◆合同訓練、開始!
ナナシマ・5のしま。
別荘の訓練場には、シンヤの主力ポケモンたちと、育成中のポケモンたちが集まっていた。
リザードン、ピジョット、ギャラドス、コノヨザル、ニドキング、ニドクイン、バタフリー、スピアー、ピカチュウ、フシギバナ、カメックス、フーディン、ゲンガー、ハガネール、エレキブル、スターミー。
さらに、カビゴン、ケンタロス、ドサイドン、ハッサム、ハクリュー、ブーバーン、ブースター、サンダース、シャワーズ、ラプラス。
総勢二十六匹。
そのほかにも、カブトプス、オムスター、ジュゴンなど、別荘で育成を続けるポケモンたちが参加していた。
シンヤは訓練場の中央に立ち、全員を見渡す。
「今日の目的は、単純に勝敗を決めることじゃない。特性を実際のバトルで確認し、どう利用すれば有利になるかを調べることだ」
ポケモンたちが一斉に鳴いた。
「ただし、特性があるからといって、必ず勝てるわけじゃない。特性を知っている相手なら、当然それを逆手に取ろうとしてくる。そこまで考えてこそ、実戦で使える戦術になる」
隣に立つレンが頷く。
「相手の特性を知らない場合と、知っている場合でも戦い方が変わるものね」
「ああ。今日は最初に特性の基本的な働きを確認する。そのあと、特性を利用した戦術、特性を逆手に取られた場合の対策、最後に主力同士の模擬戦を行う」
シンヤは少し離れた場所へ視線を向けた。
そこには、紫色の体を揺らしているメタモンがいた。
「そして最後の切り札は、お前だ」
「メタ?」
メタモンは不思議そうに首を傾げる。
「変身能力を使えば、相手の能力を模倣した模擬戦ができる。特性まで完全に再現できるかは、実際に試さないと分からないけどな」
メタモンは、面白そうに体を弾ませた。
「まずは安全に、ひとつずつ確認していこう」
シンヤの合図とともに、合同訓練が始まった。
◆特性の確認――受けることで得られる力
最初の訓練は、技を受けた際に働く特性の確認だった。
ただし、特性の発動を確かめるために、ポケモンへ不必要な危険を負わせるつもりはない。威力を調整した技を使い、体調を確認しながら行う。
◆エレキブルとサンダース
最初はエレキブルとサンダース。
シンヤは電気技を使えるポケモンを相手に選び、弱い電撃を一発だけ放つよう指示した。
電撃がエレキブルへ向かう。
エレキブルは正面から受け止めた。
その瞬間、エレキブルの全身に電気が走る。
「エレキ!」
体の動きが明らかに軽くなった。
「よし、でんきエンジンが発動したな」
シンヤは記録を取る。
「電気技を受けることで、素早さが上がる。つまり、相手が電気技を使ってくると分かっている場合、受けることで次の攻撃へつなげられる」
続いてサンダース。
同じように電撃を受けると、サンダースの体が電気を吸収した。
「サンダース!」
体の内側に力が満ちたように、サンダースは軽く跳び上がる。
「ちくでんは電気技を吸収して体力を回復する。エレキブルとは同じ電気技への対応でも、効果が違うわけだ」
レンが記録を覗き込む。
「相手が電気技を使ってきたら、エレキブルは速度を上げ、サンダースは回復する。似ているようで、役割が違うのね」
「ああ。エレキブルなら、速度を上げた後に接近戦へ移る戦術が考えられる。サンダースなら、消耗した状態から立て直す機会になる」
ただし、シンヤはすぐに付け加えた。
「もちろん、電気技を受けるためだけに無理をするのは駄目だ。相手が別の技を使ってくる可能性も考える必要がある」
二匹は真剣な表情で頷いた。
◆ブースターとブーバーン
次は炎技への対応だ。
ブースターは炎の石によって進化したばかりではあるが、もともと炎を扱う能力を備えている。
シンヤは、ブーバーンに威力を抑えた火炎放射を使わせた。
炎がブースターへ向かう。
ブースターは逃げずに受け止めた。
炎が体を包む。
しかし、ブースターは平然と立っていた。
「ブースター!」
「もらいび、確認。炎技を受けてもダメージを受けず、炎技の威力を高められる」
