ポケットモンスター~波動の眼を持つ少年~   作:レイザル

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サトシのリザードンは原作ほど言うことを聞かないわけではなくなっています
なおその原因は完全にシンヤとのバトル


第67話「ライバルたいけつ! オーキド研究所」

 

 

――同期集結! そして研究所の大騒動!――

 

 

5の島・別荘

 

 

カントーリーグ開幕を目前に控えた、五の島の別荘。

 

 

敷地内に設置された仮想フィールド装置が稼働し、草原、岩場、森林、氷原といった多様な地形を再現していた。

 

 

そのフィールドを駆け抜けているのは、シンヤのリザードンだった。

 

 

「リザードン、相手の動きを追いすぎるな! 攻撃した後の離脱まで考えて動くんだ!」

 

 

「リザードン!」

 

 

リザードンは低空飛行から急上昇し、仮想の岩柱を回り込む。相手の攻撃をかわして側面へ回り込んだものの、旋回が大きくなり、次の動作にわずかな遅れが生じた。

 

 

「惜しい! 今のは攻撃の後、少し追いすぎたな。もう一度、別の角度から試してみよう!」

 

 

シンヤが端末を操作し、フィールドを森林へ切り替えようとした、そのとき。

 

 

「坊ちゃまー!」

 

 

「シンヤさーん!」

 

 

入口からラムとレムがやってきた。

 

 

「ん? 二人とも、どうしたんだ?」

 

 

シンヤが訓練を中断すると、リザードンも着地して彼の隣に立つ。

 

 

ラムが腕を組んだ。

 

 

「坊ちゃま、また特訓に夢中になっていたでしょ。実家から連絡が来ているわよ」

 

 

「実家から?」

 

 

「はい。オーキド博士から、研究所に集まってほしいとの連絡があったそうです」

 

 

レムが説明を続けた。

 

 

「シンヤさんがこちらで特訓をしている間に、リーフさん、シゲルさん、サトシさんの順番でマサラタウンへ戻ってきたそうですよ」

 

 

「おお、みんな帰ってきたのか!」

 

 

シンヤの表情が明るくなる。

 

 

リーフ、シゲル、サトシ。旅立ちの日から、それぞれ違う道を歩んできた同期たちだ。

 

 

「それで、全員そろって研究所に来るようにとのことね」

 

 

ラムが言う。

 

 

「分かった。知らせてくれてありがとう!」

 

 

シンヤはリザードンの頭を撫でた。

 

 

「今日はここまでだ。続きは帰ってきてからやろう」

 

 

リザードンが力強くうなずく。

 

 

シンヤはフーディンのモンスターボールを取り出した。

 

 

「フーディン、オーキド研究所までテレポートを頼む!」

 

 

「フーディン!」

 

 

淡い光がシンヤとフーディンを包み込む。

 

 

次の瞬間、二人の姿は別荘から消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ オーキド研究所――四人目の帰還者

 

 

マサラタウン、オーキド研究所。

 

 

研究所の中では、久しぶりに顔を合わせたトレーナーたちが話をしていた。

 

 

最初に帰還したのはリーフだった。

 

 

続いてシゲルが戻り、その後にサトシが帰ってきた。

 

 

そして、最後に到着するのがシンヤである。

まあ、実際にはシンヤが一番最初だったのだが。

 

 

「それにしても、みんな無事に帰ってきたね」

 

 

リーフが微笑む。

 

 

「当然さ。ぼくが旅先で苦戦し続けると思ったのかい?」

 

 

シゲルはいつもの自信に満ちた表情で答えた。

 

 

「オレだって、ちゃんと八つのバッジを集めてきたぜ!」

 

 

サトシが胸を張る。

 

 

「はいはい。サトシ君の冒険談は、あとでゆっくり聞くことにするよ」

 

 

「なんだよ、シゲル!」

 

 

二人の間に、早くも火花が散る。

 

 

リーフが苦笑した、そのときだった。

 

 

「おや、シンヤが最後のようだね」

 

 

入口に現れたシンヤを見て、シゲルが声をかけた。

 

 

「よっ、シゲル!」

 

 

「やあ。最初に戻って、すでに特訓しているとおじい様に聞いたよ」

 

 

「ああ。リーグに向けて、いろいろ確認しておきたくてな」

 

 

「相変わらず熱心だね」

 

 

シンヤとシゲルは軽く挨拶を交わした。

 

 

「サトシも久しぶりだな!」

 

 

「おう、シンヤ! お前も帰ってきたんだな!」

 

 

サトシが笑顔で応じる。

 

 

「リーフも、おかえり」

 

 

「ええ、シンヤ。あなたもお疲れさま」

 

 

リーフも柔らかく微笑んだ。

 

 

全員がそろったところで、シンヤは研究所の中を見回した。

 

 

「ところで、博士は?」

 

 

「奥にいるよ。僕らを呼び集めた理由も、そろそろ説明してくれるんじゃないかな」

 

 

シゲルが答える。

 

 

そのとき、サトシがふと研究所の一角に目を向けた。

 

 

そこには、トレーナーたちのポケモンを預かるための保管設備が並んでいる。

 

