ポケモンセンターでの休息、そして実家への連絡
トキワシティに到着したシンヤは、まずポケモンセンターへと向かった。
長い道のりを歩き、野生のポケモンとのバトルやトレーナー戦も経験したヒトカゲとポッポ。どちらもまだ元気ではあったが、シンヤは念のため、ジョーイさんに2匹の健康状態を確認してもらうことにした。
「ヒトカゲもポッポも、今日はよく頑張ってくれたからな。ここでしっかり休んでおこう」
「カゲ!」
「ポッポ!」
2匹は元気よく返事をしたあと、ジョーイさんに預けられた。
ポケモンの回復を待つ間、シンヤは父親からもらったボストンバッグを開き、通信機器を取り出した。
画面に表示されたのは、実家への通信機能。
「さて、と。ちゃんと到着したって報告しないとな」
シンヤが通信をつなぐと、しばらくして画面に母親の姿が映し出された。
「もしもし? シンヤ?」
「母さん、今トキワシティのポケモンセンターに着いたところだよ」
「まあ! もうトキワシティまで着いたのね。道中、何か困ったことはなかった?」
「大丈夫。ヒトカゲもポッポも元気だよ。今は念のため回復してもらってる」
「そう。それならよかったわ。ちゃんと休憩も取るのよ?」
「分かってるって」
母親の心配そうな顔を見て、シンヤは思わず苦笑した。
前世の記憶を取り戻した今でも、こうして自分を心配してくれる母親の存在は嬉しい。旅に出たからといって、家族とのつながりがなくなるわけではないのだ。
すると、母親がふと思い出したように声を弾ませた。
「そうそう! シンヤ、コラッタちゃんも無事にこっちへ届いたわよ!」
「おっ、本当? よかった!」
「今ね、うちの子たちと挨拶をしてもらっているところなの」
画面が少し動き、母親の足元が映る。
そこには、先ほどシンヤが捕まえたコラッタがいた。
周囲には実家で暮らすポケモンたちの姿もある。初めて見る顔ぶれにコラッタは少し緊張している様子だったが、母親が優しく声をかけると、ぴょこんと顔を上げた。
「コラッタちゃん、シンヤとお話ししましょうね」
「コラッタ!」
「おーい、コラッタ!」
画面越しに呼びかけると、コラッタはシンヤの声に気づいたらしい。小さな前足を持ち上げ、嬉しそうに鳴いた。
「コラッタ、そっちに着いたんだな! よかった。父さんと母さんのポケモンたちと仲良くするんだぞ!」
「コラッタッ!」
コラッタは元気いっぱいの声で返事をした。
「ははっ、元気そうで何よりだ」
シンヤは思わず笑みをこぼした。
本当なら自分の手持ちとして連れて歩きたい気持ちもある。しかし、今の自分にはヒトカゲとポッポがいる。これから旅の仲間が増えていくことも考えれば、実家で面倒を見てもらえる仕組みはありがたかった。
何より、コラッタをただの預かりポケモンとして扱うつもりはない。
また一緒に旅をしたくなったら、いつでも迎えに来られるのだから。
「それにしても、シンヤ。トキワシティにいるなら、ちょっと寄り道してみてもいいかもしれないわね」
「寄り道?」
「ええ。街の近くに、小さな池みたいな場所があるの。昔、お父さんと旅をしていたときに見かけたことがあるわ。今もあるなら、水辺のポケモンに出会えるかもしれないわよ?」
「……水辺のポケモン!」
その言葉を聞いた瞬間、シンヤの目が輝いた。
水ポケモン。
ジム戦を考えても、旅全体を考えても、仲間にいてくれると非常に心強いタイプだ。
もちろん、今の段階で必ず捕まえなければならないわけではない。だが、旅先で水辺を移動したり、川や海を越えたりする場面を考えれば、水ポケモンと一緒に行動できるメリットは大きい。
