ポケットモンスター~波動の眼を持つ少年~   作:レイザル

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第55話 灼熱のグレンジム! 炎の試練とクリムゾンバッジ!

翌朝。

 

 

グレンタウンの朝日が窓から差し込む頃、シンヤはすっきりと目を覚ました。

昨夜は久しぶりにゆっくりと休むことができた。長距離の飛行で溜まった疲労も抜け、体調は万全。ポケモンたちも十分に休ませてある。

 

 

「よし。準備は万全だ」

 

 

身支度を整えたシンヤは、ベッドの上に広げたポケモン図鑑とメモを眺めていた。

今日はグレンジムでのジム戦。

 

 

相手は炎タイプの使い手、カツラ。

昨日の様子からして、正面から全力でぶつかってくる相手であることは間違いない。

 

 

そして、ジムリーダーたちの間でもシンヤの戦いぶりは知られているらしい。ナツメのメガフーディンを倒したことも伝わっている。

ならば、カツラも相応の準備をしてくるはずだ。

 

 

「シンヤ、もう準備しているの?」

 

 

部屋を訪れたレンが、机の上を覗き込んだ。

 

 

「まあな。カツラさんが準備をしてくるって言ってたから、待っている間に使用するポケモンを考えていたんだ」

 

 

「今回は水ポケモンで行くの?」

 

 

レンの質問に、シンヤは首を横に振った。

 

 

「いや。水ポケモンだけで勝てるほど、甘い相手じゃないと思う」

 

 

「炎タイプが相手なのに?」

 

 

「だからこそ、だよ」

 

 

シンヤはメモを指で叩いた。

 

 

「炎タイプに水タイプが有利なのは確かだ。でも、相手はそれを承知で戦ってくる。水技を警戒して対策しているだろうし、そもそも水タイプを出したからって、それだけで勝てるわけじゃない」

 

 

「なるほどね」

 

 

「それに、ここまでジム戦を重ねてきて分かったことがある。相性が有利でも、戦い方を間違えれば普通に負ける。逆に不利な状況でも、戦術次第で勝機は作れる」

 

 

シンヤは五つのモンスターボールを並べた。

 

 

「今回は主力で行く」

 

 

先発は、コノヨザル。

 

二番手は、ニドキング。

 

三番手は、実家の番長として名を馳せるピカチュウ。

 

四番手は、ギャラドス。

 

そして最後は――リザードン。

 

 

「五対五になる可能性も考えて、この五匹を選んだ。相手の手持ちがある程度分かってきたら、ギャラドスの出しどころも見えてくるだろうしな」

 

 

「ふふっ。ずいぶん自信がありそうね」

 

 

「自信というより、楽しみなんだよ」

 

 

シンヤは笑った。

 

 

「どんな相手でも、全力でぶつかってくれるなら、こっちも全力で応えたいだろ?」

 

 

レンは彼の横顔を見つめ、柔らかく微笑んだ。

 

 

「そういうところ、シンヤらしいわね」

 

 

そのとき、廊下から大きな足音が聞こえてきた。

 

 

「おーい! 準備ができたぞ!」

 

 

カツラの声だった。

 

 

「よし。行こう、レン」

 

 

「ええ!」

 

 

二人はモンスターボールを手に取り、部屋を後にした。

今日、七つ目のバッジを懸けた戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、到着じゃ!」

 

 

カツラに案内され、シンヤとレンが辿り着いたのは、グレン島の活火山内部に設けられた特別なバトルフィールドだった。

 

 

「……これは、すごいな」

 

 

思わずシンヤが声を漏らす。

周囲には赤く輝くマグマが流れ、岩肌からは熱気が立ち上っている。足場は頑丈に整備されているものの、ところどころに地熱の影響が見て取れた。

 

 

空気そのものが熱い。

普通のトレーナーなら、立っているだけでも体力を奪われそうな環境だ。

 

 

「ここがグレンジムのバトルフィールド……!」

 

 

レンも驚きを隠せなかった。

カツラは得意げに笑い、両腕を広げた。

 

 

「そう! ここは『マグマフィールド』じゃ!」

 

 

そして、バトルフィールドの中央を指し示す。

 

 

「この超高温環境に、ワシの得意技である『にほんばれ』を組み合わせれば、炎タイプのポケモンは普段以上の力を発揮できる!」

 

 

シンヤは目を細めた。

 

 

「なるほど……」

 

 

カツラが手持ちのポケモンに日本晴れを使わせれば、フィールドの熱気と相まって、炎技の威力は通常の二・五倍にまで跳ね上がる。

 

 

一方、水技の威力は四分の一まで低下するという。

 

 

「つまり、水タイプを出せば有利、という単純な話にはならんわけじゃ!」

 

 

「そういうことか……!」

 

 

シンヤは思わず笑みを浮かべた。

なるほど、これなら水ポケモンだけで押し切る戦法は危険だ。

強力な炎技が飛び交う中で、ただ水技を撃つだけでは、環境そのものに足を引っ張られる。

 

 

 

 

だが――。

 

 

 

 

「面白いじゃないか」

 

 

シンヤの表情が、戦闘に臨むトレーナーのそれへと変わった。

 

 

「どんな環境でも、勝ち筋はある。そうだろ?」

 

 

カツラは満足そうに頷いた。

 

 

