ポケットモンスター~波動の眼を持つ少年~   作:レイザル

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第82話「雷鳴の荒野! サンダーの超高速空中戦を攻略せよ!」

◆波動の眼が捉えた雷鳥

 

 

5のしまの別荘。

 

 

朝食を終えたシンヤは、テーブルの上に広げた地図をじっと見つめていた。

 

 

ともしび山でファイヤーを捕獲し、双子島でフリーザーとの激闘を制した。

 

 

残る伝説の鳥ポケモンは、あと一匹。

 

 

「……サンダー、か」

 

 

以前、一度だけ目にしたことがある。あの圧倒的な速度と、周囲の空気さえ震わせるような電撃。遠目に見ただけでも、その存在感はファイヤーやフリーザーに劣らなかった。

 

 

だが、今回の捜索には一つ、気になる点があった。

 

 

無人発電所。

 

 

サンダーと縁の深い場所ではあるが、以前、ロケット団が起こした騒動の影響もあって、今のサンダーがそこにいるとは限らない。

 

 

「発電所にいなかったら、周辺を探すしかないな」

 

 

「また一人で出かけるつもり?」

 

 

背後から声が飛んできた。

 

 

振り返ると、レンが腕を組んで立っていた。少しだけ不満そうな顔だが、口元にはいつもの悪戯っぽい笑みが浮かんでいる。

 

 

「今回はちゃんと、出かける前に言おうと思ってたんだけどな」

 

 

「へえ。ずいぶん進歩したじゃない。前に勝手に出かけたときは、帰ってきてからのお説教が必要だったものね?」

 

 

「……あれは悪かったって」

 

 

「ふふっ、わかってる。だから今回は、帰ってきたら話を聞かせて。伝説の鳥を三匹も追いかけるなんて、あなたくらいよ」

 

 

「三匹目はまだ見つけてもいないんだけどな」

 

 

「見つけるつもりなんでしょ?」

 

 

レンは当然のように言い切った。

 

 

シンヤは苦笑し、腰のボールを確認する。

 

 

「行ってくる。今回は相手の能力を見極めることを優先する。無理に捕まえようとはしない」

 

 

「それならいいわ。……でも、無事に帰ってきて。あなた、相手が強いほど楽しそうな顔をするから、少し信用できないのよね」

 

 

「そんな顔してるか?」

 

 

「してるわ。自覚がないのが、また厄介なの」

 

 

レンの笑みに見送られ、シンヤは別荘を後にした。

 

 

目指すのは、かつてサンダーを目撃したことのある無人発電所周辺。

 

 

そして、波動の眼が告げる気配の正体を確かめることだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆無人発電所の外側

 

 

無人発電所へと続く道。

 

 

シンヤは周囲を警戒しながら、ゆっくりと歩いていた。

 

 

波動の眼を開く。

 

 

視界の奥に、通常の景色とは異なる波動の流れが浮かび上がった。

 

 

生き物の気配。大地に残る熱。風の流れ。そして――遠くから、鋭く脈打つ巨大な波動。

 

 

「……やっぱりいる」

 

 

ただし、発電所の建物内ではない。

 

 

気配は、その外側。切り立った岩場が連なる一帯から感じられた。

 

 

シンヤは発電所の入り口まで進み、内部を確かめる。人の気配はなく、サンダーの姿もない。

 

 

電気設備の残骸が風にさらされているだけだった。

 

 

「ここじゃない。なら、あの岩場だ」

 

 

建物を離れ、岩場へ向かう。

 

 

しばらく進むと、視界が開けた。

 

 

海風が吹きつける断崖。その一角に、黄色い巨鳥が翼をたたんでいた。

 

 

サンダー。

 

 

羽を休めているだけのように見えるが、その体から放たれる電気は周囲の岩肌を時折、青白く照らしている。

 

 

シンヤは距離を保ったまま立ち止まった。

 

 

「見つけたぞ……!」

 

 

波動の眼が捉えるサンダーの波動は、荒々しく、鋭い。ファイヤーの燃え上がるような波動とも、フリーザーの静謐な波動とも違う。

 

 

まるで、嵐そのものが翼を得たかのようだった。

 

 

そのとき、サンダーが目を開く。

 

 

黄色い眼がシンヤを捉えた。

 

 

「……!」

 

 

次の瞬間、サンダーの翼が大きく広がった。

 

 

 

 

 

バチバチバチッ!

