かなりの数が出していいだろうということなのでセキエイリーグから
出していこうと思います。それまでは特性未解禁として扱います
タマムシシティのゲームコーナーで起きた騒動から、しばらく後。
シンヤは、景品として交換できる状態になっていたポケモン八匹を保護した。
ミニリュウ、ストライク、ポリゴン、カイロス、バリヤード、そして三匹のイーブイ。
いずれも個性的なポケモンばかりである。
もっとも、ポケモンを保護したからといって、それで終わりというわけではない。
彼らがどのような環境で過ごしていたのか、健康状態に問題はないのか、今後どのように育てていくのか。
確認しなければならないことは多かった。
そこでシンヤとレンは、まずポケモンセンターへ向かうことにした。
「それじゃあ、みんなの健康状態を確認してもらおうか」
「ええ。特に、あの子たちはずっと景品として扱われていたのでしょう? 念のためにも診てもらったほうがいいわね」
「そういうことだ」
シンヤはボールを受付に預け、ポケモンたちの診察を依頼した。
波動の眼を持つ彼なら、ポケモンの体調についてある程度の情報を得ることはできる。
しかし、だからといって何もかもわかるわけではない。
目に見えない病気や、専門的な検査が必要な異常まで、波動の眼だけで完全に把握できるわけではないのだ。
だからこそ、ポケモンセンターで専門家に診てもらうことには意味がある。
しばらくして、ジョーイさんから診察結果が伝えられた。
「八匹とも、今のところ大きな健康上の問題は見つかりませんでした。ただ、環境の変化によるストレスには気をつけてあげてくださいね」
「わかりました。ありがとうございます」
シンヤは丁寧に頭を下げた。
その隣では、レンが三匹のイーブイを見つめている。
三匹はシンヤの足元に集まり、まるで彼を守るかのようにぴったりとくっついていた。
「……それにしても」
シンヤは、改めて八匹のポケモンたちを見渡した。
「まさか、珍しいポケモンの代表格ともいえるイーブイが三匹もいるとはな……。しかも、ポリゴンまで」
「ポリゴンって、そんなに珍しいの?」
レンが首をかしげる。
「ああ。イーブイも珍しいけど、ポリゴンは特に珍しい部類に入ると思う」
前世のゲームでは、作品によって野生で出現する場所や入手方法が異なっていた。
イーブイなどは、地方によっては比較的多く出会えるようになった時代もあった。
しかし、今シンヤがいるのはゲームの画面の中ではない。
実際にポケモンが生きている世界だ。
この世界では、ゲームで設定されていた出現率や入手方法が、必ずしもそのまま当てはまるとは限らない。
「それにポリゴンは……」
シンヤは、少し離れた場所にいるポリゴンを見た。
ポリゴンは、どこか不思議そうな様子で周囲を見回している。
その姿を見て、シンヤは前世の記憶を思い返した。
(ポリゴンか……。アニポケでは、いろいろと特殊な事情があったポケモンだよな)
かつてのアニメでは、あるエピソードが原因となり、ポリゴン自身がその後ほとんど登場しなくなってしまった。
ゲームでは普通に存在しているポケモンなのに、アニメでは扱いが非常に特殊になっている。
そのため、シンヤにとっては妙に印象深いポケモンの一匹だった。
(まさか、現実でこうして出会うことになるとはな……)
もっとも、今はそんなことを気にしている場合ではない。
問題は、このポリゴンを今後どうするかということだった。
シンヤは少し考えた後、通信端末を取り出した。
「……父さんに相談するか」
「マサユキさんに?」
