ポケットモンスター~波動の眼を持つ少年~   作:レイザル

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第36話 シオンタウンの夜、二匹の出会いと地下通路の甘い時間

カビゴンとカモネギを新たな仲間に加えたシンヤとレン。

二人は十二番道路を進み、夕方ごろ、ようやく目的地であるシオンタウンへと到着した。

 

 

「……ここがシオンタウンね」

 

 

レンは、町の入り口から周囲を見渡した。

夕日が山の向こうへ沈み始め、空は紫色に染まりつつある。町の建物や道路も、昼間とは異なる薄暗い色合いに包まれていた。

どこか静かで、厳かで、少しだけ寂しさを感じさせる町。

ポケモンたちを供養するポケモンタワーがあることも、この雰囲気に影響しているのだろう。

 

 

「シオンは紫、尊い色……か」

 

 

シンヤは、町のキャッチフレーズを思い出す。

 

 

「この時間帯に来ると、確かにぴったりだな」

 

 

「ええ。キャッチフレーズに偽りなし、という感じね」

 

 

レンは静かに頷いた。

 

 

「昼間に来ても独特の雰囲気がありそうだけれど、夕方はまた違うわね……」

 

 

「そうだな。ただ、今日はもう遅い。町の探索は明日にして、まずはポケモンセンターで休もう」

 

 

「賛成よ。私も少し疲れたわ」

 

 

二人はそのままポケモンセンターへ向かった。

受付を済ませ、ポケモンたちを回復させる。シンヤは新たに仲間になったカビゴンとカモネギのことを、実家の母にも連絡しておいた。

カビゴンの食事については、父が開発した専用フーズを中心に、母に様子を見てもらうことになった。

カモネギについても、食材の好みや健康状態を確認してもらう予定だ。

こうして一通りの用事を済ませたころには、レンはすっかり眠そうにしていた。

 

 

「……ふぁ……」

 

 

小さな欠伸をしたレンは、目元をこすった。

 

 

「さすがに今日は疲れたわね……」

 

 

「十二番道路から歩き通しだったからな。ゆっくり休むといい」

 

 

「ええ……。シンヤも、あまり夜更かししないでね?」

 

 

「ああ、分かってるよ」

 

 

レンはそう言って、自分の寝床へ向かった。

そして、横になってから間もなく――。

 

 

 

 

すぅ……すぅ……。

 

 

 

 

規則正しい寝息が聞こえ始めた。

 

 

「……寝るの早いな」

 

 

シンヤは苦笑する。

だが、それだけ今日の旅で疲れていたということだろう。

彼はレンの眠りを邪魔しないよう、そっと部屋を出た。

 

 

 

そして――。

 

 

「さて、と……」

 

 

シンヤは夜のシオンタウンへ足を向けた。

その目的地は、町の中心にそびえ立つ巨大な建物。

ポケモンタワーだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆深夜のポケモンタワー

 

 

「さて、目的はもちろん……ゴース系統だ」

 

 

ポケモンタワーの入り口で、シンヤは小さく呟いた。

前世でポケモンのゲームを遊んでいたころ、彼はゲンガーを何度も育ててきた。

独特の見た目も、トリッキーな戦い方も、ゴーストタイプならではの面白さも気に入っていたのだ。

 

 

この世界でも、いつかゲンガーを育ててみたい。

そのためには、まずゴースを仲間にする必要がある。

 

 

「ゲームと同じように出会えるとは限らないけど……ここなら期待できるはずだ」

 

 

シンヤは周囲に気を配りながら、ポケモンタワーの内部へと進んでいった。

内部は静まり返っていた。

並ぶ墓石。薄暗い通路。遠くから聞こえる、風が通り抜けるような音。

亡くなったポケモンたちが安らかに眠る場所だからこそ、シンヤも騒がしくならないよう、足音を抑えて歩く。

 

 

「……波動の眼で、周囲を確認してみるか」

 

 

意識を集中させる。

すると、墓石の向こうに、いくつかのポケモンの気配が感じ取れた。

その中に、ゴーストタイプ特有の不思議な気配も混じっている。

 

 

「いたな……」

 

 