アニメの世界では、トレーナーが水ポケモンに乗って水上を移動する場面も珍しくない。もっとも、どのポケモンでも人を乗せられるわけではないし、体格や性格、泳ぐ力などを確認する必要はある。
「なるほど……水ポケモンか。ありがとう、母さん! 回復が終わったら、ちょっと見に行ってみるよ!」
「ふふっ、いい出会いがあるといいわね。でも、無理はしないこと!」
「了解!」
そうして、シンヤは母親との通信を終えた。
「水ポケモン、か……」
彼はバッグを背負い直しながら、これからの旅を思い描く。
「ヒトカゲの成長も見たいし、ポッポの飛行能力も鍛えたい。それに、水辺で暮らすポケモンたちがどんな個性を持っているのかも気になるな」
ゲームで知っているポケモンたちでも、実際に出会えば分からないことだらけだ。
それなら、自分の目で確かめるまで。
やがて、ジョーイさんから声がかかった。
「お待たせしました! ヒトカゲちゃんもポッポちゃんも、元気いっぱいですよ!」
「ありがとうございます!」
シンヤは2匹のボールを受け取り、さっそく外へ出した。
「カゲーッ!」
「ポッポ!」
「よし、2匹とも調子はどうだ?」
シンヤがしゃがんで尋ねると、ヒトカゲは元気よく胸を張り、ポッポも翼をぱたぱたと動かした。波動の眼で確認しても、2匹の状態に大きな問題は見られない。
「よし。それじゃあ、母さんが教えてくれた池まで行ってみよう!」
「カゲ!」
「ポッポ!」
こうして、シンヤたちはトキワシティの小さな池を目指すことになった。
◆小さな池と、父の発明品
街の喧騒から少し離れた場所。
木々の間を抜けた先に、シンヤは母親の言っていた池を見つけた。
「おお……本当にあった!」
池は大きくはないものの、水は比較的澄んでおり、岸辺には草が生えている。水面には木々の影が揺れ、ところどころに小さな波紋が浮かんでいた。
ただし、静かな池だからといって、ポケモンが必ず簡単に捕まえられるとは限らない。
シンヤはまず、波動の眼で水辺の様子を観察した。
水面の下にいくつかの生命の気配がある。
「……いるな」
「カゲ?」
「うん。水の中にポケモンがいるみたいだ。どんな子たちなのかは、実際に会ってみないと分からないけどね」
シンヤはバッグを開け、父親の発明品を取り出した。
折り畳まれた釣り竿。
伸ばしてみると、しっかりとした造りで、継ぎ目も頑丈そうだ。
その名も――万能釣り竿。
父マサユキが開発した、旅先での使用を想定した釣り道具である。
折り畳めばバッグに収納できるほどコンパクト。それでいて、使用時にはかなりの負荷にも耐えられるよう設計されている。
さらに、釣り糸にはイトマルの糸を加工した特殊素材が使われているという。
「相変わらず、父さんの発明はすごいな……」
シンヤは釣り竿を伸ばし、糸の状態を確認した。
「これなら、多少大きなポケモンがかかっても簡単には切れなさそうだ」
もちろん、釣り竿が頑丈だからといって、無理に引っ張ればポケモンを傷つけてしまう。
相手の大きさや力に合わせて、慎重にやり取りする必要がある。
シンヤは釣り針を水面へと投げ入れた。
ぽちゃん。
糸が静かに水中へ沈んでいく。
「さて、どんなポケモンが釣れるかな?」
ヒトカゲは岸辺で尻尾の炎を揺らし、ポッポは近くの低い枝にとまって水面を眺めてい
た。
数分後。
ぴくっ。
釣り糸が小さく動いた。
「おっ、来た!」
シンヤは竿を握り直す。
次の瞬間、竿がぐっとしなった。
「おおっ、結構引くな!」
水面が大きく揺れる。
バシャッ!
