ポケットモンスター~波動の眼を持つ少年~   作:レイザル

58 / 60
捏造話Part2です
ちなみにですがこの話を深堀している理由としてはシンヤが前世持ちの記憶保持者という
ことがある。現代っ子だったからこそ、環境汚染など問題が重要視されているのをわかっているからである。


第48話 海を救え! ベトベトンが伝えるポケモンたちの想い!

◆街を変えるための話し合い

 

 

グンジョウシティの市庁舎。

この日、会議室には市の担当者、工場の管理責任者、漁業関係者、地元住民の代表、そしてポケモンの生態に詳しい専門家たちが集まっていた。

キョウとエリカも同席し、シンヤたちが前日に行った調査の結果を説明していた。

 

 

「現段階で確認できているのは、海岸の一部で黒ずんだ汚泥や不自然な泡が見られること、河口付近で一部の水ポケモンが弱っていること、そして工場地帯の設備に老朽化が見られることです」

 

 

シンヤは調査記録を机の上に広げた。

 

 

「ただし、これらの事実だけで、特定の工場が海の汚染を引き起こしたと断定することはできません。排水の成分や水の流れを調べ、原因を特定する必要があります」

 

 

漁師の男性が、厳しい表情で口を開いた。

 

 

「原因を調べるのはいい。だが、海の魚は待ってくれないんだ。ここ数年、獲れる量は減る一方だ。これ以上、時間をかけられたら困る」

 

 

「その点は私たちも理解しています」

 

 

市の担当者が答えた。

 

 

「ですが、すべての工場を一斉に停止すれば、働いている人たちの生活に大きな影響が出ます。街の経済も無視できません」

 

 

「では、私たち漁師はどうなるんですか!」

 

 

会議室に緊張が走った。

 

 

工場側の責任者も、黙ってはいなかった。

 

 

「我々だって、海を汚したいわけではない。設備を更新するには費用がかかる。問題があるなら改善したいが、根拠もなく責任だけを押しつけられても困る!」

 

 

それぞれの主張は、どれも理解できるものだった。

しかし、互いの立場を主張するだけでは、何も前に進まない。

シンヤは、机の上に手を置いた。

 

 

「だからこそ、まずは全員が同じ事実を確認できるようにしましょう」

 

 

全員の視線が集まる。

 

 

「海水、河川水、工場排水を採取して、水質を調べる。工場の排水処理設備や配管の点検記録も確認する。そうすれば、どこに問題があるのか、どの対策を優先すべきなのか、判断するための材料がそろいます」

 

 

「検査をする間も、海は汚れ続けるかもしれないぞ」

 

 

漁師の男性が指摘した。

 

 

「その可能性もあります。だから、調査と並行して、明らかに危険な設備や排水が見つかった場合は、すぐに安全確認と応急措置を行うべきです」

 

 

シンヤは、そこで一度言葉を切った。

 

 

「調査が終わるまで何もしない、という意味ではありません。確実に分かっている危険には先に対処し、原因の特定が必要な部分は、証拠を集めてから対処する。それが必要だと思います」

 

 

タケシがうなずいた。

 

 

「応急措置と根本的な改善を、同時に進めるわけだな」

 

 

「そうです」

 

 

エリカも静かに続けた。

 

 

「街の方々が互いを責め合うよりも、同じ問題を解決する仲間になれるよう、私たちも協力しますわ」

 

 

キョウは、会議室を見回した。

 

 

「では、まず水質調査と設備点検を実施する。市は必要な人員を手配し、工場側は記録と設備の確認に協力する。漁業関係者と住民の代表にも、調査の状況を共有することとしよう」

 

 

まだ全員が完全に納得したわけではない。

それでも、話し合いは一歩前進した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆海と川の水を調べる

 

 

午後、調査班は海岸と河口へ向かった。

水質検査を担当する専門家たちは、採取地点を地図に記録しながら、海水や河川水を専用の容器に採取していく。

シンヤたちは、採取地点の記録や周辺の観察を手伝った。

 

 

「ここが海岸の採取地点A。河口がB。工場地帯の排水路がC……」

 

 

レンは手帳に地点と時刻を書き込んだ。

 

 

「同じ場所でも、潮の満ち引きや時間帯で水の状態が変わる可能性があるのよね?」

 

