ポケットモンスター~波動の眼を持つ少年~   作:レイザル

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第4話 トキワシティへの道!ヒトカゲの秘めたる実力!

マサラタウンを出発して、しばらく経った。

青空の下に広がる草原。風に揺れる草むら。遠くに見える森と、緩やかに続く道。

 

 

ゲームで何度も見たことのある、マサラタウンからトキワシティへと続く道だ。

しかし、実際に歩いてみると、ゲーム画面で眺めていた景色とはまるで違う。

 

 

草むらからはポケモンたちの鳴き声が聞こえ、風が吹くたびに草木が揺れる。地面には小さな足跡が残り、頭上では鳥ポケモンたちが翼を広げて飛んでいる。

 

 

(いやあ……本当にポケモンの世界に来たんだな、俺)

 

 

シンヤは、隣を歩くヒトカゲを見下ろした。

 

 

「なあ、ヒトカゲ。疲れてないか?」

 

 

「カゲッ!」

 

 

ヒトカゲは元気よく返事をすると、尻尾の炎を揺らしながらシンヤの前へ出た。

その足取りは軽く、まだまだ余裕がありそうだ。

 

 

「よし。それじゃあ、もう少し進もうか」

 

 

「カゲー!」

 

 

二人は再び歩き始めた。

――もっとも、ただ歩くだけで終わるような旅にはならなかった。

 

 

「おっ、ポケモンが出てきた!」

 

 

道端の草むらがガサガサと揺れたかと思うと、一匹のポケモンが飛び出してきた。

小さな身体に、鋭い目つき。コラッタだ。

 

 

「キィッ!」

 

 

コラッタはシンヤたちを警戒するように身構え、こちらへ向かって威嚇してきた。

 

 

シンヤは足を止め、ヒトカゲへ視線を向ける。

 

 

「ヒトカゲ、相手がやる気みたいだ。どうする?」

 

 

「カゲッ!」

 

 

ヒトカゲが一歩前へ出た。

 

 

その目は、相手を恐れるどころか、どこか楽しそうに輝いている。

 

 

「よし、じゃあ相手をしてやろう!」

 

 

シンヤは周囲を確認した。

少し離れた場所には低い草むら。道の脇には小さな岩が転がっている。地面はおおむね平坦だが、ところどころに凹凸がある。

 

 

(まずは、いつもの技を使ったときの動きを見てみるか。実戦でどれくらい使えるのか、実際に確認しないとな)

 

 

「ヒトカゲ、ひのこ!」

 

 

「カゲッ!」

 

 

ヒトカゲが口を開き、小さな火の粉を放った。

 

 

コラッタは素早く横へ飛び退く。

 

 

「キィッ!」

 

 

火の粉は地面へ落ち、乾いた土を焦がした。

 

 

(よし、回避された。なら次は……)

 

 

シンヤは、コラッタの動きを観察する。

 

 

一度目の回避では、コラッタはヒトカゲから見て右方向へ跳んだ。だが、単純に同じ方向へ逃げるとは限らない。

 

 

シンヤはヒトカゲに声をかけた。

 

 

「ヒトカゲ、相手の動きをよく見て! 次もひのこだ!」

 

 

「カゲーッ!」

 

 

再び火の粉が飛ぶ。

 

 

コラッタは今度、反対側へ避けようとした。

だが――。

 

 

「今だ! 少し角度を変えて!」

 

 

ヒトカゲは、口元の向きをわずかに調整した。

 

 

火の粉が飛ぶ方向が変わる。

 

 

コラッタが着地する、その直前。

 

 

「キィッ!?」

 

 

火の粉が命中した。

 

 

コラッタは驚いて地面を転がり、すぐに起き上がると、距離を取った。

 

 

「よしっ!」

 

 

シンヤは小さく拳を握った。

 

 

(いいぞ! ひのこの射程はもちろん、角度の調整もできる! それに、相手がどこへ避けるのかを見て、着地点へ攻撃を通すこともできた!)