勢いよく水を跳ね上げながら、青いポケモンが水面から飛び出した。
頭には丸い突起があり、口を大きく開けている。
「コダックだ!」
コダックは水辺へ引き上げられると、ぽかんとした顔で周囲を見回した。
「……コダ?」
「こんにちは、コダック。驚かせてごめんな」
シンヤは竿を地面に置き、コダックとの距離を保った。
波動の眼で様子を確認すると、コダックは驚いているものの、目立った負傷はない。突然水から引き上げられたためか、頭を押さえて不思議そうにしている。
「なるほど。いきなり陸に上がって、ちょっと混乱してるのかな?」
コダックは首をかしげた。
「コダ?」
シンヤはしゃがんで、穏やかに話しかけた。
「もしよかったら、俺と一緒に旅をしてみないか? もちろん、嫌なら無理にとは言わないよ」
コダックはシンヤの顔をじっと見つめた。
だが、返事をするより早く、突然その頭を両手で抱え込んだ。
「コ、コダァ……!」
「ん? どうした?」
コダックの周囲に、わずかに不思議な気配が集まる。
シンヤはすぐに距離を取った。
「なるほど……念力系の技を使う可能性もあるのか。まだ決めつけるのは早いけど、気をつけないとな」
コダックは苦しそうに頭を抱えたまま、ふらふらと歩き出した。
その姿を見て、シンヤは小さく笑った。
「なんだか、放っておけない子だな……」
最初の出会いは、少々騒がしいものになりそうだった。
◆最初のバトル!コダックの不思議な力!
「よし、まずは落ち着いてもらおうか。ヒトカゲ、バトルの準備だ!」
「カゲーッ!」
ヒトカゲが一歩前に出る。
シンヤはコダックの様子を観察しながら、波動の眼でその状態を探った。
(体力は十分。けど、頭を抱えているせいか、動きが少し不安定だ。それに、さっき感じた気配……やっぱりエスパー系の力を持っているのかもしれない)
もちろん、頭痛が起きているからといって、すぐに超能力を使えるとは限らない。今は無理に刺激せず、相手の反応を見ながら進めるべきだろう。
「ヒトカゲ、まずはひのこ! ただし、直撃させなくていい。コダックの足元を狙ってくれ!」
「カゲッ!」
ヒトカゲが口を開き、小さな炎を吐き出した。
炎はコダックの手前の地面に着弾する。
ボッ!
コダックは驚いて飛び上がり、横へ逃げた。
「よし、反応は悪くない。ヒトカゲ、相手の動きをよく見て!」
「カゲーッ!」
ヒトカゲはコダックを追いかけるのではなく、その場で構えを維持した。
コダックは頭を抱えながらも、こちらの様子をうかがっている。
「コダァ……!」
次の瞬間、コダックの周囲に不思議な力が集まった。
足元の小石がふわりと浮き上がる。
「おっ……!」
シンヤの目が見開かれた。
(やっぱり! ただの水ポケモンじゃない。念力か、あるいは別のエスパー系の技だ!)
コダックが手を動かすと、小石がヒトカゲに向かって飛んできた。
「ヒトカゲ、右に避けろ!」
「カゲッ!」
ヒトカゲは横へ跳び、飛んできた小石をかわす。
しかし、コダックの力はそれだけでは終わらなかった。水辺の小石が次々に浮かび上がり、ヒトカゲの進路を塞ぐように動く。
「なるほど、力の制御はまだ不安定でも、周囲のものを動かすことはできるのか……!」
シンヤは少し考え、指示を変えた。
「ヒトカゲ、正面から突っ込まなくていい! 左の石を踏み台にして、横へ回り込め!」
ヒトカゲはシンヤの指示に反応し、飛んできた石の隙間をすり抜けた。小さな岩を足場にして跳び上がり、コダックの側面へと回り込む。
「今だ、ひのこ!」
「カゲーッ!」
炎が飛ぶ。
だが、コダックも反応した。身をかがめて炎を避けたものの、直後に熱を感じて驚き、後ろへ転がった。
「コダァッ!」
「よし、避けたか。なら、無理に追撃しない!」
シンヤはヒトカゲを制止した。
コダックは立ち上がり、頭を押さえながらシンヤを見つめる。
「……コダ?」
その表情には、敵意よりも戸惑いが強かった。
シンヤはモンスターボールを手に取り、コダックに見せた。
「コダック。君の力は面白いし、もっと知りたいと思った。でも、嫌なら無理には捕まえない。俺と一緒に来てくれるなら、これから一緒に強くなろう」
コダックはボールとシンヤを交互に見た。
そして――。
「コダ!」
自分から一歩、シンヤの方へ歩み寄った。
シンヤは笑顔でモンスターボールを投げる。
「行くぞ!」
ボールがコダックに触れ、赤い光となってその姿を吸い込んだ。
地面に落ちたボールが揺れる。
一回。
二回。
三回。
カチッ!