 

「そうだな。だから、場所と時刻を記録して、必要なら同じ地点で繰り返し採取する。水の流れも調べて、汚染物質がどこへ運ばれているのか確認するんだ」

 

 

シンヤは、川の流れを見ながら答えた。

 

 

「それに、海岸の水だけ調べても、原因が川の上流にあるのか、工場の排水にあるのか、それとも別の場所にあるのかは分からない。複数の地点を比較する必要がある」

 

 

専門家の一人が、採取した水の容器を持ち上げた。

 

 

「見た目の違いは参考になるが、透明だから安全とも、濁っているから特定の有害物質が含まれているとも限らない。成分を分析して初めて、具体的な判断ができる」

 

 

「やっぱり、見た目だけじゃ駄目なんですね」

 

 

サトシが言った。

 

 

「そういうことだ」

 

 

シンヤは海面を見つめた。

 

 

「ポケモンの様子も重要な手がかりになる。でも、ポケモンが弱っている理由が水質だけとは限らない。餌が減っている可能性もあるし、生息場所そのものが変わってしまった可能性もある」

 

 

カスミは、波打ち際から少し離れた場所に目を向けた。

 

 

「だったら、水の検査とポケモンの調査を一緒に進めるのがいいわね。水質が悪化している場所と、ポケモンたちが避けている場所が一致するかどうかも確認できるもの」

 

 

「そのとおり」

 

 

シンヤはうなずいた。

 

 

調査班は海岸だけでなく、川をさかのぼり、いくつかの地点で水を採取した。

工場地帯に近づくにつれて、川岸には古い排水設備や補修跡の残る配管が見られるようになった。

 

 

しかし、調査員たちは、その場で汚染源を断定することはしなかった。

記録を取り、採取し、設備の状態を確認する。

一見地味な作業だが、確かな原因を突き止めるには欠かせない工程だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ベトベトンが案内する場所

 

 

一方、サトシはベトベトンと一緒に、河口付近のポケモンたちの様子を調べていた。

 

 

「なあ、ベトベトン。お前たち、普段はどこで暮らしてるんだ?」

 

 

「ベトベトーン!」

 

 

ベトベトンは身体を揺らすと、サトシの前を進み始めた。

 

 

「おっ、案内してくれるのか? よし、行こうぜ!」

 

 

サトシは、カスミやタケシに声をかけてから、その後を追った。

ベトベトンが向かったのは、河口から少し離れた、古い排水路の近くだった。

そこには、数匹のベトベターが集まっていた。

彼らは水辺の汚泥の近くで身体を揺らし、ときおり何かを探すように周囲を動き回っている。

 

 

「ベトベター!」

 

 

一匹がサトシたちに気づくと、警戒するように身体を縮めた。

サトシは、慌てて両手を広げた。

 

 

「大丈夫だって! オレたちはお前たちを捕まえに来たんじゃないからさ!」

 

 

ベトベターはすぐには近づかなかった。

その様子を見て、タケシが小さくつぶやいた。

 

 

「人間に追い払われた経験があるのかもしれないな」

 

 

サトシはベトベトンを見た。

 

 

「なあ、こいつら、いつもここにいるのか?」

 

 

ベトベトンは、排水路の奥を指し示すように身体を傾けた。

そして、そこから流れてくる水の近くへ移動した。

サトシたちも後を追う。

排水路の周囲には、古い金属製の部品や、崩れたコンクリート片が散乱していた。

一部には黒ずんだ汚れが付着している。

 

 

「ここは……」

 

 

タケシは周囲を慎重に観察した。

 

 

「古い排水設備の一部みたいだな。ただ、これだけで汚染源だとは言えない」

 

 

サトシは、ベトベトンが水の流れを気にしていることに気づいた。

ベトベトンは、排水路から水が流れてくるたびに身体を揺らし、その水を避けるように少し後退していた。

 

 

「……ベトベトン。もしかして、この水が流れてくると、嫌なのか?」

 

 

「ベト……」

 

 

ベトベトンは、いつもより小さく身体を揺らした。

サトシは、初めて見るその反応に戸惑った。

ベトベトンは、普段なら多少の汚れなど気にしないように見えるポケモンだ。

だからといって、何も感じないわけではない。

サトシは、目の前のポケモンをじっと見つめた。

 

