ポケットモンスター~波動の眼を持つ少年~   作:レイザル

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一方、その頃のサトシは……


番外編 サトシの試練! 猛獣使いアキラと、シンヤが残した足跡

◆ハナダジムのブルーバッジ

 

 

「ピカチュウ! でんこうせっかだ!」

 

 

「ピカッ!」

 

 

ハナダジムのプールを舞台に、サトシとカスミのバトルが繰り広げられていた。

サトシのピカチュウが水面近くを駆け抜け、カスミのポケモンへ攻撃を仕掛ける。

しかし、ジムリーダーとしての実力を持つカスミも簡単には崩れない。水を利用した戦い方でピカチュウを翻弄し、サトシを追い詰めていく。

 

 

「どうしたの、サトシ! これがジム戦よ!」

 

 

「くっ……! まだまだ!」

サトシが次の指示を出そうとした、その瞬間だった。

 

 

 

 

――ドガァァァン!!

 

 

 

 

 

「きゃあっ!?」

 

 

「な、何だ!?」

 

 

突然、ジムの一角で爆発が起きた。

煙の向こうから現れたのは、黒い制服に身を包んだ三人組。

胸元には、赤い『R』の文字が刻まれていた。

 

 

「ニャーッハッハッハ! お宝をいただきに来たニャ!」

 

 

「ポケモンを渡すんだな!!」

 

 

「そうよ! 大人しくしていれば痛い目に遭わずに済むわ!」

 

 

ロケット団のムサシ、コジロウ、ニャースである。

突然の乱入に、ジム内は大混乱となった。

 

 

「またお前らかぁぁぁ!」

 

 

サトシは思わず叫んだ。

旅を始めてからというもの、何かと顔を合わせる厄介な三人組だ。

カスミも怒り心頭だった。

 

 

「ちょっと! 今はジム戦の最中なのよ! 邪魔しないで!」

 

 

しかし、ロケット団は聞く耳を持たない。

彼らはポケモンを奪おうと、次々と騒ぎを起こしていく。

結果、サトシとカスミのジム戦は中断。

その後、二人は協力してロケット団の騒動を鎮めることになった。

ピカチュウの電撃や、カスミのポケモンたちの活躍もあり、ロケット団はいつものように空の彼方へと吹き飛ばされていった。

 

 

「「「やな感じぃぃぃぃぃ!!」」」

 

 

騒動が収まると、ハナダジムに平穏が戻ってきた。

そして、サクラ、アヤメ、ボタンの三姉妹は、サトシの行動を認めることにした。

 

 

「サトシ君。今回は私たちを助けてくれてありがとう」

 

 

長女のサクラが微笑む。

 

 

「あなたのピカチュウも、よく頑張ったわね」

 

 

アヤメも続けた。

 

 

「だから……これを受け取ってちょうだい」

 

 

三女のボタンが差し出したのは、青いバッジだった。

 

 

「えっ!? それって……!」

 

 

「ブルーバッジよ。ハナダジムのバッジ」

 

 

「やったぁぁぁ! バッジゲットだぜ!」

 

 

サトシは両手を上げて喜んだ。

念願のジムバッジ。

これでポケモンリーグへ向けて、また一歩前進したことになる。

……ただし。

 

 

 

 

(あれ? 俺、ジムリーダーのポケモンに勝ったっけ?)

 

 

 

 

喜びながらも、サトシはふと疑問を覚えた。

確かにロケット団の騒動は解決した。

カスミたちを助けたことも間違いない。

しかし、肝心のジム戦は途中で終わっている。

つまり、厳密にはバトルで勝利してバッジを手に入れたわけではないのだ。

 

 

 

(……まあ、バッジゲットはゲットだ!)

