ポケットモンスター~波動の眼を持つ少年~   作:レイザル

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第54話 グレンタウンへ! 化石ポケモンとナゾナゾの館!

ヤマブキジムでの激戦を制し、シンヤは六つ目のジムバッジを手に入れた。

メガシンカしたフーディンを相手に、手持ちのポケモンたちと力を合わせて勝利をつかんだ一戦。シンヤにとっても、レンにとっても、忘れられない戦いになったのは間違いない。

 

 

しかし、旅はまだ終わらない。

 

 

「さて……次はグレンタウンか」

 

 

ヤマブキシティのポケモンセンター。テーブルに広げた地図を眺めながら、シンヤは次の目的地を確認していた。

 

 

「マサラタウンに寄ってから行くのかと思っていたわ」

 

 

隣で紅茶を飲んでいたレンが、カップを置いて尋ねる。

 

 

「最初はそのつもりだったんだけどな。この周辺で捕まえたいポケモンは、だいたい捕まえ終わってるし」

 

 

シンヤは地図の上で指を滑らせ、グレンタウンの位置を示した。

 

 

「だったら、このままジムバッジを八個集めてしまおうと思ってな。リーグが始まるまで、少し時間もあるだろうし」

 

 

「その間に特訓、というわけね?」

 

 

「そういうこと」

 

 

シンヤはにやりと笑った。

頭の中には、リーグまでにやっておきたいことがいくつもあった。

手持ちのポケモンたちの鍛錬。まだ十分に育ちきっていない仲間たちの育成。そして、これから先に待ち受ける強敵たちへの対策。

 

 

何より、せっかくこの世界に来たのだ。行ける場所には行き、出会えるポケモンには出会い、挑戦できることには挑戦したい。

 

 

「じゃあ、グレンタウンへ向かう前に、家へ連絡しておくか」

 

 

シンヤは通信機を取り出し、実家へ連絡を入れた。

 

 

画面に映ったのは、母のミサキだった。

 

 

『あら、シンヤ。どうしたの?』

 

 

「次はグレンタウンに行こうと思ってさ。マサラには戻らず、そのままジムバッジを集めるつもりなんだ」

 

 

『そうなのね。気をつけて行くのよ』

 

 

「うん。ところで、家のポケモンたちは元気?」

 

 

『ええ、みんな元気よ。それと、あなたが預けていた化石のことなんだけど――』

 

 

「化石?」

 

 

『そう。お父さんの復元装置で、ついにポケモンが復元されたの!』

 

 

「……えっ?」

 

 

シンヤの目が丸くなった。

 

 

「本当に!? 何が復元されたんだ!?」

 

 

『カブトとオムナイト、それからプテラよ』

 

 

「おおっ……!」

 

 

思わず声が弾む。

カブト。オムナイト。そしてプテラ。

かつて化石から復元された、古代のポケモンたち。

 

 

ゲームの知識として知っているだけだった存在が、今では実際に自分の仲間として出会えるかもしれないのだ。

シンヤの胸に、純粋な好奇心が湧き上がった。

 

 

「三匹とも元気なのか?」

 

 

『カブトとオムナイトはね。最初は少し戸惑っていたけれど、今ではほかのポケモンたちとも仲良くしているわ』

 

 

「プテラは?」

 

 

ミサキは、少しだけ言葉に詰まった。

 

 

『……元気すぎるくらい、元気よ』

 

 

「その間はなんだ?」

 

 

『ふふっ。実際に見たほうが早いと思うわ』

 

 

嫌な予感がした。

シンヤは額を押さえた。

 

 

「……何をやらかしたんだ、あいつ」

 

 

『最初はね、周りのポケモンたちを追いかけ回したり、大声を上げたりしていたの。それで、ちょうど機嫌の悪かったピカチュウにちょっかいを出してしまって……』

 

 

「ピカチュウ?」

 

 

