎が放たれた。

フシギダネは地面を蹴り、炎の射線から外れる。

 

 

だが、ガーディはすぐさま追撃しようとした。

そのとき――。

 

 

「フシギダネ、やどりぎのタネ!」

 

 

フシギダネが種を飛ばす。

ガーディは避けようとしたが、種の一部が身体に命中した。

種からつるが伸び、ガーディの身体に絡みつく。

 

 

「よし!」

 

 

シンヤが拳を握る。

ガーディは身体を揺すり、つるを振りほどこうとする。

だが、その間にも、やどりぎのタネが体力を吸い取っていく。

 

 

「ガーディ、ひのこでつるを焼き払え!」

 

 

ガーディは炎を放ち、絡みついたつるを焼き払った。

しかし、その隙にフシギダネは距離を詰めていた。

 

 

「はっぱカッター!」

 

 

葉が飛ぶ。

ガーディは身体をひねってかわそうとしたが、数枚の葉が命中した。

 

 

「ガーディ、もう一度かえんほうしゃ!」

 

 

炎がフシギダネへ迫る。

 

 

「フシギダネ、地面に向かってつるのムチ!」

 

 

フシギダネはつるを地面に叩きつけ、その反動で身体を跳ね上げた。

炎が足元を通り過ぎる。

空中で身体をひねったフシギダネは、ガーディの頭上へと回り込んだ。

 

 

「今だ! たいあたり!」

 

 

「ガーディ!」

 

 

フシギダネの体当たりが、ガーディの背中へと直撃した。

ガーディは地面へ倒れ込む。

それでも立ち上がろうと前脚に力を込めた。

 

 

「ガウッ……!」

 

 

しかし、身体が震え、再び地面へと伏せる。

審判が状態を確認し、腕を上げた。

 

 

「ガーディ、戦闘不能! 勝者、フシギダネ!」

 

 

「おおおおっ!」

 

 

会場から大きな拍手が巻き起こった。

 

 

「三匹全員を倒したぞ!」

 

 

「すごい! あのフシギダネ、最後まで戦い抜いた!」

 

 

「トレーナーの指示も的確だったが、あのフシギダネの闘志も素晴らしい!」

 

 

シンヤはフシギダネへと駆け寄った。

 

 

「よくやった、フシギダネ! 三匹とも倒すなんて、本当にすごいぞ!」

 

 

「ダーネッ!」

 

 

フシギダネは胸を張り、誇らしげに鳴いた。

だが、その直後――。

フシギダネの身体が、まばゆい光に包まれた。

 

 

「……え?」

 

 

シンヤが目を見開く。

光はフシギダネの全身を包み込み、背中のつぼみが大きく変化していく。

身体が成長し、四肢がしっかりとした形へ変わっていく。

そして――。

 

 

「フシーッ!」

 

 

光が消えたとき、そこには進化を遂げたフシギソウの姿があった。

 

 

「フシギダネ……いや、フシギソウ! お前まで進化したのか!」

 

 

シンヤは驚きながらも、満面の笑みを浮かべた。

 

 

「おめでとう、フシギソウ!」

 

 

「フシッ!」

 

 

フシギソウは力強く鳴き、背中のつぼみを揺らした。

その姿を見て、周囲のトレーナーたちから再び拍手が巻き起こる。

 

 

「また進化したぞ!」

 

 

「一度の三対三で三匹を倒して、そのまま進化とは……!」

 

 

「この少年、いったいどれだけ強いんだ!?」

 

 

アダムもまた、満足そうに笑っていた。

 

 

「いやあ、素晴らしかった! まさか私の三匹全員が倒されるとはね!」

 

 

「ありがとうございました。フシギダネ……フシギソウにとっても、いい経験になりました」

 

 

「いやいや、こちらこそだよ。君のポケモンたちの成長を見られてよかった」

 

 

二人は握手を交わした。

シンヤはフシギソウの身体を確認する。

進化によって身体能力が向上している。背中のつぼみも大きくなり、今後はさらに多彩な戦い方ができるようになるだろう。

 

 

そして何より、今回の勝利はフシギソウ自身の大きな自信につながるはずだ。

 

 

 

(カメールに続いて、フシギソウまで進化するとは……)

 

 

 

シンヤは内心で驚いていた。

だが、同時に喜びも感じている。

二匹とも、着実に成長している。

自分の指示を聞き、戦いの中で考え、勝利を掴み取った。

その成果が、今ここにあるのだ。

 