 

 

 

 

サトシは深く考えるのをやめた。

本人としては少々複雑な気持ちだったが、バッジが手に入ったこと自体は嬉しい。

その横で、カスミは三姉妹を睨みつけていた。

 

 

「……ねえ、お姉ちゃんたち?」

 

 

「な、何かしら、カスミ?」

 

 

「まさかとは思うけど……今までにも、ジム戦をさせないでバッジを渡そうとした相手がいたんじゃないでしょうね?」

 

 

「「「…………」」」

 

 

三姉妹の動きが止まった。

カスミの目が、すっと細くなる。

 

 

「……いたのね?」

 

 

「い、いや、その……」

 

 

「正直に話して!」

 

 

「わ、分かったわよ!」

 

 

サクラたちは、ついに観念した。

 

 

「以前、一人の男の子がジムに挑戦しに来たのよ」

 

 

「その日は、ジム戦用のポケモンたちが回復中で……すぐには使えなかったの」

 

 

「だから、水中人魚ショーを手伝ってくれたらバッジをあげるって言ったのよ」

 

 

「…………は?」

 

 

カスミの声が低くなった。

 

 

「ジム戦を申し込みに来たトレーナーに、ジム戦をさせずにバッジを渡そうとしたの?」

 

 

「だ、だって、あのときは仕方がなかったのよ!」

 

 

「仕方がないで済む話じゃないでしょう!」

 

 

カスミの怒声がジムに響く。

サトシは思わず一歩下がった。

 

 

 

(カスミ、怖ぇ……)

 

 

 

タケシも腕を組み、呆れたように息を吐いた。

 

 

「ジムリーダーとしての責任を考えれば、カスミの言うとおりだな」

 

 

「そ、それで……その男の子はどうしたの?」

 

 

カスミが問い詰める。

三姉妹は気まずそうに顔を見合わせた。

 

 

「……断られたわ」

 

 

「えっ?」

 

 

「ジム戦をせずにバッジを渡すことに納得してくれなかったのよ。それで、ジム戦用ではないポケモンを二匹出して戦ったんだけど……」

 

 

「二匹とも、相手のポケモンにほとんど何もできずに負けちゃったの」

 

 

カスミは一瞬、言葉を失った。

そして、改めて尋ねる。

 

 

「……誰よ、そのトレーナーは?」

 

 

三姉妹は、そろって答えた。

 

 

「「「シンヤ君よ」」」

 

 

「…………」

 

 

サトシの表情が、ぴくりと動いた。

 

 

「……また、シンヤかよ」

 

 

思わず口から漏れた言葉。

カスミがサトシを振り返る。

 

 

「シンヤ? それって、あなたが前に話していたマサラタウンの子?」

 

 

「ああ。俺と同じ町の出身で、同じ年に旅に出た奴だよ」

 

 

サトシは少し不機嫌そうに答えた。

もちろん、シンヤが悪いことをしたわけではない。

むしろ、ジムリーダーとしての責任を果たすよう三姉妹に指摘したのなら、正しい行動だったのだろう。

 

 

だが、こうも行く先々で名前を聞かされると、面白くない。

自分だって頑張っているのに、シンヤは先へ先へと進んでいる。

その差を、改めて突きつけられたような気がしたのだ。

隣にいたタケシは、苦笑しながら口を開いた。

 

 

「シンヤか……。彼なら、やりかねないな」

 

 

「タケシまで!?」

 

 

「いや、だってな……」

 

 

タケシは肩をすくめた。

 

 

「ジムリーダーがジム戦をまともに行わず、手伝いの報酬としてバッジを渡そうとしたんだろう? シンヤの性格なら、納得できないと正面から指摘すると思うぞ」

 

 

「…………」

 

 

サトシは黙り込んだ。

タケシの言うとおりだった。

シンヤは昔から、妙なところで真面目な男だった。

 

 

それに、ポケモンのことになると、とことん妥協しない。

だからこそ、今回の件でも三姉妹に意見したのだろう。

カスミは腕を組み、深々とため息をついた。

 

 

「……あの子、ちゃんとジムリーダーに言うべきことを言ったのね」

 

 

「まあな」

 

 

サトシは短く答えた。

そして、手の中のブルーバッジを見つめる。

これは自分が手に入れたバッジだ。

それは間違いない。

 

 

 

 

けれど――。

 

 

 

 

(……俺は、ちゃんと実力で勝って手に入れたかったな)

 

 

胸の奥に、小さな引っかかりが残った。

それでも、サトシは顔を上げる。

 

 

「よし! 次のジムでは、絶対にちゃんと勝ってバッジをゲットするぞ!」

「その意気だ、サトシ」

 

 

タケシが笑った。

カスミも、少しだけ表情を和らげる。

 

 

「ふん。次は私がちゃんとしたジム戦を見せてあげるわよ。お姉ちゃんたちにもね!」

 

 

「「「カスミ、もう許してぇ……」」」

 

 

三姉妹の悲鳴が響き渡った。

こうして、サトシはブルーバッジを手に入れた。

しかし、シンヤの名前はまた一つ、彼の心に引っかかりを残すことになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆十連勝の勢い! サトシ、猛獣使いアキラに挑む!

