ポケットモンスター~波動の眼を持つ少年~   作:レイザル

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第41話 忍者屋敷の死闘! シンヤ、ピンクバッジをゲットせよ!

◆サイクリングロードを駆け抜けろ!

 

「それじゃあ、出発するわよ。シンヤ♪」

 

 

「はいはい。ちゃんと掴まってろよ」

 

 

タマムシシティで借りた自転車。

その後ろにレンを乗せ、シンヤはサイクリングロードへと漕ぎ出した。

カントー地方でも有名なサイクリングロードは、海沿いの道を長く伸びている。自転車を楽しむトレーナーたちが行き交い、道中ではポケモンを連れた人々がバトルを楽しんでいた。

しかし、シンヤには寄り道をするつもりなどなかった。

 

 

「おっ、そこの君! ポケモンバトルをしないか!」

 

 

「悪い、先を急いでる!」

 

 

「そんなこと言わずにさ!」

 

 

「……仕方ないな」

 

 

シンヤはため息をつき、自転車を安全な場所に止めた。

 

 

「リザードン、頼む」

 

 

「グオオオオッ!」

 

 

ボールから現れたリザードンが、力強く翼を広げる。

 

 

「えっ、リザードン!?」

 

 

「バトルは受ける。けど、こっちも急いでるからな。短期決戦でいくぞ!」

 

 

その後、何人かのトレーナーから勝負を挑まれたが、シンヤはリザードンの力と経験を活かして手早く勝利を収めていった。

レンはその様子を後ろから眺め、くすりと笑う。

 

 

「ふふっ。シンヤったら、ずいぶん急いでいるのね」

 

 

「そりゃあ、セキチクまでまだ距離があるからな」

 

 

「そう? でも……」

 

 

レンはシンヤの背中へ、そっと身体を寄せた。

そして、彼の腰に回した腕に少しだけ力を込める。

 

 

「こうして二人で自転車に乗るのも、なかなか楽しいものよね?」

 

 

「――っ!?」

 

 

シンヤの身体が一瞬だけ硬直した。

背中に伝わる柔らかな感触。

耳元に届くレンの声。

そして、いつもよりずっと近い距離。

 

 

 

 

(待て待て待て待て! 落ち着け、俺! 今は自転車を漕ぐことに集中しろ!)

 

 

 

 

 

前世の記憶を持つ少年にとって、精神的な年齢と肉体年齢の差は、ときとして厄介な問題を引き起こす。

しかも、相手は自分でも可愛いと思っている少女なのだ。

 

 

 

 

(いや、これは仕方ないだろ!? こんなの意識するなっていうほうが無理だろ!)

 

 

 

 

「シンヤ? どうかしたの?」

 

 

「な、なんでもない!」

 

 

シンヤはペダルを踏み込んだ。

 

 

 

 

グンッ!

 

 

 

 

「きゃっ!?」

 

 

自転車が勢いよく加速する。

 

 

「ちょ、ちょっとシンヤ!? 速いわよ!?」

 

 

「大丈夫だ! このまま一気にセキチクまで行くぞ!」

 

 

「ふふっ、もう……!」

 

 

レンは楽しそうに笑いながら、シンヤの腰にぎゅっとしがみついた。

 

 

 

 

その結果。

 

 

 

 

17番道路、18番道路を通過する頃には、シンヤはほとんど最高速度で自転車を走らせていた。

野生のポケモンが姿を見せても、シンヤは目もくれない。

この辺りに生息するポケモンは、すでに必要なものを捕獲している。今は寄り道をする理由もなかった。

 

 

 

 

……いや。

 

 

 

 

 

正確に言えば、シンヤが必死にペダルを漕いでいた理由は、それだけではなかったのだが。

 

 

「ふう……。やっと着いたな」

 

 

「ええ、とっても速かったわね♪」

 

 

セキチクシティに到着した二人。

レンは涼しい顔で自転車から降りたが、シンヤは額に浮かんだ汗を拭った。

 

 

 

 

 

(……危なかった。いろいろな意味で)

 

 

 

 

 

「シンヤ?」

 

 

「なんでもない。それより、自転車を返却しよう」

 

 

「ええ♪」

 

 

レンは不思議そうに首を傾げたものの、深く追及することはなかった。

こうして二人はレンタル自転車を返却し、セキチクシティの街並みを見渡した。

 

 

 