 

サトシは自分のポケモンたちが預けられている場所を確認し、それからシンヤの方を振り返った。

 

 

「なあ、シンヤ」

 

 

「ん?」

 

 

「お前のポケモンって、ここに預けているんじゃなかったっけ?」

 

 

「いや、今はほとんど家にいるぞ」

 

 

「家に?」

 

 

サトシは首を傾げた。

 

 

「でも、シンヤも旅の途中でいろんなポケモンをゲットしていたよな? だったら、ここに預けているポケモンもいるんじゃないのか?」

 

 

その疑問に、シゲルとリーフも保管設備へ視線を向けた。

 

 

確かに、そこにはシンヤのポケモンが並んでいるはずの場所がある。

 

 

ところが――。

 

 

 

 

 

 

**シンヤのポケモン用のボールは、一つも見当たらなかった。**

 

 

 

 

 

 

「……あれ?」

 

 

リーフが目を瞬かせる。

 

 

「本当ね。シンヤのポケモンが一匹もいないわ」

 

 

シゲルも腕を組んだ。

 

 

「君は旅の途中で、かなりの数のポケモンを捕まえたと聞いている。すべて自宅に送っているのかい?」

 

 

「まあ、そういうことだな」

 

 

シンヤはあっさりと答えた。

 

 

「家で預かってもらっている。母さんが面倒を見てくれているし、訓練できる場所もあるからな」

 

 

「ちょ、ちょっと待て!」

 

 

サトシが声を上げた。

 

 

「全部って、何匹いるんだよ!?」

 

 

「うーん……」

 

 

シンヤは少し考え込む。

 

 

「正確な数は、今ここではすぐに出せないな」

 

 

「すぐに出せないほどいるのか……」

 

 

リーフが呆然とする。

 

 

シゲルは興味深そうにシンヤを見つめていた。

 

 

「なるほど。君の家にある設備については以前から少し聞いていたけれど、そこまでの規模とはね」

 

 

「シンヤの家って、そんなにすごいのか?」

 

 

サトシが尋ねた、そのとき。

 

 

「はっはっは! どうやら、ちょうどよい話題になったようじゃな!」

 

 

研究所の奥からオーキド博士が現れた。

 

 

「博士!」

 

 

四人が一斉に振り向く。

 

 

オーキド博士は満足そうにうなずき、シンヤを見た。

 

 

「シンヤ、お前さんのポケモンについて、みんなに話してもよいかな?」

 

 

「構いませんよ。別に隠しているわけじゃないですから」

 

 

「うむ。では、説明するとしよう」

 

 

博士は四人を研究所の中央へ招いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆博士が語る、シンヤの捕獲数

 

 

「まず、みんなも知ってのとおり、ポケモンを捕まえることはトレーナーにとって重要な経験じゃ。しかし、捕まえた数が多ければ、それだけで優れたトレーナーになれるわけではない」

 

 

博士はそう前置きしてから続けた。

 

 

「シンヤは旅の中で、カントー地方で確認されているポケモンのうち、ほぼすべてを捕獲しておる」

 

 

「…………は?」

 

 

サトシの口がぽかんと開いた。

 

 

「えっ……ほぼ、すべて?」

 

 

リーフも思わず聞き返す。

 

 

シゲルの表情からも、余裕の笑みが消えていた。

 

 

「待ってください、おじい様。カントーで確認されているポケモンというのは、いったい何種類の話ですか?」

 

 

「もちろん、確認されている種類の話じゃよ。すべての個体という意味ではないぞ」

 

 

「それは分かっています!」

 

 

シゲルは即座に答えたが、改めてシンヤを見た。

 

 

「それでも、ほぼすべてというのは……」

 

 

「うむ。もちろん、伝説のポケモンや、通常の方法では捕獲が困難なポケモンまで、何でもかんでも捕まえたという意味ではない。しかし、一般に出会えるポケモンについては、相当な種類を捕獲しておる」

 

 

博士は続けた。

 

 

「さらに、シンヤは捕まえたポケモンを、ただボールに入れたままにしているわけではない。自宅には十分な広さの飼育環境があり、山や川、海に対応した場所も用意されておる。ポケモンたちが過ごす環境を整え、世話をし、訓練することができるのじゃ」

 

 

「山も、川も、海も……?」

 

 

サトシは頭を抱えた。

 

 

「それって、研究所みたいなものじゃないか!」

 

 

「はっはっは! 規模だけなら、そう言えなくもないのう」

 

 

「お母様が預かってくれているのね……」

 

 

リーフは、シンヤが旅の途中で話していた家族のことを思い出す。

 

 

「ああ。母さんが面倒を見てくれています。父さんも、ポケモンの世話や訓練に使える道具をいろいろ作ってくれているから」

 

 

シンヤはいつもどおりの口調で答えた。

 

 

「それに、ポケモンを捕まえたからといって、すべてを自分の手持ちにするわけじゃありません。相性や性格、本人の得意分野を見て、適切な環境で過ごせるようにしています」

 

 

「……なるほどね」

 

 

シゲルは腕を組み直した。

 