 

 

その後、サトシたちは旅を続けていた。

目指すは、次の町。

ポケモンリーグに参加するためには、まだまだバッジを集めなければならない。

サトシはピカチュウとともに、日々のトレーニングに励んでいた。

だが、旅の途中で彼らは、少し変わった場所を見つけることになる。

 

 

「……何だ、あれ?」

 

サトシが指さした先には、小さな建物と、その前に立てられた看板があった。

看板には、こう書かれている。

 

 

 

 

挑戦者求む! 百人とのポケモンバトル、百勝を目指す非公認ジム!

 

 

 

 

 

「非公認ジムか……」

 

 

タケシが看板を眺めた。

 

 

「正式なジムではないみたいだな」

 

 

「でも、百人とバトルして百勝って、面白そうじゃないか!」

 

 

サトシの目が輝いた。

 

 

「よーし! 俺も挑戦するぜ!」

 

 

「サトシ、ちょっと待て! 相手の実力も分からないのに……」

 

 

「大丈夫だって、タケシ!」

 

 

サトシはすでに建物へ向かって走り出していた。

タケシは額に手を当てる。

 

 

「……まったく。あいつは本当に変わらないな」

 

 

その後、サトシは建物の主に申し込み、バトルを開始した。

最初の相手。

その次の相手。

さらに次の相手。

サトシは勢いよく勝利を重ねていった。

 

 

「ピカチュウ! でんこうせっか!」

 

 

「ピカッ!」

 

 

相手のポケモンの懐へ飛び込むピカチュウ。

 

 

「今だ! 10万ボルト!」

 

 

電撃が直撃し、相手のポケモンが倒れる。

 

「勝者、サトシ!」

 

 

「よっしゃあ!」

 

 

サトシは拳を突き上げた。

気づけば、十連勝。

 

 

「十連勝だぜ! この調子なら、百勝だって夢じゃない!」

 

 

サトシはすっかり上機嫌だった。

勝利を重ねたことで、自信もついてきた。

 

 

その様子を、少し離れた場所から見つめている少年がいた。

腕を組み、鋭い目つきでサトシを見ている。

その傍らには、砂色の体をしたポケモン――サンドがいた。

 

 

「……おい」

 

 

少年が声をかける。

 

 

「次は俺が相手をしてやる」

 

 

サトシが振り返った。

 

 

「お前は?」

 

 

「アキラ。こいつは俺のサンドだ」

 

 

「サンド!」

 

 

サンドが力強く鳴いた。

サトシは笑顔で拳を握る。

 

 

「よし! 次も勝たせてもらうぜ!」

 

 

アキラは、そんなサトシをじっと見つめていた。

 

 

「……その自信が、どこまで通用するか見せてもらおう」

 

 

そして、バトルが始まった。

 

 

「行け、サンド!」

 

 

「サンドォ!」

 

 

「よし、ピカチュウ! でんこうせっかだ!」

 

 

ピカチュウが地面を蹴り、一気にサンドへ接近する。

 

 

 

 

だが――。

 

 

 

 

「サンド、砂を巻き上げろ!」

 

 

「サンド!」

 

 

サンドが地面を掻き、砂煙を巻き上げた。

 

 

「なっ!? ピカチュウ、気をつけろ!」

 

 

視界が悪くなる。

ピカチュウは攻撃の狙いを定められず、動きを鈍らせた。

 

 

「今だ、サンド! あなをほる!」

 

 

「サンドォ!」

 

 

サンドが地面へ潜り込む。

 

 

「ピカチュウ、上だ!」

 

 

しかし、サンドは地上へ出てこない。

地面の下を移動し、ピカチュウの位置を探っている。

 

 

「くっ……!」

 

 

サトシは焦った。

相手がどこから出てくるのか分からない。

ピカチュウが身構えた、その瞬間――。

 

 