広々としたサファリゾーン。

ポケモンだいすきクラブ系列の施設。

ポケモンセンター。

そして――セキチクジム。

 

 

シンヤは街の建物を一通り確認すると、目的の場所へ視線を向けた。

 

 

「まずはジムだな」

 

 

「着いたばかりなのに、もう行くの?」

 

 

「特に疲れてないしな。だったら、先にバッジを取っておきたい」

 

 

「ふふっ。シンヤらしいわね」

 

 

 

今回のジムリーダーは、毒タイプのエキスパート。

 

 

 

キョウ。

 

 

 

 

忍術を修めた忍者でもあるという、少々変わった人物だ。

 

 

「さて、今回は誰を連れていくか……」

 

 

シンヤは手持ちのポケモンたちを思い浮かべた。

セキチクジムの内部がどうなっているのかは分からない。だが、木造の建物であるなら、大型のポケモンを使うのは避けたい。

何より、炎技を無闇に使うのも危険だろう。

 

 

 

 

 

(今回はスピアー、エレブー、ピカチュウ。追加で一匹必要になるならフーディンかな)

 

 

 

 

 

スピアーは毒タイプ同士の戦いに対応できるし、エレブーとピカチュウは素早さと火力を兼ね備えている。

フーディンなら、相手の毒ポケモンに対してエスパー技で有利に立ち回れるはずだ。

もっとも、試合形式が3対3なのか、4対4なのかはまだ分からない。

 

 

「よし、行こう」

 

 

シンヤはレンとともに、セキチクジムへと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆セキチクジム、忍者屋敷の罠!

 

 

「……あ」

 

 

ジムの内部を見た瞬間、シンヤは思わず足を止めた。

 

 

木造の廊下。

薄暗い室内。

壁に飾られた忍具。

そして、いかにも怪しげな仕掛けの数々。

 

 

 

「そうだった。ここ、忍者屋敷だったな……」

 

 

「忍者屋敷?」

 

 

レンが興味深そうに辺りを見回す。

 

 

「ええ、なかなか凝った造りね。まるで迷路みたい」

 

 

「ゲームだと見えない壁とかが面倒だったんだよな……」

 

 

「げーむ?」

 

 

「いや、こっちの話」

 

 

シンヤは慌てて咳払いをした。

 

 

そのとき。

 

 

 

 

 

カチッ。

 

 

 

 

 

足元から小さな音が鳴った。

 

 

「……ん?」

 

 

 

 

ガコンッ!

 

 

 

 

 

「うわっ!?」

 

 

床の一部が傾き、シンヤの身体が大きくよろめいた。

さらに、廊下の奥から丸い物体がゴロゴロと転がってくる。

 

 

「マルマイン!?」

 

 

レンが目を見開く。

 

 

「おいおいおい! ジムの中に爆発物を転がしてくるな!」

 

 

シンヤはレンの手を取って横へ飛び退いた。

 

 

 

 

 

ドゴオオオオンッ!!

 

 

 

 

 

マルマインが爆発し、木造の廊下を激しく揺らす。

 

 

「……本当にジムか、ここ?」

 

 

「ふふっ。シンヤ、顔が引きつっているわよ?」

 

 

「当たり前だろ! 普通のジムなら、もう少し安全に進めるはずだ!」

 

 

「でも、忍者屋敷として考えれば、よくできていると思うわ」

 

 

「感心するところじゃない!」

 

 

そんなやり取りをしながら先へ進んでいくと、二人の前に一人の女性が姿を現した。

忍装束を身にまとい、身軽な動きで廊下に降り立つ。

 

 

「ここから先へ進みたくば、まずは私を倒してみなさい!」

 

 

「……トレーナーか」

 

 

女性は不敵な笑みを浮かべた。

 

 

「私はアヤ。キョウの妹にして、くノ一よ!」

 

 

 

 

(ああ、いたな……キョウの妹)

 

 

 

 

シンヤは心の中で頷いた。

 

 

「それでは、勝負よ! コンパン、行きなさい!」

 

 

アヤのボールから、コンパンが飛び出す。

 

 

「コンパァ!」

 

 

シンヤはすぐにボールを一つ取り出した。

 

 

「フーディン、頼む!」

 

 

「フーディン」

 

 

現れたフーディンは、両手にスプーンを持ち、落ち着いた様子で相手を見据えた。

 

 

「コンパン、ねんりきを使いなさい!」

 

 

コンパンの目が光り、念力がフーディンへと向かう。

しかし、フーディンはわずかに首を傾けただけだった。

 

 

「サイコキネシス」

 

 

フーディンの目が輝く。

次の瞬間、コンパンの身体が見えない力に包み込まれた。

 

 

「コンパッ!?」

 

 

そのまま宙へ持ち上げられ、勢いよく床へと叩きつけられる。

 

 

 

 

 

ドンッ!