 

 

もちろん、一度成功しただけで、すべての相手に通用する戦術だとは言えない。

相手の素早さや反応、地形によっても結果は変わる。

 

 

だが、ヒトカゲは指示を受けてから、攻撃の向きを調整することができた。

しかも、まだ旅を始めたばかりだ。

 

 

(こいつ、思っていた以上に器用だな……!)

 

 

シンヤは、ヒトカゲの成長の可能性を改めて感じた。

 

 

「よし、最後は無理せず決めよう。ひのこ!」

 

 

「カゲーッ!」

 

 

今度の火の粉は、回避しようとしたコラッタの進路をふさぐように飛んだ。

 

 

コラッタは慌てて足を止め、その隙にヒトカゲが距離を詰める。

 

 

「ひっかく!」

 

 

「カゲッ!」

 

 

鋭い爪が命中する。

 

 

コラッタはその場に倒れ込み、しばらくしてから立ち上がると、草むらの奥へと逃げていった。

 

 

「よし! 勝ったな、ヒトカゲ!」

 

 

「カゲーッ!」

 

 

シンヤはヒトカゲとハイタッチするように手を差し出した。

ヒトカゲは小さな前足をその手に添え、嬉しそうに鳴く。

 

 

「いい動きだったぞ。ひのこの角度を調整して、相手の回避先を狙う。これ、練習すれば

 

かなり使える戦術になるかもしれないな」

 

 

ヒトカゲは褒められて満足したのか、胸を張った。

 

 

(ただし、同じ戦術ばかりじゃ読まれる。これからは相手の動きに合わせて、ひのこだけでなく、ほかの技も組み合わせていこう)

 

 

シンヤは頭の中で、最初の実戦データを整理した。

そして、旅はまだ始まったばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

◆野生ポケモンとの連戦

その後も、シンヤたちは道を進みながら、何度も野生ポケモンと遭遇した。

草むらから飛び出すポッポ。

 

 

木の陰から様子をうかがうコラッタ。

そして、縄張りに近づいたシンヤたちを追い払おうとするポケモンたち。

 

 

そのたびにシンヤは、むやみに相手を傷つけないよう気を配りながら、ヒトカゲにバトルの経験を積ませていった。

 

 

「ヒトカゲ、相手の正面から攻めなくていい! 横へ回り込んで!」

 

 

「カゲッ!」

 

 

ヒトカゲは指示に応じて走り、相手の攻撃をぎりぎりでかわす。

 

 

「そのまま、ひのこ!」

 

 

火の粉が飛ぶ。

 

 

相手が回避する。

 

 

「よし、追いかけるな! 次の動きを見てからだ!」

 

 

ヒトカゲは一度踏みとどまり、相手の動きを見極めた。

相手が攻撃に移ろうとした瞬間、ヒトカゲは身を低くしてかわし、その脇をすり抜ける。

 

 

「今だ、ひっかく!」

 

 

攻撃が命中した。

 

 

(いいね……! 指示を出してから動くだけじゃなく、相手の動きを見て自分でも判断できるようになってきている)

 

 

もちろん、すべてが成功したわけではない。

避けきれずに攻撃を受けることもあったし、ひのこを放つタイミングが早すぎて、相手に余裕を持って回避されたこともある。

 

 

そんなとき、シンヤはすぐに次の攻撃を指示するのではなく、一度距離を取らせ、ヒトカゲの様子を確認した。

 

 

波動の眼で、疲労や呼吸、身体の動き、戦意を確かめる。

 

 

(今のところ、体調は問題なし。でも、攻撃を受けたあとの動きには少し硬さが出ているな。慣れていない攻撃を受けると、立て直しに時間がかかるのか)

 

 

シンヤは、そのことを頭に留めた。

強くなるためには、勝利だけを追い求めるのでは不十分だ。

どんな場面で失敗したのか。

なぜ攻撃が当たらなかったのか。

どうすれば、次はもっと上手く対応できるのか。

 

