ポケットモンスター~波動の眼を持つ少年~   作:レイザル

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これにて”特訓期間”はおしまい。まだメインディッシュ前のサブイベントがあるぜ


第79話 26匹の絆! 四天王カンナとの特訓、ついに終了!

 

5のしまにある別荘。

 

 

リーグ開催が近づくなか、敷地内の仮想フィールドでは、朝からポケモンたちが活発に動き回っていた。

 

 

岩場、森林、水辺、そして障害物のない平地。

 

 

再現されたさまざまなフィールドを舞台に、シンヤのポケモンたちは、それぞれの特性を生かした訓練を行っている。

 

 

「よし、次は岩場から森林への移行だ! フィールドが変わったからって、さっきまでの戦い方に固執するなよ!」

 

 

「グオオオオッ!」

 

 

リザードンが力強く翼を広げ、上空へ舞い上がった。

 

 

その視線の先では、ピジョットが木々の間を縫うように飛び、周囲の地形を確認している。

 

 

二匹はそれぞれ異なる高さを飛びながら、相手役の動きを探っていた。

 

 

「リザードンは上空から相手の注意を引く! ピジョットは木々の間を使って、相手の死角へ回り込め!」

 

 

シンヤが指示を出す。

 

 

しかし、二匹が動き始めた直後、相手役のポケモンが森林の奥へと移動した。

 

 

木々が視界を遮り、上空からの確認が難しくなる。

 

 

「……さて、どうする?」

 

 

シンヤは、あえて追加の指示を出さずに見守った。

 

 

リザードンは無理に森林へ突入せず、高度を維持して周囲を見渡す。

 

 

一方、ピジョットは木々の間を飛びながら、相手の移動先を探っていった。

 

 

やがてピジョットが一度だけ大きく鳴く。

 

 

その合図を受け、リザードンは進路を変更した。

 

 

二匹は別々の場所から相手を挟み込むように動き、逃げ道を制限していく。

 

 

「……よし!」

 

 

シンヤは小さく拳を握った。

 

 

以前なら、相手を見失った時点で焦って指示を重ねていたかもしれない。

 

 

だが、今の二匹は状況を見て、自分たちで判断しながら動いている。

 

 

そしてシンヤ自身も、すべてを細かく指示するのではなく、ポケモンたちが自分で考えられる余地を残せるようになっていた。

 

 

「ふふっ、ずいぶん頼もしくなったじゃない」

 

 

背後から声がした。

 

 

振り返ると、レンがサーナイトと一緒にこちらを眺めていた。

 

 

「レン。そっちの訓練は終わったのか?」

 

 

「ええ。サーナイトとニンフィアの連携を確認していたところよ。もっとも、カンナの要求は相変わらず厳しかったけれど」

 

 

「はは……。こっちも似たようなもんだよ」

 

 

「知っているわ。さっきから、あなたの悲鳴が聞こえていたもの」

 

 

「悲鳴って……。俺、そんな声出してたか?」

 

 

「あら、気づいていなかったの? ふふっ、夢中になると周りが見えなくなるのは、相変わらずね」

 

 

「……お前なぁ」

 

 

シンヤが呆れた顔をすると、レンは楽しそうに笑った。

 

 

そのやり取りを見ていたカンナも、静かに微笑む。

 

 

「二人とも、調子はよさそうね」

 

 

「カンナさん!」

 

 

「おはようございます、カンナ」

 

 

「おはよう。さあ、今日も始めましょうか」

 

 

カンナは仮想フィールドを見渡した。

 

 

「ただし、今日の訓練はいつもと少し違うわよ」

 

 

「……え?」

 

 

シンヤの顔がわずかに引きつる。

 

 

レンはそんな彼を見て、口元に手を当てた。

 

 

「あら、シンヤ。まさか、もう疲れちゃったの?」

 

 

「違う! カンナさんがこういう言い方をするときは、だいたい何かあるんだよ!」

 

 

「ふふっ、よく分かっているじゃない」

 

 

カンナは涼しい顔で頷いた。

 

 

「今日は、あなたたちの総仕上げを行うわ」

 

 

「総仕上げ……?」

 

 

シンヤとレンは顔を見合わせた。

 

 

「リーグの開催も近いでしょう? これ以上、無理に新しい課題を増やす必要はないわ。これまで身につけてきたことを確認して、今の自分たちに何ができるのかを確かめる。それが今日の目的よ」

