ポケットモンスター~波動の眼を持つ少年~   作:レイザル

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第81話 氷の伝説を追え! フリーザーとの遭遇!

◆炎の次は、氷の伝説!

 

 

5の島しまのヴィラ。

 

 

朝食を終えたシンヤは、テーブルの上に広げた地図を見つめていた。

 

 

その隣には、昨日ともしび山で捕獲したファイヤーのモンスターボールが置かれている。

 

 

「ファイヤーに続いて、次はフリーザー……か」

 

 

シンヤは地図上の山岳地帯に印をつけた。

 

 

フリーザーの目撃情報が伝わる場所はいくつか存在するが、伝承や目撃証言が必ずしも正確とは限らない。野生のポケモンが見間違えられた可能性もあれば、フリーザー自身が移動している可能性もある。

 

 

それでも、シンヤには一つ、気になっている場所があった。

 

 

「氷の伝説なら、やっぱりふたご島周辺が有力だよな」

 

 

 

 

 

ふたご島。

 

 

 

 

 

カントー地方の南方に位置する、海に囲まれた洞窟島だ。内部には広大な洞窟と地下水脈が広がり、場所によっては氷に覆われた空間も存在する。

 

 

フリーザーを探すなら、調査する価値は十分にあった。

 

 

「よし。今日はふたご島を目指そう」

 

 

シンヤは地図を畳み、バッグへしまった。

 

 

ファイヤーとの戦いでは、ギャラドス、ニドキング、ハッサム、リザードンが力を尽くしてくれた。

 

 

特に、メガシンカしたハッサムとの連携は大きな収穫だった。

 

 

しかし、あの戦いで得た教訓は、単にメガシンカすれば勝てるというものではない。

 

 

相手の動きと戦場の変化を観察し、仲間の強みを引き出すこと。

 

 

それこそが、カンナとの特訓で身につけた力だった。

 

 

「フリーザーはこおり・ひこうタイプ。炎技が有効なのは間違いないけど、昨日のファイヤーみたいに単純な火力勝負に持ち込むわけにはいかないな」

 

 

氷と飛行。

 

 

地形によっては、こちらの足場そのものが敵になる。

 

 

しかも、氷の洞窟なら水が凍りつき、視界も悪くなり、普段なら問題にならない小さな判断ミスが致命傷につながりかねない。

 

 

「氷を溶かすだけじゃ駄目だ。相手の飛行ルートを制限して、確実に攻撃を当てる方法を考えないと」

 

 

シンヤは立ち上がり、出発の準備を始めた。

 

 

今度の相手は、冷気をまとった伝説の鳥。

 

 

ファイヤーとはまったく異なる強さを持つ相手だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ふたご島の静寂

 

 

 

フーディンのテレポートでふたご島へ到着したシンヤは、島の入口で足を止めた。

 

 

「……寒っ!」

 

 

外はまだ穏やかな気候だったが、洞窟の入口からは明らかに冷たい風が吹き出していた。

 

 

地面には薄い霜が広がり、岩壁の一部には氷柱が垂れ下がっている。

 

 

「なるほど。外とは空気がまるで違うな」

 

 

シンヤは防寒具を取り出して身につけた。

 

 

さらに、足元を確認するために小型のライトを準備し、滑り止めを装着する。

 

 

「よし。これなら多少は動きやすい」

 

 

洞窟に入ると、外の波音が徐々に遠ざかっていった。

 

 

代わりに聞こえてくるのは、地下水の滴る音と、遠くで氷がきしむような音だけ。

 

 

シンヤは慎重に進みながら、周囲の様子を観察した。

 

 

氷の表面には、何かが通過したような跡がある。

 

 

ただし、足跡の形だけでフリーザーだと断定することはできない。

 

 

「この冷気……自然にできた氷だけじゃないな」

 

 

シンヤは壁に手を近づけた。

 

 

触れる寸前で、ひやりとした感覚が指先に伝わってくる。

 

 

「周囲の温度が均一じゃない。こっちの通路はかなり冷たいのに、少し先はそこまででもない……」

 

 

フリーザーがこの付近にいるのなら、冷気の分布に何らかの影響が出ているのかもしれない。

 

 

だが、シンヤは決めつけず、慎重に奥へ進んだ。

 

 

やがて、洞窟が大きく開けた空間へとつながった。

 