シンヤの脳裏に、実家で暮らすあのピカチュウの姿が浮かんだ。

かつてトキワの森で出会い、家での訓練を重ねた、レベルも実力も相当に高い個体だ。

そして最近では、実家のポケモンたちの間で、なぜか番長のような立ち位置になっているらしい。

 

 

『それで、ピカチュウに上下関係を教え込まれたみたい』

 

 

「…………」

 

 

『今ではプテラも、ピカチュウの言うことを聞いているそうよ』

 

 

「古代の暴れん坊が、我が家の番長にシメられたのか……」

 

 

シンヤは遠い目をした。

伝説的な古代のポケモンが、現代に復活して最初に学んだことが、実家のピカチュウとの上下関係。

なんとも言えない気持ちになった。

 

 

「……まあ、怪我人が出ていないならいいか」

 

 

『ええ。ピカチュウも、ちゃんと加減していたみたいよ』

 

 

「そこはさすがだな……」

 

 

番長という呼び名は、どうやら伊達ではないらしい。

隣で会話を聞いていたレンは、口元を押さえて笑っていた。

 

 

「ふふっ。シンヤの家って、本当に退屈しないのね」

 

 

「俺もここまで愉快なことになるとは思ってなかったよ」

 

 

『帰ってきたら、三匹にも会ってあげてね』

 

 

「もちろん。そのうち顔を出すよ。じゃあ、母さんもみんなも元気で」

 

 

『シンヤもレンちゃんも、気をつけてね』

 

 

通話が終わる。

シンヤはしばらく通信機を見つめたあと、ゆっくりと息を吐いた。

 

 

「……早く帰りたくなってきたな」

 

 

「プテラが気になるの?」

 

 

「それもあるけど、ピカチュウが何をしたのか、ちょっと見てみたい」

 

 

「ふふっ。やっぱり、あなたも十分に変わっているわよね」

 

 

「否定はしない」

 

 

二人は顔を見合わせ、笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。

 

 

ヤマブキシティからグレンタウンまでは、かなりの距離がある。

地上を移動するより空を飛んだほうが早いが、二人乗りで長距離を飛び続ければ、ポケモンの疲労も大きくなる。

そこでシンヤは、リザードンとピジョットの二匹をボールから出した。

 

 

「リザードン、今日は長距離移動だ。無理はするなよ」

 

 

「グオオッ!」

 

 

リザードンは力強く鳴き、翼を広げた。

続いて、レンがピジョットの前に立つ。

 

 

「ピジョット、お願いできるかしら?」

 

 

「ピジョーッ!」

 

 

ピジョットは胸を張り、立派な翼を大きく羽ばたかせた。

 

 

「じゃあ、今日は別々に乗っていこう。二人分の体重を乗せたまま飛び続けるより、そのほうが負担も少ないだろうしな」

 

 

「そうね。競争するのはなしよ?」

 

 

レンはいたずらっぽく笑った。

 

 

「俺がそんなことを言い出すと思うか?」

 

 

「ええ。シンヤなら、ピジョットがどれくらいの速度で飛べるのか気になって、つい試したくなるんじゃないかしら?」

 

 

「……否定できないのが悔しいな」

 

 

「ふふっ」

 

 

レンは満足そうに笑い、ピジョットの背に乗った。

シンヤもリザードンの背にまたがり、しっかりと手綱代わりの装具を握る。

 

 

「よし、それじゃあグレンタウンへ向かおう!」

 

 

「グオオオオッ!」

 

 

「ピジョーッ!」

 

 

二匹のポケモンが同時に地面を蹴り、空へと舞い上がった。

眼下に広がる街並みが、少しずつ小さくなっていく。

リザードンは力強く翼を打ち、安定した飛行を続けた。隣を飛ぶピジョットも、風を巧みに捉えながら滑るように進んでいる。

シンヤは、並んで飛ぶレンに声をかけた。

 

 

「そっちは大丈夫か?」

 

 

「ええ。ピジョットの飛行はとても安定しているわ。景色もよく見えるし、気持ちいいわね」

 