「ああ。父さんなら、こういうときに頼りになるからな」
発明家である父マサユキには、さまざまな企業や研究者とのつながりがある。
今回のような特殊な事情を抱えたポケモンについても、何か知っているかもしれない。
シンヤは端末を操作し、実家へと連絡を入れた。
数回の呼び出し音の後、画面に父の顔が映し出された。
『おお、シンヤか! どうした? 何か困ったことでもあったか?』
「うん。ちょっと相談したいことがあってさ」
『なるほど! それで父であるこの私に連絡して相談か! よし、何でも話してみなさい!』
相変わらず自信満々な父の様子に、シンヤは思わず苦笑した。
「実はタマムシのゲームコーナーで、景品になっていたポケモンを八匹保護したんだ」
『……景品? ポケモンがか?』
「そう。ミニリュウ、ストライク、カイロス、バリヤード、それとイーブイが三匹。あとはポリゴンだ」
『……ポリゴンだと!?』
父の声が一段階大きくなった。
『ちょっと待ちなさい。ポリゴンというのは、あの人工的に作られたポケモンのことだな?』
「たぶんね。俺もそう考えている」
ポリゴンは、自然界で普通に生まれたポケモンではない。
人工的に作り出された、特殊なポケモンだ。
そして、シンヤの知識では、その開発に関わった企業といえば――。
「ヤマブキシティのシルフカンパニーだよな?」
『そうだ。シルフカンパニーなら、私にも少しばかりつながりがある』
マサユキは顎に手を当て、何かを思い出すような表情になった。
『……そういえば以前、シルフで働いている私の同級生が、研究所からポケモンが一匹脱走したと話していたな』
「……あれ?」
シンヤは目を細めた。
「それって、もしかしなくても……」
『うむ。おそらく、お前が保護したポリゴンだろう』
「やっぱりか……」
偶然にしては、できすぎている。
まさかゲームコーナーの景品として扱われていたポリゴンが、研究施設から脱走した個体だったとは。
シンヤは小さく息を吐いた。
『ただ、その同級生からは、もしポリゴンを保護するようなことがあれば、私に相談してくれと言われていてな』
「そうなのか?」
『ああ。研究所からいなくなったポリゴンのことは、向こうも気にしているはずだ。こちらで身元を確認して、今後どうするのが一番いいか調べておこう』
「それは助かるよ、父さん」
『もっとも、詳しく調べる間は、育成などを進めることはできないがな。研究所との確認も必要になるだろうし、ポリゴン本人の状態も見ておきたい』
「構わないよ。むしろ、そのほうが安心できる」
シンヤは頷いた。
ポリゴンを自分のポケモンとして扱うにしても、まずは出自を確認する必要がある。
研究所の所有物である可能性がある以上、勝手に育成を始めるよりも、関係者と連絡を取ったほうがいい。
『それで、ほかの七匹はどうする?』
「一旦、そっちに送ろうと思っている。うちなら環境も整っているし、母さんたちにも世話を頼めるからな」
『ああ、それがいいだろう。新しく来たポケモンたちを、ほかのポケモンと交流させるのも悪くない』
マサユキはそこで、少し楽しそうに笑った。
『特に、お前のピカチュウが張り切っているからな』
「……ピカチュウが?」
『うむ。最近では庭のポケモンたちのまとめ役のようになっているぞ。なかなか頼もしいものだ』
「いつの間にそんなことに……」
シンヤは思わず苦笑した。
サント・アンヌ号の大会でも活躍し、レベルもかなり上がったピカチュウ。
今では実家の庭で暮らすポケモンたちの間でも、相当な存在感を発揮しているらしい。
(番長みたいになっているのか……?)