 

そうした積み重ねこそが、ポケモンとトレーナーの成長につながる。

そして、シンヤはヒトカゲの二つの技――アイアンテールとげんしのちからについても、実戦の中で確かめることにした。

 

 

 

 

 

◆げんしのちから――岩を操る力

 

 

次に遭遇したのは、少し大きめのポケモンだった。

相手は攻撃的で、ヒトカゲに向かって勢いよく突進してきた。

 

 

「ヒトカゲ、横へ回避!」

 

 

ヒトカゲは素早く横へ跳ぶ。

 

 

相手は地面を蹴り、進行方向を変えようとした。

 

 

「よし、ここでげんしのちからを試してみよう! 無理はしなくていい、発動できるか確かめるんだ!」

 

 

「カゲッ!」

 

 

ヒトカゲが身構えた。

 

 

次の瞬間。

周囲の空気がわずかに揺らいだ。

ヒトカゲの身体の周囲に、淡い光が走る。

 

 

そして――。

 

 

ゴゴゴッ!

 

 

地面から、いくつもの岩が浮かび上がった。

 

 

「おおっ!?」

 

 

シンヤは思わず目を見開いた。

 

 

岩は地面から無造作に飛び出したのではない。

まるで何かに引き寄せられるかのように、ヒトカゲの周囲へと浮かび上がり、空中で静止していた。

 

 

(すごい……! ゲームの演出で見ていた技が、実際にはこんなふうに発動するのか!)

 

 

ヒトカゲが前足を動かす。

 

 

すると、浮かんでいた岩の一つが前方へと動いた。

 

 

さらに別の岩が少し遅れて動き、相手の進路を遮るように移動する。

 

 

(待てよ……岩を出現させるだけじゃない。浮かせたあとも、ある程度は動かせるのか!?)

 

 

シンヤは目を凝らした。

波動の眼を通じて見えるのは、ヒトカゲの身体から放たれる波動と、周囲の岩とのつながりだった。

 

 

ただし、シンヤにも、その仕組みのすべてが理解できたわけではない。

岩を浮かせるための力がどこから生じているのか。

どの程度の距離まで操れるのか。

複数の岩を同時に動かすと、どれほど集中力を消耗するのか。

 

 

これらは、実際に試してみなければ分からない。

 

 

「ヒトカゲ、いいぞ! 相手の進路をふさぐように動かしてみて!」

 

 

「カゲーッ!」

 

 

ヒトカゲが意識を集中させる。

岩が一つ、相手の正面へ。

もう一つが、横へ回り込もうとする方向へ。

 

 

相手は進路を変えざるを得なくなった。

 

 

「よし、今だ! ひのこ!」

 

 

ヒトカゲのひのこが、進路を制限された相手に命中した。

 

 

相手はよろめき、やがて戦意を失って距離を取った。

 

 

シンヤは、興奮を抑えながらヒトカゲへ駆け寄った。

 

 

「すごいぞ、ヒトカゲ! 今の、岩を動かして相手の逃げ道を制限したんだよな!?」

 

 

「カゲッ!」

 

 

ヒトカゲは嬉しそうに鳴いた。

 

 

「いやあ、これは面白い……!」

 

 

シンヤの頭の中では、早くもさまざまな戦術が浮かんでいた。

 

 

(岩を盾のように使えるのか? 相手の攻撃を防ぐことは? 複数の岩を別々の方向から動かせるのか? それに、浮かせる高さや移動速度はどこまで調整できる?)