「その意気じゃ! では、始めよう!」

 

 

審判役の係員が所定の位置につく。

 

 

「これより、グレンジムのジム戦を開始します! 使用ポケモンは双方五体! 先に相手のポケモンを五体とも戦闘不能にした側の勝利とします!」

 

 

カツラがモンスターボールを手にした。

 

 

「さあ、最初の相手はこいつじゃ!」

 

 

ボールから現れたのは、優雅な姿のキュウコンだった。

九本の尾がゆらりと揺れ、その瞳には落ち着いた鋭さが宿っている。

 

 

「キュウ!」

 

 

「やっぱり、最初から炎タイプか」

 

 

シンヤもボールを掲げた。

 

 

「行くぞ、コノヨザル!」

 

 

「オオオオッ!」

 

 

コノヨザルがフィールドに降り立つ。

その全身から立ち上る怒りのオーラに、キュウコンは一瞬だけ警戒するように身構えた。

 

 

「では――バトル開始!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆第一戦 コノヨザルVSキュウコン

 

 

「キュウコン、にほんばれ!」

 

 

カツラの指示と同時に、キュウコンが天を仰いだ。

強烈な光がバトルフィールドを照らし、ただでさえ熱かった空気がさらに熱を帯びる。

マグマフィールドの環境に、晴天の効果が加わった。

 

 

「これで炎技の威力はさらに上がるぞ! キュウコン、かえんほうしゃ!」

 

 

キュウコンの口から、巨大な炎の奔流が放たれた。

 

 

「コノヨザル、耐えろ!」

 

 

コノヨザルは正面から炎を受けた。

爆炎がその身体を包み、周囲の岩肌まで赤く照らす。

 

 

「コノヨザル!」

 

 

レンが思わず声を上げる。

しかし、炎が晴れたとき――コノヨザルは、まだ立っていた。

身体にはダメージが刻まれている。だが、その瞳は少しも怯んでいなかった。

 

 

「ほう……!」

 

 

カツラの眉が上がる。

 

 

「今の炎をまともに受けて、まだ立っておるか!」

 

 

シンヤは冷静に指示を出した。

 

 

「コノヨザル、ステルスロック!」

 

 

「オオッ!」

 

 

コノヨザルが地面を踏み鳴らす。

フィールドの周囲に、鋭い岩の破片が浮かび上がった。目に見えにくい位置へ散らばり、交代してくるポケモンを待ち構える。

 

 

「設置技を使うか! ならば、その前に焼き尽くせ! キュウコン、かえんほうしゃ!」

 

 

 

再び炎が襲いかかる。

コノヨザルは腕を交差させて受け止めた。

熱気が全身を包み込む。それでも、コノヨザルは踏みとどまった。

 

 

「まだだ! コノヨザル、ビルドアップ!」

 

 

コノヨザルが拳を握り締める。

筋肉が張り詰め、全身から放たれる闘気が一段と強まった。

攻撃と防御を同時に引き上げる積み技。

 

 

「何度も炎を受けながら、強化を重ねるつもりか……!」

 

 

カツラの額に汗が浮かぶ。

キュウコンが距離を取ろうとした、その瞬間。

 

 

「もう一度、ビルドアップ!」

 

 

「オオオオッ!」

 

 

コノヨザルの闘気がさらに高まる。

カツラは目を見開いた。

普通なら、これほどの高火力を前に積み技を重ねる余裕などない。

 

 

だが、コノヨザルは耐えている。

それも、ただ耐えているのではない。相手の攻撃を受け止めながら、反撃の準備を整えているのだ。

 

 

「キュウコン、かえんほうしゃじゃ!」

 

 

「コノヨザル、ドレインパンチ!」

 

 

炎の奔流へ向かって、コノヨザルが突進した。

熱気を切り裂きながら踏み込み、キュウコンとの距離を一気に詰める。

 

 

 

 

 

そして――。

 

 

 

 

 

「オオオオッ!」

 

 

強烈な拳がキュウコンに叩き込まれた。

命中した拳から生命力が吸い上げられ、コノヨザルの傷が少しずつ癒えていく。

 

 

「キュウコン!」

 

 

キュウコンが吹き飛び、地面を転がった。

立ち上がろうとしたものの、足元がふらつき、そのまま倒れる。

 

 

「キュウコン、戦闘不能!」

 

 

「よし!」

 

 

シンヤが拳を握った。

 

 

「よくやった、コノヨザル!」

 

 

コノヨザルは振り返り、力強く胸を叩いた。

その姿を見て、カツラは大きく笑った。

 

 

「見事じゃ! じゃが、まだまだこれからじゃぞ!」

 

 

コノヨザルは傷を負っているものの、ドレインパンチによって体力を回復している。

そして、フィールドにはステルスロックが残った。

この仕掛けが、後続のポケモンたちを待ち受けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆第二戦 コノヨザルVSギャロップ

 

 

「次はお主じゃ!」

 

 

カツラが次のボールを投げる。

現れたのは、炎のたてがみをなびかせたギャロップだった。

 

 

「ギャロッ!」

 

 

ギャロップが軽やかに地面を蹴る。

対するコノヨザルは、まだ戦闘可能な状態だった。

 

 

「コノヨザル、続けていけるか?」

 

 

「オオッ!」

 

 

