『天雲星系・銀河の記憶』   作:DanhDu_Chronicle

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第79話 田舎の味と、迫り来る闇 (下)

しばらくして。

 

一行は田んぼへ到着した。

 

周囲では――

 

村の人々が黄金色に実った稲を刈り取っている。

 

遠くでは――

 

稲刈り機が走り、稲を刈り取っていた。

 

ヒュエン・ゴックは見慣れない機械を見て、ヴァン・ティエンへ尋ねる。

 

「お兄ちゃん」

 

「あの機械、何?」

 

「ああ、あれは稲刈り機だよ」

 

「田んぼの実った稲を刈り取るために使うんだ」

 

「へえ……」

 

「よし!」

 

「みんな、ネズミ捕りの罠を回収しに行くよ!」

 

「何匹捕まってるか見てみよう!」

 

「はーい!」

 

一行は田んぼの細い道を歩いていく。

 

そして――

 

最初の罠を見つけた。

 

トゥエンが近づき、罠を持ち上げる。

 

「一匹捕まってるよ!」

 

彼女が罠を持ち上げる。

 

その中には――

 

手のひらほどもある、大きな野ネズミがいた。

 

「チューチュー!」

 

野ネズミは罠の中で鳴いている。

 

それを見た瞬間。

 

ヒュエン・ゴックはヴァン・ティエンへ抱きついた。

 

「なに、あれ!?」

 

「怖い……!」

 

ヴァン・ティエンは少女の頭を優しく撫でる。

 

「ただのネズミだよ」

 

「怖がるなって」

 

ヒュエン・ゴックは恐る恐る目を開ける。

 

だが――

 

ネズミを見た瞬間。

 

また目を閉じる。

 

そして――

 

ヴァン・ティエンをさらに強く抱きしめる。

 

「怖いよ……」

 

ヒュエン・ゴックがそこまで怯えているのを見て――

 

ヴァン・ティエンは何も言えなくなる。

 

トゥエンもそれを見て気づいた。

 

「どうやら……この子、ネズミが苦手みたいね」

 

「姉ちゃん、どうする?」

 

「仕方ないわね」

 

「よし」

 

「ティエン、ゴックちゃんをあそこの木の下へ連れていって」

 

「私たちが罠を全部回収したら、そっちへ行くから」

 

「みんなでネズミを焼いて食べましょう」

 

「分かった」

 

ヴァン・ティエンはヒュエン・ゴックの頭を撫でる。

 

「行こう」

 

「うん……」

 

二人は近くの木の下へ移動する。

 

ヴァン・ティエンは自分のサンダルを地面に敷き――

 

その上へヒュエン・ゴックを座らせる。

 

少女は静かに顔を伏せている。

 

その表情は、とても悲しそうだった。

 

「ごめんなさい……」

 

「私のせいで、みんなの楽しい雰囲気を壊しちゃった」

 

「そんなこと言うなよ」

 

「ネズミが怖いくらい、何でもないだろ」

 

「この世でネズミが怖くない人なんて、そんなにいないんだから」

 

「だから、自分を責めるな」

 

「でも……」

 

「大丈夫だって」

 

ヴァン・ティエンは少女の髪を優しく撫でる。

 

「トゥエン姉ちゃんも、別に怒ってないだろ?」

 

「だから、そんなに気にするなよ」

 

「……うん」

 

その時――

 

風が吹き抜ける。

 

ヒュエン・ゴックの髪が、風に乗ってふわりと舞う。

 

「涼しい……」

 

「本当だな」

 

ちょうどその時。

 

トゥエンと子供たちも戻ってくる。

 

「ティエン!」

 

「罠、全部回収してきたよ!」

 

「どうだった?」

 

トゥエンは捕獲用の檻を持ち上げる。

 

「五匹だけだったわ」

 

「でも――」

 

「これだけあれば、みんなで食べるには十分でしょ」

 