「そこだ! サンド、飛び出して攻撃!」

 

 

「サンドォッ!」

 

 

サンドが地面から飛び出し、ピカチュウへ強烈な一撃を叩き込んだ。

 

 

「ピカチュウ!」

 

 

ピカチュウが吹き飛ばされる。

 

 

「まだだ! 立て、ピカチュウ!」

 

 

サトシが叫ぶ。

ピカチュウはふらつきながらも立ち上がった。

 

 

「よし! 10万ボルトだ!」

 

 

「サンド、避ける必要はない!! 攻撃を受けろ!そして、もう一度あなをほる!」

 

 

サンドは回避することなく受けきる。それに驚き、焦るサトシ。

再び穴を掘るで地上から姿を消すサンド。

そして、今度はピカチュウの背後から飛び出した。

 

 

「ピカチュウ、後ろだ!」

 

 

間に合わなかった。

サンドの攻撃が直撃し、ピカチュウは地面へ倒れ込む。

 

 

「ピカチュウ!?」

 

 

サトシは駆け寄った。

ピカチュウは立ち上がろうとしたが、体に力が入らない。

審判役の男が、静かに宣言した。

 

 

「ピカチュウ、戦闘不能! 勝者、アキラ!」

 

 

「…………」

 

 

サトシは言葉を失った。

十連勝。

その勢いのまま挑んだ相手に、まさかここまで一方的に負けるとは思っていなかったのだ。アキラはサンドの頭を撫でた。

 

 

「よくやったな、サンド」

 

 

「サンド!」

 

 

サンドは嬉しそうに鳴いた。

アキラはサトシへ視線を向ける。

 

 

「お前自体は悪いトレーナーじゃないだろう……だが、勝てると思い込んで、相手をよく見ていなかったな。それとポケモンのタイプ相性ぐらい把握はしておけ」

 

 

「……!」

 

 

「十連勝したことは立派だ。だが、勝ち続けたからといって、次の相手にも勝てるとは限らない」

 

 

サトシは唇を噛んだ。

反論できなかった。

実際、彼は勢いに乗っていた。

相手の実力を見極める前に、勝てると信じて疑わなかった。

その油断が、敗北につながったのだ。

 

 

「……くそっ!」

 

 

サトシは拳を握り締めた。

 

 

「もう一回だ! もう一回、俺とバトルしてくれ!」

 

 

「今は駄目だ」

 

 

アキラはきっぱりと答えた。

 

 

「サンドも戦ったばかりだ。休ませる必要がある。それに、お前も今の敗北を考えろ。

何が駄目だったのかを反省することもトレーナーの務めだろうが」

 

 

「…………」

 

 

サトシは何も言い返せなかった。

アキラはサンドを連れて、その場を離れた。

その背中を、サトシは悔しそうに見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆アキラの目的――百人目の相手

 

 

その日の夕方。

サトシとタケシは、アキラがいる非公認ジムの敷地を再び訪れていた。

サトシは先ほどの敗北が忘れられなかった。

 

 

なぜ、あれほど強いのか。

どうすれば、あのサンドに勝てるのか。

そして、アキラはなぜ百人とのバトルで百勝するという目標を掲げているのか。

知りたいことが山ほどあった。

 

 

「……アキラ」

 

 

サトシは、サンドの手入れをしていたアキラへ声をかけた。

 

 

「お前は、どうして百人とバトルして百勝しようとしているんだ?」

 

 

アキラの手が止まった。

 

 

「……理由が知りたいのか?」

 

 

「ああ。お前ほど強いトレーナーなら、普通にジムを巡ればいいじゃないか」

 

 

アキラはしばらく黙っていた。

そして、サンドの頭を撫でながら話し始めた。

 

 

「俺がこの目標を立てたのは、あるトレーナーに負けたからだ」

 

 

「トレーナー?」

 

 

「ああ。そいつはマサラタウン出身のシンヤというやつだ」

 

 

「……シンヤ!?」

 

 

サトシの声が裏返った。

また、その名前だった。

ハナダジムに続いて、ここでもシンヤの名前を聞くことになるとは。

アキラは気にせず話を続ける。

 

 

「俺は以前、ゴールデンボールブリッジで百人との連続バトルに挑戦した」

 

 

