◆別荘の朝――いよいよ本格育成開始!
ナナシマ、5のしま。
豪華な別荘の敷地内には、広大な訓練場が広がっていた。
草原、岩場、森林、水辺、砂地。さらに、飛行訓練用の空域や、遠距離技の威力を測定するための専用施設まで用意されている。
シンヤは訓練場を一通り確認すると、満足そうに頷いた。
「……うん。これだけあれば、相当なことができそうだな」
「相当なこと、ねえ……」
隣にいたレンが、呆れたように目を細める。
「シンヤ、まさか朝から晩までポケモンを鍛えるつもり?」
「いや、休息も必要だからな。無理をさせるつもりはない」
「本当かしら?」
「本当だって」
「昨日も新しく捕まえたポケモンたちの技構成を考えていたでしょう?」
「それは育成計画を立てるためで……」
「ふふっ。やっぱり、頭の中はポケモンでいっぱいなのね」
レンに笑われ、シンヤは苦笑した。
もっとも、今回の育成では、単にレベルを上げるだけでは不十分だった。
それぞれのポケモンが何を得意とし、どんな戦い方を望んでいるのか。
そして、リーグから本格的に戦術へ組み込む予定の「特性」。
この二つを把握する必要がある。
「まずは、進化を望んでいるポケモンたちから始めよう」
シンヤがそう言うと、別荘の訓練場にポケモンたちが集まってきた。
その中には、レンに預けていたイーブイ三兄妹の姿もあった。
三匹は以前よりもずっと真剣な表情をしている。
「イーブイたち、何かあったの?」
レンが尋ねる。
シンヤは三匹の前にしゃがみ込んだ。
「どうした? 何か伝えたいことがあるんだろう?」
最初に進み出たのは、兄のイーブイだった。
その隣には弟、さらに妹が並ぶ。
三匹は互いに顔を見合わせ、それからシンヤを見上げた。
兄が一歩前に出て、力強く鳴く。
「ブイ!」
その声には、以前にはなかった決意が感じられた。
弟も続く。
「イーブイ!」
妹もまた、尻尾を揺らしながら鳴いた。
シンヤは三匹の様子をじっと見つめ、それぞれの意思を確かめるように声をかけた。
「強くなりたいんだな?」
三匹がそろって頷く。
「進化して、今まで以上に戦えるようになりたい?」
今度も、三匹は迷わなかった。
レンは目を丸くした。
「みんな……」
兄はこれまで、弟や妹を守るように振る舞っていた。
弟は臆病なところがあり、兄の後ろに隠れることも多かった。
妹は比較的物怖じしないものの、兄や弟と一緒にいることを好んでいた。
そんな三匹が、自分たちから強くなりたいと申し出たのだ。
シンヤは微笑んだ。
「よし。だったら、みんなの気持ちを尊重しよう。ただし、進化したらそれで終わりじゃない。新しい体と力に慣れるための訓練も必要になる」
三匹は元気よく返事をした。
「それと、進化先は自分たちで選ぶんだ。誰かに合わせる必要はない」
兄のイーブイが、ちらりとレンのニンフィアへ視線を向けた。
ニンフィアは優しく鳴き返す。
兄は少し照れたように顔をそらした。
「……なるほどね」
レンが小さく笑う。
「お兄ちゃん、頑張ってね」
シンヤは三匹の前に、それぞれ進化に必要な道具を用意した。
兄の前には炎の石。
弟の前には雷の石。
妹の前には水の石。
三匹はそれぞれの石を見つめた。
そして、自分の意思で一歩を踏み出した。
◆イーブイ三兄妹、それぞれの進化!