 

 

「なるほど……」

 

 

シンヤは安堵の息を漏らした。

 

 

「つまり、最後の確認ですね」

 

 

「ええ。ただし、確認だからといって手を抜くつもりはないわよ?」

 

 

「……ですよね」

 

 

レンがくすりと笑った。

 

 

「ふふっ、最後まで気を抜けないわね。いいじゃない。ここまで来たんだから、とことん付き合ってあげるわ」

 

 

「その言い方、なんだか俺が付き合ってもらってるみたいじゃないか?」

 

 

「あら、違うの? あなた、昨日もカンナに追加の質問をして、結局ずいぶん遅くまで戦術を考えていたじゃない」

 

 

「うっ……」

 

 

「本当に、好きなことになると止まらないんだから」

 

 

「……否定はしない」

 

 

シンヤは苦笑した。

 

 

カンナは二人を見ながら、満足げに頷いた。

 

 

「それじゃあ、始めましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

          ◆

 

 

 

 

 

 

 

◆主力26匹、それぞれの戦い方

 

 

総仕上げの訓練では、シンヤの主力26匹が順番にフィールドへ出ていった。

 

 

もちろん、全員が同じ方法で戦うわけではない。

 

 

それぞれのポケモンには得意な戦い方があり、苦手な状況もある。

 

 

大切なのは、その特徴を理解したうえで、どう戦わせるかを考えることだった。

 

 

最初に登場したのは、リザードンとピジョット。

 

 

二匹は森林と岩場を組み合わせたフィールドで、空中から相手を追い込む訓練を行った。

 

 

リザードンが大きな翼で風を起こし、相手の注意を引きつける。

 

 

ピジョットはその風を利用しながら、木々の隙間を抜けて背後へ回り込んだ。

 

 

以前よりも無駄な動きが減り、互いの位置を意識した連携ができるようになっている。

 

 

「よし! いいぞ、二匹とも!」

 

 

シンヤの声に、リザードンが誇らしげに吠えた。

 

 

続いて、ギャラドスとコノヨザルが登場する。

 

 

水辺と岩場が隣接したフィールドでは、ギャラドスが水面から勢いよく飛び出し、相手の進路を大きく変える。

 

 

コノヨザルはその動きに合わせて地上を駆け、相手が体勢を崩した瞬間を狙う。

 

 

力強さを武器とする二匹だが、ただ正面から攻撃するのではない。

 

 

ギャラドスが相手を動かし、コノヨザルがその動きに対応する。

 

 

互いの力を引き出す戦い方が、少しずつ形になっていた。

 

 

「ギャラドス、相手を追いすぎるな! コノヨザルの動ける範囲を残せ!」

 

 

「ギャアアアッ!」

 

 

「コノッ!」

 

 

二匹はシンヤの指示を受け、動きを修正した。

 

 

その後も、ニドキングとニドクイン、バタフリーとスピアー、フシギバナとカメックスなど、さまざまな組み合わせで訓練が続いた。

 

 

ニドキングは力任せに突き進むだけでなく、岩場を利用して相手の進路を制限する。

 

 

ニドクインはその巨体を生かして味方を守りつつ、相手の動きを押し返す。

 

 

バタフリーは上空から戦場を見渡し、スピアーは隙を見逃さずに素早く接近する。

 

 

フシギバナは草木の多いフィールドで地形を利用し、カメックスは水辺を活用しながら安定した守りを見せた。

 

 

それぞれの個性が、少しずつ戦術へと結びついていく。

 

 

「……本当に、みんな強くなったな」

 

 

シンヤは感慨深げに呟いた。

 

 

ただレベルが上がっただけではない。

 

 

どの場所で戦うのか。

 

 

相手がどんな技を使うのか。

 

 

仲間がどこにいて、次に何をしようとしているのか。

 

 

そうした情報を踏まえて、各自が判断する力を身につけていた。

 

 

続いて登場したのは、ピカチュウだった。

 

 

「ピカチュウ、頼むぞ!」

 

 

「ピッカァ!」

 

 

シンヤの言葉に、ピカチュウは胸を張る。

 

 

その姿は、まさしく仲間たちをまとめる番長そのものだった。

 

 

相手役のポケモンが素早く動き回り、隙を探る。

 

 

ピカチュウはすぐには飛び込まず、相手の動きを見極めながら位置を調整した。

 

