ニドラン♂の理由は作者が初代の時、お世話になったポケモンだったからです。
マンキーに関しては進化先が増えた初代ポケモンということもあるので。
◆トキワシティのポケモンセンターへ
「……さて、どうするかな」
トキワシティのポケモンセンター。
ポケモンたちの回復を待つシンヤは、待合スペースの椅子に腰掛けながら、手元の六つのモンスターボールを眺めていた。
今回、新たに捕まえたポケモンは六匹。
ニドラン♂、ニドラン♀、オニスズメ、マンキー、ポニータ、ドード。
どのポケモンにも、それぞれ違った特徴があった。
ニドラン♂は、角や脚を使った攻撃だけでなく、距離を取った戦いにも対応できそうな柔軟さを見せた。
マンキーは、とにかく攻めることが好きそうな戦闘スタイル。ポッポを相手にしても、積極的に距離を詰めようとしていた。
オニスズメは空中戦に長け、ポニータは地上での機動力に優れている。ドードは二つの頭を活かした独特の動きが印象的だった。
ニドラン♀も、ニドラン♂とはまた違った可能性を秘めている。
――だが。
「全員を手持ちに入れるわけにもいかないんだよなぁ……」
シンヤは苦笑した。
ポケモンは、ただ集めればいいというものではない。
一緒に旅をする以上、それぞれの体調や性格を把握し、十分な世話とトレーニングをしてやる必要がある。
自分には実家の広大な敷地と、ポケモンの飼育や医療を担うスタッフたちという心強い環境がある。それでも、旅先で直接向き合える数には限りがある。
だからこそ、今の自分に必要なのは、数を増やすことよりも、誰と一緒に旅をするかを見極めることだった。
「よし。ニドラン♂とマンキー。この二匹は、俺の手持ちに加えよう」
シンヤは迷いなく決めた。
◆技のデパート、ニドキングへの期待
まず、ニドラン♂。
シンヤがこのポケモンを手持ちに入れたいと考えた理由は、進化後の姿にあった。
ニドキング。
力強い体格と高い戦闘能力を持つだけでなく、さまざまな種類の技を習得できることで知られるポケモンだ。
ゲームをやり込んできたシンヤにとって、ニドキングはまさに「技のデパート」と呼びたくなる存在だった。
もちろん、ここはゲームの世界そのものではない。
進化すれば自動的に何でも使えるようになるわけではないし、技マシンを使ったからといって、即座に完璧な技を繰り出せるとも限らない。
それでも、ニドラン♂自身に幅広い技を習得する素質があれば、将来の戦術は大きく広がる。
「ニドラン♂、ちょっと状態を見せてくれよ」
シンヤが声をかけると、ニドラン♂はぴょこんと顔を上げた。
その体を包むオーラを、シンヤの波動の眼が捉える。
体調、活力、戦意。
そして、習得している技と、その習熟度。
さらに意識を集中させると、攻撃動作の傾向や、どの程度の距離で力を発揮しやすいかという情報まで浮かび上がってきた。
(……なるほどな)
シンヤは目を細めた。
ニドラン♂は、近距離だけに特化しているわけではない。
角を使った攻撃では、相手との距離を詰める動きに鋭さがある。脚を使った動作にも、相手の体勢を崩そうとする工夫が見られた。
一方、距離を取った状態でも、相手の動きを観察しながら攻める機会をうかがえる。
中距離では、相手の出方を見て接近するか、いったん距離を保つかを判断する余地がある。
(近距離、中距離、遠距離……どの距離でも戦うための可能性があるのか。まだ技ごとの精度や実戦での安定性は確かめる必要があるけど、これは面白いぞ)
シンヤはニドラン♂の前にしゃがみ込んだ。
「お前、思った以上に器用なタイプなのかもしれないな」
「ニドッ!」
ニドラン♂は、褒められたことがわかったのか、どこか得意げに胸を張った。
その反応を見て、シンヤは思わず笑みを浮かべる。
(それに、戦意も高い。技の習得能力も期待できそうだな)
将来ニドキングに進化したとき、どんな技構成が合うのか。
どの技を主軸にするのか。
どんな相手にも対応できる万能型にするのか、それとも得意な戦法をさらに伸ばすのか。
考え始めると、いくらでも選択肢が浮かんでくる。
「ただし、焦って強くしようとは思わないからな。まずは今のお前を知るところからだ」
ニドラン♂は、シンヤの言葉を聞くように、じっとその顔を見つめていた。
◆マンキーの戦闘好きな性格
「次はお前だ、マンキー」
シンヤが声をかけると、マンキーは待っていましたと言わんばかりに飛び跳ねた。
「マンキーッ!」
「お、おう。元気だな……」
その様子だけでも、マンキーが活発な性格であることはよくわかる。
しかし、波動の眼を通して詳しく観察すると、シンヤは別の意味でも驚くことになった。
(こいつ……相当なバトル好きだな)
マンキーは、単に気が短いというだけではなかった。
相手と向き合い、動きを見て、攻撃を仕掛けることそのものに強い意欲を持っている。
戦いに対する意識が高く、攻撃を繰り出すことにためらいが少ない。
