ポケットモンスター~波動の眼を持つ少年~   作:レイザル

85 / 86
第73話「一匹の技、一つの絆! シングルとダブルの連携特訓!」

5のしまの別荘。その敷地内にある広々とした訓練場には、朝から活気が満ちていた。

 

 

昨日、キルリアからサーナイトへと進化したばかりのサーナイト。そして、彼女を迎えたレンの仲間たち。

 

 

その向かいには、腕を組んだシンヤが立っていた。

 

 

「さて、今日は昨日の続きだね。昨日はそれぞれの技を磨いたけど、今日は実戦を想定して確認していこう」

 

 

「ええ。まずは一匹での技の連携、それから二匹での連携ね」

 

 

レンは扇子を広げ、ふふっと微笑んだ。

 

 

「コンテストで見せるような美しい技の組み合わせが、実際のバトルでも役立つのか。確かめるにはちょうどいいわ」

 

 

「そういうこと。見栄えだけを考えて技を組み合わせるんじゃない。技を使った後にどう動けるか、相手にどう対応されるか。そこまで考えるんだ」

 

 

シンヤは訓練場の中央を指さした。

 

 

「最初はシングルバトルを想定した、一匹での技の連携からだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

◆シングルバトル――一匹で技をつなぐ

 

 

ニンフィア――音と光で相手の判断を揺さぶる

 

 

「最初はニンフィア。ハイパーボイスとスピードスターを組み合わせてみよう」

 

 

「ニンフィア、お願いね!」

 

 

「フィア!」

 

 

ニンフィアが軽やかに前へ出る。

 

 

「まずはハイパーボイス!」

 

 

ニンフィアの口元から強烈な音波が放たれ、訓練場に設置された標的を揺らした。

 

 

「続いてスピードスター!」

 

 

無数の星形の光が音波の進路を追うように飛んでいく。音の振動に重なる光の軌跡は、まるで光の帯が空中を駆け抜けているようだった。

 

 

レンは満足そうにうなずいた。

 

 

「きれいでしょう? 音に光が重なると、舞台の上ではとても映えるのよ」

 

 

「うん。ただ、今のままだと二つの技を順番に使っただけだ」

 

 

「まあ。厳しいのね」

 

 

「悪い意味じゃないよ。ここからが大事なんだ」

 

 

シンヤは標的の横に置かれた移動式の人形を指さした。

 

 

「今度は相手が横に移動して、ハイパーボイスを避けようとしたとする。その動きを見てから、スピードスターの軌道を調整するんだ」

 

 

「つまり、最初から二つの技を決められた形で撃つんじゃなくて、相手の動きに合わせるのね」

 

 

「そう。ハイパーボイスで相手の移動を誘い、スピードスターで逃げ道を狙う。技の連携そのものが、相手の選択肢を狭めるんだ」

 

 

レンはニンフィアを見つめた。

 

 

「ニンフィア、もう一度よ。今度は相手の動きを見てから!」

 

 

「フィアッ!」

 

 

ハイパーボイスが放たれる。

 

 

人形が横へ動くと、ニンフィアはすぐにスピードスターを放った。星形の光が人形の進路を追い、回避方向を制限する。

 

 

「いいね! ただし、相手が音を受けながら突っ込んできた場合も考えておこう」

 

 

シンヤの指摘に、レンは真剣な顔でうなずいた。

 

 

「技を美しく見せるだけではなく、相手がどう対応するかまで考える……。コンテストの演出も、工夫すれば駆け引きになるのね」

 

 

 

 

 

 

 

 

◆マリルリ――速さを攻撃の起点にする

 

 

「次はマリルリ。アクアジェットの制御を確認しよう」

 

 

「マリルリ、お願い!」

 

 

「マリル!」

 

 

マリルリが水をまとい、勢いよく飛び出した。

 

 

「アクアジェットで標的の横を通り抜けて!」

 

 

マリルリは標的の脇を高速で通過する。だが、シンヤはすぐに次の指示を出した。

 