力強い返事。

シンヤはその意思を尊重し、ボールには戻さなかった。

 

 

「よし。無理はするなよ!」

 

 

「ギャロップ、ニトロチャージ!」

 

 

ギャロップの身体が炎に包まれた。

そのままフィールドを駆け抜け、コノヨザルへと迫る。

 

 

「コノヨザル、迎え撃て!」

 

 

コノヨザルが拳を振るう。

だが、ギャロップは驚くほどの速度で身をひねり、攻撃をかわした。

ニトロチャージによって上昇した素早さが、コノヨザルの強化された攻撃力を補って余りある動きを生み出している。

 

 

「速い……!」

 

 

レンが息を呑む。

ギャロップはコノヨザルの周囲を走り回り、攻撃のタイミングを与えない。

そして、すれ違いざまに急停止した。

 

 

「ギャロップ、さいみんじゅつ!」

 

 

ギャロップの瞳が不思議な光を放つ。

至近距離で放たれた催眠術。

 

 

「しまっ――!」

 

 

コノヨザルの動きが止まった。

次の瞬間、身体から力が抜け、地面に膝をつく。

 

 

「今じゃ! だいもんじ!」

 

 

ギャロップの口から、巨大な炎が放たれた。

眠ったコノヨザルは避けることができない。

爆炎が巻き起こり、コノヨザルの巨体を包み込んだ。

 

 

「コノヨザル!」

 

 

シンヤが叫ぶ。

炎が晴れたあと、コノヨザルは倒れていた。

 

 

「コノヨザル、戦闘不能!」

 

 

「戻れ、コノヨザル。よく頑張ったな」

 

 

シンヤはボールを手に取り、仲間を戻した。

初戦でキュウコンを倒し、ステルスロックを設置するという役割を果たしたのだ。

十分な仕事だった。

 

 

一方、ギャロップも無傷ではない。

コノヨザルとの戦闘中、設置されたステルスロックの影響を受けていた。

その小さなダメージが、次の戦いを左右することになる。

 

 

「次はお前だ、ニドキング!」

 

 

「ニドォォッ!」

 

 

堂々たる巨体のニドキングがフィールドへ降り立った。

 

 

「ほう、ニドキングか!」

 

 

カツラが目を細める。

 

 

「多彩な技を使うポケモンじゃな。何を仕掛けてくるか、楽しみじゃ!」

 

 

「それじゃ、行くぞ!」

 

 

ニドキングが前傾姿勢を取った。

 

 

「ギャロップ、ニトロチャージ!」

 

 

再びギャロップが駆け出す。

ニドキングの攻撃を誘い、素早さを活かして回避するつもりだ。

 

 

「ニドキング、どくづき!」

 

 

ニドキングが鋭い角を突き出す。

だが、ギャロップは身をひねってかわした。

 

 

「そのまま、さいみんじゅつを――」

 

 

カツラが次の指示を出しかけた、そのときだった。

ギャロップの足元に、鋭い岩の破片がまとわりつく。

ステルスロックによるダメージ。

 

 

「ヒヒンッ!」

 

 

ギャロップの身体が揺らぎ、一瞬だけ動きが止まった。

シンヤは、その隙を見逃さない。

 

 

「ニドキング、だいちのちから!」

 

 

「ニドォォッ!」

 

 

地面が大きく隆起した。

岩盤を突き破るように地中からエネルギーが噴き上がり、ギャロップを直撃する。

 

 

「ギャロップ!」

 

 

爆発的な衝撃に、ギャロップが宙へと舞い上がった。

そして地面へ落下し、そのまま動かなくなる。

 

 

「ギャロップ、戦闘不能!」

 

 

「よし!」

 

 

シンヤは小さく拳を握った。

 

 

「ステルスロックが効いたな……!」

 

 

コノヨザルが残した罠。

それがギャロップの動きを一瞬だけ乱し、ニドキングの攻撃を命中させた。

カツラは満足そうに頷いた。

 

 

「倒されたポケモンが残したものまで、次の戦いにつなげるか。いい戦い方じゃ!」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

シンヤは素直に頭を下げた。

しかし、カツラの表情はすぐに真剣なものへと変わる。

 

 

「じゃが、次はそう簡単にはいかんぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆第三戦 ニドキングVSウインディ

 

 

カツラが三つ目のボールを掲げた。

 

 

「出番じゃ、ウインディ!」

 

 

「ガオオオオッ!」

 

 

雄々しい咆哮とともに、ウインディが姿を現した。

その立派なたてがみが揺れ、身体から熱気が立ち上る。

炎の王者を思わせる威圧感。

しかも、フィールドは依然として日本晴れの効果が続いている。

 

 

「来るぞ、ニドキング!」

 

 

「ウインディ、しんそく!」

 

 

ウインディの姿が消えた。

いや、正確には、あまりにも速く動いたため、目で追いきれなかったのだ。

 

 

「なっ……!」

 

 

シンヤが反応するよりも早く、ウインディはニドキングの懐へ潜り込んでいた。

 

 

「フレアドライブじゃ!」

 

 

ウインディの全身が巨大な炎に包まれる。

次の瞬間、凄まじい勢いでニドキングへ激突した。

 

 

 

 

 

ドゴォォォンッ!!