最初に動いたのは兄だった。
兄のイーブイは炎の石に鼻先を近づける。
一瞬だけレンを振り返ったあと、決意を固めるように頷いた。
そして、石に触れた。
温かな光がイーブイの体を包み込む。
その光は次第に強まり、輪郭が変化していった。
首元の毛が大きく広がり、体つきが変わる。
光が収まったとき、そこに立っていたのは――。
「ブー!」
炎のような毛並みを持つブースターだった。
「おお……!」
シンヤは思わず声を上げた。
ブースターは自分の前脚を確かめ、首元の毛を揺らす。
それから、隣にいたニンフィアを見た。
ニンフィアは嬉しそうに近づき、ブースターの頬に自分のリボン状の触角をそっと寄せた。ブースターは一瞬驚いたものの、すぐに柔らかな表情を浮かべる。
「ふふっ。進化しても、二匹の仲は変わらないみたいね」
レンが微笑んだ。
続いて、弟のイーブイが雷の石へ近づいた。
以前なら、兄が先に動くまで待っていたかもしれない。
しかし、今の弟に迷いはなかった。
兄が自分の意思で進化を選んだ。
だからこそ、自分も前へ進みたい。
弟は雷の石に触れた。
青白い光が弾け、体の輪郭が細く変化する。
耳が長く伸び、全身から電気が走った。
光の中から現れたのは――。
「サンダース!」
シンヤが声を上げる。
サンダースは地面を蹴り、訓練場の周囲を素早く走った。
その動きは、進化前とは比較にならないほど軽快だった。
しかし、勢い余って岩場の手前で急停止する。
サンダースは自分でも驚いたように目を丸くした。
「慌てなくていい。今の体に慣れるところから始めよう」
シンヤが声をかけると、サンダースは少し恥ずかしそうに頷いた。
兄のブースターが近寄り、弟の肩に鼻先を寄せる。
もう守られるだけの弟ではない。
それでも、兄弟であることに変わりはなかった。
最後は妹だった。
妹のイーブイは水の石を見つめた。
兄と弟が進化したことで、少しだけ緊張しているようだった。
シンヤは急かさず、静かに見守った。
「お前も、自分のタイミングでいいんだぞ」
妹はシンヤを見上げると、安心したように鳴いた。
そして、水の石に触れる。
柔らかな青い光が広がった。
体の輪郭が滑らかに変化し、首元には大きな襟のようなヒレが現れる。
光が消える。
そこにいたのは、美しい水色の体を持つ――。
「シャワーズだ!」
シャワーズは自分の尻尾を動かし、体の感覚を確かめるようにゆっくりと歩いた。
水辺に近づくと、水面に前脚を触れさせる。
その瞬間、シャワーズの動きが変わった。
水の流れを確かめるように、ゆっくりと水へ入っていく。
水中でも自由に動けることを確かめると、嬉しそうに顔を出した。
「三匹とも、進化おめでとう!」
レンが笑顔で駆け寄る。
ブースター、サンダース、シャワーズはそれぞれ鳴き声を上げ、レンに甘えるように寄り添った。シンヤは三匹の様子を見て、満足そうに頷く。
「よし。これからは進化した姿に合った訓練をしていこう」
三匹は力強く返事をした。
こうして、イーブイ三兄妹はそれぞれの道を選んだ。
◆特性の確認――新しい力を知る
三匹の進化を見届けたあと、シンヤは研究用の端末を取り出した。
「さて。次は特性だ」
「特性?」
レンが首を傾げる。
「ポケモンが生まれ持つ、あるいはその個体が備えている特殊な能力だ。技とは別の仕組みで、戦闘に影響を与えることがある」
「技を使わなくても、戦い方が変わるということ?」
「そういうこと。リーグでは、この特性を前提にした戦術も重要になるはずだ」
シンヤはまず、三匹の状態を確認した。
ブースターの特性は――**もらいび**。
炎技を受けると吸収し、自分の炎技を強化できる。
サンダースの特性は――**ちくでん**。
電気技を受けると吸収し、体力を回復できる。
シャワーズの特性は――**ちょすい**。
水技を受けると吸収し、体力を回復できる。
「なるほど。三匹とも、それぞれの進化先に合った特性だな」
シンヤは端末に記録した。
「ブースターは炎技を使う相手に対して、サンダースは電気技を使う相手に対して、シャワーズは水技を使う相手に対して、それぞれ強みがある。ただし、特性があるからといって、何も考えずに攻撃を受ければいいわけじゃない」
「相手が別の技を使う可能性もあるものね」
「そうだ。特性を知ることと、特性を利用して勝つことは別なんだ」
シンヤは三匹を見た。
「これからは、特性を使える場面と、使わない方がいい場面を見極める訓練もしていこう」
三匹は真剣な表情で頷いた。
進化しただけでは、まだ完成ではない。
ここから新たな戦い方を身につけていくのだ。
◆ブーバーの闘志――仲間に置いていかれない!