 

 

考え始めると、止まらない。

だが、シンヤはそこで一度、考えを切り替えた。

 

 

(いや、いきなりあれもこれも試すのは駄目だ。ヒトカゲの負担もある。まずは今できることを確実にしていこう)

 

 

「ヒトカゲ、よく頑張ったな。少し休憩しよう」

 

 

「カゲー!」

 

 

ヒトカゲは、シンヤの足元へと寄ってきた。

 

 

シンヤは水を用意し、ヒトカゲの状態を確認した。

波動の眼で見る限り、体調は良好。

 

 

ただ、げんしのちからを使った直後には、集中力を使ったためか、わずかに呼吸が変化していた。

 

 

(やっぱり、技を使うには相応の負担があるんだな。どれだけ連続して使えるのかも、今後確認していく必要がある)

 

 

技の珍しさに驚くことと、技を実戦で安全に使いこなすことは別だ。

シンヤはそのことを、決して忘れなかった。

 

 

 

 

 

◆アイアンテール――硬化と、攻撃後の隙

 

 

次に確認したのは、アイアンテールだった。

相手は、素早く動き回る野生ポケモン。

 

 

正面から攻撃を当てるだけでは、簡単に避けられてしまいそうな相手だった。

 

 

シンヤは、まずヒトカゲの尻尾の動きを注意深く観察した。

 

 

「ヒトカゲ、アイアンテール! まずは無理のない範囲で、尻尾を硬化させて攻撃してみよう!」

 

 

「カゲッ!」

 

 

ヒトカゲは身体をひねり、尻尾を振り抜いた。

その瞬間、尻尾の表面が鋼のような光沢を帯びる。

 

 

ガンッ!

 

 

尻尾が相手の近くの岩へと当たった。

乾いた音が響き、岩が小さく揺れる。

 

 

(なるほど……硬化はちゃんとできている。力もそれなりに出ているな)

 

 

シンヤは、すぐに次の動作へ注目した。

アイアンテールは攻撃力が高い一方で、尻尾を大きく振る必要がある。

攻撃を放った直後、体勢が崩れたり、動きが遅れたりすれば、相手に反撃の隙を与えてしまう。

 

 

「ヒトカゲ、攻撃したあとは、すぐに動ける体勢へ戻すことを意識してみよう!」

 

 

「カゲッ!」

 

 

ヒトカゲは再び尻尾を振り抜いた。

 

 

今度は岩ではなく、地面の柔らかい部分を狙う。

 

 

尻尾が地面を叩いた。

 

 

ドンッ!

 

 

身体がわずかに前へ流れる。

しかし、ヒトカゲは前足を踏ん張り、身体の向きを整えた。

一度目よりも、体勢を立て直すまでの動きが滑らかだった。

 

 

「おっ、今のはいいぞ!」

 

 

シンヤは笑顔で声をかけた。

 

 

(攻撃の威力だけじゃなく、攻撃後の立て直しも練習すれば改善できそうだな。身体がまだ小さいから、尻尾を振る勢いに引っ張られるところはある。でも、本人が動きを調整しようとしている)

 

 

ヒトカゲは尻尾を振ってみせた。

 

 

まるで「どうだ!」と言っているようだ。

 

 

「うん、いい感じだ! でも、まだ無理はするなよ。実戦では相手の動きもあるから、攻撃したあとの隙を減らすことが大事だ」

 

 

「カゲ!」

 

 

シンヤは、ここでも一つの戦術を思いついた。

 

 

(例えば、アイアンテールを相手に直接当てるだけじゃなく、相手が攻撃してくるタイミングで地面を叩いて距離を変えたり、反動を使って身体の向きを変えたりできるかもしれない。なんだったら慣れてくれば叩きつけた後にひのこ、将来はかえんほうしゃを至近距離で使用できるかも……)

 

 

もちろん、それは今後の練習課題だ。

現段階では、ヒトカゲの身体が技の勢いをどこまで制御できるのかを、慎重に確認する必要がある。

 

 

それでも、基本的な硬化と攻撃の動きはできている。

あとは、精度と安定性を高めていけばいい。

 

 

「よし、アイアンテールの確認はここまで。よく頑張ったな、ヒトカゲ!」

 

 

「カゲーッ!」

 

 

ヒトカゲは元気よく返事をした。

 

 

シンヤは、その頭を優しく撫でた。

 

 

(やっぱり、こいつはすごいな。技の種類だけじゃない。教えたことを試そうとする意欲もあるし、動きを変えようとする柔軟性もある)

 

 

もっとも、今のヒトカゲが特別な才能だけで戦っているわけではない。

シンヤの指示を理解しようとする姿勢。

失敗しても、次の動きに挑戦する意欲。

そして、少しずつ積み重ねていく経験。

それらが合わさって、ヒトカゲの強さを形作っているのだ。

 

 

 

 

 

◆初めてのトレーナーバトル!