 

天井は高く、中央には凍りついた湖が広がっている。

 

 

その向こうには、青白い光を放つ氷の柱が何本もそびえていた。

 

 

 

 

 

そして――。

 

 

湖の中央に、一羽のポケモンがいた。

 

 

青く澄んだ身体。

 

 

長く優雅な尾羽。

 

 

翼を広げるたび、細かな氷の粒が周囲へ舞い散る。

 

 

その姿は、まるで冬そのものが鳥の形を取ったかのようだった。

 

 

「……フリーザー!」

 

 

シンヤは思わず声を漏らした。

 

 

伝説の鳥は、ゆっくりと顔を上げた。

 

 

その瞳が、まっすぐにシンヤを捉える。

 

 

洞窟の空気が、さらに冷たくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆氷の鳥からの試練

 

 

シンヤはすぐにはモンスターボールを手に取らなかった。

 

 

まずは相手の様子を観察する。

 

 

フリーザーは威嚇するように翼を広げているわけではない。

 

 

しかし、湖の中央から動こうともせず、シンヤの一挙一動を見つめていた。

 

 

その気配から伝わってくるのは、警戒心と、侵入者の力量を見極めようとする静かな意思だった。

 

 

「初めまして、フリーザー。俺はシンヤ。あんたに会いに来たんだ」

 

 

シンヤは両手を広げ、敵意がないことを示した。

 

 

「昨日、ともしび山でファイヤーと戦った。あいつは強かったよ。俺の仲間たちも、全力でぶつかってくれた」

 

 

フリーザーはわずかに首を傾けた。

 

 

「俺は、あんたとも戦いたい。そして、もし認めてもらえたなら、仲間になってほしいと思ってる」

 

 

フリーザーはしばらく沈黙していた。

 

 

やがて、その翼がゆっくりと持ち上がる。

 

 

 

 

 

――キィィィィィン……。

 

 

 

 

 

透き通るような鳴き声が、洞窟全体へと響き渡った。

 

 

その瞬間、湖面が凍りつく音が連鎖する。

 

 

氷の柱から霜が広がり、シンヤの足元にも白い結晶が走った。

 

 

「おっと……!」

 

 

シンヤはすぐに後ろへ下がった。

 

 

フリーザーは湖の上から飛び立ち、洞窟の天井近くを旋回する。

 

 

その姿が通り過ぎるたび、空気中に細かな氷の粒が舞い上がった。

 

 

シンヤは目を細める。

 

 

「……なるほど。まずは、この場所で戦えるかどうか試してくるわけか」

 

 

フリーザーは急降下した。

 

 

翼を広げ、氷の粒をまとったままシンヤへ向かってくる。

 

 

「来たな! 出てこい、エレキブル!」

 

 

シンヤが投げたボールから、巨大なエレキブルが姿を現した。

 

 

「エレキブル!」

 

 

全身に電気を帯びたエレキブルは、両腕を振り上げてフリーザーを迎え撃つ。

 

 

「まずは電気技で飛行を牽制する! エレキブル、かみなりパンチ!」

 

 

エレキブルの拳に電気が走る。

 

 

しかし、フリーザーは攻撃範囲に入る直前で急上昇し、氷の柱の間を縫うように飛び去った。

 

 

「速い……!」

 

 

フリーザーは空中で旋回すると、今度は上方から氷のつぶてを降らせた。

 

 

「エレキブル、避けろ!」

 

 

エレキブルは大きく横へ跳ぶ。

 

 

氷のつぶてが地面へ突き刺さり、砕けた氷が周囲へ飛び散った。

 

 

すかさずエレキブルは両腕を構え、電撃を放つ。

 

 

「ほうでん!」

 

 

青白い電撃が洞窟内へ広がった。

 

 

フリーザーは翼をたたんで急上昇し、電撃の広がる範囲から抜け出す。

 

 

それでも、放電の余波が氷の柱を揺らした。

 

 

シンヤはすぐに周囲を確認する。

 

 

「洞窟の中だから、電気の逃げ道も考えないと……。むやみに広範囲の技を使えば、氷が崩れて俺たちまで巻き込まれる」

 

 

ファイヤーとの戦いでは、岩場を崩して相手の飛行ルートを制限した。

 

 