「よしっ! コダック、ゲットだ!」
「カゲーッ!」
ヒトカゲも嬉しそうに声を上げた。
シンヤはモンスターボールを拾い、優しく手のひらに載せる。
「これからよろしくな、コダック」
その直後、シンヤはふと思い出したように呟いた。
「そういえば、コダックって頭痛がひどくなると超能力を発揮することがあるんだったな……。実際にどの程度使えるかは、これから確かめないと」
ゲームで知っている特徴が、実際の世界でそのまま当てはまるとは限らない。
だからこそ、これから少しずつ観察していく必要がある。
「さて、次はどんな子がいるかな?」
シンヤは再び万能釣り竿を手に取った。
◆のんびり屋のヤドン!油断できないバトル!
再び釣り糸を垂らして、しばらく。
今度は、竿がゆっくりと引っ張られた。
「おっ、来たかな?」
シンヤが竿を引き上げると、水面からピンク色のポケモンが顔を出した。
大きな口、丸い耳、そしてどこか眠たげな目。
「ヤドンだ!」
「ヤドォ……」
ヤドンは岸辺に上がっても、特に慌てる様子がなかった。
ゆっくりと首を動かし、シンヤを見つめている。
「……ヤド?」
「こんにちは、ヤドン。ずいぶん落ち着いてるな」
ヤドンは返事をするように、のんびりと鳴いた。
シンヤは波動の眼で状態を確認する。
(体調は悪くない。動きはゆっくりだけど、単純に鈍いと決めつけるのは危険だな。水辺で暮らすポケモンだし、尻尾を使った反応も見ておきたい)
「よし。ヒトカゲ、もう一度頼むぞ!」
「カゲーッ!」
ヒトカゲが前へ出る。
しかし、ヤドンはヒトカゲを見ても、すぐには動かなかった。
「……ヤドォ」
「ん? 反応がない?」
シンヤが首をかしげた瞬間、ヤドンの口から水が勢いよく噴き出した。
「ヤドンのみずでっぽうかっ?!」
水流がヒトカゲへと向かう。
「ヒトカゲ、横に跳べ!」
「カゲッ!」
ヒトカゲは素早く横へ跳んだ。水流は地面を打ち、土を削る。
「おおっ、見た目に反して攻撃はしっかりしてる!」
ヤドンは相変わらずのんびりとした顔をしている。
だが、攻撃の狙いは決して適当ではなかった。ヒトカゲが避けた方向を意識して、水流の向きを少しずつ変えている。
(なるほど。反応が遅いように見えても、技の威力や狙いまで低いわけじゃないんだ)
「ヒトカゲ、炎を地面に撃って!」
「カゲーッ!」
ひのこがヤドンの正面の地面に着弾する。
ヤドンは驚き、反射的に横へ動いた。
その動きを見て、シンヤはすぐに指示を出す。
「今だ! 走って距離を詰めろ!」
ヒトカゲは地面を蹴り、ヤドンへと駆け寄る。
「ひっかく!」
「カゲッ!」
ヒトカゲの爪がヤドンの胴体をかすめた。
しかし、ヤドンは倒れない。体を少し揺らしたあと、再びみずでっぽうを放とうとする。
「ヒトカゲ、後ろへ!」
ヒトカゲはすぐに距離を取った。
シンヤはヤドンの様子を見ながら、捕獲のタイミングを考える。
(タフだな。急いで決着をつけようとすると、こちらが水技を受ける可能性がある。ヒトカゲは炎タイプだから、なおさら無理はさせられない)
「ヒトカゲ、ひのこ! ヤドンの前を横切るように撃ってくれ!」
ヒトカゲが炎を吐く。
炎はヤドンの体を狙わず、進もうとしている方向の地面を横切った。
ヤドンは炎を避けるために、ゆっくりと進路を変える。
その瞬間、足元の柔らかい土に足を取られ、体勢が崩れた。
「よし、今だ!」
シンヤはモンスターボールを投げた。
赤い光がヤドンを包み込む。
ボールは地面に落ち、ゆっくりと揺れた。
一回。
二回。
三回。
カチッ!