 

 

 

 

 

爆発音が火山内部に響き渡る。

ニドキングの巨体が大きく吹き飛ばされ、岩壁近くまで転がった。

 

 

「ニドキング!」

 

 

レンが思わず身を乗り出した。

超高温環境と日本晴れによって威力が引き上げられたフレアドライブ。

 

 

その一撃は、ニドキングにとっても致命傷になりかねない威力だった。

ニドキングは苦しそうに息を吐きながら、ゆっくりと立ち上がった。

 

 

「まだ立てるか……!」

 

 

シンヤの額にも汗が浮かぶ。

相手の火力は想像以上だ。

だが、ニドキングはまだ戦える。

 

 

「ニドキング、どくどく!」

 

 

「ニドォォッ!」

 

 

ニドキングは身体を起こし、猛毒の液体をウインディへ放った。

ウインディは回避しようとしたが、至近距離で放たれた攻撃を完全には避けきれない。

猛毒がその身体を侵食する。

 

 

「ガウッ!?」

 

 

ウインディが苦しそうに声を上げた。

身体の表面に異変が現れ、呼吸も荒くなる。

 

 

「よし……!」

 

 

シンヤは息を吐いた。

ニドキングは致命的なダメージを受けながらも、最後に猛毒を与えたのだ。

その役割を果たしたニドキングは、再び膝をつき――そのまま倒れた。

 

 

「ニドキング、戦闘不能!」

 

 

「戻れ、ニドキング。お前もよくやった」

 

 

シンヤはボールを握り締めた。

これで二匹が倒された。

対するカツラは、すでに二匹を失っているものの、ウインディという強力なポケモンを残している。

 

 

しかも、そのウインディはまだ戦闘可能だ。

ただし、猛毒の影響は確実に進行していた。更にステルスロックも残っている。

 

 

「なるほど……最後に毒を仕込んできたか」

 

 

カツラはウインディの様子を見ながら、感心したように呟いた。

 

 

「じゃが、こちらも簡単には倒れんぞ!」

 

 

シンヤは次のボールを手に取った。

 

 

「行くぞ、ピカチュウ!」

 

 

「ピカァッ!」

 

 

小さな身体が、フィールドに軽やかに降り立った。

その姿を見たレンは、少しだけ笑みを浮かべた。

 

 

「ふふっ。あの子、やる気満々ね」

 

 

「まあな。実家じゃ、すっかり番長らしいから」

 

 

「あんなに小さいのにねぇ……」

 

 

ピカチュウは短く鳴くと、ウインディを真正面から見据えた。

その目に怯えはない。

むしろ、強敵との戦いを楽しみにしているようだった。

 

 

「ピカチュウ、準備はいいか?」

 

 

「ピカァ!」

 

 

「よし!」

 

 

シンヤは笑った。

 

 

「行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆第四戦 番長ピカチュウVSウインディ

 

 

「ウインディ、しんそく! 続けてフレアドライブじゃ!」

 

 

カツラは、短期決戦を狙った。

猛毒による消耗が進む前に、圧倒的な速度と火力でピカチュウを倒す。

ウインディが地面を蹴った。

 

 

「ピカチュウ、右へ回避!」

 

 

ピカチュウは小さな身体をひねり、紙一重で神速をかわした。

 

 

「続けて来るぞ!」

 

 

ウインディは止まらない。

そのまま炎をまとい、ピカチュウへ突進する。

 

 

 

 

 

 

だが――。

 

 

 

 

 

「ピカチュウ、ジャンプ!」

 

 

ピカチュウは地面を蹴り、ウインディの突進を飛び越えた。

炎が足元を通り過ぎる。

 

 

「なにっ!?」

 

 

カツラが目を見開いた。

ピカチュウは空中で身体をひねり、着地と同時にウインディの背後へ回り込む。

そして、すぐさま尻尾を地面に叩きつけた。

 

 

「くさむすび!」

 

 

太い草のつるが地面から伸び、ウインディの足元に絡みつく。

高温のフィールド故に効果は一瞬であったが―――――

 

 

「ガウッ!?」

 

 

それでもウインディが動きを止めた。

さらに、猛毒による苦痛がその動きを鈍らせる。

ウインディは必死に身体を動かそうとするが、足が思うように動かない。

今までの蓄積ダメージの中、急に動きを止められた影響だろう。

 

 

「今だ、ピカチュウ! かみなりパンチ!」

 

 

ピカチュウの拳に、強烈な電撃が集中した。

通常の小柄なピカチュウからは想像できないほど、太く激しい電流。

ピカチュウは地面を蹴り、ウインディの背後から一気に踏み込んだ。

 

 

「ピカァァァッ!」

 

 

 

 

 

 

ドゴォッ!!

