◆セキチクでの育成の日々
セキチクシティ。
サファリゾーンやポケモンファンクラブの関連施設が充実したこの街は、ポケモンの育成に励むトレーナーにとって、まさに理想的な場所だった。
シンヤとレンもまた、しばらくの間この街に滞在し、旅の仲間たちの育成に力を注いでいた。
「そこ! 相手の動きをよく見て! 力任せに突っ込むんじゃなくて、次に何をしてくるか考えるんだ!」
練習場にシンヤの声が響く。
相手の攻撃を受け止めるのは、かつてシオンタウンのポケモンタワーで出会ったゴースだった。
ゴースは相手の放った攻撃をふわりとかわすと、すぐさま反撃。シンヤの指示に合わせて技を使い分け、最後には相手の隙を突いて勝利を収めた。
「よし、今のはよかったぞ!」
シンヤが笑顔で褒めると、ゴースは嬉しそうに身体を揺らした。
その直後だった。
ゴースの身体が強い光に包まれた。
「おっ、進化か!」
光の中で姿が変化していく。
丸みを帯びた身体から腕が伸び、全体の輪郭が大きく変わっていく。
光が収まったとき、そこにいたのは――ゴーストだった。
「ゴーストに進化したわね!」
隣で見守っていたレンが、嬉しそうに声を上げる。
「連戦でかなり経験を積んだからな。技の使い方も上手くなってきたし、いいタイミングだったんだろう」
シンヤはゴーストの状態を波動の眼で確認する。
進化によって波動の流れは変化していたが、本人の戦意は衰えていない。むしろ、これまで以上に強くなろうという意志が感じられた。
「よし、これからも頼むぞ、ゴースト!」
ゴーストは両手を上げ、楽しそうに笑った。
それからも育成は続いた。
シンヤの指示を受けながら、ゴーストはさまざまな相手とのバトルを経験していく。
そして数日後。
再び進化の光がゴーストを包み込んだ。
その光の中から現れたのは、両手に鋭い爪を備え、凄みのある笑みを浮かべるポケモン――ゲンガーだった。
「ゲンゲロゲー!」
「おおっ、ついにゲンガーか!」
「ふふっ、シンヤが嬉しそうね」
「そりゃあな。昔から好きなポケモンの一匹だし、ここまで自分の指示に応えて成長してくれたんだ。嬉しくないわけがないだろ」
シンヤが手を差し出すと、ゲンガーはその手に自分の手を合わせた。
「これからもよろしくな、ゲンガー」
ゲンガーはニヤリと笑うと、シンヤの影に潜り込むように姿を消した。
「……ずいぶんと懐かれたわね」
「影に潜むのが好きなんだろ。まあ、悪戯が過ぎないようにだけは気をつけないとな」
「ふふっ。シンヤも、いたずら好きなポケモンには甘そうだものね」
「そんなことはないぞ?」
「本当かしら?」
レンのからかうような視線に、シンヤは微妙に目を逸らした。
一方、もう一匹、大きな成長を遂げたポケモンがいた。
カラカラである。
捕獲した当初のカラカラは、どこか気が弱く、相手の攻撃を受けると怯んでしまうことも少なくなかった。
それでもシンヤは、無理に性格を変えようとはしなかった。
「怖いなら、怖いままでいい。怖くても、自分で考えて動けるようになればいいんだ」
シンヤはそう伝え、カラカラの力量に合った相手とのバトルを重ねさせていた。
最初は攻撃を受けるたびに身体を縮こまらせていたカラカラも、次第に相手の動きを見るようになった。
自分にできることを考え、シンヤの指示を信じ、少しずつ勝利を積み重ねていく。
そして、その日。
「カラカラ! 相手の足元を狙って、ホネブーメランだ!」
カラカラは相手の動きを見極め、手にした骨を勢いよく投げた。
骨は地面すれすれを飛び、相手の足元をかすめる。
体勢を崩した相手へ、カラカラは間髪入れずに追撃を仕掛けた。
見事な勝利だった。
「よし! よくやったな、カラカラ!」
シンヤが駆け寄って褒めると、カラカラは一瞬だけ戸惑ったように身体を揺らした。
しかし、すぐに胸を張った。
以前なら、勝ったことを褒められても、どこか自信なさげにしていただろう。
今は違う。
自分だって戦える。
自分だって勝てる。
その気持ちが、カラカラの波動からはっきりと伝わってきた。
そして――。
カラカラの身体が、まばゆい光に包まれた。
「えっ……!」
レンが目を見開く。
光の中で身体が大きくなり、頭蓋骨の形も変わっていく。
光が収まったとき、そこに立っていたのは、立派な体格と強靱な骨を持つガラガラだった。
「ガラガラに進化したか!」
シンヤは思わず笑顔になった。