 

 

 

 

 

電光が岩場を走り、強烈な風がシンヤの服をはためかせる。

 

 

敵意というより、侵入者への警戒。そして、目の前の人間が何者なのかを見定めるような視線だった。

 

 

シンヤは一歩前に出る。

 

 

「俺はシンヤ!俺を覚えているかサンダー! あの時は挑戦できなかったが……お前と本気で戦いたい!」

 

 

サンダーが鋭く鳴いた。

 

 

その声に応えるように、周囲の雲が厚くなっていく。

 

 

シンヤは最初のボールを手に取った。

 

 

「相手は空中戦のスペシャリスト。速さを真正面から追いかけても勝ち目はない。なら――動ける場所を減らす!」

 

 

ボールを投げる。

 

 

「行け、ドサイドン!」

 

 

大地を踏みしめ、ドサイドンが岩場に立った。

 

 

サンダーが空へ舞い上がる。

 

 

伝説の鳥との戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆第一戦――大地を砕き、空を狭める

 

 

「ドサイドン、ステルスロック!」

 

 

ドサイドンが両腕を振り上げ、岩場のあちこちに鋭い岩片を浮かび上がらせた。

 

 

岩片は地面に落ちることなく、空中に固定される。サンダーが低空飛行で接近しようとすれば、その進路を脅かす障害となる。

 

 

サンダーは一瞥すると、翼を大きく広げた。

 

 

「来るぞ!」

 

 

 

 

 

バリバリバリッ!

 

 

 

 

 

雷撃が一直線に走る。

 

 

しかし、ドサイドンは避けない。電撃はその巨体を直撃したものの、地面タイプの性質によって電気技は効果を持たなかった。

 

 

「よし。電気技は通らない。だが、それだけで勝てる相手じゃない!」

 

 

サンダーはすぐさま高度を上げた。

 

 

「ストーンエッジ!」

 

 

ドサイドンが地面を踏み砕く。

 

 

 

 

 

 

 

ゴゴゴゴッ!

 

 

 

 

 

 

岩場から巨大な岩の刃が、かなりの数、地面から突き出した。サンダーは翼を傾け、紙一重でそれらを避ける。

 

 

だが、かわした先にも岩の刃が伸びる。

 

 

「右に逃げたら、次は左! 飛ぶ場所を選ばせるんだ!」

 

 

ドサイドンは岩を連続して突き上げる。サンダーは高速で旋回し、岩の隙間を縫うように飛んだ。

 

 

一発も当たらない。

 

 

それでも、サンダーが自由に飛べる空間は少しずつ狭まっていた。

 

 

「いいぞ、ドサイドン! もう一度、ストーンエッジ!」

 

 

サンダーは急上昇した。

 

 

そのまま翼を折りたたみ、全身を槍のようにして急降下する。

 

 

「ゴッドバードか!」

 

 

全身を光に包んだサンダーが、凄まじい速度で突っ込んできた。

 

 

「迎え撃て! れいとうパンチ!」

 

 

ドサイドンは拳に冷気を集中させる。

 

 

サンダーが間合いに入った瞬間、ドサイドンは横へ踏み込み、すれ違いざまに拳を振り抜いた。

 

 

 

 

 

ドゴォッ!