シンヤはブーバーンに合図し、今度は標的へ火炎放射を撃つよう指示した。
先ほどよりも強い炎が放たれ、標的の表面を焼く。
「よし。もらいびの効果が攻撃へ反映されているな」
ブーバーンは少し悔しそうに腕を組んだ。
自分の炎技を吸収されるのは、やはり複雑な気分らしい。
シンヤは笑った。
「相手にブースターがいた場合、炎技を安易に撃つと相手を強化する可能性がある。だが、ブースターがいるから炎技を使えないというわけでもない。相手が交代するか、別の技を選ぶか、状況を見極める必要があるんだ」
◆シャワーズとラプラス
続いて、水技への対応。
シャワーズとラプラスが水辺に並ぶ。
シンヤは、威力を抑えた水技をシャワーズへ向けるよう指示した。
シャワーズは水を受け止める。
すると、その体が水を吸収するように輝いた。
「シャワーズ!」
「ちょすい、発動。水技を受けて体力を回復する特性だ」
シャワーズは嬉しそうに鳴いた。
「ただし、水技を吸収できるからといって、相手の攻撃を全部受ける必要はない。攻撃を避けることも大切だからな」
シンヤは記録を取りながら、ラプラスにも目を向けた。
ラプラスの特性も、ちょすい。
同じ特性を持つポケモンが二匹いれば、相手の水技に対してどちらを出すかという選択肢が増える。
「ラプラスは耐久力もある。水技を使う相手に対して、受け止める役割を担えるかもしれないな」
ラプラスは嬉しそうに鳴いた。
◆ニドキングとニドクイン
最後は、ちからずくの確認だ。
ニドキングとニドクインが並び立つ。
「二匹の特性は、追加効果を持つ技の威力を高めるものだ。ただし、すべての技が強化されるわけじゃない。どの技が対象になるか、ひとつずつ確認する必要がある」
シンヤは二匹に、対象となる攻撃技を使わせた。
ニドキングが地面を踏み鳴らし、ニドクインが岩場へ向けて攻撃を放つ。
標的が大きく揺れた。
記録を比較すると、追加効果を持つ技の威力が上がっている一方、追加効果がない技には同じ変化が見られなかった。
「よし。これで確認できた」
シンヤは記録をまとめる。
「ちからずくは、対象となる技を選んで使うことで強みを発揮する。追加効果が必要な場面では、あえて別の技を選ぶ判断も必要だな」
ニドキングとニドクインは、互いに顔を見合わせた。
自分たちの力がどう働くのかを知ることは、二匹にとっても新鮮だったようだ。
◆特性を戦術に組み込む――受ける、誘う、切り返す
基本的な確認が終わると、シンヤは訓練の内容を切り替えた。
「次は実戦形式だ。特性が働くことを前提に、どう攻め、どう守るかを考えてみよう」
◆ギャラドスのいかく
最初はギャラドス。
対戦相手は、接近戦を得意とするケンタロスだ。
開始の合図と同時に、ギャラドスが大きく咆哮した。
その威圧感に、ケンタロスの動きが一瞬鈍る。
「いかくが働いたな」
シンヤは冷静に観察する。
いかくは相手の攻撃を下げる特性だ。
ケンタロスが突進する。
しかし、先ほどよりも勢いが弱い。
ギャラドスはその突進を見切り、横へ回り込んだ。
「今だ、ギャラドス!」
ギャラドスが尻尾を振り、ケンタロスの足元を崩す。
ケンタロスは体勢を立て直すものの、続く攻撃を受けて後退した。
「いかくの強みは、相手の攻撃を受ける前から働くことだ。相手の初動を弱めれば、回避や反撃の余裕が生まれる」
ただし、シンヤはケンタロスにも声をかけた。
「いかくを受けたら終わりじゃない。相手の攻撃が弱まったなら、技の威力だけに頼らず、位置取りや連続攻撃で対応する方法もある」
ケンタロスは鼻息を荒くしながら頷いた。
◆ハッサムのテクニシャン
次はハッサム。
相手は素早い動きを得意とするピジョットだ。
ピジョットは上空を旋回し、距離を保つ。
ハッサムは地上から追いかけるが、飛行速度では追いつけない。
「無理に追うな。相手が降りてくる瞬間を待て!」
シンヤの指示を受け、ハッサムは姿勢を低くする。
ピジョットが急降下した瞬間、ハッサムはバレットパンチを放った。
小さく鋭い拳が、ピジョットの翼へ命中する。