 

「単に捕獲数を増やすだけじゃなく、捕獲後の管理まで考えているということか」

 

 

「そういうこと」

 

 

「でも、ほぼすべてって……」

 

 

サトシはまだ信じられないという顔でシンヤを見ていた。

 

 

「お前、旅の間にいったい何をしていたんだよ!?」

 

 

「普通に旅をして、ポケモンと出会って、仲良くなって、必要ならバトルして……って感じだけど」

 

 

「それのどこが普通なんだよ!」

 

 

思わずサトシが叫ぶ。

 

 

リーフは口元を押さえて笑い、シゲルも呆れたように息をついた。

 

 

「君らしいと言えば、君らしいけれどね」

 

 

「シゲルにそう言われると、褒められているのか分からないな」

 

 

「好きに解釈してくれて構わないよ」

 

 

二人の間に、いつもの軽いやり取りが戻った。

 

 

だが、シゲルの目には先ほどまでとは違う光が宿っていた。

 

 

捕獲数だけでシンヤの強さを判断するつもりはない。

 

 

しかし、それだけの数のポケモンと出会い、世話をし、それぞれの個性を見てきたのなら、旅で得た経験も相当なものだろう。

 

 

カントーリーグで戦う相手として、シンヤはますます興味深い存在になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆研究所のポケモンたちが騒ぎ出す!

 

 

「さて、話はここまでにして――」

 

 

オーキド博士が説明を終えようとした、そのときだった。

 

 

研究所の奥から、突然、大きな物音が響いた。

 

 

 

 

 

 

ガタガタッ!

 

 

 

 

 

「ん?」

 

 

全員が音のした方を向く。

 

 

続いて、ポケモンたちの鳴き声が聞こえてきた。

 

 

「何だ?」

 

 

サトシが走り出す。

 

 

「おい、サトシ! 待ちなさい!」

 

 

シゲルも後を追い、リーフとシンヤも続いた。

 

 

研究所の奥では、預けられていたポケモンたちが、いつもより騒がしく動き回っていた。

 

 

中には互いに張り合っているポケモンもいれば、騒ぎに驚いて逃げ回っているポケモンもいる。

 

 

「みんな、どうしたんだ!?」

 

 

サトシが呼びかけるが、ポケモンたちは興奮していて、すぐには落ち着かない。

 

 

「これは困ったのう……。何がきっかけで、こんな騒ぎになったのか……」

 

 

オーキド博士も困惑していた。

 

 

シゲルが周囲を観察する。

 

 

「誰かが不用意に刺激したのか、それとも何かに驚いたのか……」

 

 

「まずは、これ以上騒ぎが広がらないようにしないと!」

 

 

リーフが声を上げた。

 

 

シンヤはポケモンたちの様子を注意深く見つめる。

 

 

波動の眼が、動きや表情、互いの距離を捉えていく。

 

 

ただし、一匹ずつの気持ちを完全に読み取れるわけではない。何が起きたのか、行動から確かめる必要があった。

 

 

「博士、まずは入口を開けて、逃げ道を確保しましょう。無理に押さえつけると、余計に混乱するかもしれません」

 

 

「うむ、そうじゃな!」

 

 

シンヤの提案に、博士がうなずく。

 

 

サトシもピカチュウと一緒にポケモンたちへ声をかけ始めた。

 

 

「みんな、落ち着けって! ケンカするなよ!」

 

 

「ピカピカ!」

 

 

シゲルはポケモンたちの動線を確認し、リーフは驚いているポケモンを落ち着かせるため、距離を取りながら優しく声をかける。

 

 

四人は、それぞれのやり方で騒動を収めようと動き始めた。

 

 

シンヤはポケモンたちの動きを見ながら、原因を探っていく。

 

 

「……まずは、誰が最初に動いたのかを確認しよう。そこからなら、原因を絞り込める」

 

 

リーグ前の再会は、思いがけない騒動によって幕を開けた。

 

 

そして、この騒動は四人のトレーナーが、それぞれどんな判断を下すのかを試す機会にもなろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆暴れん坊リザードンと、不器用な信頼関係

 

 

 

オーキド研究所の広い庭では、ポケモンたちが入り乱れていた。

ピジョットたちが頭上を飛び回り、何匹ものポケモンが草むらを駆け抜ける。普段なら仲良く過ごしているはずの面々まで、今日に限って妙に落ち着きがない。

 

 

「お、おい! みんな、落ち着けって!」

 

 

サトシが声を張り上げる。

しかし、騒動の中心にいるオレンジ色の巨体は、そんなサトシをちらりと見ただけだった。

 

 

 

リザードン。

 

 

サトシの旅を支えてきた、強力な炎タイプのポケモンだ。

 

 

そのリザードンは、研究所の庭の真ん中で腕を組み、鼻から大きく煙を吐き出していた。

 

 

「リザァ……」

 

 

そしてサトシが近づくと、ぷいっと顔をそらす。

 

 

「おい、リザードン! 何やってるんだよ!」

 

 

「リザァードン!」

 

 

リザードンは勢いよく振り返り、サトシに向かって吠えた。

 