 

 

野生ポケモンとの戦いを重ねながら、二人は少しずつトキワシティへと近づいていった。

 

 

その途中、道端に立っていた少年が、シンヤたちに気づいて声をかけてきた。

 

 

「おっ、君もポケモントレーナーか?」

 

 

シンヤは足を止める。

 

 

少年の腰にはモンスターボールがあり、隣にはポッポが立っていた。

 

 

「うん。今日、旅に出たばかりなんだ」

 

 

「へえ、じゃあ、初めてのトレーナーバトルってわけか! よかったら、俺と勝負しないか?」

 

 

シンヤは笑顔を浮かべた。

 

 

「いいよ。よろしく!」

 

 

「よーし! それじゃあ、ポッポ、頼んだぞ!」

 

 

「ポッポー!」

 

 

少年のポッポが翼を広げた。

 

 

シンヤはヒトカゲの隣に立ち、相手の様子を確認する。

 

 

(野生ポケモンとのバトルとは違う。トレーナーが指示を出してくるから、相手の動きにも一貫した意図があるはずだ)

 

 

相手のポッポは、空を飛ぶことで地上からの攻撃を避けやすい。

ひのこを当てるにしても、地上の相手と同じようにはいかない。

 

 

(なら、こっちも地形を使わせてもらおう)

 

 

シンヤは、道の脇にある低い岩場へと視線を向けた。

 

 

「それじゃあ、始めよう!」

 

 

「行くぞ、ポッポ! かぜおこし!」

 

 

ポッポが翼を羽ばたかせる。

風が巻き起こり、地面の砂や小さな葉が舞い上がった。

 

 

「ヒトカゲ、正面から受けないで! 岩場の陰へ!」

 

 

「カゲッ!」

 

 

ヒトカゲは走り出し、岩の陰へと身を隠した。

 

 

風が岩にぶつかり、勢いを弱める。

 

 

「よし……!」

 

 

シンヤは、相手のポッポが次にどのように動くのかを見極めようとした。

 

 

空中から攻撃を続けるのか。

 

 

それとも、ヒトカゲを狙って高度を下げるのか。

 

 

ポッポは一度旋回し、岩場の横からヒトカゲを狙おうとした。

 

 

(来た!)

 

 

「ヒトカゲ、相手が近づいてきたら、ひのこを使うぞ!」

 

 

「カゲッ!」

 

 

ヒトカゲは岩陰から飛び出した。

ポッポは攻撃を避けようと翼を傾ける。

だが、シンヤはその動きを見逃さなかった。

 

 

「ひのこ! 相手が避ける方向を見て、角度を調整して!」

 

 

ヒトカゲは口を開き、火の粉を放つ。

 

 

ポッポが上昇して回避する。

 

 

その瞬間、ヒトカゲは攻撃の角度を変えた。

火の粉がポッポの進路を横切る。

 

 

「ポッポッ!?」

 

 

ポッポは驚き、羽ばたきを乱した。

だが、まだ落ちてはいない。

 

 

「ポッポ、もう一度かぜおこしだ!」

 

 

少年の指示を受け、ポッポが再び翼を振る。

風がヒトカゲへ迫った。

 

 

「ヒトカゲ、地面を蹴って横へ! 風が通り過ぎたら、すぐにひのこ!」

 

 

ヒトカゲは低く跳び、風の流れをかわした。

風によって巻き上がった葉が視界を遮る。

しかし、シンヤは慌てなかった。

 