想像すると、妙にしっくりくるのが困りものだった。
『まあ、そこはピカチュウに任せておけばいい。母さんもいるし、世話については心配いらん』
「なら、そっちは任せるよ。俺もタマムシでやることは終わったし、次のジムに向かわないといけないから」
『そうか。バッジ集め、頑張れよ!』
「うん。じゃあ、また連絡する」
『ああ!』
こうして、父との通話は終了した。
シンヤは端末をしまい、ほっと息を吐く。
「これで、ポリゴンの件はひとまず解決だな」
……と思ったのだが。
「ブイブーイ!」
「イーブイ!」
「ブイー!」
「…………」
シンヤは足元を見下ろした。
三匹のイーブイが、彼の両足にぴったりとくっついていた。
一匹は右足。
もう一匹は左足。
そして、残る一匹は二匹の間に割り込むようにして、シンヤの靴に頬を擦りつけている。
「……お前たち?」
「ブイ!」
「イブイ!」
「ブイッ!」
三匹は元気よく鳴いた。
しかし、シンヤが一歩動こうとすると、三匹も一緒についてくる。
少し離れようとしても、すぐに足元へ戻ってきた。
どうやら、彼らはシンヤから離れたくないらしい。
ゲームコーナーで景品として扱われていた自分たちを引き取ってくれた少年。
彼らにとって、シンヤは自分たちを助けてくれた恩人なのだろう。
今までどんな気持ちで過ごしていたのか、シンヤには完全にはわからない。
だが、少なくとも今は、彼のそばにいることを望んでいるようだった。
「……どうするかな」
シンヤは困ったように頭をかいた。
「今後のバトルのことも考えると、ほかのポケモンたちのレベル上げも進めたいんだが……」
三匹をこのまま実家へ送れば、今度は離れ離れになる。
かといって、シンヤが三匹全員を手持ちに加えると、今度は育成や管理の問題が出てくる。
公式戦では、原則として手持ちにできるポケモンは六匹まで。
もちろん、六匹以上のポケモンを所有すること自体が禁止されているわけではない。
しかし、シンヤの場合は実家に預ける仕組みが整っているからこそ、多数のポケモンを育てながら旅を続けられているのだ。
「うーん……」
シンヤが考え込んでいると、隣から声がした。
「あ、それなら……私が預かるのはどうかしら?」
「……えっ?」
シンヤが顔を上げると、レンが三匹のイーブイを見つめていた。
「レンが?」
「ええ。三匹とも、シンヤから離れたくないみたいだし」
レンはしゃがみ込むと、イーブイたちの頭を順番に撫でた。
三匹は最初こそ少し警戒していたものの、レンが優しく撫で続けると、次第に気持ちよさそうに目を細めた。
「それに、公式戦では六匹までという決まりがあるけれど、六匹以上のポケモンを所有すること自体は問題ないでしょう?」
「まあ、そうだな。預ける場所がないトレーナーなんかは、自分で管理していることもあるらしいし」
「なら、私がこの子たちを預かってあげればいいわ」
レンは顔を上げ、微笑んだ。
「幸い、私もイーブイを持っているし。きっと仲良くできると思うの」
「……なるほど」
シンヤは少し考えた。
確かに、レンはすでにイーブイを育てている。
ポケモンの世話にも慣れているし、イーブイの性格や好みについても、ある程度理解しているはずだ。
何より、レン自身がこの三匹を受け入れようとしてくれている。
「……なら、三匹のボールは頼めるか?」
シンヤは腰のポーチから三つのモンスターボールを取り出した。
「ええ。任せてちょうだい」
レンはボールを受け取った。
そして、三匹のイーブイへと優しく語りかける。
「これからは、私と一緒に旅をしましょうね。私のイーブイとも、仲良くしてくれると嬉しいわ」
「ブイ!」
「イーブイ!」
「ブイッ!」
三匹は嬉しそうに鳴いた。
レンはその様子に目を細める。
「ふふっ。よかったわね」
「助かるよ、レン。ただ、体調や育成の状況は俺も確認するからな」
「もちろんよ。私が預かるからといって、シンヤが何もしなくていいわけじゃないものね」
「頼もしいな」
「当然でしょう?」
レンは少し得意げに胸を張った。
「それに……シンヤが大切にしているポケモンなら、私だって大切にしたいもの」
「……ありがとう」
シンヤが素直に礼を言うと、レンは一瞬だけ頬を赤くした。
「べ、別に……お礼を言われるようなことじゃないわよ」
そして、誤魔化すように三匹のイーブイを抱き寄せた。
「ほら、行きましょう。私のイーブイに紹介してあげるわ!」
三匹のイーブイは、レンの後について歩き始めた。
こうして、イーブイ三兄妹はレンのポケモンとして新たな旅を始めることになったのだった。
なお、三匹のイーブイがシンヤのもとから離れたくなかった理由について、シンヤは波動の眼でも確認していた。
彼らの戦闘意欲は、決して低くない。
三匹とも、いずれはバトルに挑戦してみたいという気持ちを持っていた。
そして――。
ストライク、カイロス、ミニリュウ。
この三匹もまた、バトルに対して強い関心を示していた。
「……なるほどな」
シンヤは、実家へ送る予定のポケモンたちを思い浮かべた。