だが、ここで同じことをすれば、足場が崩れて危険な状況になりかねない。

 

 

「地形を利用するにしても、壊すんじゃなくて、残っている地形を使う必要があるな」

 

 

フリーザーは天井近くを旋回している。

 

 

シンヤはエレキブルの様子を見た。

 

 

「エレキブル、もう少しだけ付き合ってくれ!」

 

 

エレキブルは力強く頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆電撃を通す道

 

 

「エレキブル、れいとうパンチ……じゃないな。相手は氷の使い手だ。こっちの得意な距離で戦うぞ!」

 

 

シンヤは言い直すと、素早く指示を出した。

 

 

「かみなりパンチで、あの氷柱を直接狙うな! フリーザーが降りてくる場所を牽制しろ!」

 

 

エレキブルは電気をまとった拳を振るい、地面へ向けて電撃を放った。

 

 

電撃は氷柱を避け、湖の周囲の岩場へと走る。

 

 

フリーザーは進路を変えた。

 

 

「そうだ……!」

 

 

シンヤは目を輝かせた。

 

 

フリーザーは電撃そのものを恐れているわけではない。

 

 

しかし、エレキブルの攻撃範囲に入ることは避けている。

 

 

ならば、無理に当てようとするのではなく、相手が通りたい場所を制限すればいい。

 

 

「エレキブル、今度は左側! ほうでん!」

 

 

電撃が広がる。

 

 

フリーザーは右へ旋回した。

 

 

その進路には、天井から垂れ下がる氷柱があった。

 

 

「今だ、かみなりパンチ!」

 

 

エレキブルは地面を蹴り、飛び上がる。

 

 

フリーザーは翼をひねってかわしたものの、エレキブルの拳が羽先をかすめた。

 

 

フリーザーは距離を取り、再び上昇する。

 

 

「よし、触れた!」

 

 

だが、喜んだのも束の間だった。

 

 

フリーザーは翼を大きく広げ、洞窟内に冷気を放った。

 

 

瞬く間に地面が凍りつき、エレキブルの足元が滑りやすくなる。

 

 

「まずい、足場が……!」

 

 

フリーザーは旋回しながら、氷のつぶてを連続して放つ。

 

 

エレキブルは拳で氷を砕きながら耐えたが、凍った地面では踏ん張りが利かない。

 

 

「エレキブル、いったん下がれ!」

 

 

エレキブルは滑りながらも岩場へ退いた。

 

 

シンヤはフリーザーを見上げる。

 

 

「電気技は有効だけど、あの飛行能力を崩せないままじゃ、決定打にならない……」

 

 

ファイヤーとの戦いでは、メガハッサムを使って相手の動きを制限した。

 

 

しかし、今回は洞窟内という制約がある。

 

 

むやみに岩や氷を壊せば、崩落を招く。

 

 

では、どうするか。

 

 

シンヤは凍った湖面へ視線を向けた。

 

 

湖の縁には岩が露出しており、その周囲だけは比較的安定している。

 

 

「……そうか。湖の中央へ誘導する必要はない。むしろ、こっちが安定した場所を確保して、そこを基点に戦えばいいんだ」

 

 

シンヤはエレキブルのボールを手に取った。

 

 

「エレキブル、戻れ。よくやった」

 

 

エレキブルは悔しそうに唸ったが、シンヤの判断に従ってボールへ戻った。

 

 

「次は、別の角度から攻める!」

 

 

シンヤは新たなボールを手にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆鋼の翼、再び!

 

 

「頼む、ハッサム!」

 

 

ハッサムが姿を現す。

 

 

ファイヤーとの戦いでメガシンカを経験したハッサムは、シンヤの顔を見上げると、すぐに戦闘態勢へ入った。

 

 

「今回は氷の相手だ。お前の鋼の身体なら、氷技への耐性を生かせる。けど、相手は飛行タイプでもある。油断するなよ」

 

 

ハッサムは鋏を鳴らした。

 

 

フリーザーは上空からハッサムを見つめる。

 

 

鋼タイプは氷技に強い。

 

 

だが、ハッサムは炎技に弱く、飛行タイプの攻撃にも警戒が必要だ。

 

 

フリーザーの攻撃をすべて受け止められるわけではない。

 

 

それでも、氷技を主軸とする相手に対して、ハッサムの耐性は大きな利点になる。

 