 

そして、相手が攻撃へ移ろうとした瞬間、鋭い動きで間合いを詰める。

 

 

「いいぞ! 相手の動きを見てから動けてる!」

 

 

「ピカッ!」

 

 

ピカチュウは得意げに尻尾を立てた。

 

 

シンヤが笑う。

 

 

「ははっ、相変わらず頼りになるな、番長!」

 

 

「ピカピカッ!」

 

 

まるで『当然だ』とでも言うような鳴き声だった。

 

 

その後も、フーディン、ゲンガー、ハガネール、エレキブル、スターミー、カビゴン、ケンタロス、ドサイドン、ハッサム、ハクリュー、ブーバーンたちが、それぞれの持ち味を生かして訓練に臨んだ。

 

 

フーディンは瞬間的な判断と位置取りを磨き、ゲンガーは相手の死角や視界の外を利用した立ち回りを確認する。

 

 

ハガネールとドサイドンは、頑丈な体をただ攻撃に使うのではなく、味方のために進路を確保したり、相手の突進を受け止めたりする役割も試した。

 

 

エレキブルは相手との距離を見極め、電気技を使うタイミングを調整する。

 

 

スターミーは水辺での機動力を生かし、カビゴンは自分の体格と持久力を踏まえながら、無駄な動きを減らす。

 

 

ケンタロスは直線的な突進だけに頼らず、相手の動きを読んで進路を変える。

 

 

ハッサムは接近戦での間合いを調整し、ハクリューは水辺や岩場での位置取りを工夫する。

 

 

ブーバーンは遠距離からの攻撃と接近された場合の対応を確認していた。

 

 

さらに、ブースター、サンダース、シャワーズの三匹も、それぞれの特性に合った戦い方を試していく。

 

 

ブースターは相手の炎技を警戒する必要がある場面でも、相性に頼りきらずに位置取りを考える。

 

 

サンダースは素早さを生かしながら、相手を追い回すだけでなく、味方が動きやすいように相手の注意を引きつける。

 

 

シャワーズは水辺での行動に磨きをかけ、相手が水場を利用しようとした場合の対処も学んでいった。

 

 

そして最後に登場したのは、ラプラスだった。

 

 

「よし、ラプラス! 水辺のフィールドで、相手の動きをよく見て戦おう!」

 

 

「クゥーン!」

 

 

ラプラスは穏やかに鳴きながら、水辺へと進んでいく。

 

 

水面を利用した移動、冷気への対応、仲間との連携。

 

 

これまでの特訓で学んだことを、ひとつずつ確かめるように動いていた。

 

 

すべての訓練が終わるころには、シンヤの主力26匹が、それぞれの課題に向き合ったことがはっきりと分かるようになっていた。

 

 

もちろん、全員が完璧になったわけではない。

 

 

しかし、それぞれが自分の得意分野を理解し、以前よりも柔軟に戦えるようになっている。

 

 

それこそが、今回の特訓で得られた最大の成果だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          ◆

 

 

 

 

 

 

 

◆レンもまた、前へ進む

 

 

一方のレンも、サーナイトやニンフィアたちとともに最後の確認を行っていた。

 

 

サーナイトがサイコキネシスで周囲の岩を動かし、ニンフィアがハイパーボイスで相手の注意を引きつける。

 

 

しかし、今回は最初から決まった連携を使うのではない。

 

 

相手の動きに合わせて、どちらが先に動くのかを変えていく。

 

 

「サーナイト、相手が右へ動いたら岩を動かして! ニンフィアは、今は攻撃しなくていいわ!」

 

 

「サー!」

 

 

「フィア?」

 

 

ニンフィアは一瞬だけレンを見たが、すぐに相手の動きへ意識を戻した。

 

 

相手が岩を避けて左へ動く。

 

 

その瞬間、ニンフィアがスピードスターを放った。

 

 

星形の光が相手の進路を制限し、サーナイトが岩の配置を変える。

 

 

二匹は相手の動きを見ながら、自然に役割を切り替えていた。

 

 

「そう、それでいいわ!」

 

 

レンは満足げに頷いた。

 

 

以前なら、最初に考えた演出や連携を成立させようと、多少の無理をしていたかもしれない。

 

 

だが、今は違う。

 

 

状況に合わせて動きを変えることも、ひとつの表現なのだ。

 

 