イーブイ三兄妹の進化を見ていたポケモンの中に、落ち着かない様子の一匹がいた。
ブーバーである。
ブーバーは腕を組み、仲間たちをじっと見つめていた。
リザードンはさらに強くなろうとしている。
スピアーも、メガシンカという新たな可能性を秘めている。
そして、イーブイ三兄妹まで進化した。
ブーバーは、自分だけがその場に取り残されるような感覚を覚えていた。
もちろん、誰かに強制されたわけではない。
誰かに進化を急かされたわけでもない。
それでも、仲間たちが前へ進む姿を見て、胸の奥に熱いものがこみ上げてきた。
「ブーバー?」
シンヤが声をかける。
ブーバーは力強く胸を叩いた。
「ブーバッ!」
シンヤはその意思を感じ取った。
「お前も、もっと強くなりたいんだな?」
ブーバーは勢いよく頷く。
「よし。なら、今まで以上に鍛えよう。ただし、誰かに追いつくためだけじゃなく、お前自身がどうなりたいのかも大事にするんだ」
ブーバーは一瞬考えたあと、もう一度頷いた。
そして、炎を噴き上げた。
その炎は、まるで自分自身の決意を示すように燃え上がっていた。
◆育成開始!
ブーバーの訓練は、炎技の精度を高めるところから始まった。
遠くの標的に向けて火炎放射を放ち、標的の中心にどれだけ正確に当てられるかを確認する。
次に、炎技を使った直後に接近戦へ移行する訓練。
相手が遠距離攻撃を避けて近づいてきた場合でも、クロスチョップで迎撃できるようにする。
さらに、電気技や地面技など、炎以外の技も状況に応じて使い分ける。
ブーバーは疲れても、すぐに立ち上がった。
「ブーバー!」
「よし、今のはよかった。ただ、次は無理に攻撃を続けず、一度距離を取ってみよう」
シンヤは、ただ攻撃を繰り返させるのではなく、ブーバー自身に考えさせながら訓練を進めた。数日間の育成を経て、ブーバーの動きは目に見えて洗練されていった。
そして、ある日の訓練終盤。
ブーバーは炎をまといながら、全身に力を込めた。
その手にはシンヤが渡していたマグマブースターを持つ。
「ブーバァァァッ!」
体が光に包まれる。
シンヤとレンは、すぐに距離を取って見守った。
光の中で、ブーバーの体格が変化する。
両腕や肩が大きくなり、炎を操る力も強まっていく。
光が収まった。
そこに立っていたのは――。
「ブーバーン!」
「おめでとう、ブーバーン!」
シンヤが笑顔で声をかける。
ブーバーンは自分の両腕を見つめ、それから嬉しそうに拳を握った。
仲間たちに置いていかれたくない。
その気持ちから始まった努力は、確かな成長へとつながったのだ。
シンヤはブーバーンの特性も確認する。
**やるき。**
眠りを防ぎ、眠らせる戦術に対抗できる特性だ。
「よし。これなら、催眠技を使う相手にも強く出られる。だが、相手の技を見ずに突っ込むなよ」
ブーバーンは豪快に笑い、拳を打ち合わせた。
その目には、新たな力を得た喜びと、さらなる成長への意欲が宿っていた。
◆長い育成の成果――ストライクの進化
続いて、シンヤはストライクを呼んだ。
ストライクはタマムシシティで仲間になって以来、長い時間をかけて鍛えられてきた。
実家の広大な敷地では、さまざまな相手と訓練を積んでいる。
高速で動く相手を追う。
攻撃をかわし、隙を見つけて反撃する。
とんぼがえりで攻撃しながら離脱する。
ダブルウイングで空中の相手にも対応する。
そして、シンヤの実家の「番長」であるピカチュウとの訓練。
ピカチュウは、ストライクが手を抜こうとすれば容赦なく電撃を放った。
もちろん、危険な威力を出すことはない。
それでも、ピカチュウの判断は厳しかった。
ストライクが少しでも油断すれば、すぐに隙を突かれる。
ストライクは何度も地面に転がった。
しかし、決して諦めなかった。
そして、長い訓練の末、ストライクの肉体は以前よりも強靭になり、攻撃の精度も大幅に向上していた。シンヤは、ストライクの前にメタルコートを置いた。
「お前は十分に鍛えた。ここから先は、進化した体でどこまで強くなれるかだ」
ストライクはメタルコートを見つめた。