 

「ハッサム、バレットパンチ!」

 

 

ハッサムは岩場を蹴り、フリーザーへ向かって飛び上がった。

 

 

鋼の拳が閃く。

 

 

フリーザーは翼をひねって回避したが、ハッサムは追撃せず、近くの岩壁へ着地した。

 

 

「そうだ。無理に追うな!」

 

 

ハッサムは岩壁を蹴り、再び跳躍する。

 

 

フリーザーが氷のつぶてを放つ。

 

 

しかし、ハッサムは鋼の腕で氷を弾き、空中で身体をひねって進路を変えた。

 

 

「シザークロス!」

 

 

両腕の鋏が交差する。

 

 

フリーザーは上昇して攻撃をかわしたが、その動きによって洞窟の天井へ近づいた。

 

 

「いいぞ……!」

 

 

シンヤはその位置関係を見逃さなかった。

 

 

フリーザーは天井に近づくと、大きく旋回する余地が少なくなる。

 

 

一方、ハッサムは岩壁を足場にして方向を変えられる。

 

 

「ハッサム、もう一度バレットパンチ! 相手を湖の中央へ押し込むんだ!」

 

 

ハッサムは連続して跳躍し、フリーザーの進路を塞ぐように攻撃を繰り出す。

 

 

フリーザーは翼を広げ、氷の粒を放って反撃した。

 

 

だが、ハッサムは氷の粒を弾きながら、少しずつ距離を詰めていく。

 

 

そして、フリーザーが湖の中央へ移動した瞬間。

 

 

「今だ、シザークロス!」

 

 

ハッサムの鋏が、フリーザーの翼をかすめた。

 

 

フリーザーは体勢を崩し、湖面へ向かって降下する。

 

 

「よしっ!」

 

 

だが、フリーザーは着地する直前に翼を広げ、湖面すれすれで上昇した。

 

 

そのまま鋭く旋回し、ハッサムへ向かって氷の風を放つ。

 

 

ハッサムは岩壁へ飛び移ったものの、冷気をまともに浴び、動きが鈍った。

 

 

「ハッサム!」

 

 

シンヤはすぐに判断した。

 

 

「戻れ! よくやった!」

 

 

ハッサムがボールへ戻る。

 

 

シンヤはそのボールを強く握った。

 

 

フリーザーは、こちらが地形を利用していることを理解し始めている。

 

 

一つの戦法に固執すれば、すぐに対応される。

 

 

「……さすが伝説のポケモンだな。こっちが考えたことを、そのまま通してはくれないか」

 

 

シンヤは次のボールを取り出した。

 

 

「なら、こっちも新しい手を見せるまでだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆メガシンカ――大地を駆ける鋼の巨体!

 

 

「出てこい、ハガネール!」

 

 

大きな音とともに、巨大なハガネールが岩場へ姿を現した。

 

 

鋼の身体が洞窟の光を反射し、重々しい音を立てながら地面へ降り立つ。

 

 

「ハガネール!」

 

 

フリーザーは一瞬だけ飛行ルートを変えた。

 

 

ハガネールの巨体は、洞窟の通路を塞ぐほどの存在感がある。

 

 

しかも、地面を移動する能力に優れ、鋼タイプの耐性によって氷技にも強い。

 

 

シンヤは周囲の岩場を確認した。

 

 

「ハガネール。今回は、無理に相手を追いかけなくていい。ここを拠点にして、相手が攻めてきたところを迎え撃つぞ」

 

 

ハガネールは重々しく頷いた。

 

 

「まずはストーンエッジ! ただし、天井は狙うな。湖の周囲にある岩場を使うんだ!」

 

 

ハガネールが地面を叩く。

 

 

岩の刃が湖の周囲へ突き出し、フリーザーが降下できる場所を少しずつ限定していく。

 

 

フリーザーは上空で旋回し、氷のつぶてを放った。

 

 

「ハガネール、アイアンテールで弾き飛ばせ!」

 

 

ハガネールは長い尾を振り回し、飛来する氷を次々と弾き飛ばす。

 

 

その間に、シンヤはハガネールの足元へ視線を落とした。

 

 

氷が広がっている場所でも、岩が露出している地点なら比較的安定している。

 

 

ハガネールは重い身体を支えられるうえ、足場を踏みしめる力も強い。

 