「ハッサム!」
「テクニシャンの効果が生きたな」
威力の低い技を強化するテクニシャンは、バレットパンチと相性がいい。
ただし、ハッサムは攻撃を当てられたからといって、勝負を急がなかった。
ピジョットが距離を取ると、ハッサムも体勢を整える。
「強化された技を連発するだけじゃ駄目だ。相手が空中にいるなら、着地のタイミングや移動経路を読む必要がある」
ハッサムは真剣に頷いた。
その目には、いずれメガシンカを試すことへの期待も宿っていた。
◆フーディンのシンクロ
次はフーディン。
フーディンの特性はシンクロ。相手から受けた特定の状態異常を相手にも返すことがある。
シンヤは状態異常を扱える相手と模擬戦を行い、どの条件で特性が発動するかを確認した。ただし、すべての状態異常が対象になるわけではない。
また、相手が状態異常を与えたからといって、必ず同じ状態になるわけでもない。
「フーディンは特性だけを当てにするな。相手が状態異常を狙っていると読めたら、そもそも技を受けない立ち回りも考えるんだ」
フーディンはスプーンを持ち上げ、静かに頷いた。
シンヤはその様子を見て、記録へ書き加えた。
「特性は、相手の行動を制限する材料にもなる。相手が特性を警戒すれば、それだけで技の選択肢を変えさせられる場合もあるな」
◆特性を逆手に取る相手――弱点は、能力そのものではない
基本的な戦術を確認したあと、シンヤは訓練相手を入れ替えた。
「ここからは、特性を知っている相手が対策してくる場合を想定する」
レンが首を傾げる。
「せっかく強い特性があるのに、それを逆手に取られるの?」
「強い特性だからこそ、相手も対策を考えるんだ。特性を使わせない方法もあれば、発動するタイミングを利用する方法もある」
◆もらいびを警戒する
ブースターの相手は、炎技を使えるポケモン。
相手は最初、炎技を放つ構えを見せた。
ブースターは受け止める準備をする。
しかし、相手は炎技を撃たず、別の攻撃へ切り替えた。
ブースターは一瞬反応が遅れ、攻撃を受けてしまう。
「今のが、特性を逆手に取る戦い方だ」
シンヤが説明する。
「ブースターが炎技を吸収できると分かっていれば、相手は別の技を選ぶことができる。もらいびが強力だからといって、相手が炎技だけを使うとは限らない」
ブースターは悔しそうに唸った。
「次は、相手が炎技を使うふりをした場合も考えよう。炎技を受ける準備をしながら、別の技にも対応できる姿勢を保つんだ」
◆ちくでんを警戒する
サンダースの模擬戦では、相手が電気技を使うと見せかけ、別の攻撃を仕掛けた。
サンダースは電気技を吸収するつもりで構えていたため、反応が遅れた。
シンヤはすぐに試合を止める。
「サンダース、相手の技を見ずに決めつけたら駄目だ。特性を使うために、相手の攻撃を待つ必要はない」
サンダースは反省したように耳を伏せた。
「電気技を吸収できることは強みだ。でも、相手がそれを知っているなら、電気技を使わずに攻めてくる可能性がある。相手の動きから、本当に電気技が来るのかを判断するんだ」
サンダースは、今度は相手の肩や足の動きを注意深く観察した。
◆ちょすいを警戒する
シャワーズとラプラスの訓練では、相手が水技を使うと見せかけて距離を詰める戦術を試した。
シャワーズは水技を吸収するつもりで待ち構えていたが、相手が別の攻撃を仕掛けたため、回避が遅れた。
「特性に頼りすぎたな」
シンヤはシャワーズの状態を確認しながら言った。
「ちょすいがあるから水技を恐れなくていい場面はある。でも、相手が何をしてくるか分からない以上、常に周囲を見る必要がある」
ラプラスも同じように訓練を受けた。
水技を吸収できることと、相手の攻撃を見切ること。
この二つを両立できなければ、特性を十分に生かすことはできない。
◆いかくを逆手に取る
ギャラドスとの訓練では、相手がいかくを受けたあと、攻撃を控えて守りを固める戦術を試した。
ギャラドスは攻撃が弱まった相手を押し切ろうとしたが、相手は回避と防御を繰り返し、反撃の機会を待つ。