「百人と連続バトル!?」

 

 

サトシが驚く。

 

 

「ああ。俺はそこで、百人目の相手としてシンヤと戦った」

 

 

アキラの表情が引き締まる。

 

 

「……そして、負けた」

 

 

彼は、悔しそうに拳を握り締めた。

 

 

「俺は、自分のサンドが強いと思っていた。実際、それなりに鍛えてきたつもりだった。だが、シンヤのポケモンたちには通用しなかった」

 

 

「…………」

 

 

「シンヤは、ただポケモンを強くしているだけじゃなかった。相手の動きや性格、戦場の状況まで見て、どうすれば勝てるかを考えていた。俺が何をしようとしているのかも、すぐに見抜かれた」

 

 

アキラは目を伏せた。

 

 

「俺は、自分の未熟さを思い知らされたんだ」

 

 

サトシは黙って聞いていた。

アキラの言葉に、嘘は感じられなかった。

 

 

「だから、俺は決めた。もっと強くなる。もっと多くのトレーナーと戦い、自分の未熟なところを見つける。そして、いつかシンヤともう一度戦う」

 

 

アキラは顔を上げた。

 

 

「今度こそ、あいつに勝つためにな」

 

 

その瞳には、強い決意が宿っていた。

サトシは複雑な気持ちになった。

シンヤに負けたことをきっかけに、アキラは自分を鍛え直そうとしている。

そのために、百人とのバトルで百勝するという目標を掲げたのだ。

 

 

「……でもさ」

 

 

サトシは、気になっていたことを尋ねた。

 

 

「どうして、そこまで百人にこだわるんだ?」

 

 

「自分の実力を確かめるためだ。強い相手にも、弱い相手にも、それぞれ学べることがある。俺は、そのすべてを経験したい」

 

 

アキラはサンドを見た。

 

 

「こいつと一緒にな」

 

 

「サンド……」

 

 

サンドは、アキラの言葉を理解しているかのように鳴いた。

サトシは、その光景をじっと見つめていた。

厳しい表情のアキラ。

しかし、サンドを見る目は優しかった。

その姿からは、ポケモンを大切に思っていることが伝わってくる。

 

 

「……なあ、アキラ」

 

 

「何だ?」

 

 

「お前、サンドにかなり厳しい特訓をさせているんだよな?」

 

 

「ああ。強くなるためには、厳しい訓練も必要だ」

 

 

アキラは立ち上がった。

 

 

「見せてやる。俺たちが普段、どんな特訓をしているのか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆厳しい特訓と、ポケモンへの愛情

 

 

アキラが案内した先には、小さな滝があった。

水が岩肌を流れ落ち、勢いよく地面へ打ちつけている。

 

 

「サンド! 今日も滝行だ!」

 

 

「サンドォ!」

 

 

サンドが滝を見上げ、やる気を見せる。

水が苦手なサンドにとって、滝の水を浴び続ける訓練は決して楽なものではない。

それでもアキラは、容赦なく指示を出した。

 

 

「逃げるな! 踏ん張れ! 水の勢いに負けるな!」

 

 

「サ、サンドォォ……!」

 

 

サンドは必死に踏ん張った。

しかし、滝の水圧に押され、何度も体勢を崩してしまう。

その様子を見て、サトシは思わず声を上げた。

 

 

「おい! そんなの、サンドには酷すぎるだろ!」

 

 

アキラが振り返る。

 

 

「何だと?」

 

 

「サンドは水が苦手なんだろ!? そんな無理をさせなくたっていいじゃないか!」

 

 

サトシは怒りを露わにした。

ポケモンに無理をさせること。

苦手なことを無理やりやらせること。

それは、サトシにとって許せないことだった。

だが、アキラは冷静に答えた。

 

 

「サンドが水を苦手としていることは分かっている。だからこそ、少しずつ慣れさせているんだ」

 

 

「でも……!」

 

 

「勘違いするな。俺はサンドを苦しめたいわけじゃない」

 

 

アキラは、滝の下で踏ん張るサンドを見つめた。

 

 

「こいつが苦手なものを克服できれば、戦い方の幅が広がる。水場で戦うことになっても、簡単には崩れなくなる」

 

 

「…………」

 

 