 

(相手も、こっちも、視界が悪くなっている。なら、次の攻撃は……)

 

 

ヒトカゲは葉の動きとポッポの鳴き声を頼りに、相手の位置を探った。

そして、ポッポが再び高度を下げた瞬間。

 

 

「今だ、ひのこ!」

 

 

「カゲーッ!」

 

 

火の粉が放たれた。

ポッポは回避しようとしたが、先ほどの攻撃で動きがわずかに乱れていた。

火の粉が命中する。

 

 

「ポッポーッ!」

 

 

ポッポは地面へ降り立ち、羽を休めた。

 

 

少年はポッポの様子を確認し、笑顔で手を挙げた。

 

 

「参った! 君、今日旅立ったばかりなのに、なかなかやるじゃないか!」

 

 

シンヤは、ヒトカゲの隣で笑った。

 

 

「ありがとう! でも、ヒトカゲが頑張ってくれたおかげだよ」

 

 

「カゲーッ!」

 

 

ヒトカゲは胸を張った。

 

 

シンヤはその姿を見ながら、改めて実感していた。

トレーナーバトルでは、単純な技の威力だけでは勝敗は決まらない。

地形を利用すること。

相手の動きを観察すること。

攻撃を受けたときに、どう立て直すか。

 

 

そして、ポケモンとトレーナーが互いを信頼し、状況に応じて動くこと。

 

 

その一つ一つが、勝利につながっていく。

 

 

(よし。これなら、もっといろいろな戦術を試していけそうだ)

 

 

もちろん、今の勝利だけで自分たちが強いと決めつけるつもりはない。

 

 

旅は始まったばかり。

これから出会う相手は、もっと強く、もっと経験豊富かもしれない。

だからこそ、シンヤは一戦一戦を大切にするつもりだった。

 

 

 

 

 

◆新たな仲間、ポッポ!

 

 

トレーナーバトルを終えたあと、シンヤたちは再び道を進んだ。

 

 

そして、少し先の草むらで、シンヤは一匹のポッポと出会った。

そのポッポは、先ほどのトレーナーのポッポとは別の個体だった。

草むらの縁で地面をつつき、時折顔を上げて周囲を警戒している。

 

 

シンヤは、思わず笑みを浮かべた。

 

 

(ポッポか……やっぱり、序盤の鳥ポケモンっていいよな)

 

 

前世の記憶が蘇ってから、シンヤはさまざまなポケモンを思い出していた。

その中でも、ポッポは特に好きなポケモンの一匹だった。

進化してピジョン、そしてピジョットへ。

成長していく姿には、どこか頼もしさがある。

 

 

もちろん、好きだからという理由だけで、無理に捕まえるつもりはない。

まずは相手の様子を確認する。

波動の眼を通して見えるポッポは、体調が良好で、警戒心はあるものの、過度に怯えている様子はなかった。

 

 

「よし……ヒトカゲ、少し相手をしてみようか」

 

 

「カゲッ!」

 

 

シンヤは慎重に距離を詰めた。

 

 

ポッポはすぐに気づき、翼を広げて飛び立とうとする。

 

 

「ヒトカゲ、ひのこ! でも、当てすぎないように!」

「カゲーッ!」

 

 

火の粉が飛ぶ。

 

 

ポッポは翼を傾けて回避した。

 

 

シンヤはその動きを見ながら、ヒトカゲへ次の指示を出す。

 

 

「追いかけすぎるな! 相手が降りてきたところを狙おう!」

 

 

ヒトカゲは地面を蹴り、ポッポの動きを見守った。

やがてポッポは、距離を取るために低い木の枝へと降り立った。

 

 

「今だ、ひのこ!」

 

 

火の粉が飛ぶ。

 

 

ポッポは驚いて枝から飛び立ったが、攻撃を完全には避けきれず、地面へ降り立った。

シンヤはすぐに手を上げた。

 

 

