『天雲星系・銀河の記憶』 作:DanhDu_Chronicle
第1話と第2話の文字数が少なめだったため、読みやすさを して1つの章にまとめて投稿しております。
ご了承いただけますと幸いです。
早朝、タイ・ミー村(Thái Mỹ村)は薄い霧に包まれていた。
ヴァン・ティエン(Vân Thiên)は、自分の簡素な木造の家で目を覚ました。
特に変わったことはない。いつもと同じ静かな朝だった。
彼は家の外に出ると、湿った土と稲の香りが空気に広がっていた。遠くで犬の鳴き声が聞こえ、風が木々を揺らす。
しかし、その瞬間——何かがおかしかった。
「……?」
ヴァン・ティエンは足を止める。
風の音の中に、異質な“音”が混ざっていた。鳥でも、人でもない。まるで空間そのものが裂けるような音。
彼は空を見上げた。
そして世界が“壊れた”。
空がガラスのようにひび割れ、青が消える。
代わりに広がるのは漆黒の宇宙。
遠い星々。
燃え落ちる巨大な戦艦。
その中心に——
黄金の鎧をまとった男が立っていた。
それは彼自身。
ヴァン・ティエン(Vân Thiên)。
しかし“今の彼”ではない。
血が腕を伝い、鎧は砕け、呼吸は途切れそうだ。
目の前には巨大な影の存在。
赤く光る瞳。
それは笑っていた。
「……終わりか?」
世界が戻る。
ヴァン・ティエンは荒い息を吐き、自分の家の前に立っていた。
戦場も宇宙もない。ただ静かな村の朝だけがあった。
しかし首元のペンダントが熱い。
微かな震えと共に、断片的な記憶が流れ込む。
子供の笑い声。
誕生日の灯り。
母の腕。
「今のは……何だ?」
「ティエン!ご飯よ!」
母(母・ラン)の声が家の中から響く。
「今行く!」
食卓は普通だった。スープ、魚、野菜。何も変わらない日常。
だが彼は確信していた。
“世界が壊れた瞬間”は確かに存在した。
その後、村の手伝いをしていたとき——
一頭の牛が突然暴走した。
「避けろ!!」
叫び声。
倒れる子供。
突進してくる牛。
ヴァン・ティエンは考える前に動いた。
ドン!!
両手で牛の頭を止める。
空気が歪むほどの衝撃。
その瞬間、ペンダントが一瞬だけ光る。
彼の目が変わる。
何かが“目覚めかけた”。
しかし次の瞬間、彼は我に返る。
「……俺は何を?」
牛は逃げ去り、子供は助かった。
村人たちは安堵する。
彼はただ微笑んだ。
だが遠くでは——
小さな装置が壊れ、信号が発信されていた。
宇宙。
暗い戦艦。
男が画面を見つめる。
「……捕捉した」
彼は笑う。
「見つけたぞ」
◆◆◆
その夜、タイ・ミー村は静まり返っていた。
ヴァン・ティエン(Vân Thiên)は、家族と夕食をとっていた。
魚のフライ、煮魚、ゴーヤスープ。
普通の、変わらない食卓。
「明日は早く畑に行くぞ」
父の声が響く。
「はい、わかってるよ」
何も変わらないはずの夜だった。
しかし、その瞬間——
ドン!!
空が爆発したような音が響いた。
地面が揺れる。
窓が震え、器が床に落ちる。
外では犬が一斉に吠え始めた。
「何だ……!?」
母が叫ぶ。
ヴァン・ティエンはすぐに外へ飛び出した。
村人たちも次々と家から出てくる。
全員が空を見上げていた。
そこには——
夜空を裂く、巨大な光の筋。
それは燃えながら、まっすぐ地上へ落ちていく。
そして——
轟音。
遠くの田んぼに落下した。
翌朝。
村は騒然としていた。
「昨日の見たか!?天から落ちたぞ!」
「隕石だってよ!」
「いや、あれは違うだろ……燃え方がおかしい」
市場でも噂が広がっていた。
人々は興奮と恐怖でざわついている。
「見に行くぞ!」
誰かが言った瞬間、村人たちは一斉に動き出した。
ヴァン・ティエンも、その流れに混ざっていた。
田んぼの中心。
そこは完全に焼け焦げていた。
稲は消え、地面は黒くえぐれている。
そして——
そこにあったのは隕石ではなかった。
金属の塊。
黒く焼け、巨大な“何かの機械”。
表面には、見たことのない記号が刻まれている。
「……これ、隕石じゃないな」
「宇宙船か?」
村人たちがざわめく。
誰かがスマホを構えて叫ぶ。
「本物だぞ!絶対これヤバいやつ!」
その時だった。
ピッ……
奇妙な電子音。
世界の音が、消えた。
村人の声が遠ざかる。
風の音も消える。
まるでその場所だけ、別の空間に切り取られたように。
ヴァン・ティエンの目の前で——
壊れた船の内部が光った。
「生体信号を確認……」
「適合エネルギーを検出」
機械音声が響く。
そして——
画面が点灯する。
「……帰還を確認」
「ようこそ戻りました……艦長」
ヴァン・ティエン(Vân Thiên)は息を止めた。
「……艦長?」
だが次の瞬間。
音が戻った。
村人の声、風、ざわめき。
すべてが元に戻る。
画面も消えていた。
まるで何も起きていなかったかのように。
しかし胸の鼓動だけが速い。
彼の頭の中に、一瞬だけ映像が流れた。
星空。
巨大な艦隊。
爆発する惑星。
そして——
「艦長!」
ヴァン・ティエンは立ち尽くした。
遠くの宇宙。
暗い戦艦の中。
赤い目の男が地球を見下ろしていた。
彼は笑う。
「見つけたぞ……」