 

 

 

 

 

氷をまとった拳がサンダーの翼の付け根をかすめる。

 

 

完全な直撃ではない。だが、サンダーの軌道がわずかに乱れた。

 

 

その隙に、ドサイドンはもう一度ストーンエッジを放つ。

 

 

サンダーは上空へ逃れたが、翼の一部に岩の破片がかすった。

 

 

初めて、伝説の鳥の動きが止まった。

 

 

ほんの一瞬だけ。

 

 

しかし、シンヤには十分だった。

 

 

「よし……! ドサイドン、戻れ!」

 

 

サンダーが体勢を整えるより早く、ドサイドンがボールに戻る。

 

 

「交代か……」と、サンダーが言葉を発するはずもない。

 

 

だが、その視線は次に出てくる相手を警戒していた。

 

 

シンヤは二つ目のボールを投げた。

 

 

「次はお前だ、エレキブル!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆第二戦――岩場を駆ける電撃

 

 

エレキブルが両腕を広げ、岩場に立つ。

 

 

サンダーは一気に距離を取った。

 

 

「やっぱり離れるか。なら、こっちから近づく!」

 

 

「エレキブル、岩を使え! 回り込め!」

 

 

エレキブルはドサイドンが砕いた岩の陰に身を隠しながら、横方向へ走り出した。

 

 

サンダーが十万ボルトを放つ。

 

 

 

 

 

 

 

バチィッ!

 

 

 

 

 

 

電撃はエレキブルに吸い込まれるように吸収。特性:でんきエンジンだ。

これによってエレキブルの素早さが上がる。

 

 

岩場の上に立ったエレキブル。

 

 

「そこからかみなり!」

 

 

エレキブルが腕を振り上げる。

 

 

雷雲から稲妻が落ち、サンダーを襲った。

 

 

サンダーは翼をひねってかわし、直後に反撃する。

 

 

 

 

 

 

ゴォォォッ!

 

 

 

 

 

高温の熱風が岩場を包み込む。

 

 

エレキブルは腕を交差させて耐えたものの、熱風に押されて後退した。

 

 

「くっ、やっぱり遠距離から撃ち合うだけじゃ駄目か!」

 

 

サンダーは上空から旋回し、エレキブルの死角へ回り込む。

 

 

突風が渦を巻き、エレキブルを岩場から引きはがそうとする。

 

 

「踏ん張れ! 岩をつかめ!」

 

 

エレキブルは岩の出っ張りに指を食い込ませ、強引に体勢を保った。

 

 

その頭上をサンダーが通過する。

 

 

「今だ、飛び出せ!」

 

 

エレキブルは岩を蹴って跳び上がった。

 

 

サンダーは急旋回して避けようとするが、エレキブルは空中で体をひねり、進路を塞ぐように腕を伸ばす。

 

 

「かみなりパンチ!」

 

 

 

 

 

 

バチバチバチッ!

 

 

 

 

 

 

拳がサンダーの胴体に叩き込まれた。

 

 

サンダーは大きく羽ばたいて距離を取る。エレキブルも岩場へ着地したが、風圧に押されて片膝をついた。

 

 

互いに、簡単には引かない。

 

 

「いいぞ。だけど、追いすぎるな!」

 

 

シンヤはエレキブルの様子を見て判断した。

 

 

サンダーの速度に合わせて跳び続ければ、先にエレキブルの体力が尽きる。ここは追撃よりも、相手に余計な動きを強いるべきだ。

 

 

「かみなり! 岩場の上を狙え!」

 

 

エレキブルの雷が岩場の上部を打ち砕いた。

 

 

崩れた岩が斜面を転がり、サンダーの低空飛行ルートを塞ぐ。

 

 

サンダーは上昇を余儀なくされた。

 

 

「そうだ。飛ぶ高さも、速度も、少しずつ選ばせる!」

 

 

しかし、サンダーはすぐに反撃の姿勢を取る。

 

 

翼が光を帯びた。

 

 

ゴッドバード。

 

 

「エレキブル、戻れ!」

 

 

シンヤは即座にボールを向けた。

 

 

サンダーの突進が岩場を砕く。エレキブルは光に包まれてボールへ戻り、直後にゴッドバードが地面をえぐった。

 

 