 

 

 

 

 

 

かみなりパンチがウインディの急所を捉えた。

ウインディの身体が大きく揺れ、力が抜ける。

そして、ゆっくりと地面へ倒れ込んだ。

 

 

「ウインディ、戦闘不能!」

 

 

「よしっ!」

 

 

シンヤが拳を握った。

ピカチュウは着地すると、得意げに胸を張る。

 

 

「ピカッ!」

 

 

まるで、これくらい当然だと言わんばかりの態度だった。

 

 

「すごい……!」

 

 

レンも目を輝かせていた。

 

 

「シンヤのピカチュウ、動きが本当に速いのね。しかも、相手の攻撃を見切って、地面の技で足止めまでして……」

 

 

「普段から、相手の動きをよく観察しているからな。力任せに攻めるだけじゃなくて、どうすれば相手の動きを止められるかも考えてるんだ」

 

 

「なるほど……」

 

 

レンはピカチュウを見つめた。

小柄な身体に宿る、確かな実力。

それは単純な力比べではなく、経験と判断力によって培われたものだった。

 

 

一方、カツラは倒れたウインディをボールへ戻し、真剣な顔でシンヤを見つめた。

 

 

「見事じゃ。だが、次はどうかな?」

 

 

カツラが次のボールを掲げる。

 

 

「行け、ブースター!」

 

 

「ブースッ!」

 

 

現れたのは、ふわふわとした毛並みを持つブースターだった。

小柄で愛らしい姿。

だが、その目は鋭く、油断のない雰囲気を漂わせている。

シンヤはピカチュウに視線を向けた。

 

 

「ピカチュウ、まだいけるか?」

 

 

「ピカッ!」

 

 

力強い返事。

 

 

「よし。頼むぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆第五戦 ピカチュウVSブースター

 

 

「ブースター、あくび!」

 

 

「……なっ!」

 

 

シンヤは一瞬、意表を突かれた。

ブースターは攻撃を仕掛けるでもなく、口を大きく開けてあくびをした。

その仕草はあまりにも自然で、戦場にいることさえ忘れそうなほどだった。

 

 

しかし、ピカチュウの様子が変わる。

 

 

「ピカ……?」

 

 

まぶたが少しずつ重くなり、身体の動きが鈍くなっていく。

 

 

「しまった……!」

 

 

シンヤが気づいたときには、すでに眠気がピカチュウを襲っていた。

 

 

「ブースター、フレアドライブ!」

 

 

ブースターの身体が炎に包まれる。

ピカチュウが回避しようとするが、眠気によって反応が遅れた。

次の瞬間、炎をまとったブースターが至近距離から激突した。

 

 

 

 

 

 

ドゴォォンッ!!

 

 

 

 

 

ピカチュウの身体が吹き飛ばされ、地面を転がる。

 

 

「ピカチュウ!」

 

 

シンヤが叫んだ。

ピカチュウは起き上がろうとしたものの、力が入らず、そのまま倒れた。

 

 

「ピカチュウ、戦闘不能!」

 

 

「……よく頑張った。戻れ、ピカチュウ」

 

 

シンヤはボールを握り締め、静かに仲間を戻した。

ウインディを倒した代償は大きかった。

ブースターは、ピカチュウの素早さと攻撃力を正面から受け止めるのではなく、状態異常でその長所を封じてきたのだ。

 

 

「小柄なポケモン同士の勝負じゃったが、ブースターのほうが一枚上手だったようじゃな」

 

 

カツラはブースターを見ながら、満足そうに頷いた。

 

 

「ただ速いだけでは、勝てんということじゃ」

 

 

「……そうですね」

 

 

シンヤは苦笑した。

ピカチュウは強かった。

 

 

だが、強いからこそ、相手もその強さを封じる戦い方を選んでくる。

今回の敗北は、まさにその好例だった。

 

 

「よくやった、ピカチュウ。あとは任せてくれ」

 

 

シンヤは次のボールを取り出した。

 

 

「ギャラドス、頼む!」

 

 

「ギャオオオオッ!」

 

 

巨大なギャラドスがフィールドへ姿を現す。

その圧倒的な存在感に、ブースターが思わず身構えた。

 

 

「ほう! ここでギャラドスか!」

 

 

カツラが目を細める。

シンヤはギャラドスの背を見上げ、静かに告げた。

 

 

「水技を使うつもりはない。今はな」

 

 

レンは、その言葉に目を瞬かせた。

 

 

「えっ? でも、ギャラドスなら水技が……」

 

 

「このフィールドでは、水技の威力が大幅に下がる。なら、別の方法で攻めればいい」

 

 

シンヤはギャラドスを見上げた。

 

 

「いくぞ、ギャラドス!」

 

 

「ギャオッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆第六戦 ギャラドスVSブースター

 

 

「ギャラドス、りゅうのまい!」

 

 

ギャラドスが大きく身体をくねらせた。

舞うような動きとともに、全身に力がみなぎっていく。

攻撃力と素早さが上昇した。

 

 

「ブースター、フレアドライブ!」

 

 

ブースターは迷わず突進する。

 

 

「ギャラドス、あまごい!」

 

 

ギャラドスが咆哮を上げると、空気が変化した。

しかし、火山内部に満ちた熱気と、カツラが作り出した晴天の力がそれを押し返す。

雨は十分に降り注ぐ前に弱まり、やがて消えてしまった。

 

 

「やはり、簡単には天候を変えさせてくれないか!」

 

 

シンヤは舌打ちすることなく、すぐに次の指示を出した。

 

 

「だがそれでいい! ギャラドス、とびかかる!」

 

 

 

ギャラドスが大きく跳躍した。

巨体が空を覆い、ブースターの頭上から迫る。

 

 

「ブースター、避けろ!」

 

 

ブースターは横へ飛び退こうとした。

だが、ギャラドスの巨体が落下する速度は想像以上だった。

 

 

 

 

 

 

ドォォンッ!!