その一方で、攻めることに意識が向きすぎると、相手の反撃を受ける隙が生じる可能性もある。
(完全なアタッカー気質か。こいつは攻撃の才能を伸ばしつつ、冷静な判断力も身につけさせたいな)
シンヤの脳裏に、マンキーの進化後の姿が浮かぶ。
オコリザル。
そして、その先にあるコノヨザル。
もちろん、マンキーが進化する道筋や条件を、今からすべて決めつけるつもりはない。
だが、戦いへの意欲と攻撃的な気質を考えると、将来的に大きな可能性を秘めているように思えた。
「お前、バトルが好きなんだな?」
「マンキーッ!」
マンキーは拳を握り、元気よく返事をした。
「ははっ。よしよし。でもな、攻めるだけじゃ勝てないぞ。相手の動きを見て、攻撃を当てるタイミングを考えることも大事だからな」
シンヤがそう言うと、マンキーは首を傾げた。
どうやら、まだ言葉の意味を完全には理解していないらしい。
「まあ、これから少しずつ覚えていこう」
シンヤはマンキーの頭を軽く撫でた。
その瞬間だった。
波動の眼が捉えていた情報の中に、シンヤは奇妙な項目を見つけた。
「……ん?」
技の一覧。
そこには、マンキーが現在使用できる技だけでなく、まだ安定して使えない技や、習得の途中にある技も表示されていた。
そして、その中に――。
「……は?」
シンヤは思わず固まった。
◆まさかの三色パンチ!?
マンキーの技の項目には、驚くべき名前が並んでいた。
- ほのおのパンチ
- かみなりパンチ
- れいとうパンチ
- じごくづき
シンヤは、何度も目を瞬かせた。
(…………はいぃぃぃ!?)
もちろん、四つとも完成しているわけではない。
波動の眼が示しているのは、技としての動作やエネルギーの扱いを、マンキーが無意識に身につけようとしている状態だった。
炎を拳にまとわせる感覚。
電気を拳に集めるイメージ。
冷気を攻撃に乗せるための動き。
そして、相手の動きや意識を乱すような、じごくづきの攻撃動作。
どれもまだ未使用・未完成。
実戦で安定して使える段階には達していない。
それでも、普通なら見過ごせない情報だった。
(なんでマンキーが、こんな技を覚えかけているんだ!?)
シンヤはマンキーを見つめる。
マンキーは、何のことかわかっていない様子で、きょとんとしていた。
「マン?」
「いや、お前……自分が何をやろうとしているのか、わかってるか?」
「マンキー?」
「……わかってないよな。うん、知ってた」
シンヤは額に手を当てた。
波動の眼が示しているのは、技の完成ではない。
しかし、ただの思いつきとも違う。
マンキーの中には、それらの技を再現するための動きや感覚が、断片的に蓄積され始めているようだった。
では、なぜそんなことが起きているのか。
シンヤは、先ほどの戦いを思い返した。
マンキーは、ただポッポと戦っていただけではない。
これまでの行動を振り返れば、近辺でポケモンバトルを繰り広げていたトレーナーたちを、目にしていた可能性がある。
この22番道路は、ポケモンリーグへ続く道の近くにある。
各地から集まったトレーナーたちが、実力を試したり、旅の途中で腕を磨いたりしていても不思議ではない。
そして、マンキーは戦いに強い関心を持つポケモンだった。
(……まさか、ほかのトレーナーのバトルを見て、無意識に技を真似しようとしていたのか?)
炎をまとった拳。
電気を帯びた拳。
冷気を放つ拳。
相手の意識や動きを崩す攻撃。
そうした技を目にして、自分でもやってみたいと感じたのかもしれない。
ただし、見ただけですべての仕組みを理解できるわけではない。
炎や電気、冷気をどう生み出し、どう制御するのか。
どのような動作で攻撃に乗せるのか。
それらを自分の体で再現できるかどうかは、また別の問題だ。
それでも――。
(こいつ、技を観察して、自分のものにしようとする素質があるのか……!)
シンヤの目が輝いた。
これは、単純な攻撃力とは別の才能だ。
もしマンキーが、観察した技を自分なりに理解し、練習を重ねて使えるようになるのなら、将来の戦術は大きく広がる。
もっとも、技の種類を増やすことだけが正解ではない。
マンキー自身の体格や適性、エネルギーの扱い方に合わない技なら、習得に時間がかかったり、十分な威力を出せなかったりすることもあるだろう。
(まずは、どこまで自力で再現できるのかを調べる。いきなり全部を練習させるんじゃなくて、本人の得意分野を見極めないとな)
シンヤは、興奮する気持ちを抑えながらマンキーを見た。
「マンキー。お前、もしかしたらすごい才能を持ってるのかもしれないぞ」
「マンキーッ!」
マンキーは、褒められたことが嬉しいのか、ますます元気よく拳を突き上げた。
ただし、その顔には、自分がどんな技を覚えかけているのかという自覚はまるでなかった。
「……はは。まあ、まずは一緒に確かめていこうな」
シンヤはそう言って、マンキーの拳にそっと手を添えた。
◆ヒトカゲの「かみなりパンチ」に光明?