 

「いいぞ。そのまま位置を保て!」

 

 

フリーザーは上空からハガネールを見下ろした。

 

 

そして、翼を大きく広げる。

 

 

次の瞬間、猛烈な冷気が洞窟全体を包み込んだ。

 

 

湖面が一斉に凍りつき、岩場にまで霜が広がっていく。

 

 

ハガネールの身体にも氷が付着し、動きが鈍くなる。

 

 

「くっ……!」

 

 

シンヤは歯を食いしばった。

 

 

フリーザーは単に氷を放つだけではない。

 

 

周囲の環境そのものを、自分に有利な状態へ変えようとしている。

 

 

「ハガネール、いったん下がれ!」

 

 

ハガネールはゆっくりと岩場の奥へ退いた。

 

 

シンヤはその巨体を見つめた。

 

 

「……ハガネール。お前なら、もう一段階上へ進めるか?」

 

 

シンヤはメガストーンを取り出した。

 

 

ハガネールは、その石を見つめる。

 

 

やがて、長い身体を持ち上げ、力強く鳴いた。

 

 

「ハガネール!」

 

 

その声に、迷いはなかった。

 

 

シンヤは笑みを浮かべる。

 

 

「よし。俺たちの力を見せてやろう!」

 

 

メガストーンが輝いた。

 

 

光がハガネールの身体を包み込み、鋼の鱗が次々と変化していく。

 

 

身体を覆う装甲がさらに硬質化し、全身から強い光が放たれた。

 

 

そして、光が消えた時。

 

 

そこに立っていたのは、より巨大で、より強固な鋼の身体を持つ――メガハガネールだった。

 

 

「ハガネール!」

 

 

その咆哮が洞窟に響き渡る。

 

 

フリーザーは上空で旋回しながら、その姿を見つめていた。

 

 

シンヤは力強く指示を出す。

 

 

「ハガネール、ストーンエッジ!」

 

 

メガハガネールが地面を叩く。

 

 

巨大な岩の刃が湖の周囲へ突き出し、フリーザーが降下できる場所をさらに狭めた。

 

 

フリーザーは翼を広げ、氷のつぶてを放つ。

 

 

「アイアンテール!」

 

 

メガハガネールは尾を振り、氷のつぶてを弾き飛ばす。

 

 

そのまま身体を低く構え、フリーザーの動きを待った。

 

 

フリーザーは急降下した。

 

 

翼をたたみ、氷をまとってメガハガネールへ突進する。

 

 

「今だ! アイアンテール!」

 

 

メガハガネールは尾を振り抜いた。

 

 

 

 

 

 

――ガァァンッ!

 

 

 

 

 

 

鋼の尾がフリーザーの身体をかすめ、衝撃が洞窟に響き渡る。

 

 

フリーザーは体勢を崩したものの、すぐに翼を広げて上昇した。

 

 

だが、その飛行ルートは先ほどよりも限定されている。

 

 

メガハガネールが岩場を確保しているため、フリーザーは自由に降下できる場所を選びにくくなっていた。

 

 

「よし……! ここまで来れば!」

 

 

シンヤはフリーザーの動きを追った。

 

 

「ハガネール、ストーンエッジ! 進路を塞げ!」

 

 

岩の刃がフリーザーの前方へ突き出す。

 

 

フリーザーは急旋回して回避した。

 

 

その瞬間、メガハガネールが身体をひねり、別の岩場から攻撃を繰り出す。

 

 

フリーザーは再び上昇しようとしたが、天井が近い。

 

 

翼を広げる角度が制限され、飛行の自由度がわずかに落ちた。

 

 

「今だ!」

 

 

メガハガネールの尾が閃いた。

 

 

フリーザーは翼をひねって避けようとしたものの、尾の先端が片翼に命中する。

 

 

「キィィィッ!」

 

 

フリーザーは大きく体勢を崩し、湖面へと降下した。

 

 

だが、着地する寸前に翼を広げ、氷の上へ滑り込むように降り立った。

 

 

メガハガネールは追撃せず、岩場で構えを保っている。

 

 

シンヤは静かに頷いた。

 

 

「……これなら、戦える」

 

 

しかし、フリーザーの目には、まだ闘志が宿っていた。

 

 

ここからが、本当の勝負だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆氷の翼を超えて

 