ギャラドスは次第に焦り、攻撃が大振りになっていった。
「ギャラドス、焦るな!」
シンヤの声が響く。
「相手の攻撃が弱まったからといって、すぐに倒せるわけじゃない。相手が守りに入ったなら、無理に突破しようとせず、位置取りから崩すんだ」
ギャラドスは深く息を吐き、体勢を整え直した。
そして、相手が移動する方向を先読みし、逃げ道を限定するように動いた。
相手が避けられる場所を減らし、最後に攻撃を当てる。
「よし。特性で有利になった状況を、勝利につなげられたな」
シンヤは満足そうに頷いた。
◆メガシンカ訓練――意思を持つ者だけが進む道
特性の検証が一段落すると、シンヤはメガストーンの入ったケースを取り出した。
レンも、その意味を理解して表情を引き締める。
「次はメガシンカね」
「ああ。ただし、メガシンカは全員に強制しない。前に確認したとおり、やる気がないポケモンは参加しなくていい」
シンヤは、メガシンカに興味を示していたポケモンたちを見た。
リザードン、ピジョット、ギャラドス、スピアー、カメックス、フーディン、ゲンガー、ハガネール、スターミー。
そして、ハッサム。
ハッサムは、誰よりも強い意欲を見せていた。
「ハッサム!」
その鳴き声は、早く試してほしいと訴えているようだった。
シンヤは笑った。
「分かった。お前の意思は十分に伝わっている。でも、メガシンカは一度のバトルで一回だけだ。今日は全員を同時にメガシンカさせるようなことはしない。まずは、個別に安全確認と短時間の検証を行う」
ハッサムは力強く頷いた。
一方、メガシンカに興味がないと伝えていたポケモンたちは、訓練場の外から見守っている。
シンヤはその意思を尊重し、声をかけることもしなかった。
◆ハッサム、メガシンカへの意欲
ハッサムはメガストーンを前に立った。
その目は真剣だった。
長い時間をかけて鍛え上げられ、ストライクから進化したハッサム。
今度は、自分自身の意思で、さらなる力へ進もうとしている。
「まずは、メガシンカ後の体にどんな変化があるかを確認する。力が上がったとしても、制御できなければ意味がない」
シンヤは左手のキーストーンを埋め込んだグローブを確認する。
「いくぞ、ハッサム!」
ハッサムは強く頷いた。
キーストーンが輝き、メガストーンと共鳴する。
光がハッサムを包み込んだ。
体の装甲が変化し、両腕のハサミはさらに大きく、重厚になる。
メガシンカの光が消えた。
そこに立っていたのは、メガハッサム。
「ハッサム……!」
その全身から、強い闘志が伝わってくる。
シンヤはすぐに戦闘を始めるのではなく、まず歩行、旋回、停止、攻撃姿勢の確認を行った。
メガシンカによって体のバランスが変われば、今までの感覚ではうまく動けない可能性がある。
しかし、ハッサムは慎重に動きを確認しながら、少しずつ新しい体を自分のものにしていった。
「よし。無理はするな。今日はここまででもいい」
ハッサムは首を横に振った。
もう少し試したい。
その意思を感じ取ったシンヤは、短い模擬戦を許可した。
相手はピジョット。
ピジョットは空中を旋回し、ハッサムの接近を避ける。
ハッサムは無理に追わず、相手が低空へ降りてくるタイミングを待った。
そして、ピジョットが攻撃に移った瞬間、バレットパンチで迎撃する。
メガハッサムの一撃が命中し、ピジョットが後方へ押し戻された。
「いいぞ! でも、今の一撃に頼りすぎるな!」
シンヤは、ハッサムの特性を確認した。
メガハッサムの特性は、**テクニシャン**。
通常時と同じ特性だ。
「メガシンカ後もテクニシャンが働く。バレットパンチを軸にした戦術は、引き続き重要になりそうだな」
ハッサムは満足そうに頷いた。
メガシンカの光が消え、元の姿へ戻る。
シンヤはハッサムの状態を確認し、休息を取らせた。
「よく頑張った。今後も少しずつ慣らしていこう」
ハッサムは、次の機会を楽しみにするように大きく鳴いた。
◆主力同士の模擬戦――特性を組み合わせろ!