予定どおりに進まないからこそ、そこに新しい可能性が生まれる。

 

 

「ふふっ、あなたたちもずいぶん成長したわね」

 

 

レンが声をかけると、サーナイトとニンフィアは嬉しそうに鳴いた。

 

 

その後も、マリルリ、クチート、ピッピ、プリンたちが訓練に参加した。

 

 

マリルリはアクアジェットの勢いを細かく調整し、クチートはアイアンヘッドのあとに素早く体勢を整える。

 

 

ピッピはゆびをふるによって起こる予想外の状況にも落ち着いて対応し、プリンはうたうを使って相手の注意を引きつけながら、危険が迫れば無理をせず距離を取った。

 

 

それぞれの個性を生かしながら、以前よりも実戦的な動きができるようになっていた。

 

 

訓練を終えたレンは、ポケモンたちを順番に労った。

 

 

「みんな、お疲れさま。今日もよく頑張ったわね」

 

 

「サーナ!」

 

 

「フィア!」

 

 

「マリル!」

 

 

ポケモンたちの元気な声が響く。

 

 

レンは笑顔で頷いた。

 

 

「これなら、コンテストバトルでも自信を持って戦えそうね。もちろん、まだまだ磨くところはあるけれど」

 

 

その言葉を聞いたシンヤが、隣から声をかける。

 

 

「レンも、かなり成長したよな」

 

 

「あら、急にどうしたの?」

 

 

「いや、最初のころと比べたら、崩れた戦術から立て直すのがずっと速くなったと思ってさ」

 

 

「ふふっ、あなたにそう言われると、なんだか嬉しいわね」

 

 

レンは少しだけ目を細めた。

 

 

「でも、あなたも変わったわよ。以前より、ポケモンたちが自分で動くのを待てるようになったもの」

 

 

「そうかな?」

 

 

「ええ。前は、自分が考えた戦術を成功させるために、つい指示を重ねることがあったでしょう?」

 

 

「……ああ、確かに」

 

 

「今は、ポケモンたちが何を考えているのかを見ようとしている。自分の考えだけで戦場を動かそうとするんじゃなくて、みんなの判断を信じているのね」

 

 

シンヤは、少し照れくさそうに笑った。

 

 

「……みんなが俺の想像を超えてくるからな。俺も負けていられないって思うんだよ」

 

 

「あら、いいことじゃない。ふふっ、これからも頑張りなさいな」

 

 

「お前もな」

 

 

2人は揃って笑ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

          ◆

 

 

 

 

 

 

 

◆特訓終了のお知らせ

 

 

夕方。

 

 

すべての訓練を終えたシンヤ、レン、カンナの三人は、別荘の庭で休憩を取っていた。

 

 

ポケモンたちはそれぞれ休息を取り、食事や水分補給を済ませている。

 

 

シンヤは戦術ノートを開き、今日の訓練で気づいたことを整理していた。

 

 

その様子を見たカンナが、静かに声をかける。

 

 

「シンヤ、レン。少し話があるのだけれど」

 

 

「はい?」

 

 

「何でしょう?」

 

 

二人が顔を上げると、カンナは穏やかな笑顔を浮かべた。

 

 

「今日をもって、私との特訓は終了にしましょう」

 

 

「……え?」

 

 

シンヤは、思わず目を見開いた。

 

 

レンも驚いたようにカンナを見る。

 

 

「もう終わり、ということですか?」

 

 

「ええ。リーグの開催が近づいているでしょう? これからは新しい課題を増やすより、今まで身につけてきたことを整理して、コンディションを整える時間にしたほうがいいわ」

 

 

「でも……」

 

 

シンヤは、少しだけ名残惜しそうな顔をした。

 

 

カンナとの特訓は、厳しかった。

 

 

何度も戦術を崩され、思うようにいかず、悔しい思いもした。

 

 

それでも、そのたびに新しい発見があった。

 

 

自分の弱点を指摘され、ポケモンたちの成長を実感し、トレーナーとしての視野が広がっていく。

 

 

そんな日々が、今日で終わる。

 

 

「……もう少し、教わりたかったです」

 

 

シンヤが正直な気持ちを口にすると、カンナは優しく微笑んだ。

 

 

「そう言ってもらえるのは嬉しいわ。でも、私がいつまでもそばにいて指導していたら、今度はあなた自身が考えて判断する機会を奪ってしまうかもしれないでしょう?」

 

 