 

「今度は通り抜けた後、すぐに向きを変えてみよう。速く動くだけじゃなく、次の行動に移れる位置で止まるんだ」

 

 

マリルリは再び突進する。

 

 

今度は標的の脇を抜けた直後、地面を蹴って方向を変えた。少し大きく膨らんだものの、先ほどよりも早く正面を向き直る。

 

 

「いいわ、マリルリ!」

 

 

レンが手を叩く。

 

 

「でも、シンヤ。アクアジェットの勢いを利用して、相手の背後へ回ることもできるんじゃないかしら?」

 

 

「できるよ。ただし、背後へ回ること自体が目的になったら駄目だ。相手が振り向くより先に攻撃できるのか。それとも、相手の攻撃を避けるための移動なのか。目的によって進む方向が変わる」

 

 

レンは考え込むように扇子を閉じた。

 

 

「なるほど。速さは、それだけで強さになるわけじゃない。次の一手につながってこそ意味があるのね」

 

 

「その通り」

 

 

マリルリはもう一度、アクアジェットで走り抜けた。今度は標的の正面を横切り、すぐに次の動きへ移れる位置で停止する。

 

 

昨日よりも、明らかに動きが滑らかになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆クチート――攻撃の後に隙を残さない

 

 

「クチートはアイアンヘッドだね」

 

 

「クチート、いくわよ!」

 

 

「クチート!」

 

 

クチートが頭部の大きな顎を振り上げ、標的へ突進する。

 

 

アイアンヘッドが命中。標的が大きく揺れた。

 

 

しかし、攻撃の勢いでクチートの体勢も崩れかける。

 

 

「今のところを確認しよう」

 

 

シンヤが近づき、標的の位置を少し変えた。

 

 

「相手が攻撃を受けて倒れなかった場合、クチートは次の反撃を受けるかもしれない。アイアンヘッドの威力だけじゃなく、命中した後にどれだけ早く構え直せるかも重要だ」

 

 

レンはクチートの前にしゃがみ、目線を合わせた。

 

 

「クチート、もう一度。今度は攻撃した後、すぐに相手を見てね」

 

 

クチートは力強くうなずいた。

 

 

二度目のアイアンヘッド。

 

 

今度は命中した瞬間に足を踏み直し、顎を相手へ向けたまま構えを整えた。

 

 

「いいね。攻撃を当てて終わりじゃない。攻撃を当てた後も、バトルは続いているんだ」

 

 

レンは微笑んだ。

 

 

「コンテストでも、技を終えた後の姿勢は大切だもの。実戦でも同じなのね」

 

 

「そう。美しい姿勢が、次の行動に移れる姿勢なら、見栄えと実用性が両立する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ピッピ――予測できない技をどう活かすか

 

 

「次はピッピ。ゆびをふるだ」

 

 

「ピッピ、お願い!」

 

 

「ピッピ!」

 

 

ピッピが指を振る。

 

 

その先から放たれたのは、思いがけない技だった。周囲の空気が揺れ、訓練用の標的が大きく動く。

 

 

「何が出るか分からない。それがゆびをふるの面白さね」

 

 

レンは楽しそうに笑ったが、シンヤは首を横に振った。

 

 

「予想できないことは、強みでもあるけど弱みでもある。技が出た後、何が起きたかをすぐに判断できなければ、せっかくの機会を逃す」

 

 

「つまり、技そのものだけでなく、結果を見て次の行動を選ぶ必要があるのね」

 

 

「そうだよ。ピッピ自身も、出た技に驚いて動けなくなるんじゃなくて、何が起きたかを見て動くんだ」

 

 

ピッピは小さく胸を張った。

 

 

再びゆびをふる。

 

 

今度は別の技が発動し、標的の周囲に変化が生じた。

 

 

ピッピは一瞬驚いたものの、すぐに標的の様子を確認し、空いた場所へ移動した。

 

 

「いいね! 技が何であっても、状況を見ることはできる」

 

 