「よし、そこまで!」

ヒトカゲは攻撃を止めた。

シンヤはポッポへと近づき、しゃがみ込む。

 

 

「大丈夫か? 無理に戦わせるつもりはないよ」

 

 

ポッポは警戒しながらも、逃げずにシンヤを見つめた。

シンヤはモンスターボールを取り出した。

 

 

(俺はこの子と一緒に旅をしたい。だけど、捕まえるなら、ちゃんと向き合ってからだ)

 

 

「ポッポ。よかったら、俺たちと一緒に旅をしてくれないか?」

 

 

返事の代わりに、ポッポは小さく鳴いた。

 

 

「ポッポ……」

 

 

シンヤは、モンスターボールをそっと差し出した。

ポッポはしばらくその赤と白のボールを見つめていたが、やがて自分から近づき、ボールに触れた。

 

 

赤い光がポッポを包み込む。

ボールが一度揺れ、二度揺れ――。

 

 

カチッ。

 

 

「よしっ!」

 

 

シンヤはモンスターボールを手に取った。

 

 

「これからよろしくな、ポッポ!」

 

 

隣では、ヒトカゲが嬉しそうに鳴いていた。

 

 

「カゲーッ!」

 

 

「ははっ、ヒトカゲも歓迎してくれるのか。ありがとうな」

 

 

こうして、シンヤの手持ちに二匹目のポケモンが加わった。

ヒトカゲに続く新たな仲間――ポッポ。

 

 

シンヤにとっては、ただ数を増やすための捕獲ではない。

自分が好きなポケモンと出会い、互いに認め合い、一緒に旅をすることになった。

それが、何より嬉しかった。

まあ、とはいえだ。ポケモン廃人の時の名残か、あらゆるポケモンを捕獲したいとも思えている。それに俺が捕獲すればそのポケモンは実家に送って父さんの発明の素材集めにもなると。

 

 

 

 

 

◆コラッタとの出会い、そして実家への転送

 

 

ポッポを仲間に加えたあとも、シンヤたちはトキワシティを目指して進んだ。

 

 

途中、再びコラッタと遭遇した。

 

 

今度のコラッタは、先ほどの個体とは違い、草むらの中で食べ物を探していた。

シンヤは足を止め、少し離れた場所から様子をうかがった。

 

 

(コラッタか……この子も、旅の仲間として迎えるのは悪くないな)

 

 

ただ、シンヤはすでにヒトカゲとポッポを仲間にしている。

これから旅を続けるうえで、どのポケモンと一緒に行動し、どのポケモンをどこで育てるのか。

 

 

それも考えなければならない。

そこで、シンヤは実家のことを思い出した。

父マサユキと母ミユキが暮らす、広大な敷地。

 

 

そこには、両親が旅の途中で出会い、仲間にしたポケモンたちが暮らしている。

ポケモンたちがのびのびと過ごせる環境が整えられており、必要な世話も両親がしてくれる。

 

 

さらに、オーキド博士とも相談し、手持ちが六匹を超えた場合などに、捕まえたポケモンを実家へ送れるように取り決めていた。

 

 

(よし。コラッタを捕まえたら、実家で暮らしてもらおう。俺が旅を続けている間も、ちゃんと世話をしてもらえるしな)

 

 

シンヤはコラッタの様子を観察した。

体調は悪くない。警戒心は強いが、周囲をよく見て行動している。

 

 

(うん、この子もなかなかいい個体だ)

 

 

シンヤはヒトカゲとポッポに目配せした。

 

 

「二人とも、ちょっと協力してくれ」

 

 

「カゲッ!」

 

 

「ポッポー!」

 

 

シンヤは慎重にコラッタへと近づき、無理に追い詰めないようにしながら、捕獲の機会をうかがった。

 

 

コラッタは一度逃げようとしたが、ヒトカゲが進路を塞ぐように移動し、ポッポが上空からその動きを見守る。

 

 

シンヤは、コラッタが立ち止まった瞬間を見逃さなかった。

 