ガラガラは手にした骨を掲げると、力強く地面を踏みしめた。
その姿からは、かつての気弱さが消えたわけではない。
だが、怖さを知りながらも立ち向かえる強さが宿っていた。
「いい進化だ。お前は、自分の力で自信を手に入れたんだな」
シンヤが頭を撫でると、ガラガラは誇らしげに鳴いた。
レンも微笑みながら拍手を送る。
「ゴーストがゲンガーに、カラカラがガラガラ……。この数日で、ずいぶん成長したわね」
「ああ。ほかのみんなも順調だ。そろそろ、次の街へ向かう準備を――」
そのときだった。
「失礼する!」
ポケモンセンターの入口から、聞き覚えのある声が響いた。
二人が振り返ると、そこに立っていたのは、セキチクジムのジムリーダー、キョウだった。
「キョウさん? どうしたんですか?」
「シンヤ殿、レン殿。少々、頼みたいことがあって参った」
キョウの表情は真剣だった。
二人は顔を見合わせ、彼の話を聞くことにした。
◆キョウからの依頼
ポケモンセンターの一角。
キョウは周囲に配慮しながら、二人に事情を説明した。
「タマムシシティとセキチクシティの間に、グンジョウシティという街がある。かつては美しい海と活気ある産業で知られた街だったのだが……今は見る影もない」
「グンジョウシティ……」
シンヤはその名前を頭の中で反芻した。
キョウは続ける。
「工場や発電所が急速に拡大し、街の開発が進められた。その結果、排水や煙などによる環境汚染が深刻化したのだ。近海は濁り、かつて豊かだった自然も大きく損なわれてしまった」
「そんなにひどいんですか……」
レンの表情が曇る。
「うむ。さらに今回、大量のベトベターなどが出現し、街全体が停電する騒ぎまで起きた。電力は何とか復旧したものの、住民の不安は大きい」
「汚染によって、ポケモンたちの生息環境まで変わってしまった可能性がありますね」
シンヤの言葉に、キョウは頷いた。
「その通りだ。原因を単純にポケモンだけのせいにするわけにはいかぬ。人間が環境を変えた結果、ポケモンたちの暮らす場所も変わってしまったのかもしれん」
キョウは一度言葉を切り、深く息を吐いた。
「私はタマムシジムのエリカ殿とも連携し、街の現状を改善できないかと動いている。今回の停電をきっかけに、行政や工場関係者も環境汚染への対策を改めて考え始めているらしい」
「それは、いい兆しですね」
「だが、ここで我らジムリーダーが強く出過ぎれば、街の産業や復興を妨げることにもなりかねん。住民の生活もある。工場で働く者たちにも家族がいるのだからな」
キョウの言葉には、ジムリーダーとしての苦悩が滲んでいた。
ポケモンを守りたい。
街の自然を取り戻したい。
しかし、人々の生活を無視して環境対策だけを押し通すわけにもいかない。
どちらか一方を切り捨てれば解決する、という問題ではなかった。
「そこで、シンヤ殿とレン殿にお願いしたい」
キョウは二人をまっすぐに見た。
「両ジムの手伝いという名目で、グンジョウシティを訪れてもらいたい。そして、街の現状をありのままに見てきてほしいのだ」
「ありのままに、ですか?」
「うむ。何を変えるべきか。何を残すべきか。どこに問題があり、何から手をつけるべきなのか。旅人であり、トレーナーでもある二人の率直な意見を聞きたい」
レンは真剣な顔で考え込んだ。
「私たちの目線で、ということですね」
「そうだ。二人とも、ポケモンの扱いについては十分な知識と経験がある。シンヤ殿はこれまで、さまざまな問題に立ち向かってきたと聞いている。レン殿もまた、ポケモンたちの気持ちをよく理解していると」
キョウは二人の実力を評価していた。
もちろん、二人があらゆる問題を解決できると思っているわけではない。
だが、危険な事態が起きても、ある程度は自分たちで対処できる。
そして何より、ジムリーダーや地元の関係者とは違う立場から、街を見つめることができる。
それが、キョウの狙いだった。
シンヤは少し考えたあと、頷いた。
「分かりました。育成もひと段落したところですし、俺たちでよければ協力します」
「私も賛成よ。実際に見てみなければ、分からないことも多いでしょうし」
レンも快く引き受けた。
キョウは深々と頭を下げた。
「かたじけない。二人の協力に感謝する」
「ところで、報酬は何かあるんですか?」
シンヤが尋ねると、キョウはわずかに目を細めた。