シンヤは息を吐いた。

 

 

「危なかった……。でも、十分だ」

 

 

サンダーの飛行経路は、確実に限定され始めている。

 

 

次に出すのは、地上で相手の隙を狙えるポケモンだ。

 

 

「ニドキング、頼む!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆第三戦――毒を刻む一撃

 

 

ニドキングが岩場に立ち、サンダーを睨み上げる。

 

 

「まずは10万ボルトを誘え! それからヘドロウェーブ!」

 

 

サンダーはすぐに電撃を放った。

 

 

しかし、地面タイプのニドキングには通用しない。

 

 

ニドキングは電撃をものともせず、両腕を振り上げた。

 

 

紫色の波が岩場を走り、サンダーの飛行経路を覆う。

 

 

サンダーは急上昇してかわした。

 

 

「やっぱり上か……! なら、もう一度ヘドロウェーブ!」

 

 

ニドキングは波を広げ、サンダーが降下しようとする場所を塞ぐ。

 

 

サンダーは左右へ揺れながら、わずかな隙間を探していた。

 

 

「来るぞ、ニドキング!」

 

 

サンダーは急降下した。

 

 

ゴッドバードではない。低空から一気に接近し、ニドキングの反応を試すような突進だった。

 

 

「ギリギリまで引きつけろ……!」

 

 

ニドキングは動かない。

 

 

サンダーが目前に迫る。

 

 

「今だ! かわして、カウンター!」

 

 

ニドキングは身を低くして横へ転がり、サンダーの突進を紙一重でかわした。

 

 

その直後、全身をひねって反撃の拳を叩き込む。

 

 

 

 

 

 

ドゴッ!

 

 

 

 

 

サンダーの体が横へ流れた。

 

 

「そのままどくどく!」

 

 

ニドキングが放った紫色の液体が、サンダーの羽根に付着する。

 

 

サンダーはすぐさま上空へ逃れたが、体を包む波動にわずかな乱れが生じていた。

 

 

毒が回り始めたのだ。

 

 

「よし……! これで、時間が経つほどお前には負担がかかる!」

 

 

だが、サンダーは弱っていることを悟らせまいとするかのように、翼を広げた。

 

 

強烈な風が吹き荒れ、ニドキングを岩場の端まで押し流す。

 

 

ニドキングは爪を岩に食い込ませて踏みとどまったが、風圧で体勢を崩した。

 

 

「無理するな、戻れ!」

 

 

ニドキングはボールへ戻る。

 

 

サンダーは空を旋回した。毒の影響で、さっきまでのような鋭さには陰りが見え始めている。

 

 

それでも、空中戦の主導権はまだサンダーにあった。

 

 

シンヤは次のボールを手に取った。

 

 

「ここからが本番だ。ゲンガー、頼む!」

 

 

紫色の影が岩場に現れる。

 

 

「ゲンゲロゲェェ~~~~!」

 

 

ゲンガーは不敵に笑い、サンダーを見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆第四戦――影に潜むメガゲンガー

 

 

「ゲンガー、まずは影に潜め!」

 

 

ゲンガーは岩場に落ちる影へと滑り込んだ。

 

 

その姿が、すっと消える。

 

 

サンダーは上空を旋回し、地上の気配を探った。

 

 

雷撃が岩場を走る。

 

 

しかし、ゲンガーの姿はない。電撃は岩を砕いただけで終わった。

 

 

「今だ。メガシンカ!」

 

 

シンヤのメガリングが輝いた。

 

 

ゲンガーの体が光に包まれ、次の瞬間、強烈なエネルギーが周囲へ広がる。

 

 

メガゲンガー。

 

 

体の輪郭はさらに鋭くなり、地面に伸びる影は、まるで別の生き物のように揺らめいていた。

 

 

「メガシンカしたゲンガーなら、影を使った立ち回りもさらに生かせる……!」

 

 

サンダーが熱風を放つ。

 

 

炎を含んだ風が岩場をなめるように走った。

 