 

フリーザーは、凍りついた湖面に静かに立っていた。

 

 

その周囲に、青白い冷気が集まっていく。

 

 

メガハガネールは岩場で身体を低く構え、相手の動きを警戒していた。

 

 

シンヤは周囲を見回した。

 

 

氷の柱。

 

 

凍った湖。

 

 

安定した岩場。

 

 

そして、洞窟の天井。

 

 

ここまでの戦いで分かったことは多い。

 

 

フリーザーは空中での機動力に優れ、冷気によって戦場を変化させる。

 

 

一方で、洞窟内では天井や氷柱が飛行ルートを制限する。

 

 

こちらが地形を壊しすぎれば危険だが、地形を残したまま使えば、フリーザーの自由を少しずつ削ることができる。

 

 

「ハガネール、ここからは俺の合図に合わせて動いてくれ!」

 

 

メガハガネールが頷いた。

 

 

フリーザーが翼を広げる。

 

 

冷気が渦巻き、無数の氷の粒が浮かび上がった。

 

 

「来るぞ!」

 

 

フリーザーは氷の粒を一斉に放った。

 

 

「ハガネール、アイアンテール!」

 

 

鋼の尾が大きく振るわれる。

 

 

氷の粒が次々と弾き飛ばされ、周囲へ散った。

 

 

その隙にフリーザーは上昇し、天井付近を旋回する。

 

 

「追わなくていい! ストーンエッジで、右側の岩場を固めろ!」

 

 

メガハガネールが地面を叩く。

 

 

岩の刃が突き出し、右側の降下ルートが狭まった。

 

 

フリーザーは左へ進路を変える。

 

 

「次は左だ!」

 

 

メガハガネールが尾を振り、岩場の一部を崩して通路を塞ぐ。

 

 

ただし、天井には攻撃しない。

 

 

崩落を避けながら、地上の移動経路だけを制限していく。

 

 

フリーザーは旋回を繰り返した。

 

 

その動きが、徐々に大きくなっていく。

 

 

「……よし。狙いどおりだ」

 

 

 

シンヤは拳を握った。

 

 

フリーザーは、飛行そのものを封じられているわけではない。

 

 

だが、降下して攻撃を仕掛けるたびに、こちらが待ち構えている岩場へ誘導されてしまう。

 

 

自由に飛び回ることができても、攻撃の選択肢が限られていく。

 

 

「ハガネール、最後の一押しだ! ストーンエッジ!」

 

 

岩の刃が、フリーザーの降下地点を囲むように突き出した。

 

 

フリーザーは翼を広げ、上昇しようとする。

 

 

しかし、その進路には氷柱があった。

 

 

フリーザーは咄嗟に身体をひねり、氷柱を避ける。

 

 

その瞬間、メガハガネールが尾を振り抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

――ドガァッ!

 

 

 

 

 

 

鋼の尾がフリーザーの身体を捉えた。

 

 

フリーザーは湖面へと落下し、氷の上を滑った。

 

 

静寂が戻る。

 

 

メガハガネールは岩場で構えたまま、フリーザーを見つめていた。

 

 

シンヤは息を整えた。

 

 

「……どうだ、フリーザー」

 

 

フリーザーはゆっくりと翼を広げようとした。

 

 

だが、すぐには飛び立てない。

 

 

それでも、その瞳にはまだ誇りが宿っていた。

 

 

シンヤはメガハガネールをボールへ戻した。

 

 

「ありがとう。お前のおかげで、最後まで戦えた」

 

 

そして、フリーザーへ向き直る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆伝説の鳥が選ぶ道

 

 

シンヤはモンスターボールを手に取った。

 

 

しかし、ファイヤーの時と同じく、すぐには投げなかった。

 

 

「フリーザー。あんたは本当に強かった」

 

 

フリーザーは静かにシンヤを見つめる。

 

 

「最初は、空中での動きにまったくついていけなかった。電気技も、鋼の攻撃も、簡単には当てさせてもらえなかった」

 

 

シンヤは苦笑した。

 

 

「でも、戦ってみて分かったことがある。あんたはただ空を飛んでいるだけじゃない。冷気で環境を変えて、自分が戦いやすい場所を作っていたんだな」

 

 

フリーザーは翼をわずかに動かした。

 

 