「実は、我が一族に伝わる『業』に関する巻物がある。それを写本にしたものを、二人に譲ろうと考えている」
「……業?」
その言葉を聞いた瞬間、シンヤの表情が変わった。
見覚えがある。
いや、正確には――知っている。
キョウの一族に伝わる、忍びの技。
そして、シンヤがかつて知識として知っていた、ある特殊な技術。
「その巻物、どのような内容なんですか?」
「詳しいことは現地での調査を終えてから話そう。内容は門外不出というほどではないが、我が一族に伝わるものゆえ、扱いには気をつけてもらいたい」
「分かりました」
シンヤは頷いたものの、内心では興味が膨らんでいた。
(まさか、この世界で『業』の巻物に関わることになるとはな……)
彼はその興味を表情に出し過ぎないよう気をつけながら、レンとともにグンジョウシティへ向かう準備を始めた。
◆グンジョウシティへ
セキチクシティからリザードンで飛んで少しして見えてきた。
しかし、目的地が近づくにつれ、周囲の景色は少しずつ変わっていった。
青々とした草原は減り、道端には煤けた建物や使われなくなった設備が目立つようになる。遠くには煙突が何本も並び、海の向こうからは、機械の駆動音らしき低い唸りが聞こえてきた。
そして、潮風に混じる異臭。
レンは思わず鼻を押さえた。
「……この臭い」
「ああ。海から流れてくる風に、工場の臭いが混じっているんだろうな」
シンヤは周囲を見渡した。
波動の眼を使うと、海岸付近にいるポケモンたちの様子が普段と違うことに気づいた。
海面近くを泳ぐポケモンは少なく、岩場に集まっている個体もどこか落ち着かない。
すべての原因が汚染にあると断定することはできない。季節や潮の流れ、餌の状況など、ほかの要因も考えられる。
だが、少なくとも、この海が健全な状態ではないことは明らかだった。
「ポケモンたちも、暮らしにくくなっているみたいね」
レンが小さく呟く。
「そうだな。ここで暮らしていたポケモンたちが、住みかを追われた可能性もある。今回のベトベターの大量発生も、そこから繋がっているのかもしれない」
「街に入ったら、まずは住民の話を聞きましょう。見ただけで決めつけるのはよくないもの」
「同感だ」
二人は顔を見合わせ、頷いた。
やがて、グンジョウシティの街並みが見えてきた。
かつての賑わいを想像させる大きな通り。
しかし、そこを歩く人の姿は少なく、店のシャッターも多くが下ろされている。
建物の壁はくすみ、路地には使われなくなった資材が積まれていた。
街の中央付近では、復旧したばかりの電力設備を作業員たちが点検している。
「……想像していた以上ね」
レンが呟く。
「でも、復旧作業をしている人たちはいる。全部が止まっているわけじゃない」
シンヤはそう言い、作業員たちの様子を観察した。
「まずは街の人たちから話を聞こう。何が起きたのか、どうしてこうなったのか。そこを知らないと、改善案も出せないからな」
二人が通りを進んでいると、少し先から子供たちの声が聞こえてきた。
「ねえ、あのポケモン、まだポケモンセンターにいるのかな?」
「ベトベトンのこと? あんなに大きいんだもん。ずっといるんじゃない?」
「でも、悪いポケモンじゃなかったよね……?」
その会話に、シンヤは足を止めた。
「ベトベトン?」
「うん。街の停電が起きたとき、たくさんのベトベターが出てきたんだって。それで、すごく大きなベトベトンも現れたらしいよ」
子供の一人が答えた。
「でも、そのベトベトンは今、ポケモンセンターで保護されているんだって」
シンヤはレンと顔を見合わせた。
今回の停電とベトベターの大量発生。
そして、保護されたベトベトン。
キョウの話を聞いたときから考えていたことが、少しずつ繋がり始めていた。
「ありがとう。助かったよ」
シンヤが礼を言うと、子供たちは笑顔で手を振って走り去った。
「まずはポケモンセンターね」
「ああ。ベトベトンのことも気になるしな」
二人は街のポケモンセンターへと向かった。
◆思いがけない再会
ポケモンセンターの扉を開けると、室内には独特の騒がしさがあった。
受付ではジョーイが忙しそうに働き、奥のスペースでは数人のトレーナーがポケモンの状態を確認している。
そして、その一角。
大きな紫色の身体を持つベトベトンが、床に座り込んでいた。
その隣には、見覚えのある少年が立っている。
黒い髪に、赤い帽子。
青いジャケット。