 

だが、ゲンガーは岩の影から別の影へと移り、熱風の中心を避けていた。

 

 

「たたりめ!」

 

 

影の中から、黒紫色のエネルギーが噴き上がる。

 

 

毒によって弱っていたサンダーに、たたりめが突き刺さった。

 

 

サンダーは苦しげに鳴き、翼をばたつかせる。

 

 

「続けて、あくのはどう!」

 

 

ゲンガーが放った黒い波動が、サンダーの進路を横切る。

 

 

サンダーは身をひねってかわしたが、直後に影から飛び出したゲンガーが、別角度からたたりめを放った。

 

 

サンダーは上空へ逃れようとする。

 

 

しかし、毒の影響で、旋回の鋭さが少しずつ失われていた。

 

 

「そうだ。お前は速い。でも、速く動くたびに毒が体力を削る。無理に動けば、隙が生まれる!」

 

 

サンダーは大きく翼を広げた。

 

 

猛烈な風が岩場を覆い、ゲンガーの潜んでいた影さえ揺らす。

 

 

ゲンガーは地面へ沈み込むようにして風をやり過ごしたが、サンダーの風圧に押され、岩場の端へ追い込まれた。

 

 

シンヤはすぐに判断する。

 

 

「ゲンガー、戻れ! 十分に仕事をした!」

 

 

ゲンガーは笑うように鳴いて、ボールへ戻った。

 

 

メガシンカの光が消える。

 

 

サンダーは上空に浮かんでいたが、その動きには明らかな疲労がにじんでいた。

 

 

それでも、まだ戦う意志は消えていない。

 

 

シンヤは五つ目のボールを手に取った。

 

 

「ここからは、確実に地面へ降ろす!」

 

 

「フーディン、行け!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆第五戦――超能力で空を封じる

 

 

フーディンが岩場に立ち、スプーンを構えた。

 

 

サンダーは即座に距離を取る。

 

 

「警戒してるな……。フーディン、相手の動きをよく見ろ!」

 

 

サンダーは高速で旋回し、フーディンの背後へ回り込もうとした。

 

 

しかし、フーディンは振り返らない。

 

 

サンダーが急降下する直前、その動きを察知したかのように、フーディンのスプーンがわずかに動いた。

 

 

「サイコキネシス!」

 

 

見えない力がサンダーを包み込む。

 

 

サンダーは翼を広げて抵抗したが、体が空中で止まった。

 

 

万全なサンダーであれば振りほどける。だが、ここまでのバトルで蓄積されているダメージに状態異常が

彼から力を奪っているのだ。

 

 

「よし、そのまま地面へ!」

 

 

フーディンが腕を下ろす。

 

 

サンダーの体が地面へ引き寄せられた。

 

 

 

 

 

 

 

ドォンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

岩場に着地させられたサンダーが、すぐさま立ち上がろうとする。

 

 

「逃がすな! サイコキネシスを維持しろ!」

 

 

フーディンは集中を続けた。

 

 

しかし、サンダーは翼を激しく動かし、周囲に強烈な風を巻き起こす。

 

 

岩片が舞い上がり、フーディンの足元を揺らした。

 

 

集中が乱れる。

 

 

サンダーはその隙に拘束を振りほどき、再び空へ舞い上がった。

 

 

「くっ……! やっぱり一度捕まえただけじゃ駄目か!」

 

 

フーディンは追撃しようとするが、サンダーが高度を取ったことで、再び照準を合わせるのが難しくなった。

 

 

「戻れ、フーディン!」

 

 

シンヤは無理をさせずに交代させる。

 

 

ここまでの戦いで、サンダーの速度は落ちている。毒も回り、岩場には障害物が増えた。飛行経路も限定され、何度も急旋回を強いられている。

 

 

それでも、空を自由に飛ぶサンダーを地上から捕まえ続けるのは難しい。

 

 

だからこそ、最後は――空中戦で決着をつける。

 

 