レンはピッピを抱き上げ、くるりと回った。

 

 

「ふふっ。何が起こるか分からない舞台ほど、腕の見せどころというものよね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆プリン――歌で相手の行動を変える

 

 

「最後はプリン。うたうを使ってみよう」

 

 

「プリン、お願いね!」

 

 

プリンは目を閉じ、柔らかな歌声を響かせた。

 

 

「プリン、プリン、プリ~ン♪」

 

 

歌声が訓練場を包み込む。

 

 

「ここで大切なのは、歌が相手に届くかどうかだけじゃない」

 

 

シンヤは説明した。

 

 

「相手が歌を警戒して距離を取るのか、攻撃を仕掛けてくるのか。そこを見て対応を変えるんだ。歌に気を取られた相手が隙を見せれば有利になるけど、相手が耳を塞いだり、遠距離から攻撃したりする可能性もある」

 

 

レンはプリンに優しく声をかけた。

 

 

「相手がどう動くか、よく見ていてね」

 

 

プリンは歌を続けながら、相手役の人形の動きを観察する。

 

 

人形が前進する設定になると、プリンは歌を止めて横へ移動した。

 

 

「いい判断だよ。うたうを使い続けることだけが正解じゃない。危険が迫ったら、歌を中断して避けることも必要なんだ」

 

 

レンは満足げにうなずいた。

 

 

「舞台の流れを作ることと、相手の動きを読むこと。どちらもできれば、プリンの歌はもっと活きるわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆サーナイト――進化によって広がった戦術

 

 

いよいよ、今日の中心となるポケモンの番だった。

 

 

レンはサーナイトの前に立ち、そっと手を差し出す。

 

 

「サーナイト。昨日は驚いたけれど、あなたが進化してくれたこと、本当に嬉しかったわ」

 

 

「サーナイト……」

 

 

サーナイトは穏やかに微笑み、レンの手に自分の手を重ねた。

 

 

「今日は、あなたの新しい力を確かめましょう。無理はしないでね」

 

 

「サーナ!」

 

 

シンヤは訓練場に浮かべた複数のボールを指さした。

 

 

「まずはサイコキネシス。昨日もやったけど、今日は複数の物体を同時に動かしてみよう」

 

 

サーナイトが集中すると、ボールが一つ、二つと浮かび上がった。

 

 

最初は高さにばらつきがあったものの、少しずつ動きが揃っていく。ボールは空中で円を描き、互いの位置を入れ替えながら滑らかに回転した。

 

 

「すごいわ……!」

 

 

レンの目が輝く。

 

 

「進化する前よりも、力の扱いが安定しているように見えるね。ただ、力が強くなったからといって、何でもできるわけじゃない。数を増やしたときの精度や、急に動かされたときの対応も確かめよう」

 

 

シンヤはボールの一つを別方向へ動かした。

 

 

サーナイトはすぐに反応したが、ほかのボールの回転が一瞬乱れた。

 

 

「今のが課題だね。一つの動きに集中したとき、残りの制御がどれくらい保てるか」

 

 

レンはサーナイトの隣に立つ。

 

 

「もう一度、ゆっくりでいいわ。焦らなくていいのよ」

 

 

サーナイトは深呼吸するように目を閉じ、再び集中した。

 

 

今度は一つのボールを動かしながら、残りのボールの位置も維持する。動きはまだ完璧ではないものの、乱れは先ほどより小さくなった。

 

 

「十分な進歩だよ」

 

 

シンヤがうなずく。

 

 

「それから、テレポートも確認しよう。ただし、移動した後にどこへ出るか、すぐに次の行動へ移れるかを重視する」

 

 

サーナイトは少し離れた地点へテレポートした。

 

 

現れた直後、レンが置いた目印を確認して向き直る。

 

 

「今度は移動先を変えてみよう。相手の正面ではなく、横や斜め後ろへ移動した場合だ」

 

 

サーナイトは指示された場所へ移動し、すぐに相手を見据えた。

 

 