そして、シンヤを見上げる。
「ストライク!」
その声には、長い訓練を積んできた自信があった。
ストライクがメタルコートに触れる。
金属のような光が全身を包み込んだ。
体の構造が変化し、両腕の鎌は鋼鉄のハサミへと変わっていく。
光が消えた。
そこに立っていたのは、ハッサムだった。
「ハッサム!」
ハッサムは両腕のハサミを打ち鳴らす。
その音は重く、以前よりも力強い。
シンヤはハッサムの特性を確認した。
**テクニシャン。**
威力の低い技を強化する特性だ。
「バレットパンチとの相性がいいな。素早い一撃を積み重ねる戦術を、さらに磨けそうだ」
ハッサムは嬉しそうに頷いた。
ただし、進化したばかりの体には慣れが必要だ。
シンヤはまず、ハサミの開閉や重量の変化を確認する訓練から始めることにした。
「焦らなくていい。お前が長い時間をかけて鍛えてきたことは、進化したから消えるわけじゃない」
ハッサムは、静かに拳を握った。
長い努力の末につかんだ進化。
その力を、これからの戦いで証明するつもりだった。
◆サイホーンの猛特訓――もう負けたくない!
訓練場の一角では、別の激しい特訓が行われていた。
サイホーンと、実家の番長ピカチュウである。
「ピカッ!」
ピカチュウが地面を蹴り、素早く移動する。
サイホーンは角を構えて突進した。
しかし、ピカチュウは横へ跳び、サイホーンの突進をかわす。
「ピカピカ!」
サイホーンが振り返るより早く、ピカチュウの電撃が命中した。
「サイホーン!」
サイホーンは地面を転がった。
それでも、すぐに立ち上がる。
「もう一回だ!」
シンヤが声をかける。
サイホーンは気合いを入れ直し、再び突進した。
だが、ピカチュウは同じ動きではかわさなかった。
今度はサイホーンの突進を誘い、岩場の段差を利用して距離を取る。
サイホーンは勢いを止められず、体勢を崩した。
そこへピカチュウのアイアンテールが決まる。
「サイホーン!」
再び倒れるサイホーン。
しかし、今回はすぐには立ち上がらなかった。
「サイ……ホーン……」
悔しそうに地面を叩く。
シンヤは近づき、状態を確認した。
「今日はここまでにしよう。十分に頑張った」
サイホーンは首を横に振る。
もう負けたくない。
いつもピカチュウに翻弄されるだけでは終わりたくない。
その強い気持ちが、サイホーンの体に力を与えた。
「サイホォォォン!」
サイホーンの体が光に包まれる。
「おっ……!」
シンヤは驚きながらも、進化を見守った。
光の中で体が大きくなり、角や装甲が発達する。
光が消えた。
そこにいたのは、サイドンだった。
「サイ!」
サイドンは自分の体を確かめ、拳を握りしめる。
以前よりも力強くなった体。
それは、ピカチュウに何度も敗れながらも諦めなかった努力の成果だった。
ピカチュウはサイドンを見上げる。
そして、満足そうに頷いた。
「ピカ!」
だが、訓練はまだ終わらない。
シンヤはサイドンの前に、プロテクターを置いた。
「ここからさらに進化できる可能性がある。どうする?」
サイドンはプロテクターを見つめた。
そして、迷いなく頷いた。
サイドンがプロテクターに触れる。
再び光が広がった。
体の構造がさらに変化し、装甲が増していく。
より巨大で重厚な体。
強靭な腕と、岩をも砕く力。
光が収まったとき、そこに立っていたのは――。
「ドッサイ!」
ドサイドンは力強く地面を踏みしめた。
その一歩だけで、地面がわずかに揺れる。
シンヤはドサイドンの特性を確認する。
**ハードロック。**
弱点を突かれた際のダメージを軽減する特性だ。
「なるほど。弱点を突かれても簡単には崩れない、重装甲型の戦い方に合っているな」
ただし、シンヤはすぐに注意を加えた。
「特性があるからって、弱点技を受け続けるのは駄目だぞ。受ける攻撃を減らすことも、強くなるためには必要だからな」
ドサイドンは力強く頷いた。
ピカチュウはそんなドサイドンの前に立ち、もう一度訓練を始めるように構えた。
「……ピカ?」
ドサイドンは一瞬固まった。
進化したばかりなのに、まだやるのか?