そこで、シンヤの頭に別の考えが浮かんだ。
(……待てよ?)
彼は、隣でこちらを見ていたヒトカゲに視線を向ける。
ヒトカゲには、今後覚えさせたい技がいくつもある。
その中でも、特に早い段階で習得を目指したい技のひとつが――。
かみなりパンチ。
水タイプのポケモンと戦う際に、炎タイプのヒトカゲが取れる選択肢を増やすための技だ。
もちろん、かみなりパンチを覚えたからといって、水タイプの相手に必ず勝てるわけではない。相手の技や動き、地形、ヒトカゲ自身の体力や技の習熟度によって戦況は変わる。
それでも、電気をまとった拳を使えるようになれば、戦術の幅が広がるのは間違いない。
そして今、目の前には――。
電気を拳に集める技を、無意識に習得しようとしているマンキーがいる。
(マンキーの技の習得過程を観察できれば、ヒトカゲがかみなりパンチを覚えるためのヒントになるんじゃないか?)
シンヤは、マンキーとヒトカゲを交互に見た。
もちろん、マンキーが覚えかけているからといって、ヒトカゲも同じように習得できるとは限らない。
ポケモンによって体の構造も、得意なエネルギーの扱い方も違う。
マンキーが拳に電気をまとわせる方法を見つけたとしても、ヒトカゲの場合は、炎を扱う感覚とは異なる電気エネルギーの制御を身につけなければならないかもしれない。
だが、観察する価値は十分にある。
「……これは、面白くなってきたぞ」
シンヤは、思わず笑みを浮かべた。
「マンキーの技の習得を調べながら、ヒトカゲのかみなりパンチ習得にも活かせるかもしれない。うまくいけば、お互いにとっていい刺激になるはずだ」
「ヒトカゲ!」
ヒトカゲは、自分の名前が出たことで反応した。
マンキーも、ヒトカゲのほうを向く。
二匹はしばらく互いを見つめ合い――。
「マンキー!」
「カゲーッ!」
なぜか、二匹そろって元気よく声を上げた。
「お、おう。やる気があるのはいいことだけど、今はポッポの回復を待ってる最中だからな。練習は全員の体調が整ってからだぞ」
シンヤは慌てて釘を刺した。
マンキーは少し残念そうにしながらも、拳を下ろす。
ヒトカゲも、尻尾の炎を揺らしながら、期待するような目でシンヤを見上げた。
(まずは休養。それから技の確認と基礎練習だ。焦らず、少しずつやっていこう)
シンヤは改めて、二匹の状態を確認した。
ニドラン♂には、幅広い技と戦い方を身につけられる可能性がある。
マンキーには、戦いを好む気質と、技を観察して再現しようとする不思議な才能がある。
そして、その才能は、ほかの仲間たちの成長にもつながるかもしれない。
旅立ってから、まだ一日も経っていない。
それなのに、すでに五匹のポケモンが手持ちにいる。
「……本当に、濃い一日だな」
シンヤは苦笑しながら、ポケモンセンターの窓の外を眺めた。
旅は始まったばかり。
この先、どんな出会いが待っているのか。
そして、自分のポケモンたちがどんな成長を見せてくれるのか。
考えるだけで、胸が高鳴った。
そのとき、回復を終えたポケモンたちを知らせる声が、カウンターの向こうから響いた。
「シンヤさん。お預かりしていたポケモンたちの回復が終わりましたよ!」
「ありがとうございます!」
シンヤは立ち上がり、ヒトカゲたちと一緒にカウンターへ向かった。
新しい仲間たちとの旅は、まだ始まったばかりだ。
そして彼は、この先のトレーニングで、マンキーの秘められた才能をさらに確かめていくことになる。
【シンヤの手持ち一覧】
・ヒトカゲ LV:9→LV:13
むじゃきな性格(実機で言う両刀型候補な性格)
ヒトカゲは新たなにえんまく・りゅうのいぶきを覚えた!
・ポッポ LV:10
せっかちな性格(実機で言う両刀型候補な性格)
ポッポは新たな技にかぜおこしを覚えた!
・コイキング LV:10(捕獲時)
いじっぱりな性格(実機で言う物理アタッカーな性格)
・ニドラン♂ LV:10(捕獲時)
やんちゃな性格(実機で言う両刀型候補な性格)
・マンキー LV:10(捕獲時)
いじっぱりな性格(実機で言う物理アタッカーな性格)
【実家のポケモン】
・コラッタ LV:9
・コダック LV:10
・ヤドン LV:10
・ニョロモ LV:10
・トサキント LV:10
・ニドラン♀ LV:10
ひかえめな性格(実機で言う特殊アタッカーな性格)
・オニスズメ LV:10
ようきな性格(実機で言う速攻物理アタッカーな性格)
・ポニータ LV:10
ようきな性格(実機で言う速攻物理アタッカーな性格)
・ドード LV:10
ようきな性格(実機で言う速攻物理アタッカーな性格)