ストライクは、進化すればハッサムになる可能性を持つ。
ミニリュウも、最終的には強力なカイリューへと進化するポケモンだ。
どちらも、前世ではシンヤが何度もお世話になったポケモンである。
育成する価値は十分にある。
一方、バリヤードとポリゴンは、少なくとも今のところ、バトルに対する強い意欲は感じられなかった。
カイロスについては少し事情が違う。
普段から戦いたいというよりも、どうやらライバルとなる相手がいると、俄然やる気になるタイプらしい。
(カイロスのライバルか……)
シンヤは、ふとあるポケモンを思い出した。
「……まあ、そのあたりは実家に戻してから考えるか」
幸い、実家には広い敷地があり、さまざまな環境でポケモンを育成できる。
学習装置もあるし、ほかのポケモンたちと一緒にトレーニングすることも可能だ。
それに、次に向かうセキチクシティにも、ポケモンだいすきクラブが運営する育成施設がある。
サファリゾーンで新たなポケモンを捕獲した後、一度、手持ちのポケモンたちの育成計画を整理するのもいいだろう。
せっかく仲間になってくれたのだから、彼らの能力を最大限に引き出してあげたい。
「……よし」
シンヤは小さく頷いた。
「とりあえず、次はセキチクシティだ」
「ええ。セキチクへ行くには、自転車に乗るのよね?」
「ああ」
シンヤは、タマムシシティでレンタルした自転車を取りに向かった。
今回利用するのは、タマムシからセキチクへと続くサイクリングロード。
レンタル自転車は、セキチク側にも返却できる店があるため、旅の途中で乗り捨てるような心配もない。
「基本的には徒歩か、飛行タイプのポケモンに乗って移動することが多いけど……」
シンヤは自転車のハンドルを握りながら、楽しそうに笑った。
「サイクリングロードは、自転車に乗ってこそだろう?」
「ふふっ。シンヤらしいわね」
レンは微笑んだ。
「それじゃ、私も自転車を借りて……」
「いや、二人乗りでいいかな?」
「……えっ?」
レンの動きが止まった。
「二人乗り?」
「ああ。せっかくだし、二人で一緒に行こう」
シンヤは、ごく自然な様子で言った。
「……い、いいと思うわ」
レンは顔を赤くしながら、視線を逸らした。
「そ、そうね。二人で自転車に乗るのも、旅の思い出になるでしょうし……」
「よし、決まりだな」
シンヤは特に深く考えることなく、自転車の準備を始めた。
その様子を見て、レンは小さく頬を膨らませた。
(……もう少しくらい、意識してくれてもいいのに)
もっとも、二人乗りを提案したのはシンヤ本人である。
少しくらい期待してしまうのも、仕方のないことだった。
「……それにしても、セキチクジムを攻略したら、次はヤマブキへ向かうつもりなんだ」
「ヤマブキシティ?」
「ああ。リザードンに乗って、直接向かえばいいと思っている」
シンヤは、今の主力ポケモンであるリザードンを思い浮かべた。
「リザードンなら、俺とレンの二人を乗せても問題ないからな」
「……二人も背中に乗せて大丈夫なの?」
レンは少し心配そうに尋ねた。
「それは平気だ。リザードンなら、大人一人と子供一人くらいを乗せて飛ぶこともできるし、俺たちはまだ子供だから、そこまで負担にはならないはずだ」
「なるほど……。確かに、それなら大丈夫そうね」
「うん。ただ、無理をさせるつもりはないから、飛ぶときはリザードンの体調も確認してからにするよ」
「ふふっ。そういうところは、ちゃんとしているのね」
「当たり前だろ?」
シンヤは笑った。
「ポケモンに無理をさせてまで、急ぐつもりはないからな」
レンは、その言葉に満足そうに頷いた。
そして、二人は自転車の準備を整えた。
「それじゃあ――」
シンヤはサドルにまたがり、後ろを振り返る。
「行くか、セキチクシティ!」
「ええ!」
レンはシンヤの後ろに乗り、そっと彼の腰に手を回した。
「……っ」
その瞬間、レンの顔が一気に赤くなった。
もちろん、自転車に乗る以上、落ちないように掴まるのは当然のことだ。
それでも、こうしてシンヤの背中に近づくと、どうしても意識してしまう。
「レン、ちゃんと掴まっておいてくれよ」
「わ、わかっているわよ!」
「それじゃ、出発!」
シンヤがペダルを踏み込む。
自転車はゆっくりと走り始め、やがてタマムシシティの街並みを抜けていった。
二人の次なる目的地は、セキチクシティ。
そこには新たなジム戦が待っている。
そして、ポケモンたちの育成や、サファリゾーンでの出会いもあるだろう。
まだ見ぬ仲間たちとの出会いを期待しながら、シンヤとレンは十五番道路へと向かっていった。
その背中を――。
少し離れた場所から、じっと見つめる少女が一人。
長い茶色の髪に白い帽子。
リーフだった。
彼女は、二人が仲良く自転車で走り去っていく様子を見て、頬をぷくっと膨らませた。
「……むぅ」
シンヤとレンは、もちろんそのことに気づいていない。
リーフは二人の姿が見えなくなるまで見送ると、不機嫌そうにそっぽを向いた。
「……何よ、あれ」
小さな呟きは、タマムシの街の喧騒に紛れて消えていった。
◆まさかの再会?!