シンヤがそちらへ近づこうとした、そのときだった。

 

 

「カラァ……」

 

 

しょんぼりとした鳴き声が聞こえた。

 

 

「ゴ、ゴース???」

 

 

続いて、何やら慌てたような声。

シンヤは足を止めた。

 

 

「……何だ?」

 

 

声のする方へ向かうと、そこには二匹のポケモンがいた。

一匹は、頭に骨をかぶった小さなポケモン――カラカラ。

もう一匹は、ガス状の身体を持つゴースだった。

 

 

カラカラは肩を落とし、今にも泣き出しそうな様子で俯いている。

一方のゴースは、顔に冷や汗を浮かべながら、必死にカラカラを慰めていた。

 

 

「……何があったんだ?」

 

 

シンヤが声をかけると、二匹はびくりと身体を震わせた。

 

 

「カラ……?」

 

 

「ゴ、ゴース!」

 

 

ゴースは慌ててないはずの両手を振るそぶりを見せる。

まるで「自分は悪くない」と言いたげだった。

 

 

「いや、別に怒ってるわけじゃない。どうしたのかと思ってな」

 

 

シンヤはカラカラの様子を観察した。

頭には骨を模した頭蓋骨がある。

だが、本来ならカラカラが手に持つ大事に持っているはずの骨が見当たらない。

 

 

「……なるほど。骨がないのか」

 

 

「カラァ……」

 

 

カラカラは悲しそうに頷いた。

シンヤはゴースへと視線を向けた。

 

 

「もしかして、ゴース。お前が驚かせたのか?」

 

 

「ゴ、ゴース……」

 

 

ゴースは気まずそうに目を逸らした。

どうやら図星らしい。

悪戯好きのゴースがカラカラを驚かせ、その拍子にカラカラが大事な骨を落としてしまった。そして、どこへ行ったのか分からなくなってしまったのだろう。

ゴースも、ここまでカラカラが落ち込むとは思っていなかったようだ。

 

 

「まったく……悪戯するのはいいけど、相手が大切にしているものを失くすようなことは駄目だぞ」

 

 

「ゴース……」

 

 

「まあ、まずは骨を探そう。見つかれば、カラカラも元気になるだろうしな」

 

 

シンヤは二匹を安心させるように微笑んだ。

そして、波動の眼を発動させた。

周囲のポケモンの気配だけではなく、地面や墓石の間にある小さな物体にも意識を向けていく。

 

 

墓石の裏側。

壁際。

床の隅。

骨が転がり込んでいそうな場所を、一つずつ確認していった。

 

 

「……ん?」

 

 

ふと、視線が止まる。

墓石と墓石の間。

人の手では簡単に届かないような隙間に、白いものが挟まっていた。

 

 

「お、あった」

 

 

「カラッ!?」

 

 

カラカラが顔を上げる。

 

 

「慌てるなよ。今、取ってやるから」

 

 

シンヤは墓石に手をかけ、慎重に身体を屈めた。

無理に引っ張れば、骨が傷つくかもしれない。

それに、ここは亡くなったポケモンたちが眠る場所だ。墓石を倒したり、壊したりするわけにはいかない。

シンヤは角度を変えながら、骨の端を指先でそっと掴んだ。

少しずつ、少しずつ引き抜いていく。

 

 

 

そして――。

 

 

 

「よし、取れたぞ!」

 

 

白い骨が、無事に隙間から抜けた。

シンヤはそれを確認し、カラカラの前にしゃがみ込んだ。

 

 

「ほら。お前の大切な骨だろ?」

 

 

「カラァァッ!」

 

 

カラカラは大喜びで骨を受け取った。

両手でしっかりと握り締め、頬をすり寄せる。

その姿から、どれだけ大事なものなのかが伝わってきた。

 

 

「よかったな」

 

 

「カラカラッ!」

 

 

カラカラは嬉しそうに何度も頷いた。

その隣では、ゴースもほっと胸を撫で下ろすような表情を浮かべていた。

 

 

「ゴースゥ~……」

 

 

「お前も安心したか。なら、これからは悪戯もほどほどにな」

 

 

「ゴース……」

 

 

ゴースは反省したようにしゅんとした。

だが、次の瞬間。

 