シンヤは最後のボールを掲げた。

 

 

「行くぞ、リザードン!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆第六戦――炎と雷、最後の空中戦

 

 

リザードンが翼を広げて飛び立った。

 

 

サンダーも翼を大きく広げ、上空で向かい合う。

 

 

炎を宿す竜と、雷をまとった伝説の鳥。

 

 

両者の間で、風が渦巻いた。

 

 

「リザードン、ここからは空中戦だ。相手の速度に付き合うんじゃない。動きを読んで、進路を絞れ!」

 

 

リザードンが低く鳴いた。

 

 

サンダーが先に動く。

 

 

熱風が空を走る。

 

 

リザードンは翼を傾けて上昇し、熱風の端をかすめるようにかわした。

 

 

「よし! りゅうのまい!」

 

 

リザードンが空中で体をひねり、力強く舞う。

 

 

その動きとともに、体に力がみなぎっていく。

 

 

サンダーは間髪入れずに10万ボルトを放った。

 

 

 

 

 

 

バリバリバリッ!

 

 

 

 

 

リザードンは翼を大きく打ち、雷撃の軌道から外れる。

 

 

「無理に追うな! サンダーが次に動く場所を見ろ!」

 

 

シンヤの波動の眼が、サンダーの波動の揺らぎを捉える。

 

 

速度はまだ高い。だが、毒の影響で、方向転換の瞬間にわずかな遅れが生じている。

 

 

リザードンはその遅れを見逃さなかった。

 

 

サンダーが急旋回する。

 

 

「今だ! ドラゴンクロー!」

 

 

リザードンの爪が緑色のエネルギーを帯びる。

 

 

二体は空中で交錯した。

 

 

 

 

 

ガキィンッ!

 

 

 

 

 

ドラゴンクローがサンダーの翼を捉えた。

 

 

サンダーは体勢を崩しながらも、すぐに距離を取る。

 

 

「まだ来るぞ!」

 

 

サンダーは上昇し、翼を折りたたんだ。

 

 

 

 

ゴッドバード。

 

 

 

 

 

全身を光に包み、一直線に突っ込んでくる。

 

 

「リザードン、正面から受けるな! 最後まで引きつけろ!」

 

 

リザードンは逃げない。

 

 

サンダーが迫る。

 

 

風が裂け、光が膨らむ。

 

 

そして――衝突の寸前。

 

 

「上へかわして、かみなりパンチ!」

 

 

リザードンは翼を大きく打ち、斜め上へと急上昇した。

 

 

ゴッドバードがその下を通り抜ける。

 

 

サンダーは急停止しようとするが、毒と疲労の影響で、方向転換がわずかに遅れた。

 

 

その一瞬を、リザードンは逃さない。

 

 

「今だぁっ!」

 

 

 

 

 

バチィィィッ!

 

 

 

 

 

リザードンの拳に雷が走る。

 

 

かみなりパンチが、サンダーの体に叩き込まれた。

 

 

サンダーは大きく弾き飛ばされ、岩場の上空をよろめきながら旋回する。

 

 

それでも、翼を動かそうとした。

 

 

だが、もう速度は戻らない。

 

 

「リザードン、距離を取れ!」

 

 

リザードンは追撃せず、サンダーの正面で翼を広げた。

 

 

サンダーは数秒間、空中で踏みとどまろうとした。

 

 

やがて、その翼がゆっくりと下がる。

 

 

大きな体が岩場へと降りていき、サンダーは地面に足をついた。

 

 

戦いは終わった。

 

 

シンヤはリザードンを呼び戻し、サンダーへと歩み寄った。

 

 

「……やったな」

 

 

だが、サンダーはまだ倒れたままではなかった。

 

 

ゆっくりと顔を上げ、シンヤを見つめる。

 

 

その眼には、戦いを通して認めた者への、鋭い敬意が宿っていた。

 

 

シンヤはモンスターボールを手に取る。

 

 