「ヤドン、ゲット!」
「カゲーッ!」
「よしよし! ヒトカゲもよく頑張ったな!」
シンヤはヒトカゲの頭を撫でた。
「カゲ♪」
捕獲したヤドンのボールを手に取り、シンヤは改めて考える。
「ヤドンは焦らずに戦うタイプか。攻撃を受けても簡単には崩れないし、水技も使える。今後、どんな技を覚えているのかも調べてみよう」
のんびりしているからといって、弱いわけではない。
それを実感できたバトルだった。
◆コイキング登場!釣り上げたのは元気な跳ねっ返り!
「さて、次だ!」
シンヤは再び釣り竿を構えた。
ところが、今度は釣り糸が激しく引っ張られた。
「うおっ!?」
竿が大きくしなる。
「おいおい、これはかなり力が強いぞ!」
シンヤは足を踏ん張り、竿を支えた。頑丈な竿がギシギシと音を立てる。
「まさか、すごく大きなポケモンでもかかったのか……?」
水面が大きく盛り上がった。
バシャーン!
飛び出してきたのは――。
「……コイキング?」
赤い体に、大きな口。
見た目は小柄だが、尾びれを激しく動かし、釣り糸に抵抗している。
「コイッ! コイッ!」
「いや、元気なのは分かった! 分かったから、落ち着いてくれ!」
コイキングは地面に降りたあとも、ぴちぴちと跳ね続けた。
シンヤは思わず苦笑した。
「なるほど。釣り竿が折れそうになるほど大物かと思ったら、全力で暴れていたわけか……」
とはいえ、侮るつもりはない。
シンヤは波動の眼でコイキングの状態を確認した。体調は良好で、動きも活発。少なくとも、今すぐ弱ってしまうような様子はない。
「コイキングか。確かに、すぐに強力な攻撃を繰り出すタイプとは限らない。でも、進化すれば大きな可能性があるポケモンだ」
シンヤはコイキングを見つめた。
「よし。ヒトカゲ、またまた頼むぞ!」
「カゲーッ!」
ヒトカゲが構える。
コイキングはヒトカゲを見上げ、口を大きく開けた。
「コイッ!」
そして――。
ぴょんっ!
跳ねた。
「……あれ?」
ぴょんっ、ぴょんっ!
さらに跳ねた。
「なるほど、はねるか!」
シンヤは笑いをこらえながらも、すぐに観察へと意識を切り替えた。
(ただ跳ねているだけに見えるけど、跳躍の高さと着地の方向を見れば、どの程度動けるかは分かる。水辺まで戻られないように気をつけよう)
コイキングは高く跳び上がり、ヒトカゲの頭上を越えようとする。
「ヒトカゲ、追いかけなくていい! 着地点を見て!」
「カゲッ!」
ヒトカゲはコイキングの動きを目で追った。
コイキングが落下してくる瞬間、ヒトカゲは横へ移動する。
ドサッ!