タマムシシティを出発し、十五番道路へとやって来たシンヤとレン。
自転車を走らせながら、二人は次の目的地であるセキチクシティを目指していた。
「それにしても、サイクリングロードって思ったより気持ちいいわね」
レンはシンヤの背中越しに、周囲の景色を眺めていた。
道路の両側には草木が生い茂り、遠くには青い空が広がっている。時折、野生のポケモンたちが顔を出し、二人の姿を興味深そうに眺めていた。
「だろ? 普段は徒歩で移動することが多いけど、こういう道は自転車で走るのが一番だと思うんだ」
「ふふっ。シンヤは本当に、旅の楽しみ方をよく知っているわね」
「まあな。せっかく旅をしているんだから、移動そのものも楽しまないと損だろ?」
「そうね。私も賛成よ」
そんな会話を交わしながら、二人は自転車を走らせていた。
――そのときだった。
「……ん?」
シンヤがペダルを踏む足を緩めた。
少し先の道端に、何かがいる。
小さな身体。
つるりとした表面。
そして、こちらをじっと見つめる丸い目。
そのポケモンは、二人の姿を確認すると、嬉しそうに身体を揺らした。
「モンモン♪」
「…………」
シンヤは自転車を止めた。
レンも後ろから降り、目の前のポケモンを見つめる。
「……メタモン?」
そこにいたのは、変身能力を持つポケモン――メタモンだった。
メタモンは、嬉しそうに身体をぷるぷると揺らしている。
そして。
じーっ。
「…………」
じーっ。
「…………」
「……うん?」
シンヤは首を傾げた。
メタモンは、ほかのポケモンには目もくれず、なぜかシンヤだけをじっと見つめている。
それも、ただ興味を持っているという様子ではない。
まるで、ようやく探していた相手を見つけたかのような、期待に満ちた眼差しだった。
「……うん、なんで俺は見られてるの?」
「さ、さあ……?」
レンも困惑していた。
「メタモンって、あんなに人をじっと見るポケモンだったかしら?」
「いや、個体差はあるだろうけど……」
シンヤはしゃがみ込み、メタモンと目線を合わせた。
「……どうしたんだ?」
「モンモン♪」
メタモンは嬉しそうに鳴いた。
そして、シンヤのほうへと近づいてくる。
「……俺に何か用があるのか?」
「モン!」
元気よく返事をするメタモン。
しかし、それだけでは何を伝えたいのかまではわからない。
「うーん……」
シンヤは少し考えた。
目の前のメタモンに対し、波動の眼を向けてみる。
すると――。
「……ん?」
見えた情報に、シンヤの表情が変わった。
「……ちょっと待て」
「どうしたの、シンヤ?」
レンが不思議そうに顔を覗き込んでくる。
シンヤは答えず、もう一度メタモンの情報を確かめた。
間違いない。
目の前のメタモンは、すでに誰かのポケモンとして登録されていた。
つまり、野生のポケモンではない。
そして、その登録情報に記されているトレーナー名は――。
SHINYA
「…………」
シンヤは固まった。
「…………え?」
思わず、もう一度確認する。
親名。
SHINYA。
間違いない。
「…………」
シンヤの脳裏に、前世の記憶が脳裏に浮かんだ。
(……んんん!?)
(このスペル……俺の前世での主人公名と同じじゃないか!?)