 

 

 

 

 

 

ギャラドスがブースターを押さえ込むように着地した。

地面が揺れ、砂埃が舞い上がる。

 

 

「ブースッ!?」

 

 

ブースターは必死に身体を動かし、脱出を試みた。

 

 

「ブースター、フレアドライブ!」

 

 

至近距離で炎が噴き上がる。

ブースターは自らの炎をまとい、ギャラドスの巨体を押し返そうとした。

 

 

「ギャラドス、はかいこうせん!」

 

 

「ギャオオオオオッ!」

 

 

ギャラドスの口元に、膨大なエネルギーが集束する。

逃げ場のない至近距離。

次の瞬間、破壊光線がブースターを直撃した。

 

 

 

 

 

 

ドゴォォォォンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

爆音とともに衝撃波が広がり、二匹の周囲に熱風が吹き荒れる。

やがて煙が晴れたとき、ブースターは地面に倒れていた。

 

 

「ブースター、戦闘不能!」

 

 

「よし!」

 

 

シンヤが拳を握る。

 

 

「ギャラドス、よくやった!」

 

 

ギャラドスは雄叫びを上げ、堂々と首をもたげた。

水技をほとんど使わず、積み技と体格、そして近距離からの高火力で勝利をつかんだのだ。

 

 

カツラは倒れたブースターをボールへ戻すと、静かに頷いた。

 

 

「水タイプでありながら、水技に頼らんか……。状況に合わせて戦術を変える、よい判断じゃ」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

シンヤは答えた。

だが、まだ終わりではない。

 

 

カツラの手持ちは残り一匹。

そして、その最後のポケモンこそが、彼の切り札だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆最終戦 ギャラドスVSブーバー

 

 

「さあ……最後じゃ!」

 

 

カツラがボールを掲げる。

しかし、投げることはしなかった。

彼はフィールドの中央に立ち、マグマが流れる岩場へ視線を向ける。

 

 

「出てこい、ブーバー!」

 

 

その声に応えるように、火山の奥から影が現れた。

岩場を飛び越え、熱気の中から姿を現したのは――ブーバーだった。

 

 

「ブーバァァッ!」

 

 

全身から炎のような熱を放ち、鋭い目でギャラドスを見据える。

その登場に、レンは息を呑んだ。

 

 

「火山の中から……!」

 

 

「ここはグレンジムじゃからな!」

 

 

カツラは豪快に笑った。

 

 

「最後の相手は、ワシのブーバーじゃ! さあ、勝負の続きを始めよう!」

 

 

シンヤはギャラドスを見上げた。

 

 

「ギャラドス、まだ戦えるか?」

 

 

「ギャオオッ!」

 

 

力強い返事。

ギャラドスの身体には、ブースターとの戦いで受けたダメージが残っている。

それでも、闘志は衰えていない。

 

 

「よし……!」

 

 

シンヤは頷いた。

 

 

「まずは、りゅうのまい!」

 

 

ギャラドスが再び舞うように身体をくねらせる。

攻撃力と素早さをさらに高め、最後の勝負に備える。

 

 

「ブーバー、かえんほうしゃ!」

 

 

ブーバーはギャラドスが動き出すのを待たず、正面から炎を放った。

 

 

「ギャラドス、たきのぼり!」

 

 

ギャラドスが水流をまとい、炎の中へ突っ込んだ。

水技の威力は、マグマフィールドと日本晴れによって大きく低下している。

 

 

それでも、りゅうのまいによる強化は無視できない。

巨大な水流が炎を押し分け、ブーバーへと迫った。

 

 

「ブーバー、正面から受けろ!」

 

 

ブーバーは退かなかった。

炎をまとったまま、真正面からたきのぼりを受け止める。

水流が弾け、白い蒸気が立ち上った。

 

 

「なっ……!」

 

 

レンが驚きの声を上げる。

通常なら炎タイプにとって危険な水技を、ブーバーは正面から受けながらも耐えていた。

 

 

もちろん、無傷ではない。

その身体には、確かなダメージが刻まれている。

だが、ブーバーはそのままギャラドスへ踏み込んだ。

 

 

「かみなりパンチ!」

 

 

「ブーバァァッ!」

 

 

電撃を帯びた拳が、ギャラドスの巨体に叩き込まれた。

 

 

 

 

 

 

バリバリバリッ!!

 

 

 

 

 

 

「ギャオオオオッ!」

 

 

効果抜群の電撃が、ギャラドスの全身を駆け抜ける。

ギャラドスの身体が大きく震え、その巨体が傾いた。

 

 

「ギャラドス!」

 

 

シンヤは思わず叫んだ。

しかし、ギャラドスは倒れなかった。

電撃を受けながらも、最後の力を振り絞る。

 

 

「まさか……まだ動けるのか!?」

 

 

カツラが驚きの声を上げた。

ギャラドスは苦しげに息を吐きながら、ブーバーを見据えた。

そして――。

 

 

 

 

「ギャオオオオッ!」

 

 

 

 

身体を震わせ、残された力で電磁波を放った。

 

 

「なにっ!?」

 

 

電磁波がブーバーの身体に絡みつく。

ブーバーは一瞬、動きを止めた。

身体が小刻みに震え、思うように動けなくなる。

 

 

「よくやった、ギャラドス……!」

 

 