 

「今だ!」

 

 

モンスターボールが飛ぶ。

 

 

赤い光がコラッタを包み込み、ボールが揺れた。

 

 

カチッ。

 

 

「よし、捕獲成功!」

 

 

シンヤはボールを拾い上げた。

 

 

「コラッタ、これからよろしくな!」

 

 

その後、シンヤは父からもらった空間転送機能付きのバッグを開いた。

 

 

バッグの内部に備わった仕組みを意識し、実家に設置されている対応リングへとつながる経路を思い描く。

そして、捕獲したコラッタのボールを、実家のポケモンたちが暮らす場所へ送ることにした。

 

 

(コラッタ、しばらくは実家で過ごしてくれ。俺が旅を続けている間も、ちゃんと元気に暮らせるようにしておくからな)

 

 

転送の準備が整うと、ボールはバッグの仕組みを通じて実家へと送られた。

 

 

これで、コラッタはシンヤの旅の手持ちからは外れることになる。

ただし、仲間ではなくなったわけではない。

旅の途中で必要があれば、両親と連絡を取り、再び手持ちに加えることもできる。

 

 

(これなら、いろいろなポケモンと出会っても、それぞれに合った育て方を考えられるな)

 

 

シンヤは、父の発明に改めて感謝した。

便利な道具というだけではない。

 

 

旅の途中で出会ったポケモンたちに、それぞれに合った居場所を用意できる。

それは、シンヤにとって非常にありがたいことだった。

 

 

 

 

 

◆トキワシティはもうすぐ!

 

 

空が少しずつ傾き始めたころ、シンヤたちはようやくトキワシティへと続く道の先を見渡せる場所までやってきた。

遠くに見える街並み。

行き交う人々。

 

 

そして、旅人たちが目指す街の入口。

 

 

「……着いたな」

 

 

シンヤは、思わず足を止めた。

 

 

マサラタウンを出発してから、野生ポケモンとのバトル、初めてのトレーナーバトル、そして新たな仲間との出会い。

 

 

短い時間だったはずなのに、たくさんの経験をしたような気がした。

隣では、ヒトカゲが尻尾の炎を揺らしている。

そして、ポッポはシンヤの肩の近くを飛びながら、街の方向を見つめていた。

 

 

「ヒトカゲ、ポッポ。今日は本当にありがとうな」

 

 

「カゲーッ!」

 

 

「ポッポー!」

 

 

シンヤは笑顔を浮かべた。

 

 

(ヒトカゲの技の習熟度、げんしのちからの仕組み、アイアンテールの硬化と立て直し。それに、ひのこの角度調整。今日だけでも、かなりのことが分かった)

 

 

まだ分からないことは多い。

技の限界も、二匹の成長の可能性も、これから出会うポケモンたちのことも。

だが、それを知っていくことこそが、旅の醍醐味なのだろう。

 

 

シンヤは、トキワシティへ向かって歩き出した。

 

 

「よし、まずはポケモンセンターを探そう。それから、街の様子を見て、明日以降の予定を考えるか!」

 

 

「カゲッ!」

 

 

「ポッポー!」

 

 

少年と二匹のポケモンは、夕日に照らされた道を進んでいく。

その先に待っているのは、新しい街。

新しい出会い。

そして、まだ見ぬ強敵たちとのバトルだ。

シンヤは、胸の高鳴りを感じながら笑った。

 

 

「さあ、ここからが本番だ!」

 

 

 

 




【シンヤの手持ち一覧】

・ヒトカゲ LV:5→LV:9
むじゃきな性格(実機で言う両刀型候補な性格)

・ポッポ LV:3(捕獲時)→LV:7
せっかちな性格(実機で言う両刀型候補な性格)




【実家のポケモン】
・コラッタ LV:4
ようきな性格。今後、実家の両親のポケモンに揉まれてレベルが上がっていく模様。
裏ではこっちに戻してコミュニケーションなどを取ってたりするという設定。
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