 

「それならよかった。疲れたらすぐに休憩するからな」

 

 

「分かっているわ。あなたこそ、リザードンに無理をさせないでね」

 

 

「もちろん」

 

 

二人はときどき進路を確認しながら、長い空の旅を続けた。

やがて、青い海が視界いっぱいに広がる。

その先に見えてきたのは、火山の島――グレンタウンだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夕方

 

 

グレンタウンに到着した二人は、まず街の様子を確かめることにした。

火山島ならではの地形と、どこか独特な空気。

そして、この島にはポケモンの研究施設やジムがある。

 

 

「そういえば、父さんが言っていたな」

 

 

街を歩きながら、シンヤが思い出したように口を開いた。

 

 

「グレンタウンにいくなら、『ペンション・ナゾナゾ』っていう宿に行ってみるといいって」

 

 

「ナゾナゾ?」

 

 

レンが首を傾げる。

 

 

「名前からして、普通の宿ではなさそうね」

 

 

「まあ、父さんの紹介だからな。変なところじゃないと思うけど……」

 

 

「その言い方、少し不安になるわね」

 

 

「俺もそう思い始めてきた」

 

 

二人は地図を確認しながら、目的のペンションへ向かった。

やがて、少し変わった雰囲気の建物が見えてきた。

看板には、確かにこう書かれている。

 

 

 

 

 

『ペンション・ナゾナゾ』

 

 

 

 

「ここね」

 

 

「ああ。じゃあ、入ろうか」

 

 

シンヤは扉の前に立ち、声を張った。

 

 

「すみませーん! どなたかいませんかー!」

 

 

返事はない。

 

 

「……留守か?」

 

 

もう一度呼びかけようとした、そのとき。

建物の奥から、妙に元気な声が響いてきた。

 

 

「おおっ! お客さんかね!?」

 

 

ばたばたと足音が近づき、やがて一人の老人がひょっこりと姿を現した。

奇妙な格好に、妙に芝居がかった仕草。

そして、見るからに怪しげな笑顔。

老人は二人の前に立つと、両手を広げた。

 

 

「ようこそ! ペンション・ナゾナゾへ!」

 

 

「は、はあ……」

 

 

シンヤが若干引き気味に返事をする。

老人はそんな反応など気にした様子もなく、びしっと指を突きつけた。

 

 

「さあ、我が館へ泊まりたくば、早速ナゾナゾじゃ!」

 

 

「……やっぱり、普通の宿じゃなかったわね」

 

 

レンが小声でつぶやく。

 

 

 

 

 

「『上が洪水、下は大火事』な~んだ?」

 

 

 

 

 

老人は、得意満面の顔で問題を出した。

シンヤとレンは顔を見合わせた。

あまりにも有名で、あまりにもベタな問題。

二人とも、答えはすぐに分かった。

 

 

「簡単ね」

 

 

「ああ。じゃあ、せーので言うか」

 

 

「いいわよ」

 

 

二人は息を合わせる。

 

 

「「せーの、(お)風呂!!」」

 

 

「ピンポン! ピンポン! 大正解じゃ!」

 

 

老人は飛び跳ねるほど喜んだ。

 

 

「いやあ、見事! 実に見事じゃ!」

 

 

そして次の瞬間。

老人は身にまとっていたカツラをむしり取り、変装を豪快に脱ぎ捨てた。

 

 

「なっ!?」

 

 

シンヤが目を見開く。

レンも思わず一歩引いた。

老人はすっかり別人のような顔つきになると、胸を張って名乗った。

 

 

「自己紹介させてもらおう!」

 

 

その声には、先ほどまでとは違う力強さがあった。

 

 

「ワシがグレンジムのジムリーダー、カツラじゃ!」

 

 

「……ええっ!?」

 

 

シンヤは思わず声を上げた。

グレンジムのジムリーダー。

つまり、これから七つ目のバッジを懸けて戦う相手だ。

 

 