「……!」

 

 

「これから先は、あなた自身の戦いよ。リーグでは、私が隣から助言することはできない。どんな相手が待ち受けているのかも、どんな戦術を使ってくるのかも分からないわ」

 

 

カンナは、シンヤの目をまっすぐに見つめた。

 

 

「だからこそ、ここまで学んだことを自分の力に変えていきなさい。あなたには、それができるはずよ」

 

 

シンヤはしばらく黙っていた。

 

 

やがて、ゆっくりと頷く。

 

 

「……はい。今まで教えてもらったこと、絶対に無駄にはしません」

 

 

「ええ。期待しているわ」

 

 

カンナは続いてレンへ視線を向けた。

 

 

「レンもね。あなたは自分の感性を大切にしながら、実戦で使える技術を身につけてきた。ポケモンコンテストでも、自分らしい戦い方を忘れないで」

 

 

「ありがとう、カンナ。あなたに教えてもらったこと、ちゃんと活かしてみせるわ」

 

 

レンは笑顔で答えた。

 

 

「それに、せっかくここまで鍛えてもらったんだもの。中途半端な結果で終わらせるつもりはないわ」

 

 

「ふふっ、頼もしいわね」

 

 

カンナは満足そうに頷いた。

 

 

シンヤは立ち上がると、深々と頭を下げた。

 

 

「カンナさん。本当にありがとうございました!」

 

 

その声に、周囲にいたポケモンたちも反応する。

 

 

リザードンが大きく吠え、ピジョットが翼を広げる。

 

 

ニドキングやスターミーたちも、それぞれの声で感謝を伝えた。

 

 

カンナは、そんなポケモンたちを見て目を細める。

 

 

「あなたたちが頑張ったからこそ、ここまで成長できたのよ。私は、その手助けをしただけ」

 

 

「それでも、です!」

 

 

シンヤは顔を上げた。

 

 

「俺一人じゃ、気づけなかったことがたくさんありました。カンナさんに教えてもらったことがあったから、みんなと一緒にここまで来られたんです」

 

 

「……そう」

 

 

カンナは一瞬だけ目を伏せ、それから優しく微笑んだ。

 

 

「ありがとう、シンヤ。そう言ってもらえて、私も嬉しいわ」

 

 

 

 

 

 

          ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

◆四天王が見た、少年の未来

 

 

その夜。

 

 

シンヤとレンがポケモンたちの世話を終え、別荘へ戻ったあとも、カンナはしばらく庭に残っていた。

 

 

仮想フィールドは停止し、日中の激しい戦闘が嘘のように静まり返っている。

 

 

彼女は、今日までの特訓を振り返っていた。

 

 

シンヤは、最初から戦術を考えることが得意なトレーナーだった。

 

 

相手の技を利用し、地形を利用し、状況に応じて大胆な作戦を思いつく。

 

 

しかし、その発想の豊かさゆえに、自分の考えた戦術へ意識が向きすぎることもあった。

 

 

ポケモンたちが自分で判断する余地。

 

 

相手が仕掛けてくる二段構えの戦術。

 

 

戦場全体の位置関係。

 

 

そして、予定が崩れたあとにどう立て直すのか。

 

 

カンナは、そうした部分を重点的に鍛えてきた。

 

 

結果として、シンヤは短期間で大きく成長した。

 

 

もちろん、四天王である自分と同じ領域に到達したわけではない。

 

 

経験の差は、まだ大きい。

 

 

それでも、彼には経験を積み重ね、失敗から学び、自分のものに変えていく力がある。

 

 

それは、トレーナーとして大きな可能性だった。

 

 

「……あの子とリーグで当たるトレーナーは、なかなか大変でしょうね」

 

 

カンナは小さく笑った。

 

 

相手の戦術を見抜くだけでなく、状況に応じて柔軟に動く。

 

 

一度通じた作戦を、次の戦いでは別の形に変える。

 

 

そして、ポケモンたちの自主性を尊重しながら、必要な場面では的確に指示を出す。

 

 

今のシンヤは、特訓を始めたころとは明らかに違う。

 

 

「ふふっ……。リーグでどこまで進むのか、楽しみね」

 

 

もちろん、リーグは簡単な舞台ではない。

 

 

参加するトレーナーたちも、それぞれ努力を重ねてきたはずだ。

 

 

シンヤが必ず勝ち上がれる保証はない。

 