 

カラカラがゴースの方を向き、骨を持ったまま小さく頷いた。

どうやら、もう怒っていないらしい。

ゴースの顔がぱっと明るくなる。

 

 

「ゴース!」

 

 

「カラカラ!」

 

 

二匹は嬉しそうに鳴き声を交わした。

それを見たシンヤも、自然と笑みを浮かべる。

 

 

「……よかった。これで一件落着だな」

 

 

 

 

しかし――。

 

 

 

 

「……ん?」

 

 

シンヤは、二匹から向けられる視線に気づいた。

カラカラは、骨を大切に抱えながらシンヤを見つめている。

ゴースもまた、先ほどまでの警戒心が嘘のように、シンヤの周囲をふわふわと漂っていた。

 

 

「……お前たち?」

 

 

「カラカラ!」

 

 

「ゴース!」

 

 

二匹とも、妙に懐いている。

どうやら、大切な骨を一緒に探してくれたことが嬉しかったらしい。

シンヤは少し考え、それから穏やかに問いかけた。

 

 

「……もしかして、俺と一緒に来たいのか?」

 

 

「カラッ!」

 

 

「ゴース!」

 

 

返事は即座だった。

二匹とも、はっきりと頷いたのである。

 

 

「……そうか。なら、歓迎するよ」

 

 

シンヤは二つのモンスターボールを取り出した。

 

 

「これからよろしくな、カラカラ。ゴース!」

 

 

赤い光が二匹を包み込む。

そして、二つのボールが静かに閉じた。

 

 

「よし……カラカラ、ゴース、ゲットだ!」

 

 

本来の目的だったゴース系統の捕獲。

それだけではなく、カラカラまで仲間になってくれた。

シンヤにとっては、思いがけない幸運だった。

 

 

「……さて。これ以上遅くなると、明日の移動に響くな」

 

 

シンヤは二つのボールを大事にしまい、ポケモンタワーを後にした。

 

 

「二匹とも、これからよろしくな」

 

 

そう呟きながら、彼はポケモンセンターへ戻っていった。

夜のシオンタウンは、変わらず静かだった。

その静けさの中で、二匹の新たな仲間が加わったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆翌朝、ちょっと拗ねたお姫様

 

 

翌朝。

 

 

ポケモンセンターの一室に、朝日が差し込んでいた。

 

 

「……ん……」

 

 

レンがゆっくりと目を開ける。

 

 

「……朝、ね……」

 

 

昨夜は旅の疲れもあって、早々に眠ってしまった。

そのおかげか、身体はすっかり軽くなっている。

レンは身支度を整え、シンヤの姿を探しに部屋を出た。

すると、ロビーの一角から、聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

 

「よしよし。朝ご飯はもう少し待ってくれよ。まずはお前たちの状態を確認してからだ」

 

 

「カラカラ!」

 

 

「ゴース!」

 

 

「……あら?」

 

 

レンは足を止めた。

そこには、シンヤがいた。

 

 

そして、その周りには見慣れない二匹のポケモンがいる。

頭に骨をかぶったカラカラと、ふわふわと浮かぶゴース。

シンヤは二匹の様子を確認しながら、ポケモンフーズを用意していた。

 

 

「……シンヤ?」

 

 

「あ、おはよう、レン。よく眠れたか?」

 

 

「ええ、おかげさまで……って、そうじゃなくて!」

 

 

レンはカラカラとゴースを交互に見た。

それから、シンヤへ視線を戻す。

 

 

「その子たち……新しい仲間?」

 

 

「ああ。昨夜、ポケモンタワーでな」

 

 

「昨夜……?」

 

 

レンの頬が、ぴくりと動いた。

 

 

「……昨夜、ポケモンタワーへ行ったの?」

 

 

「うん。ちょっとゴース系統を探してみようと思って」

 

 

「…………」

 

 

レンは黙り込んだ。

そして、頬をぷくぅっと膨らませた。

 

 

「……どうして、私を起こしてくれなかったの?」

 

 

「え?」

 

 

「私だって一緒に行きたかったわ! ポケモンタワーも、ゴースも、カラカラも……。どうして一人で行ってしまったの?」

 