午後。
シンヤは、主力同士の模擬戦を開始した。
今回は勝敗だけでなく、特性をどう組み合わせるかも評価対象になる。
◆第一試合:ギャラドス対エレキブル
「始め!」
ギャラドスが咆哮し、いかくを発動する。
エレキブルの攻撃が弱まった。
しかし、エレキブルは焦らなかった。
ギャラドスが接近するタイミングを見極め、攻撃をかわして距離を取る。
ギャラドスは水辺へ誘導しようとするが、エレキブルは簡単には乗らない。
「いい判断だ、エレキブル! 相手の得意な場所に無理に入る必要はない!」
エレキブルは電気技を放つ。
ギャラドスは大きく身をひねり、直撃を避けた。
二匹は距離を取り、互いの動きを探る。
ギャラドスのいかくは、エレキブルの攻撃を弱めている。
一方、エレキブルはでんきエンジンを発動させる機会をうかがっていた。
だが、ギャラドスはその狙いを警戒し、電気技を受けさせるような動きをしなかった。
結果は引き分け。
シンヤは頷いた。
「特性の強さだけで勝負が決まるわけじゃない。相手が特性を警戒しているなら、それを利用して別の展開を作る必要がある」
◆第二試合:ブースター対ブーバーン
ブーバーンは炎技を得意とする。
しかし、ブースターのもらいびがあるため、炎技だけで攻めることはできない。
ブーバーンは炎技を見せてブースターを動かし、その隙に別の攻撃へつなげた。
ブースターは炎技を受け止める構えを見せたが、相手の動きを読み直し、攻撃を回避する。
そのまま接近し、フレアドライブを放った。
ブーバーンは後方へ押し戻される。
「いいぞ! 特性に頼るだけじゃなく、相手の行動を読んだな!」
ブースターは嬉しそうに鳴いた。
しかし、ブーバーンもただでは終わらない。
相手の攻撃を受けたあと、距離を取って反撃の機会をうかがう。
最終的には、互いに決定打を出せず、時間切れとなった。
「二匹とも、いい訓練だった。炎技が通じない相手への対応は、リーグでも重要になるだろう」
◆第三試合:ハッサム対ニドキング
ハッサムは、テクニシャンを生かしたバレットパンチで攻める。
ニドキングはちからずくの対象となる技を使い、強力な攻撃で迎え撃った。
ハッサムは正面から力比べをするのではなく、攻撃をかわして側面へ回り込む。
ニドキングが振り向くより早く、再びバレットパンチを繰り出した。
ニドキングも負けじと反撃するが、ハッサムは距離を取り、次の攻撃をうかがう。
互いに特性を生かした戦い方をしていた。
「ハッサムは手数と精度。ニドキングは対象技の威力。方向性が違うからこそ、相手の得意分野に付き合わないことが重要になる」
最後はハッサムが攻撃をかわし続け、ニドキングの体勢を崩したところでバレットパンチを当て、勝利した。
ハッサムは胸を張る。
ニドキングも悔しそうながら、相手の実力を認めた。
◆メタモン登場――鏡合わせの模擬戦!
一通りの模擬戦が終わると、シンヤはメタモンを呼んだ。
「よし。ここからは、お前の出番だ」
「メタ!」
メタモンは弾むように前へ出る。
「変身能力を使って、相手の姿を模倣してみよう。まずはピカチュウだ」
シンヤの実家で「番長」と呼ばれるピカチュウが前へ出た。
「ピカ!」
メタモンはピカチュウをじっと見つめる。
その体が変化し、耳、頬、尻尾の形までそっくりになっていく。
やがて、もう一匹のピカチュウが訓練場に立っていた。
「おお……!」
レンが驚きの声を上げる。
「本当にそっくりね!」
シンヤは頷いた。
「見た目だけじゃなく、技の使い方もどこまで再現できるか確認しよう。ただし、特性まで完全に同じになるとは限らない」
模擬戦が始まった。
本物のピカチュウは素早く動き、相手の様子をうかがう。
メタモンも同じように動き、間合いを詰める。
二匹は互いに攻撃をかわしながら、タイミングを探る。
本物のピカチュウが電撃を放つ。
メタモンも同じように電撃を放った。
二匹の攻撃がぶつかり、火花が散る。
「すごい……!」
レンが目を輝かせる。
「でも、まったく同じなら、どうやって勝敗を決めるの?」
「そこが面白いところだ」
シンヤは二匹を観察する。
同じ姿、同じような技。
しかし、行動の選択まですべて同じになるわけではない。
本物のピカチュウは、これまでの経験から相手の動きを読んでいる。
一方、メタモンは変身した相手の姿や技を模倣できても、ピカチュウ自身が積み重ねてきた経験まで完全に複製できるとは限らない。