 

「そっか……。お前たちだって、嫌なものは嫌なんだな」

 

 

ベトベトンはサトシを見上げた。

 

 

「ベトベトーン……」

 

 

サトシは、その身体を優しくたたいた。

 

 

「ごめんな。オレ、ベトベトンは汚い場所でも平気なんだって、勝手に思ってたよ」

 

 

ベトベトンは、サトシに身体を寄せた。

サトシは少し笑った。

 

 

「でも、これからはちゃんと調べるからな。お前たちが安心して暮らせる場所を見つけようぜ!」

 

 

そのとき、排水路の奥から小さな音が聞こえた。

水の流れが変わったのか、ベトベターたちが一斉に身を引いた。

サトシは、その様子を見逃さなかった。

 

 

「……今の、何だったんだ?」

 

 

タケシは排水路をのぞき込んだが、無理に中へ入ることはしなかった。

 

 

「危険があるかもしれない。市の担当者と調査班に連絡して、設備を確認してもらおう」

 

 

「分かった」

 

 

サトシはベトベトンを見た。

 

 

「お前たちが教えてくれたこと、ちゃんと伝えるからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆調査で見つかったもの

 

 

その日の夕方、調査班は採取した水の簡易検査と設備の点検を進めていた。

一部の地点では、通常とは異なる水質の傾向が確認された。

 

 

ただし、検査結果だけで、どの物質が、どの設備から流れ込んだのかを断定できる段階ではない。

専門家は、追加の分析が必要だと説明した。

 

 

「現時点では、複数の地点で水質に違いが見られます。今後、詳しい成分分析を行い、排水の記録と照合する必要があります」

 

 

「ということは、まだ原因は分からないんですね」

 

 

レンが尋ねた。

 

 

「そうです。ですが、調査地点を絞り込むための手がかりにはなります」

 

 

シンヤは、採取地点を記した地図を確認した。

 

 

「海岸だけでなく、川の上流と排水路の周辺も調べる必要がありそうですね。特に、ベトベターたちが避けるような反応を見せた場所は、設備の安全確認も含めて詳しく調べたほうがいい」

 

 

「ポケモンたちの反応も、調査の参考になるわけね」

 

 

レンがうなずいた。

 

 

「ただし、反応だけで汚染源だとは決めつけない。水質の結果と、設備の記録、それから現地の状況を照らし合わせる必要がある」

 

 

その後、市の担当者と工場側の責任者も加わり、追加調査を行う地点が決められた。

老朽化した配管については、漏れや破損がないかを重点的に点検する。

排水処理設備についても、処理能力や保守記録を確認する。

 

 

そして、危険な状態が見つかった場合には、必要な応急措置を取ることになった。

すべての工場を止めるという結論にはならなかった。

 

 

しかし、問題を放置するという結論にもならなかった。

関係者たちは、調査結果を共有しながら、優先順位を決めて対策を進めることに合意したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆サトシが気づいたこと

 

 

日が暮れ始めたころ、サトシはベトベトンと一緒に海岸へ戻ってきた。

波打ち際では、カスミが水ポケモンたちの様子を観察していた。

サトシは、ベトベトンの隣にしゃがみ込んだ。

 

 

「なあ、カスミ。ベトベトンたちって、汚い場所でも暮らせるんだよな?」

 

 

「そういう環境に適応できることはあるわ。でも、どんな汚れでも平気ってわけじゃないと思う」

 

 

カスミは、弱っているメノクラゲを見つめた。

 

 

「私たちが水ポケモンだからって、海ならどこでも安心して暮らせるわけじゃないのと同じよ。水の状態や餌、生息場所が変われば、暮らせなくなることだってあるもの」

 

 

サトシは、ベトベトンの身体に手を置いた。

 

 

「オレ、今までポケモンがどんなところで暮らしてるか、ちゃんと考えたことなかったかもしれない」

 

 

タケシが、穏やかな声で言った。

 

 

「ポケモンを大切にするっていうのは、バトルで勝たせたり、餌をあげたりすることだけじゃない。そいつがどんな場所で生きているのか、何を必要としているのかを知ることも大切なんだ」

 

 