コイキングは地面に着地し、その勢いで少しだけ転がった。
「よし、ひのこ! 威力は抑えて、目の前の地面へ!」
「カゲーッ!」
小さな炎がコイキングの前に着弾する。
コイキングは驚いて、今度は反対側へ跳ねた。
「いいぞ! 無理に攻撃を当てる必要はない。そのまま水辺から離していこう!」
ヒトカゲはコイキングの進路を塞ぐように移動し、炎を地面へ撃ちながら、少しずつ池から遠ざけていく。
コイキングは必死に跳ねる。
しかし、ヒトカゲの方が着地点を見極めるのが上手く、池へ戻る道をなかなか見つけられない。
「よし、今だ!」
シンヤがモンスターボールを投げる。
ボールは跳ね上がったコイキングに触れ、赤い光を放った。
カチッ。
ボールが地面に落ちる。
一回。
二回。
三回。
カチッ!
「よし! コイキング、ゲット!」
「カゲーッ!」
シンヤはボールを拾い上げた。
「ははっ、元気いっぱいだな。今はできることが限られているかもしれないけど、これからどう成長するか楽しみだ」
ただし、進化させることだけが目的ではない。
シンヤはコイキングのボールをバッグへしまいながら、心の中で付け加えた。
(どんなポケモンだって、今できることがすべてじゃない。まずは個性を理解して、その子に合った育て方を考えよう)
「さて、残りはあと2匹ぐらいにしとくか!」
シンヤは釣り竿を持ち直した。
◆ニョロモの素早さ!水辺を利用した追いかけっこ!
次に釣り上げたのは、青い体に大きな丸い目を持つポケモンだった。
お腹には渦巻き模様がある。
「ニョロモだ!」
「ニョロッ!」
ニョロモは水辺に降り立つと、ぴょんっと跳ねてから、すぐに水の中へ戻ろうとした。
「おっと、待った!」
シンヤは慌てて前へ出る。
だが、ニョロモは予想以上に素早かった。
水際をぴょんぴょんと跳ね、草の陰を抜け、シンヤの手をすり抜ける。
「おおっ、すばしっこいな!」
「カゲッ!」
ヒトカゲが追いかけようとするが、ニョロモは小さな体を生かして方向を変え、ヒトカゲの足元をすり抜けた。
「ニョロッ!」
「なるほど、真正面から追いかけると逃げられるか……!」
シンヤはニョロモの動きを観察する。
波動の眼で見ても、ニョロモは健康で、疲労も少ない。警戒心はあるが、好奇心も強いようだ。
(速さだけなら、今のヒトカゲが無理に追い回すのは効率が悪い。なら、逃げる先を予測して誘導しよう)
シンヤは周囲を見渡した。
池の脇には、低い草むらと小さな岩がある。岩の向こうは行き止まりに近く、水辺へ戻るには狭い通路を通る必要があった。
「ヒトカゲ、追いかけるんじゃなくて、あの岩の方へ誘導しよう!」
「カゲ!」
「まずは右側に回って! ひのこはニョロモに当てなくていい。草むらの手前に撃って、
進路を変えさせるんだ!」
ヒトカゲはシンヤの指示に従い、ニョロモの右側へ走った。
「カゲーッ!」
炎が草むらの手前に着弾する。
ニョロモは驚き、左側へ跳ねた。
そこには、ヒトカゲが待ち構えている。
「よし! 今度は左側へ回り込んで!」
ヒトカゲが動く。
ニョロモは反対方向へ跳ねたが、シンヤの予想通り、岩の方へと追い込まれていった。
「いいぞ! ニョロモの動きをよく見て、無理に近づかなくていい!」
ヒトカゲは距離を保ちながら、ニョロモの進路を塞ぐ。
ついにニョロモは岩の手前で足を止めた。
「ニョロ……?」
「今だ、ひのこ!」
「カゲーッ!」
炎がニョロモの目の前の地面に着弾する。
ニョロモはびっくりして後ろへ跳び、ちょうどヒトカゲから逃げられない位置に着地した。
シンヤはすかさずモンスターボールを投げる。
「頼む!」
ボールがニョロモを包み込む。
地面に落ちたボールが揺れた。
一回。
二回。
三回。
カチッ!