「お前の速さは、本当にすごかった。地面タイプで電気技を防げても、それだけじゃ何も解決しなかった。みんなで少しずつ、お前の動きを制限するしかなかったんだ」

 

 

サンダーは低く鳴いた。

 

 

シンヤはボールを差し出す。

 

 

「俺と一緒に来てくれないか?」

 

 

サンダーはしばらくボールを見つめていた。

 

 

そして――

 

 

コツン。

 

 

自ら額をボールに触れさせた。

 

 

赤い光がサンダーを包み込む。

 

 

ボールが閉じる。

 

 

一度、揺れた。

 

 

二度、揺れた。

 

 

そして三度目。

 

 

カチッ。

 

 

静かな音が、岩場に響いた。

 

 

「……よし!」

 

 

シンヤはボールを両手で握りしめた。

 

 

ファイヤー、フリーザーに続き、サンダーも仲間になった。

 

 

三匹の伝説の鳥を巡る旅は、ここに一区切りを迎えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆帰還、そして次の舞台へ

 

 

夕暮れ。

 

 

5のしまの別荘へ戻ったシンヤを、レンが玄関で待っていた。

 

 

「おかえり。……その顔を見る限り、見つけたみたいね?」

 

 

「まあな」

 

 

シンヤはサンダーのボールを見せた。

 

 

レンは目を丸くしたあと、すぐに楽しそうな笑みを浮かべる。

 

 

「本当に捕まえてきたのね。ファイヤーにフリーザー、今度はサンダー。あなた、伝説の鳥を集める趣味でもあるの?」

 

 

「別に集めてるわけじゃない。会って、戦って、認めてもらえたから一緒に来てもらっただけだ」

 

 

「ふふっ、そういうことにしておいてあげる」

 

 

レンはボールを眺め、少しだけ真面目な表情になった。

 

 

「でも、今回は大変だったんじゃない? あなたの地面タイプなら電気技は防げる。それでも、サンダーの速さは別問題だったんでしょう?」

 

 

「その通りだ。ドサイドンで飛ぶ場所を減らして、エレキブルで岩場を使わせて、ニドキングの毒で動きを鈍らせた。ゲンガーとフーディンで隙を作って、最後はリザードンで空中戦を仕掛けた」

 

 

「一匹だけで押し切るんじゃなくて、六匹全員で少しずつ勝ち筋を作ったわけね」

 

 

「そういうことだな」

 

 

レンは満足げに頷いた。

 

 

「いいじゃない。あなたらしい戦い方だと思うわ。……それにしても、メガゲンガーまで出したのね?」

 

 

「せっかく候補がいるんだから、実戦で使わないとな」

 

 

「ふふっ。次はどんな手を見せてくれるのか、楽しみにしてるわ」

 

 

レンはそう言ってから、シンヤの顔を覗き込む。

 

 

「ただし、今度出かけるときは先に教えて。伝説のポケモンを追いかけて、また何日も帰ってこないなんて言われたら困るもの」

 

 

「分かってるって」

 

 

「本当に?」

 

 

「本当だ」

 

 

「なら、信じてあげる。……今のところはね」

 

 

悪戯っぽく笑うレンに、シンヤは苦笑した。

 

 

窓の外では、夕日が海を赤く染めている。

 

 

三匹の伝説の鳥との戦いを終え、シンヤは改めてリーグへの準備に意識を向けた。

 

 

強敵との戦いで得た経験は、ポケモンたちにも、そして自分自身にも確かなものを残している。

 

 

「さて……ここからは、リーグに向けて仕上げだな」

 

 

シンヤは三つのボールを見つめた。

 

 

炎、氷、雷。

 

 

それぞれ異なる力を持つ伝説の鳥たち。

 

 

彼らがこれからどんな戦いを見せてくれるのか。

 

 

そして、リーグで待ち受けるライバルたちに、自分たちの戦いがどこまで通用するのか。

 

 

シンヤは静かに笑った。

 

 

次なる舞台は、もうすぐそこまで迫っていた。

 

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