 

 

 

 

 

コンパンは目を回し、その場に倒れた。

 

 

「こ、コンパン!?」

 

 

アヤが驚きの声を上げる。

 

 

「勝負あり、だな」

 

 

「……まさか、一撃で倒されるとは」

 

 

アヤはコンパンをボールへ戻し、シンヤをじっと見つめた。

 

 

「なるほど。あなたが噂の挑戦者ね。キョウ兄さんが待っているわ。さあ、先へ進みなさい!」

 

 

「ありがとう」

 

 

シンヤたちはアヤに見送られ、さらに奥へと進んでいった。

 

 

途中、何度か仕掛けに遭遇したものの、今度は慎重に進んだおかげで大きな問題にはならなかった。

 

 

 

そして――。

 

 

 

 

 

「よくぞここまでたどり着いたな」

 

 

低く落ち着いた声が、薄暗い室内に響いた。

目の前に立っていたのは、紫色の忍装束をまとった男。

鋭い眼差しに、隙のない立ち姿。

セキチクジムリーダー、キョウである。

 

 

「拙者がセキチクジムのジムリーダー、キョウだ。お前が挑戦者のシンヤで相違ないか?」

 

 

「ああ。バッジを懸けたポケモンバトルをお願いしたい」

 

 

「よかろう。忍の戦いは、力だけでは決まらぬ。相手の意表を突き、隙を見極め、勝機を掴むものだ!」

 

 

キョウは懐からボールを取り出した。

 

 

「今回は四対四。互いに四匹のポケモンを使用する。すべてのポケモンが戦闘不能になった側の負けとするでござる!」

 

 

「四対四か。分かった」

 

 

シンヤは用意していた三匹に加え、フーディンのボールを手に取った。

 

 

 

 

(よし。想定どおりだ)

 

 

 

 

 

「行くぞ! モルフォン!」

 

 

キョウのボールから、巨大な蛾のようなポケモンが現れた。

 

 

「モルフォオオン!」

 

 

「なるほど、まずはモルフォンか」

 

 

シンヤはスピアーのボールを掲げる。

 

 

「こっちも毒ポケモンでいこう。スピアー、出番だ!」

 

 

「スビーッ!」

 

 

二本の鋭い針を構え、スピアーが飛び立つ。

 

 

「ほう。毒タイプ同士の戦いを選ぶか」

 

 

「こっちにも理由があるんでね」

 

 

シンヤは静かに笑った。

 

 

「それじゃあ、始めよう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆第一戦! スピアー対モルフォン!

 

 

「モルフォン、ねんりきを使え!」

 

 

モルフォンの目が輝き、見えない力がスピアーを捉えようとする。

 

 

「スピアー、こうそくいどう!」

 

 

スピアーは瞬時に加速し、念力の拘束から逃れた。

 

 

「そのまま接近しろ!」

 

 

「モルフォン、しびれごな!」

 

 

モルフォンの翅が震え、黄色い粉が周囲に散らされる。

 

 

「毒の粉だけじゃないか。状態異常を狙ってきたな!」

 

 

シンヤはスピアーの動きを目で追う。

モルフォンは空中を旋回しながら、しびれごなやねむりごなを撒き散らし、スピアーを近づけさせない。

同じく飛行能力を持つ毒ポケモン同士。

単純な突撃では、粉を浴びて動きを封じられる危険がある。

 

 

「スピアー、無理に正面から行くな! 粉の流れを見ろ!」

 

 

「ビーッ!」

 

 

スピアーは上昇し、風の流れに乗るように大きく旋回した。

モルフォンが粉を撒く方向を変えた瞬間、その背後へ回り込む。

 

 

「今だ! こうそくいどうで一気に潜り込め!」

 

 

スピアーが急降下した。

モルフォンは慌てて翅を羽ばたかせ、距離を取ろうとする。

だが、スピアーのほうが一歩速い。

 

 

「ドリルライナー!」

 