そう。
前世のシンヤは、ポケモンのゲームを遊ぶ際、基本的には男主人公をメインに使っていた。そして、別のセーブデータやサブロムでは女主人公を使うこともあった。
男主人公の名前は、ほとんどの場合で決まっていた。
SHINYA。
自分の名前を英字表記にしたものだ。
それは、何世代もの冒険を共にした主人公の名前だった。
もちろん、ゲームを遊ぶたびにすべてのポケモンを同じ名前で登録していたわけではない。しかし、少なくともシンヤには、目の前のメタモンに心当たりがあった。
(……まさか)
(まさか、俺のメタモンなのか?)
シンヤは、目の前のメタモンを見つめた。
メタモンもまた、じっとシンヤを見つめ返している。
そして――。
「モンモン!」
メタモンは、何度も大きく頷いた。
「…………」
シンヤは思わず目を見開いた。
(……えっ?)
(今、俺の考えがわかったのか?)
「モン!」
またしても、メタモンは頷いた。
どうやら、シンヤの心の声に反応しているようだった。
もちろん、メタモンが本当に心を読んでいるのか、それともシンヤの表情や仕草から何かを察したのかはわからない。
しかし、今の反応を見る限り、少なくともシンヤの考えを肯定しているようにしか見えなかった。
「……いやいや、そんなことある?」
シンヤは思わず呟いた。
前世の記憶が戻ったことで、さまざまな驚くべき出来事には遭遇してきた。
波動の眼。
前世で知っていたポケモンとの出会い。
ゲームでは単なるデータだったはずのポケモンたちが、実際に生きている世界。
だが、まさか前世で自分がゲーム内で育てていたポケモンと、そっくりそのまま再会することになるとは。しかも、相手はメタモンだ。
(前世じゃ、こだわりスカーフを持たせて、特性『かわりもの』で暴れ回っていたこともあったな……)
相手の姿に変身して戦うメタモン。
前世では、対戦環境によっては非常に厄介な存在だった。
使い方次第では、相手の戦術を逆手に取ることもできる。
もちろん、今の世界で同じ戦い方ができるかはわからない。
だが、シンヤにとっては思い出深いポケモンの一匹だった。
「……まさか、また会えるとはな」
シンヤは、そっとメタモンの頭に手を伸ばした。
メタモンは逃げることなく、その手を受け入れる。
ぷにっ。
独特の柔らかい感触が、手のひらに伝わった。
「モンモン♪」
メタモンは嬉しそうに身体を揺らした。
「……ただ、一つだけ疑問があるんだよな」
シンヤはメタモンを見つめながら、首を傾げた。
(俺が前世で捕まえたのって、確かイッシュ地方……BWの頃だったはずなんだが)
そう。
シンヤが前世でメタモンを捕まえた記憶があるのは、イッシュ地方を冒険していた頃だった。だとすれば、普通に考えるなら、目の前のメタモンもイッシュ地方にいるはずではないだろうか。それなのに、どうしてカントー地方にいるのか。
どうやってここまで来たのか。
そもそも、なぜ自分を見つけることができたのか。
疑問はいくつも浮かんでくる。
しかし――。
(……まあ、いいか)
シンヤは考えるのをやめた。
世の中には、考えてもわからないことがある。
それに、目の前のメタモンが自分を慕っているのであれば、今はそれで十分だった。
「よし。とりあえず、ゲットしておこう」
「モンモン!」
メタモンは、待ってましたと言わんばかりに元気よく鳴いた。
「……いや、そんなに嬉しそうにされると、こっちも断れないんだが」
シンヤは苦笑しながら、モンスターボールを取り出した。
メタモンは自分からボールに触れようとする。
シンヤがボールを差し出すと、メタモンはそのまま中へと入っていった。
ボールが一度だけ揺れ――。
カチッ。
捕獲完了。
「……よし」
シンヤはボールを手に取り、満足そうに頷いた。
「これからよろしくな、メタモン」
「モンッ!」
ボールの中から、元気な返事が聞こえた気がした。
シンヤはそのボールを大切にしまうと、通信機能を使って実家へ送る手続きを始めた。
今回のメタモンは、いきなり旅の手持ちに加えるよりも、まずは実家の環境に慣れてもらうほうがいいだろう。何より、あの広い敷地なら、ほかのポケモンたちと交流する機会も多い。