 

「うわっ! わ、分かったから、そんなに怒るなって!」

 

 

「リザードン……!」

 

 

再び顔をそらすリザードン。

 

 

その直後、近くにいたゼニガメがサトシの足元に駆け寄ろうとした。

 

 

するとリザードンは、ゼニガメの前にすっと腕を伸ばした。

 

 

「ゼニ?」

 

 

ゼニガメが首をかしげる。

 

 

リザードンはゼニガメを追い払うでもなく、ただサトシとの間に立ちはだかっていた。

 

 

「……あれ?」

 

 

サトシが目を瞬かせる。

 

 

「今、ゼニガメがオレのところに来るのを止めたのか?」

 

 

「リザァ!」

 

 

リザードンは即座に否定するように吠えた。

 

 

しかし、その尻尾は大きく揺れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどね。これはなかなか興味深いね」

 

 

少し離れた場所で、シゲルが腕を組みながら観察していた。

 

 

「何が興味深いんだよ、シゲル! こっちは大変なんだぞ!」

 

 

「君のリザードンが、単に暴れているわけじゃないってことさ」

 

 

シゲルは庭の様子を指さした。

 

 

「よく見てみなよ。リザードンは研究所のポケモンを無差別に攻撃しているわけじゃない。サトシ、君が近づくと怒ったような態度を取るけど、君が転びそうになったときは、さりげなく尻尾で支えていた」

 

 

「えっ?」

 

 

サトシが振り返る。

 

 

少し前、サトシが走り回るポケモンを避けようとして足を滑らせた。その瞬間、リザードンが尻尾で彼の背中を支えたのだ。

 

 

サトシが体勢を立て直したときには、リザードンはもうそっぽを向いていた。

 

 

「それだけじゃないわ」

 

 

リーフも微笑みながら続ける。

 

 

「さっきから、サトシに近づこうとするポケモンがいると、リザードンが間に入っているの。威嚇はしているけれど、傷つけないように距離を調整しているみたい」

 

 

「つまり……」

 

 

シンヤはリザードンの様子を見つめた。

 

 

「サトシに構ってほしい。でも、自分から甘えるのは嫌。だから、サトシがほかのポケモンに構っていると、つい邪魔をしてしまう。そんなところかな」

 

 

「なっ……!」

 

 

サトシはリザードンとシンヤを交互に見た。

 

 

「リザードンが、オレに構ってほしいって?」

 

 

「可能性は高いと思うよ。もちろん、本人にしか分からない部分はあるけどね」

 

 

シンヤは断定しすぎないように付け加えた。

 

 

波動の眼で見ても、リザードンの状態は単純な怒りではなかった。

 

 

戦闘への意欲は高い。体調にも大きな問題はない。しかし、サトシがほかのポケモンと親しげにしていると、闘志とは別の感情が強く表面化している。

 

 

それは、苛立ちに似ている。

 

 

だが、サトシに危険が迫った瞬間には、迷うことなく身体が動いていた。

 

 

「……ふふっ」

 

 

リーフが口元を押さえた。

 

 

「ずいぶん不器用なのね」

 

 

「おい、リーフまで!」

 

 

「だって、そうでしょう? サトシのことが気になるのに、素直にそばにいられないんだもの」

 

 

「リザードンはそんなやつじゃないぞ!」

 

 

「リザァ!」

 

 

リザードンは大きく吠え、サトシの言葉に同意するように胸を張った。

 

 

ところが次の瞬間、サトシがピカチュウを抱き上げて頭をなでると、リザードンは再び不機嫌そうにそっぽを向いた。

 

 

「……あれ?」

 

 

サトシの顔が引きつる。

 

 

「いや、やっぱりそうなのか?」

 

 

「リザァァァ!」

 

 

リザードンが火を噴きそうな勢いで吠えた。

 

 

「わ、悪かったって! 分かった、分かったから!」

 

 

サトシは慌ててピカチュウを地面に下ろした。

 

 

ピカチュウは肩をすくめるような仕草を見せたあと、リザードンを見てニヤリと笑った。

 

 

「ピカピカ!」

 

 

「リザァ!?」

 

 

どうやらピカチュウにも、リザードンの態度はお見通しらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも、どうして今日に限ってこんな騒ぎになったんだろう?」

 

 

リーフが周囲を見回した。

 

 

シゲルは少し考えてから、オーキド博士へ視線を向けた。

 

 

「博士。今日、サトシのポケモンたちをいつもと違う場所に集めたりした?」

 

 

「うむ。みんなが久しぶりに顔を合わせるので、広い庭で一緒に遊ばせておったのじゃ。サトシのリザードンも、最初は比較的おとなしかったんじゃが……」

 

 

「何かきっかけがあったんですね」

 

 

シンヤが尋ねると、オーキド博士はうなずいた。

 

 

「そうじゃ。サトシがピカチュウやゼニガメたちと再会を喜んでおったとき、リザードンが少し離れた場所からその様子を見ておった。それから急に機嫌が悪くなってのう」

 

 

「なるほどな……」

 

 

サトシはリザードンを見た。

 