 

スピアーは身体を回転させ、鋭い針を前方へ突き出した。

 

 

「モルフォン、回避しろ!」

 

 

モルフォンが横へ逃げようとする。

しかし、スピアーは相手の進路を読んでいた。

回転する針がモルフォンの身体を捉え、そのまま勢いよく弾き飛ばす。

 

 

「モルフォオッ!?」

 

 

モルフォンは床へ落下し、動かなくなった。

 

 

「モルフォン、戦闘不能!」

 

 

審判役のジムスタッフが宣言する。

 

 

「よし、スピアー!」

 

 

シンヤが拳を握ると、スピアーは誇らしげに翅を震わせた。

キョウはモルフォンをボールへ戻し、静かに頷く。

 

 

「見事だ。粉技を恐れて距離を取るのではなく、風と相手の動きを利用して突破したか」

 

 

「スピアーは接近戦が得意だからな。持ち味を活かさないと」

 

 

「なるほど。では、次のポケモンで試させてもらおう」

 

 

キョウは二つ目のボールを投げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆第二戦! エレブー対マタドガス!

 

 

「マタドガス、出ろ!」

 

 

紫色の煙をまとったマタドガスが現れる。

 

 

「ドガース……いや、マタドガスか」

 

 

シンヤは目の前の相手を見て、少しだけ表情を引き締めた。

マタドガスは防御力に優れ、毒技を得意とするポケモンだ。簡単に倒せる相手ではない。

 

 

「スピアー、戻れ。エレブー、頼む!」

 

 

「エレキィッ!」

 

 

エレブーが勢いよく飛び出し、両腕を構えた。

 

 

その目は、強敵と戦えることへの期待に輝いている。

 

 

 

 

 

 

 

(本当に強い相手と戦うのが好きになったな、こいつ……)

 

 

 

 

 

 

シンヤは苦笑した。

おそらく、きっかけは実家にいるコノヨザルだけではないな。今までの激戦で、エレブー自身が戦いの楽しさを覚えたのだろう。

 

 

「マタドガス、ヘドロばくだん!」

 

 

マタドガスの口から、紫色の毒液が勢いよく吐き出された。

 

 

「エレブー、横へ跳べ!」

 

 

エレブーは地面を蹴り、毒液を紙一重でかわす。

ヘドロばくだんが床に当たり、嫌な音を立てて飛び散った。

 

 

「近づかせないつもりか……!」

 

 

マタドガスは浮遊しながら毒液を連射し、エレブーの進路を塞いでいく。

 

 

「なら、距離を取ってみろ!」

 

 

キョウが指示を出した。

 

 

「かえんほうしゃ!」

 

 

「……は?」

 

 

シンヤの顔が固まった。

マタドガスの口から、猛烈な炎が噴き出す。

 

 

「いや、普通にかえんほうしゃしてきたぞ!?」

 

 

シンヤは思わず叫んだ。

 

 

「ここ、そんなに広くない木造建築なんだけど!? 燃えたらどうするんだよ!」

 

 

レンは観客席から口元を押さえ、くすくすと笑っている。

 

 

「ふふっ。シンヤ、相手はジムリーダーなのよ? そう簡単には燃えないようにしてあるんじゃないかしら」

 

 

「だとしても、もっとこう……あるだろ!」

 

 

しかし、文句を言っている暇はなかった。

 

 

「エレブー、十まんボルト!」

 

 

「エレキィィィッ!」

 

 

エレブーの全身から電撃が迸る。

 

 

雷光と炎が激突し、凄まじい衝撃が発生した。

 

 

 

 

 

 

 

バチバチバチッ!

 

ゴオオオッ!

 

 

 

 

 

 

二つの技は互いを押し返し、爆発するように弾けた。

煙が立ち込め、二匹の姿が見えなくなる。

 

 

「マタドガス、ヘドロばくだんで追い打ちだ!」

 

 

キョウの指示が飛ぶ。

 

 

「ドガアアッ!」

 

 

煙の中から毒液が飛び出した。

だが――。

 

 

「エレブー、前へ出ろ!」

 

 

「エレキィッ!」

 

 

エレブーは避けなかった。

毒液の軌道を見極め、身体をひねって紙一重でかわすと、そのまま煙の中へ突っ込んでいく。

 

 

「なっ!?」

 

 

キョウが目を見開いた。

 

 

「雷パンチ! 続けてかわらわりだ!」

 

 

エレブーの右拳に電撃が集中する。

 

 

 

 

バチバチバチッ!