「いいね。テレポートは移動するためだけじゃない。相手の攻撃を避けたり、攻撃しやすい位置を取ったりするためにも使える。ただし、移動した先が安全とは限らないから、必ず周囲を確認するんだ」

 

 

レンはサーナイトの肩に手を置いた。

 

 

「あなたの新しい力を、焦らず一つずつ覚えていきましょうね」

 

 

「サーナイト!」

 

 

進化によって広がった可能性。それを本当の力に変えるのは、これから積み重ねる経験だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ダブルバトル――二匹だからこそ生まれる連携

 

 

一通りの個別練習を終えると、シンヤは訓練場に二つの開始位置を示した。

 

 

「ここからはダブルバトルを想定しよう。二匹で戦うときは、それぞれが強い技を使うだけじゃ足りない。相手の邪魔をしないこと、味方の攻撃を活かすこと、そして互いの隙を補うことが大切だ」

 

 

レンは嬉しそうに微笑んだ。

 

 

「いよいよ二匹での連携ね。どんな組み合わせになるのか、楽しみだわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

◆連携その一――ニンフィアとプリン

 

 

「まずはニンフィアとプリン。音を使った連携だ」

 

 

「ニンフィア、プリン、お願い!」

 

 

二匹が並んで前へ出る。

 

 

「最初はプリンのうたう。ニンフィアは相手の動きをよく見ていて」

 

 

「プリン、プリン、プリ~ン♪」

 

 

プリンの歌声が響く。

 

 

その間、ニンフィアはすぐに攻撃せず、相手役の動きを観察した。

 

 

「相手が歌を避けようと横へ動いたら、ニンフィアはスピードスターで進路を狙う。プリンは相手の動きに合わせて、歌う位置を変えてみよう」

 

 

ニンフィアがスピードスターを放つ。星形の光が相手役の移動先をかすめ、逃げ道を狭める。

 

 

プリンは歌を止めて安全な位置へ移動し、ニンフィアの射線を塞がない場所に立った。

 

 

「いいね! プリンが歌い続けることに固執しなかったのもいい判断だ」

 

 

レンは二匹に拍手を送った。

 

 

「二匹が同じことをするのではなく、それぞれが違う役割を担うのね。プリンが相手の注意を引き、ニンフィアが移動先を狙う……」

 

 

「そう。だけど、ここで気をつけたいことがある」

 

 

シンヤは二匹の間隔を指さした。

 

 

「味方の技が強いほど、互いの位置関係が重要になる。ニンフィアのハイパーボイスを使う場合、プリンがその進路にいれば巻き込まれる危険がある。味方だからといって、攻撃が当たらないわけじゃない」

 

 

レンはすぐにうなずいた。

 

 

「技を出す前に、仲間がどこにいるのかを確認する。そういうことね」

 

 

二匹は再び位置につき、今度は互いの距離を意識して動いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆連携その二――マリルリとクチート

 

 

「次はマリルリとクチート。素早く動く役と、攻撃を受け止めて反撃する役を組み合わせる」

 

 

レンは二匹を見た。

 

 

「マリルリが相手を動かして、クチートが攻撃するのかしら?」

 

 

「それも一つの方法だね。ただ、相手がマリルリだけを追いかけてくれるとは限らない。クチートも相手の動きを見ながら、自分で判断する必要がある」

 

 

「マリルリ、アクアジェット!」

 

 

マリルリが水をまとい、相手役の正面を勢いよく駆け抜けた。

 

 

相手役がマリルリを追って向きを変える。

 

 

「クチート、アイアンヘッド!」

 

 

クチートが踏み込み、相手役の側面へ攻撃を仕掛けた。

 

 

だが、シンヤはすぐに手を上げた。

 

 

「一度止めよう。今の連携は悪くない。でも、クチートが攻撃に集中しすぎると、マリルリが戻ってきたときに進路が重なる可能性がある」

 

 

レンは二匹を見比べた。

 

 

「マリルリが走り抜けた後、どこに戻るかまで考える必要があるのね」

 