 

「もしかして、オレがみんなと話してばっかりで、寂しかったのか?」

 

 

「リザードン!」

 

 

リザードンはすぐさま吠えた。

 

 

否定のつもりらしい。

 

 

だが、その場にいた全員の視線が自分に集まっていると気づいた途端、リザードンはばつが悪そうに顔をそらした。

 

 

「……リザァ」

 

 

尻尾の炎が、ほんの少しだけ小さく揺れる。

 

 

「ふふっ。図星みたいね」

 

 

リーフが小声で笑った。

 

 

「本人は認めたくないんだろうね」

 

 

シゲルも肩をすくめる。

 

 

サトシはしばらく考えていたが、やがてポンと手を打った。

 

 

「そっか! 悪かったな、リザードン!」

 

 

「リザ?」

 

 

「久しぶりにみんなに会えて、オレ、うれしくなっちゃってさ! でも、お前のこともちゃんと見てるからな!」

 

 

サトシはまっすぐにリザードンを見つめた。

 

 

「お前はオレの大事な仲間だ。強くて、頼りになって、いざってときには誰よりもかっこいい。だからさ、そんなに怒るなよ!」

 

 

「リザードン……」

 

 

リザードンの表情が、ほんの一瞬だけ緩んだ。

 

 

しかし、すぐにいつものふてぶてしい顔に戻る。

 

 

「リザァ!」

 

 

そして腕を組み、顔をそらした。

 

 

「ええっ!? まだ怒ってるのかよ!」

 

 

サトシが思わず叫ぶ。

 

 

リザードンは返事をしない。

 

 

ただし、先ほどまでサトシの周囲を威嚇していた態度は、明らかに弱まっていた。

 

 

「サトシ、言葉だけじゃなくて、少し一緒に過ごしてあげたら?」

 

 

シンヤが提案した。

 

 

「こいつは、サトシの言葉を理解していないわけじゃない。むしろ、ちゃんと分かっているからこそ、素直になれないんじゃないかな」

 

 

「そっか……よし!」

 

 

サトシはリザードンの前に立った。

 

 

「なあ、リザードン! 久しぶりに、オレと勝負しようぜ!」

 

 

「リザードン?」

 

 

リザードンが片目を開ける。

 

 

「もちろん、本気のバトルだ! お前がどれだけ強くなったか、オレに見せてくれよ!」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、リザードンの尻尾の炎が大きく燃え上がった。

 

 

「リザァァァァ!!」

 

 

先ほどまでの不機嫌さが、見る間に戦意へと変わっていく。

 

 

「おっ、やる気になったな!」

 

 

サトシが笑う。

 

 

リザードンはサトシの頭を軽く小突くと、庭の奥へ歩いていった。

 

 

「いてっ! 何するんだよ!」

 

 

それでもサトシは笑っていた。

 

 

リザードンが振り返り、早く来いと言わんばかりに翼を広げたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「騒動の原因が分かってよかったのう」

 

 

 

オーキド博士がほっと胸をなで下ろす。

 

 

「いやあ、リザードンがここまでサトシに構ってほしがっていたとはね」

 

 

シゲルが珍しく感心したように言った。

 

 

「でも、ただの甘えん坊ってわけでもないんでしょうね」

 

 

リーフはリザードンの背中を見ながら話した。

 

 

「ええ。サトシに甘えたい気持ちがあったとしても、リザードンはリザードンです。自分の強さに誇りを持っているし、サトシの期待に応えたいとも思っているはずです」

 

 

シンヤは静かにうなずいた。

 

 

「だから、素直に甘える代わりに、バトルを通して自分を見てほしいのかもしれませんね」

 

 

「なるほど。サトシらしいし、リザードンらしい関係だね」

 

 

シゲルが笑った。

 

 

そのとき、庭の向こうからサトシの声が響いた。

 

 

「よーし、リザードン! いくぞ!」

 

 

「リザァァァ!」

 

 

リザードンが力強く翼を広げる。

 

 

その姿は、先ほどまでの不機嫌なポケモンとは別人のようだった。

 

 

サトシが笑顔で駆け寄ると、リザードンは大きな手で彼の頭を乱暴になでた。

 

 

「わっ、痛いって! もう!」

 

 

サトシが抗議する。

 

 

リザードンは満足げに鼻を鳴らし、再び顔をそらした。

 

 

けれど、その尻尾の炎は、先ほどよりもずっと明るく燃えていた。

 

 

「……本当に、分かりやすいのか分かりにくいのか」

 

 

シンヤは苦笑した。

 

 

「ふふっ。あれで本人たちは、ちゃんと通じ合っているのよ」

 

 

リーフが隣で微笑む。

 

 

研究所の騒動は、ようやく収まり始めていた。

 

 

原因は、命令を聞かないことでも、仲間を傷つけたい気持ちでもなかった。

 

 

ただ、久しぶりに再会したトレーナーに、自分を一番に見てほしかった。

 

 

それを素直に伝えられなかった、少しばかり不器用なリザードンの気持ちだったのだ。

 

 

そしてサトシもまた、その気持ちを改めて受け止めた。

 

こうして研究所の騒動は、思いがけない形で、トレーナーとポケモンの絆を確かめる出来事となったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆四人の旅路、目指すはただ一つ!