シンヤは唇を噛み締めた。

ギャラドスは、最後の最後まで戦い抜いた。

水技が通りにくい環境でも、積み技を使い、攻撃を重ね、相手にダメージを与えた。

 

 

そして、自分が倒れる寸前に、最後の一手を残したのだ。

ギャラドスの身体が傾き、ついに地面へ倒れ込む。

 

 

「ギャラドス、戦闘不能!」

 

 

シンヤは静かにボールを向けた。

 

 

「戻れ、ギャラドス。お前の仕事は十分だ」

 

 

ギャラドスをボールへ戻し、シンヤは最後のモンスターボールを手に取った。

残るは一匹。

そして、相手も最後の一匹。

 

 

「……さあ、決着だ」

 

 

シンヤはボールを掲げた。

 

 

「リザードン! 頼むぞ!」

 

 

「グオオオオオッ!」

 

 

炎の翼を広げ、リザードンがフィールドに降り立った。

その姿を見た瞬間、カツラの目が輝いた。

 

 

「来たか、リザードン! 最後にふさわしい相手じゃ!」

 

 

リザードンはブーバーを見据え、低く唸った。

身体には、これまでの旅で培ってきた鍛錬の成果が宿っている。

数々のジム戦を乗り越え、幾多の強敵と戦ってきた相棒。

シンヤはその背中を見つめ、笑った。

 

 

「行くぞ、リザードン。最後まで全力だ!」

 

 

「グオオッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆決着! リザードンVSブーバー

 

 

「ブーバー、かえんほうしゃ!」

 

 

「リザードン、かえんほうしゃ!」

 

 

二匹が同時に炎を放った。

赤と橙の炎がぶつかり合い、火山内部を明るく照らす。

互いの炎が押し合い、中央で激しい爆発が起きた。

 

 

 

 

 

 

ドゴォォォンッ!!

 

 

 

 

 

衝撃波が広がり、熱風がフィールドを駆け抜ける。

リザードンは翼を広げ、爆風を受け止めた。

ブーバーも踏みとどまり、鋭い目で相手を見据える。

 

 

「ほう……!」

 

 

カツラが感嘆の声を上げた。

 

 

「さすがはシンヤのリザードンじゃ! 炎のぶつかり合いでも引かんとは!」

 

 

しかし、シンヤは相手の様子を見逃さなかった。

ブーバーの動きには、ギャラドスとの戦いで受けたダメージが残っている。

そして、身体には電磁波による麻痺の影響もある。

動けなくなる瞬間が、必ず訪れる。

 

 

「リザードン、りゅうのまい!」

 

 

リザードンは爆風に身を任せるように翼を広げ、空中で身体をひねった。

舞うような動きとともに、攻撃力と素早さが高まっていく。

 

 

「なるほど! 爆風を利用して強化したか!」

 

 

カツラが笑う。

 

 

「じゃが、そう簡単には攻めさせんぞ! ブーバー、かえんほうしゃ!」

 

 

再び炎が放たれる。

リザードンは翼を羽ばたかせ、上空へと飛び上がった。

炎が足元を通り過ぎる。

 

 

「リザードン、ドラゴンクロー!」

 

 

両腕に緑色のエネルギーが宿る。

リザードンは上空から急降下し、ブーバーへ鋭い爪を振り下ろした。

 

 

「ブーバー、避けろ!」

 

 

ブーバーは横へ飛び退いた。

ドラゴンクローが地面を削り、火花が散る。

 

 

「まだじゃ! かえんほうしゃ!」

 

 

ブーバーはすぐさま反撃する。

リザードンは身をひねり、炎を紙一重でかわした。

 

 

「いいぞ、リザードン! そのまま攻めろ!」

 

 

リザードンは再び上昇し、ブーバーの頭上を旋回する。

ブーバーも必死にその動きを追い、炎を放ち続けた。

 

 

二匹の攻防は、まさに一進一退。

しかし、徐々にブーバーの動きに乱れが生じ始めた。

電磁波の影響だ。

 

 

「ブーバー、集中するんじゃ!」

 

 

カツラが声を張り上げる。

ブーバーは歯を食いしばり、再びリザードンへ狙いを定めた。

 

 

 

だが――。

 

 

 

 

「リザードン、もう一度ドラゴンクロー!」

 

 

リザードンが急降下する。

ブーバーは避けようとした。

その瞬間、身体が大きく震えた。

 

 

「ブーバッ……!?」

 

 

麻痺によって、動きが止まる。

 

 

「今だ!」

 

 

リザードンのドラゴンクローが、ブーバーを捉えた。

 

 

 

 

ガキィィンッ!!