 

「そうだよ。マリルリは速さを活かして相手を動かす。クチートはその動きを見て攻撃する。でも、攻撃の後にクチートが構え直す場所も、マリルリが次に動く場所も必要だ」

 

 

二度目の挑戦では、マリルリが相手の正面を横切った後、クチートから距離を取るように方向を変えた。

 

 

クチートはマリルリの動線を避けて踏み込み、アイアンヘッドを放つ。攻撃後もすぐに姿勢を整え、マリルリが次に動ける空間を確保した。

 

 

「今のよ!」

 

 

レンが声を上げる。

 

 

「二匹がそれぞれの得意なことを活かしているのに、お互いの邪魔をしていないわ!」

 

 

「それが大事なんだ。連携は、同時に攻撃することだけじゃない。味方が動きやすい場所を残すことも連携だよ」

 

 

 

 

 

 

 

◆連携その三――サーナイトとニンフィア

 

 

次に、レンはサーナイトとニンフィアを組ませた。

 

 

「この二匹なら、どんな連携ができるかしら?」

 

 

シンヤは少し考えてから答えた。

 

 

「ニンフィアが音と光で相手の注意を引き、サーナイトが相手の動きを見ながら位置を取る。まずはそれを試してみよう」

 

 

「ニンフィア、ハイパーボイス!」

 

 

強烈な音波が訓練場を駆け抜ける。

 

 

サーナイトはニンフィアの進路から離れ、相手役の動きを見極めた。

 

 

「サーナイト、サイコキネシス!」

 

 

相手役が音波を避けようと移動したところで、サーナイトがサイコキネシスを使い、相手役の動きを妨げるように力を加えた。

 

 

「いいね。ただし、味方のハイパーボイスが届く範囲に相手を押し戻すときは、ニンフィア自身にも影響が出ないように注意しよう」

 

 

「なるほど……。サーナイトの力で相手の動きを制限できても、ニンフィアの攻撃を当てる位置まで考えないといけないのね」

 

 

「そう。相手を動かせるなら、味方が攻撃しやすい方向へ誘導する。でも、無理に動かそうとして自分たちの位置関係を崩したら意味がない」

 

 

レンは二匹へ視線を向けた。

 

 

「もう一度よ。ニンフィアは攻撃の後、サーナイトが動ける空間を残して。サーナイトはニンフィアの技が届く範囲を意識してね」

 

 

二匹は再び挑戦した。

 

 

今度はニンフィアがハイパーボイスを放った後、素早く横へ移動。サーナイトは相手役の動きを見て、サイコキネシスでその進路を制限する。

 

 

相手役が動きを変えると、サーナイトは無理に押さえ込まず、ニンフィアの射線が通る方向へ誘導するように力を調整した。

 

 

「素晴らしいわ……!」

 

 

レンは思わず胸の前で手を組んだ。

 

 

二匹の技が重なる瞬間、音と光、そしてサイコキネシスの動きが一つの演目のように見えた。

 

 

しかし、ただ美しいだけではない。

 

 

相手役の進路は狭まり、二匹は互いの攻撃を邪魔せず、次の行動へ移れる位置を保っていた。

 

 

「今の連携は、見た目だけじゃなく実戦でも意味があるね」

 

 

シンヤが微笑んだ。

 

 

「相手の注意を引く役、動きを制限する役、攻撃を当てる役。それを状況に応じて入れ替えられれば、もっと強くなる」

 

 

サーナイトはレンを振り返った。

 

 

レンは優しくうなずく。

 

 

「ええ。あなたたちなら、もっと素敵な連携ができるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆連携その四――サーナイトとマリルリ

 

 

「最後に、サーナイトとマリルリも試してみよう」

 

 

シンヤの言葉に、レンは目を輝かせた。

 

 

「サーナイトの位置取りと、マリルリの速さを組み合わせるのね!」

 

 

「そう。ただし、マリルリが突進する方向と、サーナイトが相手の動きを制限する方向が重ならないようにしよう」

 