 

 

オーキド研究所の庭に、ようやく穏やかな空気が戻ってきた。

 

先ほどまで騒ぎの中心にいたリザードンは、サトシと一緒に庭の隅で軽く身体を動かしている。

 

 

もっとも、素直にサトシの隣を歩いているわけではない。

 

 

「なあ、リザードン。もうちょっとこっちに来いよ!」

 

 

「リザァ……」

 

 

リザードンは面倒くさそうに顔をそらした。

 

 

「ええっ、なんでだよ! さっきはあんなに構ってほしそうだったのに!」

 

 

「リザードン!」

 

 

大きな鳴き声が響く。

 

 

しかし、リザードンはサトシが少し離れると、すぐにその後ろをついていった。

 

 

「……ふふっ」

 

 

その様子を見ていたリーフが、小さく笑った。

 

 

「本当に不器用なのね」

 

 

「まったくだね。見ているこっちが恥ずかしくなるよ」

 

 

シゲルも呆れたように肩をすくめた。

 

 

「おい、二人とも聞こえてるぞ!」

 

 

サトシが振り返って抗議する。

 

 

シンヤは苦笑しながら、三人に声をかけた。

 

 

「まあまあ。せっかく全員そろったんだし、少し落ち着いて話そうよ。博士も、僕たちの旅の話を聞きたがっているみたいだし」

 

 

「うむ! わしとしても、みんなの成長には大いに興味があるからのう」

 

 

オーキド博士が満足げにうなずいた。

 

 

研究所の談話スペースに移動した四人は、飲み物を手にテーブルを囲んだ。

 

 

かつてマサラタウンで顔を合わせていた顔なじみな4人。

 

 

しかし、今ではそれぞれが異なる道を歩み、異なる経験を積み重ねてきた。

 

 

同じ町から旅立った少年少女たちは、再び顔を合わせた今、以前とは違う表情を見せていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、まずはサトシから聞こうか」

 

 

シゲルが口火を切った。

 

 

「君は旅の間に、どんなポケモンと出会ったんだい?」

 

 

「おう! いろんなポケモンに会ったぜ!」

 

 

サトシは勢いよく身を乗り出した。

 

 

「最初はピカチュウと一緒に旅を始めてさ。最初のころはなかなか息が合わなかったけど、いろんなことを乗り越えて、今じゃ最高の相棒なんだ!」

 

 

「ピカ!」

 

 

サトシの隣でピカチュウが胸を張った。

 

 

「それに、旅の途中で仲間も増えたんだ。フシギダネやゼニガメ、そしてリザードン! みんな強くなったし、オレもみんなと一緒に成長してきた!」

 

 

サトシの声には、仲間たちへの誇りがあふれていた。

 

 

「ジム戦だって、最初からうまくいったわけじゃない。負けたり、思い通りにいかなかったりしたこともある。でも、そういうときこそ、ポケモンたちと一緒に考えて、どうすれば勝てるかを探してきたんだ!」

 

 

「君らしいね」

 

 

シゲルが微笑んだ。

 

 

「戦術を組み立てるだけじゃなく、ポケモンとの絆を大切にする。昔から変わらないところだ」

 

 

「へへっ、だろ?」

 

 

「褒めているようで、少し子ども扱いされていないかしら?」

 

 

リーフが冗談めかして尋ねる。

 

 

「えっ? そうなのか?」

 

 

「サトシ、そこは自分で考えなよ」

 

 

シンヤが笑うと、サトシは「なんだよー!」と声を上げた。

 

 

談話スペースに笑い声が広がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、次はリーフだね」

 

 

シゲルに促され、リーフはカップをそっと置いた。

 

 

「私も、旅を通じてたくさんの出会いがあったわ。ポケモンたちと一緒に新しい場所を訪れて、いろいろな人と知り合って……。バトルだけではなく、ポケモンの魅力をどう伝えるかについても考えるようになったの」

 

 

「ポケモンの魅力?」

 

 

サトシが首をかしげる。

 

 

「ええ。強さだけがポケモンの魅力ではないでしょう? 仕草や表情、技を繰り出すときの美しさ。トレーナーとの息の合った動き……。そういうものを、もっとたくさんの人に知ってほしいの」

 

 

リーフは穏やかな笑みを浮かべた。

 

 

「もちろん、ポケモンバトルも大好きよ。勝負に勝つためには、相手の戦術を理解して、こちらの強みを活かさなくてはいけないもの。旅の中で、その難しさも少しずつ分かってきたわ」

 

 

「なるほど。バトルと表現、その両方を磨いているわけか」

 

 

シゲルが興味深そうにうなずいた。

 

 

「でも、リーグに出場する以上、勝つことにもこだわるわ。目標はもちろん、ポケモンリーグ優勝よ」

 

 

その言葉には、柔らかな口調とは裏腹の強い意志があった。

 

 

「ただ参加するだけで満足するつもりはないわ。せっかくここまで来たのだから、最後まで勝ち進みたいもの」

 