 

だが、少なくとも、今の彼ならどんな相手が現れても、簡単には諦めないだろう。

 

 

カンナは空を見上げた。

 

 

「シンヤ、レン。あなたたちの戦いを楽しみにしているわ」

 

 

その声は、夜の静けさの中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

◆リーグへ向けて

 

 

翌朝。

 

 

シンヤは、いつもより少し早く目を覚ました。

 

 

窓の外には、穏やかな海が広がっている。

 

 

これまで毎日のように聞こえていた、カンナの指示やポケモンたちの激しい鳴き声は、今日は聞こえない。

 

 

特訓は終わったのだ。

 

 

「……終わったんだな」

 

 

シンヤはベッドから起き上がり、窓の外を眺めた。

 

 

寂しさがないわけではない。

 

 

しかし、それ以上に、これから始まるリーグへの期待が大きかった。

 

 

これまでに出会ったトレーナーたち。

 

 

共に旅をしてきた仲間たち。

 

 

そして、何より、ここまで一緒に成長してきたポケモンたち。

 

 

彼らと積み重ねてきた経験を、リーグの舞台で試すときが近づいている。

 

 

「よし……。ここからは、俺たちの力で勝ち上がる番だ」

 

 

シンヤは拳を握った。

 

 

そのとき、部屋の扉が軽くノックされた。

 

 

「シンヤ、起きている?」

 

 

レンの声だった。

 

 

「起きてるぞ。どうした?」

 

 

「朝食の前に、少し話しておこうと思って。入ってもいい?」

 

 

「ああ、いいぞ」

 

 

扉が開き、レンが顔を出した。

 

 

いつものように、いたずらっぽい笑みを浮かべている。

 

 

「ふふっ、いよいよ特訓も終わりね。なんだか、少し寂しい気もするわ」

 

 

「そうだな。でも、いつまでも特訓しているわけにもいかないし」

 

 

「ええ。これからは、実際のリーグで力を試す番だもの」

 

 

レンは窓辺に歩み寄り、海を眺めた。

 

 

「ねえ、シンヤ。リーグでは、どんな相手と戦うことになるのかしらね?」

 

 

「さあな。強いトレーナーがたくさんいるだろうし、簡単には勝たせてもらえないと思う」

 

 

「ふふっ、それでいいじゃない。簡単に勝てる相手ばかりじゃ、つまらないもの」

 

 

レンは振り返った。

 

 

「せっかくカンナに鍛えてもらったんだもの。今まで出会ったことのない相手とも戦ってみたいわ。自分たちがどこまで通用するのか、確かめたい――――まあレンはコンテストだからリーグには出ないのだけど」

 

 

「……ああ。俺も同じ気持ちだ」

 

 

シンヤは力強く頷いた。

 

 

「みんなと一緒に、どこまで行けるのか。俺も確かめたい」

 

 

「なら、決まりね」

 

 

レンは微笑んだ。

 

 

二人は顔を見合わせ、笑った。

 

 

特訓の日々は終わった。

 

 

だが、それは二人の成長が終わったという意味ではない。

 

 

むしろ、これまで積み重ねてきたものを、本当の舞台で試すための始まりだった。

 

 

シンヤは、26匹の主力ポケモンたちを思い浮かべる。

 

 

リザードン、ピジョット、ギャラドス、コノヨザル、ニドキング、ニドクイン。

 

 

バタフリー、スピアー、ピカチュウ、フシギバナ、カメックス。

 

 

フーディン、ゲンガー、ハガネール、エレキブル、スターミー。

 

 

カビゴン、ケンタロス、ドサイドン、ハッサム、ハクリュー、ブーバーン。

 

 

そして、ブースター、サンダース、シャワーズ、ラプラス。

 

 

それぞれに個性があり、得意なことがあり、共に積み重ねてきた経験がある。

 

 

彼らとなら、きっとどんな相手にも立ち向かえる。

 

 

「……よし、みんな。リーグに向けて、最後の準備を始めよう!」

 

 

シンヤの声が、別荘に響いた。

 

 

ポケモンたちが、それぞれ元気な声で応える。

 

 

その声を聞きながら、レンも笑顔で頷いた。

 

 

リーグの開催は、もう間近。

 

 

四天王カンナとの特訓を終えた二人は、それぞれの仲間とともに、次なる舞台へと進み始めたのだった。

 

 

 

 

 

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