 

「サーナイト、サイコキネシス!」

 

 

サーナイトが相手役の動きを制限する。

 

 

「マリルリ、アクアジェット!」

 

 

マリルリが水をまとって突進した。

 

 

しかし、相手役の動きが予想より早く変わり、マリルリは狙った位置から外れてしまった。

 

 

「止めよう!」

 

 

シンヤの声で、二匹は動きを止めた。

 

 

「今の失敗は悪くないよ。サーナイトが相手の動きを制限することに成功しても、相手が必ずその位置に留まるとは限らない。マリルリはサーナイトの力だけを頼りにせず、相手の動きを自分でも見て判断する必要がある」

 

 

レンはマリルリの頭を優しく撫でた。

 

 

「そうね。サーナイトが作った機会を使う。でも、最後に攻撃するのはマリルリ自身の判断なのね」

 

 

もう一度挑戦する。

 

 

サーナイトが相手の動きを制限しようとする。相手役が動きを変えた瞬間、マリルリは突進を急がず、わずかに方向を修正した。

 

 

アクアジェットが相手役の側面を捉える。

 

 

「やったわ!」

 

 

レンが歓声を上げる。

 

 

シンヤも満足そうにうなずいた。

 

 

「今のはいいね。味方の技を信じながら、自分の目でも相手を見る。二匹がそれぞれ考えているからこそ、予想外の動きにも対応できるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆特訓のまとめ――美しさを実力へ

 

 

一通りの訓練が終わるころには、太陽が高く昇っていた。

 

 

レンのポケモンたちは少し疲れた様子だったが、どの顔にも充実感が浮かんでいた。

 

 

レンは全員を見渡し、柔らかく微笑んだ。

 

 

「今日は、とても勉強になったわ。今までは、技をどう美しく見せるかを考えることが多かったけれど……美しさの中に、実戦で役立つ工夫を組み込めるのね」

 

 

「そうだね。技の連携には、いろいろな形がある」

 

 

シンヤは指を折りながら説明した。

 

 

「一匹での連携なら、技をつなぐ順番や、技を使った後の位置取り。相手の動きを誘導する使い方もある。二匹での連携なら、役割分担や攻撃のタイミング、それから味方の邪魔をしない位置取りが重要になる」

 

 

レンはうなずいた。

 

 

「そして、どんなに綺麗な連携でも、相手が違う動きをすれば対応を変えなければならない……」

 

 

「その通り。決められた演技を再現するだけじゃなくて、相手の反応を見て組み替えられるようになれば、本当の強みになるよ」

 

 

サーナイトがレンのそばへ歩み寄った。

 

 

レンはその手を取り、額をそっと寄せる。

 

 

「あなたが進化してくれたことも、みんなが成長していることも、私はとても嬉しいわ。でも、これで完成じゃないのよね」

 

 

「サーナ!」

 

 

「ええ。一緒に、もっと強くなりましょう」

 

 

その様子を見ていたシンヤは、静かに笑った。

 

 

「今日の訓練で、連携の基本はかなり確認できた。次は相手が本気で攻撃してくる状況を想定して、連携を崩されても立て直せるか試してみよう」

 

 

レンは扇子を開き、いつもの優雅な笑みを浮かべた。

 

 

「ふふっ、望むところよ。次はあなたのポケモンたちにも協力してもらいましょうか」

 

 

 

「いいね。実戦形式なら、まだ見えていない課題も見つかるはずだ」

 

 

二人の視線が交わる。

 

 

一匹で技をつなぐ力。そして、二匹で互いの力を引き出す力。

 

 

美しさを追い求めるレンの感性は、実戦で勝つための戦術と結びつき始めていた。

 

 

そしてサーナイトにとっても、進化は新たな出発点にすぎない。

 

 

仲間たちとともに積み重ねていく経験が、これからどんな連携を生み出すのか。

 

 

5のしまの訓練場には、次の挑戦への期待が満ちていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。