 

「よし、フシギソウ。これからも一緒に頑張ろうな」

 

 

「フシッ!」

 

 

フシギソウは元気よく返事をした。

 

 

増え続ける挑戦者たち

しかし――。

 

 

シンヤにとって、本当の意味での戦いはここからだった。

フシギソウの進化を見届けたトレーナーたちが、次々と彼のもとへ集まってきたのである。

 

 

「君、次は私と戦ってくれないか!」

 

 

「こちらもお願いしたい!」

 

 

「今の三対三、実に面白かった! ぜひ私のポケモンとも勝負してくれ!」

 

 

「ええと、皆さん、順番にお願いします!」

 

 

シンヤは端末を確認しながら、対戦希望者を整理していく。

「レン、少し待っていてくれるか?」

 

 

「ええ。私は私で、あの子たちの特訓を続けるわ」

 

 

レンは微笑んだ。

 

 

「ただし、あなたも無理はしないこと。ポケモンたちの疲労を見落とさないでね」

 

 

「ああ、もちろん!」

 

 

シンヤは右手のグローブに意識を集中させた。

次の対戦に出すポケモンを選ぶ。

今回は、実家で鍛えられたポケモンを中心に、主力候補の一匹を組み合わせるつもりだった。

 

 

 

(ユンゲラー、コイル、エレブー、ヒトデマン……この四匹も、実戦経験を積ませていきたいな)

 

 

それぞれに異なる長所がある。

 

 

ユンゲラーなら、テレポートとエスパー技を活かした攪乱戦術。

コイルなら、でんじはやひかりのかべを用いた妨害と支援。

エレブーなら、電撃技と近接攻撃を組み合わせた攻防。

ヒトデマンなら、回避と攪乱を織り交ぜた変則的な戦い方。

 

 

相手のポケモンや戦術に応じて、誰を出すべきかを判断する。

それもまた、シンヤ自身の経験になる。

 

 

 

(よし。まだまだいけるぞ!)

 

 

 

彼の心の中では、再びあの叫びが響いていた。

経験値を――――経験値を寄越せぇぇぇぇぇっ!!

もちろん、表情はいたって真剣だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、レンは……

少し離れた別のバトルスペース。

レンはラルトス、マリル、イーブイの三匹を交互に出しながら、対戦相手とバトルを重ねていた。

 

 

「ラルトス、テレポートで距離を取って!」

 

 

ラルトスの姿が一瞬で消え、相手の攻撃を回避する。

 

 

「いいわよ! そのまま、ねんりき!」

 

 

ラルトスは相手の動きを妨げるように念力を放ち、トレーナーの指示に応えていく。

別の試合では、マリルが水技を使って相手の攻撃を受け流し、イーブイは素早い身のこなしで攻撃をかわしながら反撃していた。

レンは勝敗だけを気にしているわけではない。

ラルトスがどんな状況でテレポートを使うのか。

マリルが相手の攻撃をどの程度まで見切れるのか。

イーブイが新しい技を使うとき、どのような判断をするのか。

 

 

一試合ごとに、それぞれの成長を確かめていた。

 

 

「よく頑張ったわね、ラルトス」

 

 

試合が終わると、レンはラルトスを優しく抱き上げ、頭を撫でた。

 

 

「次はマリルの番よ。あなたも頑張りましょうね」

 

 

「マリルッ!」

 

 

マリルは元気よく跳ねた。

レンはそんな三匹を見つめ、微笑んだ。

 

 

 

(シンヤは、きっと今日もたくさんのバトルをするのでしょうね)

 

 

 

 

遠くのバトルスペースでは、シンヤが次の相手と向き合っている。

その周囲には、まだまだ対戦を希望するトレーナーたちが集まっていた。

 

 

「……ふふっ。本当に、あなたらしいわ」

 

 

レンは小さく笑い、再び自分のポケモンたちへと向き直った。

サント・アンヌ号の大会は、まだまだ終わらない。

シンヤは経験を求めて戦い続け、レンは大切なパートナーたちの成長を見守りながら、一歩ずつ前へ進んでいく。

そして船内のどこかでは、別の目的を抱いた二人組が、静かに機会をうかがっていた――。

 

 

感想でもあったのですが特性を出すか出さないかについて。期限はある程度表が集まり次第まで

  • 出す。セキエイリーグから出す
  • 出さないか。ホウエンからでいいやろ
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