 

「いいね、リーフ!」

 

 

サトシが笑顔で応じた。

 

 

「オレも絶対に優勝するぜ!」

 

 

「ふふっ。そう言うと思ったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、次は僕の番かな」

 

 

シゲルは椅子に背を預けた。

 

 

「僕は旅の中で、ポケモンの生態や能力について、以前より深く学ぶようになった。単純に強いポケモンを集めるだけでは、勝ち続けることはできないからね」

 

 

「研究者としての視点も大切にしているんだな」

 

 

シンヤが言った。

 

 

「もちろん。ポケモンの特性や行動、環境への適応。それらを理解すれば、バトルの選択肢も増える。相手が何を狙っているのかを読み、こちらが有利になる状況を作ることもできるからね」

 

 

シゲルは自信ありげに笑った。

 

 

「それに、僕は自分のポケモンたちを信頼している。彼らの力を正しく理解して、必要な場面で最大限に引き出す。それがトレーナーの役割だと思っているよ」

 

 

「お前らしいな、シゲル!」

 

 

サトシが感心したように言う。

 

 

「そして、目指すのは当然ポケモンリーグ優勝だ。参加するからには、頂点を狙う。それ以外の目標はないよ」

 

 

シゲルはサトシに視線を向けた。

 

 

「サトシ。君も同じだろう?」

 

 

「当たり前だ!」

 

 

サトシは即座に答えた。

 

 

「絶対に優勝してみせる!」

 

 

「ふっ……。その言葉、覚えておくよ」

 

 

シゲルの瞳にも、競争心が宿っていた。

 

 

 

幼いころから互いを知る二人。

 

 

かつては何気ない言葉で張り合っていた関係も、今では本当の意味で競い合うライバルへと変わりつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、最後はシンヤだね」

 

 

シゲルが話を振る。

 

 

「君は旅立つ前から、ずいぶんと準備していたそうじゃないか。博士からもいろいろ聞いているよ」

 

 

「まあ、準備は大切だからね」

 

 

シンヤは苦笑した。

 

 

「でも、実際に旅をしてみると、準備だけではどうにもならないことも多いよ。野生のポケモンとの出会いも、ジムリーダーとのバトルも、毎回同じ展開になるわけじゃないから」

 

 

「シンヤでも、想定外のことがあるんだな!」

 

 

サトシが驚いたように言った。

 

 

「そりゃあるよ。相手だって考えているし、ポケモンだって状況に応じて動くからね。こちらの作戦がうまくいかなかったとき、どう立て直すかが大事なんだ」

 

 

シンヤはそう言って、テーブルの上に指を置いた。

 

 

「僕はポケモンたちの得意なことを見極めて、それぞれの個性を活かすようにしている。技の威力だけじゃなく、動きの速さ、判断力、地形との相性、仲間との連携……。そういうものを組み合わせれば、同じ技でも使い方は大きく変わるからね」

 

 

「なるほど。単に技を覚えさせるだけではなく、使いどころまで考えているんだね」

 

 

シゲルが納得したようにうなずいた。

 

 

「そういうこと。もちろん、実戦で試してみないと分からないことも多いけどね」

 

 

シンヤは自分のポケモンたちを思い浮かべた。

 

 

旅の始まりから共に戦ってきたリザードン。

 

 

空から道を切り開くピジョット。

 

 

水辺でも陸上でも活躍できるギャラドス。

 

 

強烈な闘志を持つコノヨザルや、幅広い戦術に対応できるニドキング。

 

 

そして、研究所や実家で過ごす仲間たち。

 

 

それぞれが異なる強みを持ち、異なる個性を持っている。

 

 

「僕にとっては、どのポケモンも大切な仲間だ。だからこそ、誰か一匹の強さだけに頼るんじゃなくて、みんなの力を活かして勝ちたいんだ」

 

 

「シンヤらしいな」

 

 

オーキド博士が満足げに笑った。

 

 

「それで、目標は?」

 

 

シゲルが尋ねる。

 

 

シンヤは迷うことなく答えた。

 

 

「もちろん、ポケモンリーグ優勝だよ」

 

 

その場の空気が、ほんの少し変わった。

 

 

「ただ出場するために旅をしてきたわけじゃない。ジムバッジを集めてきたのも、ポケモンたちと一緒に強くなってきたのも、全部そのためだ」

 

 

シンヤは三人を順番に見た。

 

 

「僕も、本気で優勝を狙っている」

 

 

「……へえ」

 

 

シゲルの口元に、挑戦的な笑みが浮かんだ。

 

 

「やっぱり、そうでなくちゃね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり……」

 

 

サトシがテーブルに両手をついた。

 

 

「オレも、シゲルも、リーフも、シンヤも、全員ポケモンリーグで優勝するつもりなんだな!」

 

 

「そういうことね」

 

 

リーフがうなずく。

 

 

「当然だよ」

 

シゲルも続けた。

 

 

「僕だって譲るつもりはない」

 

 

「私もよ。誰が相手でも、簡単には負けてあげないわ」

 

 