 

その声には、怒りというよりも、置いていかれたことへの不満が滲んでいた。

シンヤは少し困ったように頭を掻いた。

 

 

「いや、だって……レン、ぐっすり眠っていたから」

 

 

「だからって……!」

 

 

「疲れていたみたいだし、わざわざ起こすのも悪いだろ?」

 

 

「…………」

 

 

「それに、寝不足は肌に大敵だしな」

 

 

「……っ!」

 

 

レンの頬が、今度は別の意味で赤くなった。

 

 

「も、もう……! そういう言い方をされたら、怒りにくいじゃない……!」

 

 

「ははっ、悪い悪い」

 

 

「……本当に反省しているのかしら?」

 

 

「してる、してる」

 

 

シンヤは笑いながら、カラカラの頭を優しく撫でた。

カラカラは気持ちよさそうに目を細め、ゴースはその周囲をくるくると飛び回っている。

レンはしばらく二匹を見つめていたが、やがて小さく息を吐いた。

 

 

「……分かったわ。今回は許してあげる」

 

 

「ありがとう」

 

 

「ただし!」

 

 

レンは人差し指を立てた。

 

 

「タマムシシティに着いたら、またお茶会をすること!」

 

 

「はいはい」

 

 

「『はい』は一回よ!」

 

 

「はいはい……あっ」

 

 

「シンヤ?」

 

 

「……はい」

 

 

レンは満足そうに微笑んだ。

 

 

「よろしい。ふふっ」

 

 

シンヤは苦笑しながら、二匹の新しい仲間へ視線を戻した。

 

 

「それじゃあ、朝ご飯にしようか。お前たちも腹が減っているだろ?」

 

 

「カラカラ!」

 

 

「ゴース!」

 

 

こうして、二人は新たな仲間たちとともに朝食を取ることになった。

もちろん、レンもカラカラとゴースをしっかりと観察していた。

 

 

「ふふっ。二匹とも可愛いわね」

 

 

「だろ? カラカラは大切な骨を取り戻せて喜んでいたし、ゴースも反省していたよ」

 

 

「そういう経緯だったのね……。それなら、なおさら大切にしてあげないと」

 

 

「もちろんだ」

 

 

朝食を終え、ポケモンたちの準備も整った。

二人はシオンタウンを後にし、八番道路へ向かうことにした。

次の目的地は、地下通路を抜けた先にある七番道路。

そして、その先にはタマムシシティが待っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆八番道路、炎をまとう二匹

 

 

シオンタウンを出発したシンヤとレンは、八番道路へと足を進めていた。

道の両側には草むらが広がり、野生のポケモンたちの気配があちこちから感じられる。

 

 

「この辺りは、いろいろなポケモンが生息しているみたいね」

 

 

レンが周囲を見渡す。

 

 

「ああ。シオンタウンの近くとはいえ、道路が変われば出会えるポケモンも変わるからな」

 

 

そのときだった。

草むらの奥から、二つの影が飛び出してきた。

 

 

「コンッ!」

 

 

「ガウッ!」

 

 

現れたのは、炎をまとったような毛並みを持つ二匹のポケモン。

ロコンとガーディだった。

 

 

「おっ、ロコンにガーディか!」

 

 

シンヤが声を上げる。

しかし、二匹は警戒心が強いらしい。

シンヤたちを見た瞬間、低く唸り声を上げ、同時に飛びかかってきた。

 

 

「いきなり来たか! カメール、フシギソウ! 頼む!」

 

 

シンヤは二つのボールを投げた。

 

 

「カメール!」

 

 

「フシギソウ!」

 

 

二匹のポケモンが飛び出し、ロコンとガーディの前に立ちはだかった。

 

 

「まずは相手の動きを見ろ! 無理に正面からぶつかる必要はない!」

 

 

「カメッ!」

 

 

「フシッ!」

 

 

ロコンが素早く横へ回り込み、ガーディが正面から突進する。

二匹は連携しているようだった。

 

 

「カメール、水鉄砲!」

 

 

「カメェッ!」

 

 

カメールが水鉄砲を放つ。

ガーディは横へ飛び退いて回避し、ロコンも素早く身を翻した。

 