「ニョロモ、ゲット!」
「カゲーッ!」
「よし、ヒトカゲ! 今のはよかったぞ!」
シンヤはヒトカゲの頭を撫でた。
「カゲ♪」
「正面から追いかけるだけじゃなく、地形を使って相手の動きを誘導する。うまくできたな」
ヒトカゲは褒められて嬉しそうに尻尾を振った。
シンヤはニョロモのボールを手に取る。
「ニョロモは素早さが武器になりそうだな。泳ぎの速さも確認したいし、陸上での動きと水中での動きの違いも見ておきたい」
水ポケモンだからといって、全員が同じように泳ぎ、同じように戦うわけではない。
その違いを知ることも、トレーナーとしての大切な仕事だ。
◆最後はトサキント!華麗な跳躍と鋭い角!
「よし、これで4匹。最後の1匹だな!」
シンヤは釣り竿を再び池へと垂らした。
しばらくすると、糸が引っ張られる。
だが、今度の反応はこれまでとは違った。
竿が引かれた直後、水面の下を白と赤の影が素早く横切ったのだ。
「おっ、動きが速い!」
シンヤは竿を慎重に操作した。
相手は水中を泳ぎ回り、糸を引っ張る。シンヤは無理に引き上げず、相手の動きに合わせて竿を傾けた。
「いいぞ……そのまま、焦らずに……」
そして、タイミングを見計らって竿を引き上げる。
バシャッ!
水面から飛び出したのは、赤い模様を持つ魚のようなポケモン。
頭には鋭い角が生えていた。
「トサキント!」
「トサァッ!」
トサキントは空中で体をひねり、岸辺に着地すると、すぐにシンヤたちを警戒した。
「なるほど、トサキントか。角があるから、近づくときは気をつけないとな」
シンヤは波動の眼で状態を確認する。
体調は良好。動きは俊敏で、警戒心も強い。角を使った突進や、水中での機動力には注意が必要だ。
「ヒトカゲ、ラストだ!頼む!」
「カゲーッ!」
ヒトカゲが前へ出る。
トサキントは水辺を背にして、ヒトカゲをじっと見つめた。
次の瞬間、トサキントが地面を蹴った。
「トサァッ!」
鋭い角を前に向け、ヒトカゲへ突進する。
「ヒトカゲ、横へ避けろ!」
ヒトカゲはすぐに横へ跳ぶ。
トサキントは勢いを殺しきれず、少し先まで滑るように進んだ。
「よし、今のはいい回避だ!」
しかし、トサキントはすぐに向きを変え、再び突進してきた。
「トサキン!」
「速いな……!」
シンヤは目を凝らした。
トサキントの突進は単純な直線移動に見えるが、実際にはヒトカゲの位置を見ながら角度を変えている。真正面から受け止めれば、ヒトカゲが傷つく危険がある。
(正面から止めるのは危険。なら、相手の勢いを利用して、攻撃の後に隙を作る!)
「ヒトカゲ、避けたらすぐに距離を取れ! トサキントが向きを変える瞬間を狙うんだ!」
「カゲッ!」
トサキントが再び突進する。
ヒトカゲはぎりぎりまで引きつけてから、横へ跳んだ。
トサキントは方向を変えようとするが、勢いが残っていて、すぐには反転できない。
「今だ、ひのこ!」
「カゲーッ!」
炎がトサキントの進路を横切った。
トサキントは反射的に体をひねり、炎を避ける。
しかし、その動きでバランスを崩し、地面に横倒しになった。
「よし、チャンスだ!」
シンヤはモンスターボールを手に取った。
だが、すぐには投げない。
トサキントはまだ動ける。ここで無理に攻撃を重ねれば、余計な傷を負わせてしまうかもしれない。
「ヒトカゲ、もう一度だけ、足元にひのこ!」
「カゲーッ!」
炎がトサキントの目の前の地面に着弾する。
トサキントは驚き、跳ねるように体を起こした。その瞬間、シンヤはボールを投げた。
「トサキント! 俺の仲間になってくれ!」
ボールがトサキントを包み込む。
地面に落ちたボールが揺れた。
一回。
二回。
三回。
カチッ!