「実家で、ほかのポケモンたちと仲良くな?」
「モンッ!」
送信前、メタモンは再びボールから出てきて、身体をびよーんと伸ばした。
その姿は、まるで『任せて!』と言っているようだった。
「ははっ。頼もしいな」
シンヤは笑いながら、メタモンを実家へと送った。
これで、ひとまず一件落着である。
……ただし。
「…………」
隣にいるレンは、ずっとシンヤを見つめていた。
「……えっと、レン?」
「……ねえ、シンヤ」
「はい」
「今の、何だったの?」
「メタモンだな」
「それは見ればわかるわよ!?」
レンは思わず声を上げた。
「そうじゃなくて! どうしてあのメタモン、最初からシンヤに懐いていたの?」
「……さあ?」
「さあ、じゃないでしょう!?」
レンは頬を膨らませた。
「普通、野生のポケモンなら、初対面の人間を警戒することもあるでしょう? なのに、あの子は最初からシンヤを見つめて、しかも捕まえてほしそうにしていたじゃない!」
「まあ……そうだな」
「それに、シンヤもずいぶん自然に捕まえていたし……」
レンはじっとシンヤの顔を覗き込んだ。
「何か、心当たりがあるんじゃないの?」
「…………」
シンヤは一瞬、言葉に詰まった。
(……危ない)
前世の記憶については、レンにはまだ話していない。
波動の眼のことは打ち明けているが、それとこれとは話が別だ。
まさか、自分が別の世界でポケモンのゲームを遊んでいて、そのときに育てていたポケモンと再会した――などと説明するわけにもいかない。
少なくとも、今は。
「……まあ、俺も珍しいことがあるもんだと思っているよ」
シンヤは、なるべく自然な表情で答えた。
「波動の眼で見たら、あのメタモンはすでに誰かのポケモンとして登録されていたんだ。だから、何か事情があるんじゃないかと思ってな」
「……なるほど」
レンは少し考えた。
「つまり、誰かに育てられていたポケモンが、何らかの理由でここまで来た可能性がある……ということ?」
「そういうことだな」
「それなら、確かに不思議ね……」
レンは納得したように頷いた。
もっとも、完全に疑問が解消されたわけではないらしい。
それでも、シンヤが話したくないことまで無理に聞き出そうとはしなかった。
「……まあ、シンヤがちゃんと責任を持って保護するなら私から言うことはないわ」
「ありがとう、レン」
「ただし!」
レンは、ぴっと人差し指を立てた。
「今度、またあんなふうに珍しいポケモンが突然現れたら、ちゃんと私にも教えてちょうだいね?」
「……それは約束できないな」
「どうしてよ!?」
「いや、俺だって予想できないことはあるからな」
「むぅ……」
レンは不満そうに頬を膨らませた。
シンヤはそんな彼女を見て、苦笑する。
「まあ、何かあったらちゃんと相談するよ」
「……本当?」
「ああ」
「なら、許してあげるわ」
レンは満足そうに微笑んだ。
こうして、十五番道路での思いがけない出会いは、ひとまず幕を閉じた。
シンヤは、まさか前世で育てていたメタモンと再会することになるとは思っていなかった。
そして、そのメタモンがなぜカントー地方にいたのかも、今のところはわからない。
ただ、一つだけ確かなことがある。
あのメタモンは、シンヤを見つけたとき、本当に嬉しそうだった。
まるで、ずっと探していた相手にようやく出会えたかのように。
「……さて、今度こそセキチクへ向かうか」
シンヤは自転車にまたがり、レンへと手を差し伸べた。
「行こう、レン」
「ええ!」
レンは笑顔で後ろに乗り、再びシンヤの腰に手を回す。
二人を乗せた自転車は、十五番道路を進んでいった。
次なる目的地、セキチクシティ。
そして、その先には新たなジム戦と、まだ見ぬポケモンたちとの出会いが待っている。
シンヤの旅は、今日もまた予想外の出来事とともに続いていくのだった。
感想でもあったのですが特性を出すか出さないかについて。期限はある程度表が集まり次第まで
-
出す。セキエイリーグから出す
-
出さないか。ホウエンからでいいやろ