そんな表情を浮かべたドサイドンを見て、シンヤは思わず笑った。
「ははは! 番長の訓練はまだ続くみたいだな」
ドサイドンは観念したように構え直す。
しかし、その目には以前よりも強い闘志が宿っていた。
◆ミニリュウの決意――仲間に続け!
一方、ミニリュウは少し離れた水辺から、仲間たちの成長を見つめていた。
ブースター、サンダース、シャワーズ。
ブーバーン、ハッサム、ドサイドン。
仲間たちは、それぞれの努力によって進化を遂げていた。
ミニリュウもまた、シンヤのもとで訓練を積んできた。
電気技、炎技、氷技、ドラゴン技。
多彩な遠距離技を扱えるようになり、りゅうのまいやあまごいも使いこなせるようになってきた。
しかし、まだ成長できる。
もっと強くなりたい。
仲間たちと肩を並べて戦えるようになりたい。
ミニリュウは水辺から上がり、シンヤの前に進み出た。
「ミニリュウ?」
シンヤが振り返る。
ミニリュウは、真剣な表情で鳴いた。
「……お前も、進化したいのか?」
ミニリュウは頷く。
シンヤは少し考えた。
「いいぞ。ただ、進化した姿に慣れる時間も必要になる。焦らず、今のお前にできることを積み重ねていこう」
ミニリュウは大きく頷いた。
そして、全身に力を込めた。
光が広がる。
細長い体が変化し、より大きく、しなやかな姿へと成長していく。
頭部には小さな翼のようなひれが現れ、体の色も変化した。
光が消える。
そこにいたのは――。
「ハクリュー!」
ハクリューは静かに空中へ浮かび上がった。
その動きは優雅で、以前よりも力強い。
シンヤはハクリューを見上げ、微笑んだ。
「進化おめでとう。ここから先も長い道のりだな」
ハクリューは嬉しそうに鳴いた。
シンヤは、その特性も確認する。
**ふしぎなうろこ。**
状態異常の際に防御が上がる特性だ。
「なるほど。状態異常を受けても簡単には崩れない戦い方ができる。ただし、状態異常をわざと受ける必要はないからな」
ハクリューは頷く。
シンヤは、ハクリューがさらに成長し、カイリューへ進化する可能性についても考えた。
だが、それはまだ先の話だ。
「カイリューへの進化は、焦らなくていい。リーグまでの訓練と、リーグでの経験。その先でお前自身がどうなりたいか、考えていこう」
ハクリューは空中をゆっくりと旋回し、仲間たちのもとへ戻っていった。
その姿を見送るシンヤの表情には、確かな期待が浮かんでいた。
◆カブトとオムナイト、そしてパウワウも進化!
育成は主力候補だけに限らなかった。
シンヤは、実家で復元された化石ポケモンたちや、今回の旅で仲間になったポケモンたちの訓練も進めていた。
まず、カブトとオムナイト。
二匹は復元されたばかりの頃こそ環境に慣れる必要があったが、今では別荘の水辺で元気に過ごしていた。
カブトは水中での移動と近接戦闘を鍛え、オムナイトは遠距離からの水技と防御を重点的に訓練していた。
ある日、二匹はそれぞれの訓練中に光に包まれた。
カブトの体が大きくなり、鋭い爪と強靭な脚を備えた姿へと変わっていく。
「カブ!」
カブトはカブトプスへ進化した。
続いて、オムナイトも進化の光に包まれる。
殻が大きくなり、触手が伸び、体つきが変わっていく。
「スター!」
オムナイトはオムスターへ進化した。
シンヤは二匹の状態を確認し、笑顔で祝福した。
「二匹ともおめでとう。これからは進化した体に合わせた訓練をしていこう」
カブトプスは爪を打ち合わせ、オムスターは触手を揺らして応えた。
さらに、いてだきのどうくつで捕まえたパウワウも、水辺での訓練を重ねていた。
水中での持久力、氷技の精度、仲間との連携。
そうした積み重ねが実を結び、パウワウもまた進化を迎えた。元々レベルもあったからな。光の中から現れたのは、ジュゴンだった。
「ジュゴン!」
ジュゴンは水面を滑るように泳ぎ、以前よりも力強い動きで水中を進んだ。
シンヤは頷いた。
「よし。これで水辺の訓練メンバーも、さらに充実したな」
進化は、ただ体が変わることではない。
新たな体を理解し、その力を自分のものにしていく必要がある。
シンヤは三匹にも、それぞれの特性を確認したうえで、戦い方を考えていくことにした。
◆エレブー、エレキブルへ!