「……そっか」

 

 

サトシは海を見つめた。

自分のベトベトンは、どんな場所でも平気な顔をしていることが多かった。

身体が大きく、力も強い。

だから、多少のことでは困らないのだろうと、どこかで思っていた。

 

 

けれど、今日見たベトベトンは違った。

水が流れてくると身を引き、ベトベターたちが警戒する場所では、サトシに何かを伝えるように動いた。その姿は、決して何も感じていないポケモンのものではなかった。

 

 

「ベトベトン……。お前、今までずっと我慢してたのか?」

 

 

「ベトベトーン!」

 

 

ベトベトンはサトシに身体を寄せた。

サトシは、その身体を両腕で抱きしめた。

 

 

「ごめんな。オレ、もっとお前たちのことを知らなきゃいけなかったんだな」

 

 

ベトベトンは、サトシを包み込むように身体を広げた。

 

 

「うわっ! ベトベトン、くっつきすぎだって!」

 

 

サトシは驚きながらも笑った。

その光景を見て、レンも微笑んだ。

 

 

「ふふっ。ベトベトンも、サトシ君に分かってもらえて嬉しいのかしら」

 

 

シンヤは、少し離れたところから二人を見ていた。

 

 

「……ポケモンのことを理解するって、知識だけじゃ足りないんだよな」

 

 

「そうね。実際に向き合って、相手が何を感じているのかを知ろうとすることも大切なのね」

 

 

レンは、シンヤの隣に並んだ。

 

 

「シンヤは最初から、そのつもりだったの?」

 

 

「いや。俺だって、まだ知らないことは多いよ。だから、調べるし、観察するし、分からないことは専門家にも聞く」

 

 

シンヤは、夕日に照らされた海を見つめた。

 

 

「大事なのは、自分が知っているつもりにならないことだと思う」

 

 

レンは、静かにうなずいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆小さな一歩

 

 

数日後、グンジョウシティでは本格的な追加調査が始まった。

市の担当者と専門家は、水質検査を継続し、汚染の可能性がある地点を詳しく調べていく。

 

 

工場側も、排水処理設備と配管の点検記録を提出し、老朽化した部分の確認を進めることになった。

また、海岸や河口付近では、ポケモンの生息状況についても継続的に記録を取ることになった。

 

 

キョウとエリカは、必要な専門家や関係機関との連絡を手伝い、住民たちにも調査の進捗を伝える役割を担った。

まだ、海はきれいになっていない。

汚染源のすべてが特定されたわけでもない。

 

 

しかし、街の人々は少しずつ、同じ方向を向き始めていた。

夕暮れの海岸で、サトシはベトベトンと並んで座っていた。

 

 

「なあ、ベトベトン。海がきれいになったら、ここで思いっきり遊ぼうぜ!」

 

 

「ベトベトーン!」

 

 

「約束だぞ!」

 

 

サトシが拳を差し出すと、ベトベトンは身体の一部を伸ばして、その拳に触れた。

少し離れた場所では、シンヤとレンが今後の予定を確認していた。

 

 

「水質調査はしばらく続きそうね」

 

 

「ああ。俺たちがずっとここにいるわけにはいかないけど、キョウさんたちに記録を共有してもらえば、今後の状況を確認できる」

 

 

「また、この街に来ることもあるかしら?」

 

 

「もちろん。対策がどう進んだのか、ポケモンたちがどうなったのか、気になるからな」

 

 

レンは微笑んだ。

 

 

「ふふっ。シンヤらしいわね」

 

 

そのとき、海から吹いてきた風が、二人の髪を揺らした。

まだ、風にはわずかに嫌な臭いが混じっていた。

けれど、街の人々が動き始めた今、未来まで同じ臭いに包まれているとは限らない。

 

 

環境を取り戻す道のりは長い。

それでも、ポケモンたちの声に耳を傾け、街の人々と協力し、一歩ずつ前へ進むことはできる。

シンヤたちは、夕暮れの海を最後にもう一度見つめた。

そして、次の旅へ向けて歩き始めた。

 

感想でもあったのですが特性を出すか出さないかについて。期限はある程度表が集まり次第まで

  • 出す。セキエイリーグから出す
  • 出さないか。ホウエンからでいいやろ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。