「もちろん、無理をさせすぎれば体を壊す。だから、限界を見極めるのも俺の役目だ」

 

 

アキラはそう言うと、サンドの様子を細かく観察した。

足の踏ん張り。

呼吸の乱れ。

体の震え。

 

 

そして、集中力が切れかけた瞬間。

 

 

「よし、そこまでだ! サンド、上がってこい!」

 

 

「サンドォ……!」

 

 

サンドは滝から出て、アキラのもとへ歩いてきた。

アキラはすぐにタオルで体を拭き、水分を与え、疲労の状態を確認した。

 

 

「よく頑張ったな。今日はここまでだ」

 

 

「サンド!」

 

 

サンドは嬉しそうに鳴き、アキラの胸元へ身を寄せた。

アキラもまた、その頭を優しく撫でる。

先ほどまでの厳しい表情は、すっかり消えていた。

サトシは、その様子を見て言葉を失った。

 

 

 

 

 

(……あいつ、本当にサンドのことを大切にしているんだ)

 

 

 

 

 

ただ厳しいだけではない。

限界を見極め、必要なケアを行い、頑張ったことを認めている。

アキラはサンドを道具として扱っているわけではなかった。

強くなるために厳しい訓練を課しているが、その根底には、サンドへの深い愛情がある。

 

 

サトシは、自分の考えを改めざるを得なかった。

厳しい特訓だからといって、すべてが悪いわけではない。

大切なのは、ポケモンの状態を理解し、本人の意思や限界を考えながら成長を支えることなのだ。そして、それはトレーナーにしかできない役目でもある。

 

 

 

 

(……俺、まだまだ知らないことがあるんだな)

 

 

 

 

サトシは、そっと拳を握った。

シンヤの戦い方。

アキラの訓練。

 

 

どちらも、自分が知らなかったことばかりだった。

強くなるということは、ただ技を覚えさせたり、バトルの数を重ねたりするだけではない。ポケモンを知り、相手を知り、自分自身の未熟さと向き合うこと。

サトシは、そのことを少しずつ理解し始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ロケット団の企み、そして百勝達成!

 

 

その日の夜。

アキラたちの特訓を、物陰からこっそり見ている三人組がいた。

 

 

「見たか、ムサシ。あのサンド、なかなか強そうじゃないか」

 

 

コジロウが目を輝かせる。

 

 

「ええ。あれだけ鍛えられているなら、売り物としても高くつきそうね」

 

 

ムサシが口元を歪めた。

 

 

「ニャー! 強いポケモンを奪ってボスに献上すれば、きっと大喜びニャ!」

 

 

ニャースが両手をこすり合わせる。

そう、またしてもロケット団だった。

三人は、強いサンドを奪おうと企んでいたのである。

 

 

「よし! 作戦開始よ!」

 

 

「待ってろよ、サンド!」

 

 

「ニャーッハッハッハ!」

 

 

三人は飛び出し、いつものように大げさな登場を果たした。

だが――。

 

 

「何だ、お前たちは?」

 

 

アキラが冷たい視線を向ける。

 

 

「ふふふ! そのサンドをいただきに来たわ!」

 

 

「大人しく渡してもらおうか!」

 

 

「ニャー!」

 

 

ムサシたちはモンスターボールを投げた。

「行け、アーボ!」

 

「ドーガス!」

 

「ニャースもいくニャー!!」

 

 

ポケモンたちが現れ、サンドを取り囲む。

しかし、アキラは動じなかった。

 

 

「……サンド。さっきの特訓の成果を見せてやれ」

 

 

「サンド!」

 

 

サンドは地面を踏み締めた。

ロケット団のポケモンたちが攻撃を仕掛ける。

だが、サンドは落ち着いて相手の動きを見極めた。

 

 

「サンド、あなをほる!」

 

 

サンドが地面へ潜り込む。

 

 

「なっ!? またか!」

「地面から出てくる場所を読め!」

 

 

ムサシが叫ぶが、サンドはその予想を裏切る位置から飛び出した。

 

 

「サンドォッ!」

 

 

強烈な一撃がアーボを吹き飛ばす。

 

 

「アーボ!?」

 

 

「サンド、続けろ!」

 

 