 

 

 

 

ブーバーの身体が大きく揺れる。

それでも、まだ倒れない。

 

 

「ブーバー、かえんほうしゃ!」

 

 

ブーバーは至近距離から炎を放った。

リザードンも炎を受け、苦しそうに唸る。

両者とも、限界が近い。

カツラは拳を握り締めた。

 

 

「耐えるんじゃ、ブーバー! ここで倒れるわけにはいかんぞ!」

 

 

ブーバーは必死に立ち続けた。

その姿に、レンも思わず息を呑む。

 

 

「すごい……。どちらも、まだ戦おうとしている……!」

 

 

シンヤはリザードンを見つめた。

 

 

「リザードン……」

 

 

リザードンは振り返らない。

ただ、ブーバーだけを見据えている。

シンヤは静かに頷いた。

 

 

「最後まで、やり切ろう」

 

 

「グオオオオッ!」

 

 

リザードンが翼を広げた。

 

 

そして――。

 

 

「ドラゴンクロー、連続攻撃だ!」

 

 

リザードンが一気に距離を詰める。

右の爪が走る。

左の爪が続く。

ブーバーは必死に攻撃をかわそうとするが、麻痺の影響で動きが追いつかない。

 

 

「ブーバー、踏ん張れ!」

 

 

カツラの声が響く。

 

 

リザードンは最後の一撃を振り抜いた。

 

 

 

 

 

ドゴォォォンッ!!

 

 

 

 

 

爆風が巻き起こり、二匹の姿が煙に包まれた。

 

 

静寂。

 

 

誰もが、煙の向こうを見つめていた。

やがて、煙が少しずつ晴れていく。

 

 

そこに立っていたのは――リザードンだった。

翼を広げ、荒い息を吐きながらも、確かな足取りで地面に立っている。

 

 

そして、そのすぐ前には。

ブーバーが、立ったまま動きを止めていた。

 

 

「……ブーバー?」

 

 

カツラが呼びかける。

ブーバーは返事をしない。

そのまま、ゆっくりと身体が傾いた。

 

 

 

 

どさり。

 

 

 

 

ブーバーは地面に倒れた。

審判役の係員が、はっきりと宣言する。

 

 

「ブーバー、戦闘不能! よって、この勝負――シンヤ選手の勝利です!」

 

 

一瞬の静寂のあと、シンヤは大きく息を吐いた。

 

 

「……よしっ!」

 

 

リザードンは雄叫びを上げ、翼を大きく広げた。

 

 

「グオオオオオッ!」

 

 

「リザードン、よくやった!」

 

 

シンヤは駆け寄り、リザードンの首元に手を置いた。

リザードンも、嬉しそうに喉を鳴らす。

その姿を見て、レンは満面の笑みを浮かべた。

 

 

「おめでとう、シンヤ!」

 

 

「ああ! みんなが頑張ってくれたおかげだ!」

 

 

シンヤはコノヨザル、ニドキング、ピカチュウ、ギャラドスのボールを順に見つめた。

誰一匹として、無駄な戦いはしていない。

 

 

コノヨザルが設置したステルスロックは、ギャロップの敗北につながった。

ニドキングが残した猛毒は、ウインディの動きを鈍らせた。

ピカチュウは、その隙を突いてウインディを倒した。

ギャラドスはブースターを倒し、最後にブーバーへ麻痺を与えた。

そしてリザードンが、仲間たちの残したチャンスをつなぎ、最後の一匹を倒したのだ。

 

 

一匹一匹が、自分にできることをやり切った。

それが、この勝利だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆七つ目のバッジ

 

 

「いやあ、見事じゃった!」

 

 

カツラは豪快に笑いながら、シンヤの前に歩み寄った。

 

 

「五匹すべてを使い切る、実に熱い戦いだった! ワシも久々に心の底から楽しめたぞ!」

 

 

「こちらこそ、ありがとうございました!」

 

 

シンヤは深々と頭を下げた。

 

 

「マグマフィールドに日本晴れまで重ねてくるとは思いませんでした。おかげで、普段とは違う戦い方を考えることができました」

 

 

「それがジム戦というものじゃ!」

 

 

カツラは胸を張った。

 

 

「相手のポケモンだけでなく、環境も含めてどう攻略するか。それを考えることも、トレーナーの務めじゃからな!」

 

 

「はい!」

 

 

カツラは懐から、小さなケースを取り出した。

中に収められていたのは、赤みを帯びた美しいバッジだった。

 

 

「シンヤよ。お主の実力と、ポケモンたちとの絆を認めよう!」

 

 

カツラはバッジを掲げた。

 

 

「これが、グレンジムの証――クリムゾンバッジじゃ!」

 

 

シンヤは両手でそれを受け取った。

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

七つ目のジムバッジ。

これで、ポケモンリーグへの道はさらに近づいた。

シンヤはバッジをケースに収め、満足そうに笑った。

 

 

「あと一つ……!」

 

 

レンも嬉しそうに頷いた。

 

 

「本当に、あと一つね。ここまで来たのね」

 

 

「ああ。でも、最後の一つを手に入れるまで気は抜けない」

 

 

「ふふっ。分かっているわ」

 

 

カツラは二人を見ながら、豪快に笑った。

 

 

「その調子じゃ! 最後のジムも、決して簡単ではないじゃろう。じゃが、お主ならきっと面白い戦いを見せてくれるはずじゃ!」

 

 

「期待に応えられるよう、頑張ります!」

 

 

シンヤは力強く答えた。

火山の内部には、まだ熱気が満ちている。

だが、シンヤの胸に宿る闘志もまた、決して負けてはいなかった。

 

 

七つ目のバッジを手にした少年は、次なる挑戦へと歩み始める。

残るジムバッジは、あと一つ。

そして、その先にはポケモンリーグが待っている。

 

サトシの手持ちを無印版で仲間にしてないのを仲間にするか否か

  • 仲間にしてええんやで
  • 仲間にしなくてもいいだろ
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