そして、相変わらず元気いっぱいの声。
「ベトベトン! もう少しこっちに寄ってくれよ! あっ、そっちじゃなくて!」
「ベトベト~!」
ベトベトンは嬉しそうに身体を揺らし、少年に抱きつこうとしていた。
「うわっ! ちょ、ちょっと待った! くっつきすぎだって!」
その光景を見た瞬間、シンヤは思わず笑みを浮かべた。
「……サトシ?」
少年がぴたりと動きを止めた。
「えっ?」
聞き覚えのある声に振り返る。
そして、目を丸くした。
「シ、シンヤ!?」
「久しぶりだな、サトシ」
「うわあっ! 本当にシンヤだ! こんなところで会うなんて!」
サトシはベトベトンの身体をどうにか引き剥がすと、勢いよくシンヤのもとへ駆け寄った。
「元気だったか!? 今、どこまで旅してるんだ?」
「こっちの台詞だ。俺はセキチクを拠点に育成していたところだよ」
「セキチク!? ってことは、もうセキチクジムにも挑戦したのか?」
「ああ。ついこの間な」
「すげえ! 俺なんか、まだまだなんだぞ!」
サトシは悔しそうに頬を膨らませたが、すぐに目を輝かせた。
「そうだ! 紹介するよ!」
サトシが振り返ると、少し離れた場所に二人の人物がいた。
一人は、茶色い髪にオレンジ色の服を着た少女。
もう一人は、背が高く、短い髪と鋭い目つきが印象的な青年―――タケシだった。
「こっちはカスミ! ハナダシティから一緒に旅してるんだ!」
「カスミよ。よろしくね」
少女――カスミは、シンヤを興味深そうに見つめた。
「それで、こっちはタケシ! ニビシティのジムリーダーだったんだ!」
「久しぶりだなシンヤ。今はブリーダーを目指している」
タケシは穏やかに微笑み、改めて握手を求めてきた。
「久しぶりですねタケシさん」
シンヤも握手を返した。
そして、サトシが隣の少女へ目を向けた。
「それから、そっちの子って――」
「レンよ。シンヤと一緒に旅をしているの。よろしくね」
レンが上品に微笑む。
「へえ、シンヤと一緒に旅してるんだ!」
サトシは感心したように頷いた。
「俺たちも一緒に旅してるんだ! カスミとタケシと、あとピカチュウ!」
「ピカ!」
サトシの肩に乗ったピカチュウが、元気よく鳴いた。
レンはそのピカチュウを見つめ、目を細める。
「あなたがサトシのピカチュウなのね。かわいいわ」
「ピカピカ!」
ピカチュウは褒められて嬉しそうに笑った。
その様子を見て、レンの肩にいた自分のポケモンたちも反応する。
特にシンヤの影から顔を出したゲンガーは、ニヤニヤと笑いながらピカチュウを覗き込んだ。
「ゲンガー?」
「うわっ!? なんだ、ゲンガーか!珍しいのを仲間にしているな!」
サトシが驚くと、ゲンガーは楽しそうに姿を消した。
だが、再会の喜びも束の間、サトシはふとシンヤの腰に目を向けた。
そこには、五つのバッジが収められたバッジケースがあった。
「……ん?」
サトシは目を凝らす。
「ちょっと待てよ、シンヤ。そのバッジ……」
「ん? ああ、これか?」
シンヤがケースを開く。
そこには、グレーバッジ、ブルーバッジ、オレンジバッジ、レインボーバッジ、そしてピンクバッジが並んでいた。
「五個!?」
サトシが大声を上げた。
「五個もバッジを持ってるのかよ!?」
「まあな」
「もうそんなに……!」
サトシは信じられないといった様子でバッジを見つめた。
タケシも驚いたように目を見開く。
「うちのバッジに、カスミのところのバッジ、クチバ、タマムシ、セキチク……。本当に五つ揃っているな」
「タマムシまで行ったのね。あのエリカさんとバトルできたってことね」
カスミも感心したように言った。
サトシは一度バッジケースを見つめ、それからシンヤの顔を見た。
「すげえ……。俺、まだ四個なのに……」
悔しそうな表情。
しかし、その目には、悔しさ以上に強い闘志が宿っていた。
「なあ、シンヤ!」
「ん?」
「俺とバトルしてくれ!」
やっぱり、そう来たか。
シンヤは内心で苦笑した。
再会したばかりだというのに、サトシはすでにバトルのことで頭がいっぱいらしい。
「サトシ、いきなりね……」
カスミが呆れたように言う。
「だって、シンヤはもう五個もバッジを持ってるんだぞ! どれくらい強くなったのか、気になるじゃないか!」
「まあ、気持ちは分からなくもないけどな」
タケシも苦笑した。
レンはシンヤの横顔を見つめる。
「どうするの、シンヤ?」