 

 

 

 

「エレキィィィッ!」

 

 

脳天へ叩き込まれた雷パンチが、マタドガスの身体を大きく揺らす。

そのままエレブーは身体をひねり、反対の腕を振り抜いた。

 

 

「かわらわり!」

 

 

 

 

 

ドゴォンッ!

 

 

 

 

強烈な一撃がマタドガスを吹き飛ばした。

マタドガスは床を転がり、壁際で止まる。

 

 

「マタドガス、戦闘不能!」

 

 

「よっしゃ!」

 

 

シンヤは拳を握りしめた。

 

 

「よくやった、エレブー!」

 

 

「エレキィッ!」

 

 

エレブーは胸を張り、得意げに腕を振り上げた。

キョウはその姿を見つめ、静かに笑う。

 

 

「遠距離攻撃で追い詰めたはずが、煙を利用して接近してきたか。強気な戦い方だ」

 

 

「エレブーは、ああいうところがあるからな」

 

 

シンヤは肩をすくめた。

 

 

 

 

 

 

(それにしても、炎技を使うことに何の躊躇もないんだな、このジム……)

 

 

 

 

 

 

心の中でそう呟きながら、次のポケモンに備えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆第三戦! ピカチュウ対アーボック!

 

 

「次はこいつだ。アーボック!」

 

 

キョウの三つ目のボールから、巨大な毒蛇ポケモンが姿を現す。

 

 

「シャアアアッ!」

 

 

アーボックは首元の模様を広げ、威嚇するように身体を持ち上げた。

 

 

「なるほど、アーボックか。ピカチュウ、頼む!」

 

 

「ピカァ!」

 

 

ピカチュウが床へ降り立ち、頬の電気袋を光らせた。

 

 

「アーボック、どくばり!」

 

 

無数の毒針が飛ぶ。

 

 

「ピカチュウ、右へ!」

 

 

ピカチュウは素早く横へ跳び、毒針をかわした。

 

 

「続けて、ようかいえき!」

 

 

アーボックが口から酸性の液体を吐き出す。

ピカチュウは身体を低くして潜り込み、床を蹴って一気に距離を詰めた。

 

 

「でんこうせっか!」

 

 

「ピカピカッ!」

 

 

ピカチュウの身体が稲妻のように走る。

しかし、アーボックも負けてはいない。

長い身体をくねらせ、ピカチュウの突進を紙一重でかわすと、尻尾を振り抜いた。

 

 

「アーボック、たたきつける!」

 

 

「ピカッ!?」

 

 

ピカチュウは尻尾の一撃を受け、床を滑る。

 

 

「ピカチュウ!」

 

 

だが、ピカチュウはすぐに立ち上がった。

 

 

「ピカァ!」

 

 

「いいぞ。相手の動きを止めようとするな。こっちから崩すぞ!」

 

 

シンヤは目を細めた。

 

 

「ピカチュウ、フラッシュ!」

 

 

「ピカァァッ!」

 

 

ピカチュウの身体が強烈に発光する。

薄暗い室内が一瞬、昼間のような明るさに包まれた。

 

 

「シャアッ!?」

 

 

突然の光に、アーボックが目を細める。

視界を奪われ、攻撃のタイミングを失った。

 

 

「今だ! 懐に飛び込め!」

 

 

ピカチュウは一気に距離を詰め、アーボックの身体をすり抜けるように走った。

そして、その腹部の近くで急停止する。

 

 

「零距離、十まんボルト!」

 

 

「ピカチュウウウッ!!」

 

 

 

 

 

 

バリバリバリバリッ!!

 

 

 

 

 

 

至近距離から放たれた電撃が、アーボックの身体を包み込んだ。

 

 

「シャアアアアッ!」

 

 

アーボックは激しく痙攣し、そのまま床へ倒れ込む。

 

 

「アーボック、戦闘不能!」

 

 

「よしっ!」

 

 

シンヤが笑顔を浮かべる。

ピカチュウは振り返り、得意げに頬を光らせた。

 

 

「ピカピカッ!」

 

 

「フラッシュで視界を奪ってからの零距離攻撃か……。なるほど、技の威力だけに頼らぬ戦い方だ」

 

 

キョウはアーボックをボールへ戻し、最後のボールを手に取った。

 

 

「だが、ここからが本番だ」

 

 

シンヤも表情を引き締める。

 

 

「最後の一匹……か」

 

 

キョウはボールを高く掲げた。

 

 

「現れよ、クロバット!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆最終戦! フーディン対クロバット!