本物のピカチュウは、相手が次にどちらへ動くかを予測し、先回りする。
メタモンは攻撃を受け、後方へ転がった。
「ピカ!」
本物のピカチュウは、相手が起き上がるまで待った。
メタモンも再び立ち上がる。
その目には、まだ戦いたいという意思があった。
シンヤは笑顔で頷いた。
「いいぞ。今の模擬戦で分かったことがある」
レンが振り向く。
「何が分かったの?」
「変身によって技や姿を模倣できても、戦術のすべてが自動的に同じになるわけじゃない。特性についても同じだ。見た目が同じだからといって、特性まで完全に同一だと決めつけるのは危険だな」
シンヤはメタモンの変身を解除させ、状態を確認した。
「今後は、相手の姿を模倣したときに何が再現され、何が再現されないのかを調べていこう」
メタモンは嬉しそうに鳴いた。
続いて、メタモンはハッサムの姿へ変身した。
ハッサムは驚いたように自分とそっくりな姿を見比べる。
「ハッサム……?」
二匹のハッサムが向かい合う。
片方は本物。
もう片方はメタモン。
本物のハッサムは、メタモンの動きを観察する。
メタモンもまた、ハッサムの動きを模倣する。
バレットパンチが交差し、二匹が後方へ跳び退いた。
本物のハッサムは、相手が自分と同じ技を使うと理解したうえで、攻撃のタイミングをずらした。
メタモンは一瞬反応が遅れ、攻撃を受ける。
「なるほど。自分自身の戦い方を客観的に見る機会にもなるな」
シンヤは記録を取った。
メタモンによるミラー対決は、相手の能力を模倣するだけでなく、自分の戦術を見直すための訓練にもなりそうだった。
◆合同訓練の総括――特性は勝利を保証しない
夕方。
シンヤは訓練を終え、参加したポケモンたちを集めた。
全員が疲れていたが、その表情には充実感があった。
「今日の訓練で、いくつか重要なことが分かった」
シンヤは端末を見ながら話し始める。
「特性は強力な武器になる。でも、相手が特性を知っていれば、その効果を発揮させないように動いてくる。だから、特性に頼り切るのではなく、技、位置取り、相手の癖、地形を組み合わせて戦う必要がある」
ポケモンたちは真剣に耳を傾ける。
「それから、特性を利用するために、わざと攻撃を受けるような戦い方も慎重に考えないといけない。特性が発動することと、勝利につながることは別だからな」
レンが頷いた。
「特性を知ることは、相手の行動を予測するための材料にもなるのね」
「ああ。相手がどんな特性を持っているか分かれば、使ってくる技や、避けたい展開も予測しやすくなる。ただし、最後は実際の動きを見て判断することが大切だ」
シンヤはメタモンへ視線を向けた。
「メタモンの変身も、今後の訓練で重要になるだろう。相手の能力を模倣できれば、味方の弱点を知るためにも役立つ。ただし、模倣できる範囲はこれから確認していく必要がある」
メタモンは嬉しそうに体を弾ませた。
「そして、メガシンカについても同じだ。強くなれるからといって、誰もが選ぶ必要はない。やりたいポケモンが、自分の意思で挑戦すればいい」
その言葉を聞いて、ハッサムが力強く頷いた。
まだメガシンカに慣れる必要はある。
しかし、ハッサムは確かに新たな力への意欲を示していた。
シンヤは笑顔で仲間たちを見渡す。
「今日の訓練はここまで。みんな、よく頑張ったな!」
ポケモンたちが一斉に鳴いた。
レンはシンヤの隣に立ち、夕暮れの訓練場を見つめる。
「リーグまでに、ずいぶん強くなれそうね」
「まだまだ課題はあるけどな」
シンヤは端末に記録されたデータを見直した。
特性の発動条件。
特性を利用できる状況。
特性を逆手に取られる可能性。
そして、メガシンカによる能力の変化。
今日の訓練で見つかった課題は多い。
だが、それは成長の余地があるということでもあった。
「次は、相手が特性を完全に把握している前提で訓練しよう。それから、主力同士のメガシンカ模擬戦も行う。ただし、一度のバトルでメガシンカできるのは一匹だけだ」
レンは微笑んだ。
「ふふっ。次の訓練も、見応えがありそうね」
ナナシマの夕空に、ポケモンたちの鳴き声が響く。
仲間たちは、それぞれの特性と向き合いながら、次の戦いへ向けて成長を続けていく。
ポケモンリーグまで、残された時間は少ない。
しかし、シンヤたちは着実に、その頂点へ向かって歩みを進めていた。