カツラは豪快に笑った。

 

 

「お主のことは、ほかのジムリーダーたちから聞いておるぞ! ヤマブキでナツメのメガフーディンを倒したそうじゃな!」

 

 

「まあ……なんとか」

 

 

「謙遜することはない! あのナツメを相手に勝利したのなら、相当な実力者じゃろう!」

 

 

カツラの目が、挑戦者を見定めるように鋭くなる。

 

 

「本気で相手をしよう! ……と言いたいところじゃが」

 

 

そこで、彼はふと窓の外に目を向けた。

すでに日が傾き、島の空は夕暮れに染まり始めている。

 

 

「流石にもう夜も遅い。ジム戦は明日の朝から行おう!」

 

 

「えっ、今からじゃないのか?」

 

 

「何を言う! 旅の疲れを残したままでは、満足のいく勝負もできんじゃろう!」

 

 

カツラは豪快に笑い、二人を館の中へ招き入れた。

 

 

「今日はゆるりと旅の疲れを癒やしなさい! 明日は、互いに全力を尽くせる戦いにしようではないか!」

 

 

シンヤはその言葉に、自然と笑みを浮かべた。

 

 

「……分かりました。では、お言葉に甘えさせてもらいます」

 

 

「ええ。よろしくお願いします」

 

 

レンも丁寧に頭を下げた。

 

 

「うむ! よい返事じゃ!」

 

 

カツラは満足そうに頷き、二人を客室へ案内した。

こうして、シンヤとレンはグレンタウンで一日休息を取ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

客室に荷物を置き、ひと息ついたシンヤは、窓から夕暮れの海を眺めていた。

 

 

「いよいよ七つ目か……」

 

 

これまでに手に入れたバッジは六個。

ナツメとの戦いを経て、シンヤは自分の実力だけでなく、ポケモンたちとの絆を改めて確かめることができた。

だが、これから先に待つ相手も、決して簡単には勝たせてくれないだろう。

 

 

グレンジムのカツラ。

火山島のジムリーダーにして、炎タイプのポケモンを得意とするベテラントレーナー。

シンヤは手持ちのポケモンたちの顔を思い浮かべる。

 

 

リザードン、ギャラドス、カメックス、ニドキング、ピカチュウ、そしてほかの仲間たち。

誰を選び、どんな戦い方をするべきか。

考えるだけで、胸が高鳴った。

 

 

「……明日が楽しみだな」

 

 

「シンヤ?」

 

 

背後からレンの声がした。

振り返ると、彼女は柔らかく微笑んでいた。

 

 

「また、戦いのことを考えていたの?」

 

 

「まあな。せっかくここまで来たんだ。全力で挑みたいから」

 

 

「ふふっ。あなたらしいわね」

 

 

レンは隣に並び、窓の外を見つめた。

 

 

「でも、今日はちゃんと休むこと。明日は大事なジム戦なんだから」

 

 

「分かってるよ」

 

 

「本当に?」

 

 

「……分かってます」

 

 

「よろしい」

 

 

レンは満足げに頷いた。

その様子に、シンヤは苦笑する。

 

 

「なんだか、母さんみたいだな」

 

 

「まあ。レンはそんなに心配性に見えるかしら?」

 

 

「いや、そういう意味じゃなくて……」

 

 

「ふふっ。冗談よ」

 

 

レンは楽しそうに笑った。

夕暮れの海から、穏やかな風が吹き込んでくる。

長い旅の途中に訪れた、束の間の休息。

そして明日には、七つ目のバッジを懸けた新たな戦いが待っている。

 

 

シンヤは窓の外を見つめながら、静かに拳を握った。

 

 

「よし……明日は、よろしく頼むぞ。みんな」

 

 

その言葉に応えるように、ポケモンたちのボールがかすかに揺れた気がした。

 

サトシの手持ちを無印版で仲間にしてないのを仲間にするか否か

  • 仲間にしてええんやで
  • 仲間にしなくてもいいだろ
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