リーフの目にも、強い闘志が宿る。

 

 

最後にシンヤがうなずいた。

 

 

「僕も同じ。ここにいる誰かと対戦することになっても、手加減はしないよ」

 

 

「へへっ! 望むところだぜ!」

 

 

サトシは満面の笑みを浮かべた。

 

 

「シゲル! シンヤ! リーフ! リーグで会ったら、絶対に勝負しようぜ!」

 

 

「言われなくても、そのつもりだよ」

 

 

シゲルが即座に返した。

 

 

「ふふっ。みんな、ずいぶん気が早いのね。まだリーグは始まっていないのに」

 

 

そう言いながらも、リーフの表情は楽しそうだった。

 

 

「でも、いいわね。お互いに本気で競い合える相手がいるというのは」

 

 

「そうだな」

 

 

シンヤも同意した。

 

 

「一人で強くなることはできても、自分がどこまで成長したのかを知るには、全力でぶつかれる相手が必要だからね」

 

 

四人は、それぞれの思いを胸に、互いの顔を見つめた。

 

 

同じ町で育った幼なじみ。

 

 

しかし、目指す場所は同じでも、そこへ至る道は一人ひとり異なる。

 

 

サトシは、仲間との絆とひらめきで道を切り開く。

 

 

シゲルは、知識と分析で勝利への道筋を探る。

 

 

リーフは、ポケモンたちの魅力と実力を磨き、独自の戦い方を追求する。

 

 

シンヤは、観察と戦術、そして仲間たちの個性を組み合わせて勝利を目指す。

 

 

そのすべてが、ポケモンリーグ優勝という一つの目標へとつながっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、シゲル」

 

 

シンヤがふと思い出したように尋ねた。

 

 

「せっかく全員そろったんだ。今の実力を確かめる意味でも、ポケモンバトルをしてみない?」

 

 

「ほう?」

 

シゲルの目が細くなる。

 

 

「それは、誰と誰が戦う想定なんだい?」

 

 

「まずは、君とサトシかな」

 

 

シンヤが二人を見比べた。

 

 

「昔からのライバル同士だし、お互いの成長を確かめるには、ちょうどいいんじゃない?」

 

 

「えっ!?」

 

 

サトシの顔がぱっと明るくなった。

 

 

「シゲルとバトル!? いいぜ! やろうぜ、シゲル!」

 

 

「ふっ。君は相変わらず気が早いね」

 

 

シゲルは腕を組み、余裕たっぷりに笑った。

 

 

「だけど、僕も興味はある。君が旅の中でどれほど成長したのか、この目で確かめてみたいからね。先ほどの君の考え、以前ならなかったことだし」

 

 

「オレだって、お前がどれだけ強くなったのか見てみたい!」

 

 

二人の視線が正面からぶつかる。

 

 

先ほどまでの談笑が、いつしか本物の勝負を前にした緊張感へと変わっていた。

 

 

「ふふっ。始まったわね」

 

 

リーフが楽しそうにつぶやく。

 

 

「二人とも、もうバトルのことしか頭にないみたいだ」

 

 

シンヤは苦笑した。

 

 

「まあ、二人にとっては昔からの決着でもあるからね」

 

 

「うむ。では、せっかくじゃから研究所のバトルフィールドを使うといい!」

 

 

オーキド博士が立ち上がった。

 

 

「ただし、研究所のポケモンたちが見物に集まってくるじゃろうから、周囲には十分気をつけるんじゃぞ!」

 

 

「分かりました、博士!」

 

 

サトシが元気よく答えた。

 

 

「もちろんだよ、おじい様」

 

 

シゲルも落ち着いてうなずく。

 

 

四人は談話スペースを後にし、研究所のバトルフィールドへと向かった。

 

 

その後ろを、ピカチュウやリーフのポケモンたち、そして騒動からすっかり立ち直ったリザードンがついていく。

 

 

リザードンはサトシのすぐ隣を歩いていた。

 

 

サトシが気づいて笑いかけると、リザードンはいつものように顔をそらした。

 

 

それでも、歩く速度はサトシにぴったり合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究所のバトルフィールド。

 

 

サトシとシゲルが、それぞれの陣地に立つ。

 

 

シンヤとリーフは、フィールドの外から見守る位置についた。

 

 

「それじゃあ、サトシ」

 

 

シゲルがモンスターボールを手に取る。

 

 

「君がどれほど成長したのか、見せてもらおうか」

 

 

「望むところだぜ、シゲル!」

 

 

 

サトシもボールを構えた。

 

 

「オレたちだって、負けないからな!」

 

 

ピカチュウがサトシの肩に飛び乗り、力強く鳴いた。

 

 

「ピカチュウ!」

 

 

その声に、シゲルのポケモンたちも応えるように鳴き声を上げる。

 

 

幼いころから続いてきた二人の競争。

 

 

そして、ポケモンリーグ優勝を目指す者同士の真剣勝負。

 

 

今ここで、その一端が明らかになろうとしていた。

 

 




なお、この話で分かったと思うけどリザードンは途中から研究所にいました。
つまり何がいいたいのか―――――わかるかな??
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