 

「よし、そのまま動かせ! フシギソウ、相手が逃げた先を見てくれ!」

 

 

「フシッ!」

 

 

フシギソウは、二匹の動きを冷静に追っていた。

ロコンが左へ動く。

ガーディが右へ回り込む。

カメールの水鉄砲を避けるたび、二匹の立ち位置が少しずつ変わっていく。

 

 

「今だ! フシギソウ、眠り粉!」

 

 

フシギソウの背中のつぼみから、淡い粉が舞い上がった。

風に乗った眠り粉が、二匹の進路へと広がっていく。

 

 

「コンッ!?」

 

 

「ガウッ!?」

 

 

ロコンとガーディは慌てて方向を変えようとした。

だが、先ほどの水鉄砲を避けるために動き回った結果、二匹の逃げ道は限られていた。

粉を完全に避けることはできず、身体の動きが徐々に鈍くなっていく。

 

 

「よし! カメール、バブルこうせん!」

 

 

「カメールッ!」

 

 

カメールが口元から無数の泡を放った。

泡は光を反射しながら飛び、動きの鈍ったロコンとガーディへ次々と命中する。

 

 

「コンッ!」

 

 

「ガウッ!」

 

 

二匹はダメージを受け、地面へと倒れ込んだ。

それでも、まだ完全には戦闘不能になっていない。

 

 

「よし、ここまでだ。二匹とも、よくやった!」

 

 

シンヤはカメールとフシギソウを褒めた。

 

 

「相手の動きを誘導して、逃げ道を狭める。そこへ状態異常を重ねて、最後に攻撃……。いい連携だったぞ」

 

 

「カメェ!」

 

 

「フシッ!」

 

 

二匹は嬉しそうに鳴いた。

シンヤは続けて、ロコンとガーディの様子を確認する。

二匹とも、戦う意思を失ったわけではない。だが、先ほどの攻撃で体力を消耗し、眠り粉の影響も受けている。

 

 

「……よし。お前たち、俺の仲間にならないか?」

 

 

シンヤがモンスターボールを取り出す。

ロコンとガーディは互いを見合わせたあと、ゆっくりと頷いた。

 

 

「そうか。なら、これからよろしくな!」

 

 

シンヤは二つのボールを投げた。

赤い光が二匹を包み込む。

そして――。

 

 

 

 

カチッ。

 

 

 

 

「よし! ロコン、ガーディ、ゲット!」

 

 

シンヤは嬉しそうにボールを掲げた。

 

 

「また二匹も仲間が増えたわね」

 

 

レンが微笑む。

 

 

「昨日から出会いが多いな。カビゴンにカモネギ、カラカラにゴース。それにロコンとガーディか」

 

 

「あなたの旅は、本当に賑やかね」

 

 

「まあ、仲間が増えるのは嬉しいことだよ。もちろん、一匹ずつちゃんと向き合っていかないとな」

 

 

シンヤは新たな二つのボールを、大切にしまった。

こうして二人は、八番道路での出会いを終え、次の目的地へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆再びの地下通路

 

 

そして、二人は地下通路の入り口へと到着した。

 

 

「……ここを通れば、七番道路ね」

 

 

レンは入り口を見つめ、少しだけ表情を硬くした。

 

 

「そうだな。前に通ったときと同じような感じだと思う」

 

 

「…………」

 

 

「……レン?」

 

 

「……何でもないわ」

 

 

そう言いながらも、レンの視線は暗い通路へ向けられている。

シンヤはその様子を見て、少し考えた。

 

 

「……無理はしなくていいぞ。ゆっくり進めば大丈夫だから」

 

 

「……ええ。分かっているわ」

 

 

レンは頷いた。

そして、二人は地下通路へ足を踏み入れた。

薄暗い通路。

天井に設置された照明が、一定の間隔で道を照らしている。

昼間でも薄暗い場所なのだから、暗いところが苦手なレンにとっては、決して快適な環境ではない。

最初こそ、レンは何とか平静を保って歩いていた。

しかし、少し進んだところで――。

 

 

 

 

きゅっ。

 

 

 

 

シンヤの服の裾が、そっと引かれた。

 