アキラの指示に、サンドは即座に反応した。

地形を利用し、相手の攻撃を避け、隙が生じた瞬間に反撃する。

それにより今度はドガースは引き飛ばされる。

これ等の動きはこれまでの訓練で身につけた戦い方だった。

 

 

「ちょっと! 話が違うじゃないの!」

 

 

「こんなに強いなんて聞いてないぞ!」

 

 

「ニャニャニャーッ! 撤退ニャー!」

 

 

ロケット団はあっという間に追い詰められた。

最後はサンドの攻撃を受け、三人まとめて空へと吹き飛ばされていく。

 

 

 

 

 

 

「「「やな感じぃぃぃぃぃ!!」」」

 

 

 

 

 

 

夜空に三つの光が輝いた。

アキラはサンドのもとへ歩み寄り、その頭を撫でた。

 

 

「よくやったな、サンド」

 

 

「サンド!」

 

 

サトシは、その光景を見つめていた。

先ほどの自分なら、ただ強いポケモンだと思っていただろう。

だが、今は違う。

 

 

サンドの強さは、アキラとの積み重ねによって培われたものだ。

日々の訓練。

相手の動きを読む力。

そして、トレーナーの指示を信頼して動く力。

それらが組み合わさって、あの戦い方が生まれている。

サトシは、自分のピカチュウを見つめた。

 

 

「……ピカチュウ。俺たちも、もっと強くなろうな」

 

 

「ピカ!」

 

 

ピカチュウが元気よく鳴いた。

 

 

そして翌日。

アキラは再び、百勝を目指すバトルへ挑んだ。

これまでの経験を活かし、相手の実力を見極め、サンドとともに戦い続ける。

一勝。

また一勝。

そして――。

 

 

「……これで、百勝だ」

 

 

最後の相手が戦闘不能となり、アキラの目標が達成された。

 

 

「サンド! やったぞ!」

 

 

「サンドォ!」

 

 

アキラはサンドを抱きしめた。

長い挑戦だった。

だが、その経験は決して無駄ではなかった。

彼は以前よりも強くなり、自分とサンドの課題を理解し、何よりも、勝利だけではなく成長の意味を知ることができた。

アキラは非公認ジムの看板を外し、片付けを始めた。

 

 

「……これで、ここも終わりだな」

 

 

「もう、ジムを閉めるのか?」

 

 

サトシが尋ねる。

「ああ。俺の目的は、百人と戦って百勝することだったからな。これからは、正式なジムを巡るつもりだ」

 

 

アキラはサンドのボールを手に取った。

 

 

「そして、もっと強くなる」

 

 

彼はまっすぐに前を見つめる。

 

 

「いつかポケモンリーグで、シンヤと真剣勝負をするためにな!」

 

 

その言葉には、強い決意が込められていた。

サトシは、しばらくアキラを見つめていた。

 

 

シンヤに敗れたことをきっかけに、自分を鍛え直したアキラ。

その努力と、ポケモンへの愛情。

そして、勝つことだけではなく、自分自身の未熟さを認めて成長しようとする姿勢。

サトシは、そこから大切なことを学び始めていた。

 

 

 

 

 

(……シンヤも、アキラも、俺が知らないことをたくさん知っているんだ)

 

 

 

 

 

悔しい。

でも、だからこそ負けたままではいられない。

 

 

「……よし!」

 

 

サトシは拳を握り締めた。

 

 

「俺も、もっと強くなる! いつかシンヤにも、アキラにも、絶対に負けないくらいにな!」

 

 

「ピカチュウ!」

 

 

ピカチュウも力強く鳴いた。

アキラは笑った。

 

 

「その意気だ、サトシ。お前も強くなれよ。だがリーグで当たったら恨みっこなしだ」

 

 

「ああ!」

 

 

こうして、アキラは新たな旅へと踏み出した。

そしてサトシもまた、自分の未熟さを知り、成長するための一歩を踏み出したのだった。

 

 

このときの出会いが、やがてサトシのトレーナーとしての考え方を少しずつ変えていくことになる。

それがどれほど大きな意味を持つのか――。

このときのサトシは、まだ知らなかった。

 

感想でもあったのですが特性を出すか出さないかについて。期限はある程度表が集まり次第まで

  • 出す。セキエイリーグから出す
  • 出さないか。ホウエンからでいいやろ
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