主力メンバーの一匹であるエレブーも、育成を続けていた。
エレブーは電気技だけでなく、パンチを使った接近戦にも優れている。
しかし、シンヤはさらに高い戦闘能力を引き出せると考えていた。
そこで用意したのが、エレキブースターだった。
「エレブー。お前も、進化する意思はあるか?」
エレブーは力強く頷いた。
「エレブ!」
シンヤはエレキブースターを渡した。
エレブーがそれを持つと、光が全身を包み込む。
体格が変化し、腕が大きくなり、電気を操る能力も強まっていく。
光が消えた。
そこに立っていたのは、エレキブルだった。
「エレキブルゥゥゥゥゥ!」
エレキブルは両腕を打ち合わせ、電気を放つ。
シンヤはその動きを確認し、特性を調べた。
**でんきエンジン。**
電気技を受けると吸収し、素早さを高める特性だ。
「よし。電気技を利用する相手には、特に強く出られそうだ。ただし、電気技以外への対応も忘れるなよ」
エレキブルは力強く頷いた。
これで、主力の電気タイプにも新たな戦力が加わった。
◆主力以外の育成――進化した仲間たち
別荘の訓練場では、そのほかのポケモンたちも育成を続けていた。
カビゴンは重量を生かした攻撃と耐久戦。
ケンタロスは突進力と方向転換。
ハクリューは遠距離技の精度と天候操作。
それぞれのポケモンが、得意分野を伸ばしながら苦手な部分を克服していた。
シンヤは訓練の合間に、端末へ情報を記録する。
「特性は分かった。だが、それだけでは足りないな」
レンが隣から画面を覗き込む。
「まだ何かあるの?」
「特性が分かっても、戦闘中にどう使うかは別問題だ。例えば、でんきエンジンがあるからといって、エレキブルが相手の電気技を待ち続ける必要はない。相手が別の技を使うなら、その状況に合わせて戦い方を変えるべきだ」
「つまり、特性も技と同じで、使いどころが重要ということね」
「そのとおり」
シンヤは頷いた。
「リーグでは、特性を利用した戦術も増えるはずだ。相手の特性を見極めることも必要になる。だから今のうちに、仲間たちの特性を把握しておきたい」
レンは感心したように微笑んだ。
「シンヤらしいわね。強くするだけじゃなく、どう戦うかまで考えているんだもの」
「勝つためには必要なことだからな」
シンヤは訓練場を見渡した。
リザードンは空中で飛行訓練を続けている。
ピジョットは風を利用した旋回を練習し、ギャラドスは水辺で体を動かしている。
コノヨザルは怒りを制御しながら攻撃を繰り出し、フシギバナとカメックスは連携訓練を行っていた。
新たに進化したブースター、サンダース、シャワーズ、ブーバーン、ハッサム、ドサイドン、ハクリューも、それぞれの新しい体に慣れようとしている。
誰もが、少しずつ前へ進んでいた。
シンヤは拳を握る。
「……いい感じだ」
「ふふっ。リーグまで、まだ時間はあるものね」
「ああ。まだまだ鍛えられる」
レンは笑顔で頷いた。
「でも、休む時間も忘れないでね?」
「分かってるって」
そう答えたシンヤだったが、すでに頭の中では次の訓練計画を考え始めていた。
それを見たレンは、呆れながらも楽しそうに笑った。
ナナシマの別荘で始まった、本格的な育成の日々。
仲間たちはそれぞれの意思で進化し、新たな力を手に入れた。
しかし、これはまだ始まりにすぎない。
ポケモンリーグまで、残された時間は限られている。
シンヤと仲間たちの挑戦は、これからさらに激しさを増していくのだった。
そして
「……このレベルなら挑む価値はある、か」
密かにシンヤはあることを決意するのだった。