 

 

「クロバット!」

 

 

四枚の翼を広げたポケモンが、天井近くへ舞い上がった。

その姿を見た瞬間、シンヤはわずかに目を見開いた。

 

 

「クロバット……!」

 

 

ズバットやゴルバットならともかく、クロバットはかなり素早いポケモンだ。

しかも、キョウのクロバットは動きに一切の無駄がない。

 

 

 

 

 

(なるほど。最後にこいつを出してきたか)

 

 

 

 

 

シンヤは一瞬考えたあと、苦笑した。

 

 

 

 

 

(……まあ、不思議じゃないか)

 

 

 

 

クチバジムでは、予想以上に強いライチュウが待ち構えていた。

タマムシジムでは、エリカが巧みな戦術でこちらを追い詰めてきた。

そして、今回のセキチクジムでは、最後にクロバット。

 

 

 

 

 

(クチバジムから始まって、明らかに俺だけジム戦の難易度が上がってないか?)

 

 

 

 

 

自分の旅を振り返り、そんな考えが頭をよぎる。

しかし、もはや驚く気持ちは薄れていた。

 

 

 

 

 

 

(……いや、もういいや。強い相手と戦えるなら、それでいい)

 

 

 

 

 

 

 

シンヤは最後のボールを構えた。

 

 

「フーディン、頼む!」

 

 

「フー」

 

 

フーディンが静かに姿を現す。

スプーンを両手に持ち、宙に浮かぶクロバットを見上げた。

 

 

「クロバット、つばさでうつ!」

 

 

「クロバッ!」

 

 

クロバットの姿が消えた。

いや、正確には、目にも止まらぬ速さで移動したのだ。

 

 

「速い……!」

 

 

レンが思わず声を漏らす。

クロバットはフーディンの側面へ回り込み、翼を振り抜く。

 

 

「フーディン、サイコキネシス!」

 

 

フーディンの目が光る。

しかし、技が発動するよりも早く、クロバットは視界の外へ飛び去っていた。

 

 

「くっ……!」

 

 

サイコキネシスは空を切る。

 

 

「クロバット、かみつく!」

 

 

今度は背後からクロバットが迫る。

フーディンは振り返ろうとしたが、間に合わない。

 

 

 

 

ガブッ!

 

 

 

 

「フーディ!」

 

 

クロバットは攻撃を当てると、すぐに距離を取った。

そのまま旋回し、再び攻撃の機会を窺う。

キョウは腕を組み、静かに告げた。

 

 

「クロバットの速さを侮るな。相手が技を繰り出す前に攻撃し、反撃の隙を与えぬ。それがこのポケモンの戦い方でござる!」

 

 

「なるほどね……」

 

 

シンヤはフーディンの様子を観察した。

クロバットは速い。こちらがサイコキネシスを使おうとしても、発動前に射程から逃げられてしまう。

ならば、技を当てることだけを考えていては勝てない。

 

 

 

 

 

(速さを封じる。まずはそこからだ)

 

 

 

 

 

 

シンヤはフーディンに視線を向けた。

 

 

「フーディン、でんじは!」

 

 

「フーディン!」

 

 

フーディンが両手のスプーンを交差させ、電気を帯びた波動を放つ。

 

 

「クロバット、回避しろ!」

 

 

クロバットは即座に旋回し、電磁波の軌道から逃れようとする。

 

 

 

 

だが――。

 

 

 

 

 

 

「そこだ!」

 

 

シンヤはクロバットの進行方向を見ていた。

フーディンが狙っていたのは、クロバットの現在位置ではない。

高速で飛び回るクロバットが、次に通る場所だった。

 

 

「フーディン、軌道を修正しろ!」

 

 

電磁波がわずかに角度を変え、クロバットの進路を塞ぐ。

 

 

「クロバッ!?」

 

 

電撃が四枚の翼を捉えた。

 

 

 

 

 

 

バチッ!