「よしっ! トサキント、ゲットだ!」
「カゲーッ!」
シンヤは両手を上げて喜んだ。
「これで5匹! コダック、ヤドン、コイキング、ニョロモ、トサキント。全員、水ポケモンだ!」
ヒトカゲも嬉しそうに鳴いている。
シンヤは捕まえた5匹のボールを見つめ、満足げに頷いた。
「みんな、これからよろしくな。まずはそれぞれの体調を確認して、どんな技を覚えているのか、どんな性格なのかを調べていこう」
今回の捕獲は、単に水ポケモンを集めるためだけではない。
それぞれの個性を知り、信頼関係を築き、旅の仲間として迎え入れるための第一歩だ。
◆5匹の仲間、そして次の目標
池のほとりで、シンヤは捕まえた5匹のポケモンを順番に確認した。
まずはコダック。
「コダックは、さっきの不思議な力が気になるな。頭痛との関係も含めて、無理をさせずに様子を見ていこう」
次にヤドン。
「ヤドンは落ち着いているけど、水技の威力は侮れない。耐久力もありそうだし、じっくり戦うタイプなのかもしれない」
コイキング。
「コイキングは元気いっぱい。今できることだけで評価せず、体力や跳躍力、成長の可能性を見ていこう」
ニョロモ。
「ニョロモは素早さが魅力だな。泳ぎがどれくらい得意なのかも調べたい」
最後にトサキント。
「トサキントは機動力と角を使った攻撃が特徴か。水中での動きも、陸上での動きも見てみたい」
シンヤはひと通り考えたあと、ふっと笑った。
「いやあ……まさかトキワシティの近くで、こんなにたくさんのポケモンと出会えるとはな」
「カゲーッ!」
ヒトカゲが元気よく鳴く。
「そうだな、ヒトカゲ。今日は君もよく頑張った。ポッポも含めて、みんなの状態を確認したら、次の町へ向かう準備をしよう」
シンヤはバッグを開き、父親からもらった通信機器を取り出した。
母親にも、5匹を捕まえたことを報告しておきたい。
ただし、これから旅を続けるうえで大切なのは、捕まえた数ではない。
それぞれのポケモンが何を得意としていて、何が苦手なのか。そして、どんなことを一緒に乗り越えていけるのか。
シンヤは5つのモンスターボールを見つめた。
「これから、よろしくな。みんな」
ボールの中から、それぞれの声が聞こえた気がした。
そしてシンヤは、新たに加わった5匹の仲間。
これからの旅は、さらに賑やかになりそうだった。
【シンヤの手持ち一覧】
・ヒトカゲ LV:9→LV:13
むじゃきな性格(実機で言う両刀型候補な性格)
ヒトカゲは新たなにえんまく・りゅうのいぶきを覚えた!
・ポッポ LV:7(捕獲時)→LV:10
せっかちな性格(実機で言う両刀型候補な性格)
ポッポは新たな技にかぜおこしを覚えた!
・コイキング LV:10(捕獲時)
いじっぱりな性格(実機で言う物理アタッカーな性格)
【実家のポケモン】
・コラッタ LV:4→LV:9
・コダック LV:10(捕獲時)
ひかえめな性格(実機で言う特殊アタッカーな性格)
・ヤドン LV:10(捕獲時)
のんきな性格(実機で言う物理受けな性格)
・ニョロモ LV:10(捕獲時)
いじっぱりな性格(実機で言う物理アタッカーな性格)
・トサキント LV:10(捕獲時)
おだやかな性格(実機でい言う特殊受けな性格)