「そうだな……」
シンヤは少し考え、サトシに尋ねた。
「ところで、サトシ。ベトベトンを捕まえたのか?」
「おう! 街が停電したとき、ベトベターが大量に出てきたんだ。それで、このベトベトンがみんなをまとめていたんだよ!」
サトシはベトベトンを振り返った。
「最初は大変だったけど、ベトベトンは悪い奴じゃなかったんだ。だから、俺がゲットしたんだ!」
「なるほどな」
シンヤはベトベトンを見つめた。
その身体からは、独特の波動が感じられる。
汚染された環境で生きてきた影響なのか、周囲のポケモンたちと行動を共にしてきたためなのか。今の段階では断定できない。
だが、少なくとも、ベトベトンが仲間たちを守ろうとしていたことは、サトシの話からも伝わってきた。
「いい判断だと思うぞ」
「本当か!?」
サトシの顔がぱっと明るくなった。
「ああ。ただ、ベトベターたちが大量発生した原因については、調べたほうがいいだろうな」
「そうなんだよ! タケシも、環境が関係してるんじゃないかって!」
タケシが頷く。
「この街の海や工場の状況を見る限り、その可能性は高そうだ。ポケモンたちがどうして街に集まってきたのか、調べる必要があるだろう」
シンヤは頷いた。
「実は、俺たちもその件でここに来たんだ」
「えっ?」
サトシが目を丸くする。
「セキチクジムのキョウさんから頼まれたんだ。タマムシジムのエリカさんとも連携して、グンジョウシティの現状を調べてほしいってな」
「えぇ?!ジムリーダーから!?」
「ああ。街の環境や、ポケモンたちの暮らしについて、俺たちの目線から意見を聞きたいそうだ」
「そうだったのか……」
サトシは感心したように頷いた。
それから、再びシンヤのバッジケースを見る。
五つのバッジ。
セキチクジムのキョウから直接依頼を受けるほどの実力。
そして、隣には一緒に旅をするレンがいる。
サトシの胸の中で、何かが熱くなった。
「……やっぱり、バトルしようぜ!」
「話を聞いていたか?」
シンヤは思わず笑った。
「聞いてたよ! でも、だからこそだ! 俺だって、もっと強くなりたいんだ!」
サトシの声は真っ直ぐだった。
強くなりたい。
もっといろんなポケモンと出会いたい。
そして、目の前の相手と全力で戦いたい。
それがサトシなのだ。
シンヤは小さく息を吐き、笑顔で頷いた。
「分かった。いいぞ、サトシ」
「本当か!?」
「ああ。ただし、街の復興に支障が出ない場所でな。それと、ベトベトンが落ち着いてからだ」
「もちろんだ!」
サトシは拳を握りしめた。
「よーし! 絶対に勝つぞ、シンヤ!」
「こっちだって、簡単には負けないさ」
二人の視線がぶつかる。
その間に、火花が散ったような気がした。
レンは二人を見比べ、楽しそうに微笑んだ。
「ふふっ。再会したばかりなのに、もうバトルなのね」
「サトシは昔からこうなんだよ」
シンヤが肩をすくめる。
「昔から?」
「マサラタウンにいた頃からな。強い相手を見ると、すぐにバトルしたがるんだ」
「へえ……」
レンはサトシをじっと見つめた。
「それなら、シンヤが五個のバッジを持っていると知ったら、挑戦しないわけがないわね」
「その通り!」
サトシが勢いよく答えた。
カスミは額に手を当てる。
「もう、少しは落ち着きなさいよ……」
「まあまあ、カスミ。サトシらしいじゃないか」
タケシは苦笑しながら、ベトベトンの様子を確認した。
こうして、グンジョウシティでの思いがけない再会は、シンヤとサトシのバトルという新たな約束へと繋がった。
しかし、二人がこれから向き合うのは、ポケモンバトルだけではない。
汚染された海。
街の産業。
そこで暮らす人々とポケモンたち。
失われた自然を取り戻すには、何を変え、何を守るべきなのか。
シンヤとレンは、これからその答えを探していくことになる。
そして――。
サトシとのバトルが、二人の旅にどのような刺激をもたらすのか。
それは、まだ誰にも分からなかった。
感想でもあったのですが特性を出すか出さないかについて。期限はある程度表が集まり次第まで
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出す。セキエイリーグから出す
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出さないか。ホウエンからでいいやろ