 

 

 

 

 

 

クロバットの身体が大きく震える。

 

 

「よし、当たった!」

 

 

クロバットはなおも飛び続けようとしたが、その動きは明らかに鈍くなっていた。

 

 

 

「クロバット、もう一度つばさでうつ!」

 

 

キョウが指示を出す。

クロバットはフーディンへ向かって突進する。

しかし、先ほどまでの速度はない。

 

 

「フーディン、サイコキネシス!」

 

 

今度は、逃げられない。

フーディンの目が強く輝き、クロバットの身体が見えない力に包まれた。

 

 

「クロバッ!?」

 

 

四枚の翼が動きを止める。

クロバットは空中で拘束され、身動きが取れなくなった。

 

 

「そのまま押さえろ!」

 

 

フーディンは両手のスプーンを握り締め、念力を強める。

クロバットは必死に身体をひねり、拘束から逃れようともがく。

しかし、麻痺によって動きが鈍った状態では、フーディンの念力を振りほどけない。

 

 

「これで終わりだ! サイコウェーブ!」

 

 

フーディンの周囲から、波打つような超能力のエネルギーが広がった。

 

 

その波動が拘束されたクロバットを包み込む。

 

 

 

 

 

 

 

ドォンッ!

 

 

 

 

 

 

衝撃とともに、クロバットの身体が床へ落ちた。

 

 

「クロバット、戦闘不能!」

 

 

審判の声が響く。

 

 

「勝者、挑戦者シンヤ!」

 

 

「よしっ! 勝ったな、フーディン!」

 

 

「フーディン!」

 

 

フーディンは落ち着いた様子でスプーンを掲げた。

その姿を見て、シンヤは満足げに頷く。

 

 

 

 

 

 

(相手の速さを上回る必要はない。速さを発揮できなくして、確実に技を当てる。それが今回の正解だったな)

 

 

 

 

 

 

キョウはクロバットをボールへ戻し、シンヤの前へ歩み寄った。

 

 

「見事な戦いだった。相手の速さに翻弄されることなく、冷静に弱点を見極めたな」

 

 

「クロバットが想像以上に速かったからな。普通に攻撃していたら、フーディンの技が当たらないと思ったんだ」

 

 

「だからこそ、でんじはで動きを鈍らせたか。相手の長所を封じる、理に適った戦術だ」

 

 

キョウは懐から小さなバッジを取り出した。

淡い桃色に輝く、セキチクジムの証。

 

 

「これを受け取るがいい。セキチクジムの勝者に与えられる、ピンクバッジだ!」

 

 

シンヤは両手でバッジを受け取った。

 

 

「ありがとう、キョウさん!」

 

 

手のひらに収まったピンクバッジを見つめ、シンヤは笑顔を浮かべる。

 

 

 

 

 

 

これで五つ目。

 

 

 

 

ニビシティのグレーバッジ。

ハナダシティのブルーバッジ。

クチバシティのオレンジバッジ。

タマムシシティのレインボーバッジ。

そして、今回のピンクバッジ。

 

 

旅立ってからさまざまな出来事があったが、確実に目標へ近づいている。

 

 

「シンヤ、おめでとう!」

 

 

レンが嬉しそうに駆け寄ってきた。

 

 

「ふふっ、これで五つ目ね。順調じゃない?」

 

 

「ああ。みんなが頑張ってくれたおかげだよ」

 

 

シンヤはスピアー、エレブー、ピカチュウ、フーディンのボールを見つめた。

今回も、四匹それぞれが自分の役割を果たしてくれた。

スピアーは粉技を突破し、エレブーは煙の中から反撃を仕掛け、ピカチュウはフラッシュで相手の隙を作り、フーディンはクロバットの速さを封じた。

誰か一匹だけの力ではない。

 

 

 

全員の勝利だった。

 

 

 

「キョウさん、今日はありがとうございました」

 

 

「うむ。お主の戦い方には、まだまだ伸びしろがある。これからも己のポケモンを信じ、共に鍛えていくがよい」

 

 

「はい!」

 

 

シンヤは力強く返事をした。

こうしてシンヤは、セキチクジムを攻略。

五つ目のバッジとなる、ピンクバッジを手に入れたのだった。

 

 

 

そして次なる目的地は――セキチクシティにある、広大なサファリゾーン。

まだ見ぬポケモンたちとの出会いが、彼を待っている。

 

感想でもあったのですが特性を出すか出さないかについて。期限はある程度表が集まり次第まで

  • 出す。セキエイリーグから出す
  • 出さないか。ホウエンからでいいやろ
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