 

「……ん?」

 

 

振り返ると、レンが彼のすぐ隣にいた。

 

 

「……シンヤ」

 

 

「どうした?」

 

 

「……その……」

 

 

レンは視線を少しだけ逸らした。

そして、意を決したように――。

 

 

 

 

 

ぎゅっ。

 

 

 

 

シンヤの腕に、静かに抱きついた。

 

 

「……こうしていたら、少し安心するの」

 

 

「…………」

 

 

シンヤは一瞬、言葉を失った。

レンは以前も地下通路で彼にしがみついていた。

そのときは怖さのあまり、ほとんど無意識だったのだろう。

だが、今回は違う。

彼女は自分から、シンヤの腕を以前夜強く抱きしめている。

 

 

「……ああ。もちろん、いいぞ」

 

 

シンヤは少しだけ顔を赤くしながら答えた。

 

 

「ゆっくり行こう」

 

 

「……ありがとう」

 

 

レンも頬を赤らめながら、彼の腕にそっと身体を寄せた。

二人はそのまま、ゆっくりと地下通路を進んでいった。

 

 

 

 

そして――。

通路の途中にいた数人のトレーナーたちが、その姿を目撃していた。

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

一人が、静かに顔を伏せた。

別の一人は、なぜか胸元を押さえている。

そして、もう一人は天井を仰いだ。

 

 

「……甘い」

 

 

「……甘すぎる……」

 

 

「コーヒーを……ブラックコーヒーをくれ……!」

 

 

もちろん、本人たちには聞こえていない。

シンヤはレンが安心して歩けるよう、歩幅を合わせていた。

レンはレンで、暗闇への恐怖が薄れてきたのか、少しずつ落ち着きを取り戻していた。

二人にとっては、ただの地下通路。

しかし、目撃したトレーナーたちにとっては、あまりにも眩しい光景だったらしい。

 

 

「……シンヤ」

 

 

「ん?」

 

 

「……もう少しだけ、このままでもいいかしら?」

 

 

「……ああ。もちろん」

 

 

レンは嬉しそうに微笑んだ。

そして、二人は腕を組んだまま、地下通路の出口を目指して歩いていった。

その後ろ姿を見送ったトレーナーたちは、全員が何とも言えない表情で立ち尽くしていたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆七番道路、そしてタマムシシティへ

 

 

やがて、二人は地下通路を抜けた。

明るい日差しが目に入り、レンはほっとしたように息を吐く。

 

 

「……ふぅ。やっぱり、外の空気は気持ちいいわね」

 

 

「ああ。もう暗いところは抜けたぞ」

 

 

「ええ。……ありがとう、シンヤ」

 

 

レンはそう言って、彼の腕からそっと離れた。

だが、その頬にはまだ赤みが残っている。

シンヤもまた、少し照れくさそうに視線を逸らした。

 

 

「……どういたしまして」

 

 

二人は顔を見合わせ、自然と笑みを浮かべた。

そして、七番道路を歩き始める。

この先には、カントー地方でも有数の大都市、タマムシシティがある。

大きなデパートに、ゲームコーナー。そして、くさタイプを得意とするジムリーダー・エリカが待つタマムシジム。

次のバッジを手に入れるためにも、ここでしっかりと準備を整えたいところだ。

 

 

「さて、次はいよいよタマムシシティだな」

 

 

「ええ。楽しみね」

 

 

「ジム戦もそうだけど、デパートにも寄ってみたいな。技マシンや道具も見ておきたいし」

 

 

「ふふっ。私はお茶会の約束、忘れていないわよ?」

 

 

「はいはい、分かってるって」

 

 

「また『はい』が二回!」

 

 

「……はい」

 

 

レンは満足そうに笑った。

こうして、シンヤとレンは七番道路を進み、その先にあるタマムシシティを目指すのだった。

新たな仲間を迎え、旅はさらに賑やかになっていく。

そして次なるジム戦が、二人を待ち受けていた。

 

感想でもあったのですが特性を出すか出さないかについて。期限はある程度表が集まり次第まで

  • 出す。セキエイリーグから出す
  • 出さないか。ホウエンからでいいやろ
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