「だから俺も、地形を使って戦い方を変えた。正面から追いかけるんじゃなくて、あんたが降りてくる場所を考えたんだ」

 

 

シンヤはモンスターボールを握り直した。

 

 

「俺は、あんたを仲間にしたいと思ってる。だけど、無理やり従わせるつもりはない」

 

 

彼はフリーザーの目を見つめた。

 

 

「もし、俺と一緒に旅をしてみたいと思ってくれたなら……このボールに触れてくれ」

 

 

フリーザーは動かなかった。

 

 

しばらく、シンヤを見つめ続ける。

 

 

そして、ゆっくりと翼を広げた。

 

 

シンヤは身構えた。

 

 

だが、フリーザーは攻撃してこなかった。

 

 

その翼から、細かな氷の粒が舞い上がる。

 

 

洞窟の中に、透き通るような光が広がった。

 

 

フリーザーはシンヤの前へ歩み寄ると、彼の手にあるモンスターボールを見つめた。

 

 

そして――。

 

 

くちばしで、ボールの中央をそっとつついた。

 

 

シンヤは目を見開いた。

 

 

「……いいのか?」

 

 

フリーザーは短く鳴いた。

 

 

その声は、静かでありながら、はっきりとした意思を感じさせた。

 

 

シンヤは笑みを浮かべた。

 

 

「ありがとう。これからよろしくな、フリーザー!」

 

 

フリーザーの身体が赤い光に包まれる。

 

 

光はモンスターボールへと吸い込まれ、ボールが静かに閉じた。

 

 

カチッ。

 

 

一度。

 

 

二度。

 

 

三度。

 

 

ボールは揺れなかった。

 

 

「……よしっ!」

 

 

シンヤは思わず拳を握った。

 

 

「フリーザー、ゲットだ!」

 

 

洞窟の中に、喜びの声が響き渡った。

 

 

これで、ファイヤーに続いて二羽目。

 

 

残る伝説の鳥は、あと一羽だ。

 

 

シンヤはフリーザーのボールを胸元に掲げた。

 

 

「ファイヤーに続いてフリーザーまで仲間になってくれるなんて……。本当に、すごいことになってきたな」

 

 

彼は仲間たちのボールを見つめた。

 

 

エレキブルが電撃で相手の動きを牽制し、ハッサムが鋼の身体で氷技に耐え、メガハガネールが地形を利用してフリーザーの行動範囲を制限した。

 

 

それぞれの役割が、勝利につながった。

 

 

シンヤは深く息を吐いた。

 

 

「みんな、ありがとう。お前たちがいてくれたから、ここまで来られた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆残る一羽、サンダーへ

 

 

洞窟を出ると、海風が頬を撫でた。

 

 

シンヤは空を見上げる。

 

 

青い空には、雲がゆっくりと流れていた。

 

 

その景色を見ていると、次に待つ相手の姿が思い浮かぶ。

 

 

黄色い身体。

 

 

鋭い翼。

 

 

そして、空気を震わせる電撃。

 

 

「……残るはサンダー、か」

 

 

シンヤはフリーザーのボールをバッグへしまった。

 

 

ファイヤーとの戦いでは、相手の火力と飛行能力に苦しめられた。

 

 

フリーザーとの戦いでは、冷気と地形の変化への対応が必要だった。

 

 

では、サンダーはどうだろう。かつて、無人発電所で見た時のことを思い出す

 

 

電撃をまとい、空を自在に飛び回る伝説の鳥。

 

 

相手の攻撃を受け止めるだけでは、勝負にならない。

 

 

「次は電気技への対策だけじゃない。空中からの攻撃をどう防ぐか、それに……地面タイプの使い方も考えないとな」

 

 

シンヤは少し考え、笑みを浮かべた。

 

 

「まあ、考えるのは帰ってからでいいか。まずは無事に戻って、みんなに報告しよう」

 

 

彼は島の港へ向かって歩き始めた。

 

 

バッグの中には、二羽の伝説の鳥を宿したモンスターボール。

 

 

炎と氷。

 

 

相反する力を持つ二体が、今やシンヤの仲間となった。

 

 

そして、三羽目の伝説が待つ場所へ向けて、彼の旅は続いていく。

 

 

「待ってろよ、サンダー。次はお前の番だ!」

 

 

 

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