ヒュエン・ゴックは――

 

いつの間にか、またヴァン・ティエンにしっかり抱きついていた。

 

「よし!」

 

「じゃあ、焼いて食べよう!」

 

「ここで焼いて食べるの?」

 

「当たり前でしょ」

 

「せっかく今捕まえたばかりなんだから」

 

「ここで焼いて食べなかったら、ネズミ焼きとは言えないじゃない」

 

その時。

 

子供たちが、集めてきた藁の束を見せる。

 

「僕たちも、あっちで田んぼをやってたおじさんたちに藁を少しもらってきたよ!」

 

ヴァン・ティエンは小さく笑う。

 

「お前たち、偉いな」

 

「よし!」

 

「みんな、早くネズミを焼こう!」

 

「はーい!」

 

一行は準備を始める。

 

まずトゥエンが――

 

もらってきた藁を一か所に集め、大きな山を作る。

 

そして――

 

檻の中からネズミを取り出す。

 

続いて――

 

持ってきたバナナの茎を細く裂いた紐を取り出す。

 

それでネズミの脚を縛り――

 

一列につなぐ。

 

そしてネズミを藁の山の上へ置く。

 

その上から――

 

さらに藁をかぶせる。

 

トゥエンは火打ち石を取り出す。

 

カチッ!

 

火をつける。

 

次の瞬間――

 

ボッ!!

 

藁の山から、一気に炎が燃え上がった。

 

しばらくして――

 

炎が消える。

 

そこに残ったのは――

 

燃えた藁の灰と、立ち上る煙だけ。

 

トゥエンは一本の棒を取り出し――

 

灰の山をかき分ける。

 

すると――

 

中から、黄金色に焼けたネズミが現れる。

 

皮は張り、艶々としている。

 

そして――

 

なんとも言えない香ばしい匂いが辺りに広がった。

 

トゥエンは棒で表面を軽くこする。

 

黒く付着していた灰を落とす。

 

その後――

 

ネズミの腹を裂き、内臓を取り出す。

 

ただし――

 

肝だけは残す。

 

「誰か、水持ってる?」

 

一人の子供が水を持ってくる。

 

トゥエンはその水でネズミを綺麗に洗う。

 

すると別の子供が走ってくる。

 

「竹、持ってきたよ!」

 

「ありがとう!」

 

トゥエンは竹の枝を受け取る。

 

そして小さなナイフで竹を縦に割る。

 

二本に割った竹でネズミを挟み――

 

炭になった藁の周りへ立てかける。

 

しばらくすると――

 

肉がちょうどいい具合に焼けてくる。

 

脂が炭の上へ――

 

ジュウジュウ……

 

と落ちていく。

 

香ばしい匂いが、辺りいっぱいに広がる。

 

その匂いに――

 

隣にいたヒュエン・ゴックも、思わずゴクリと唾を飲み込んだ。

 

「できたよ!」

 

トゥエンは焼けたネズミを取り上げる。

 

そして――

 

子供たちへ渡す。

 

ヴァン・ティエンとヒュエン・ゴックにも渡す。

 

「はい、どうぞ」

 

子供たちは受け取ると、すぐに食べ始めた。

 

その顔は――

 

とても満足そうだった。

 

ヴァン・ティエンも食べようとする。

 

だが――

 

ヒュエン・ゴックは、まだ少し怖そうにしていた。

 

「どうした?」

 

「あ……」

 

「まだちょっと怖い……」

 

「何も怖くないって」

 

「一口食べてみろよ」

 

「すごく美味しいぞ」

 

「でも……」

 

トゥエンが声をかける。

 

「大丈夫よ」

 

「一口食べてみなさい」

 

「食べなかったら、もったいないわよ」

 

少女はそう言われ――

 

黄金色に焼けたネズミを見下ろす。

 

香ばしい匂いが鼻をくすぐる。

 

そして――

 

我慢できなくなったのか。

 

ヒュエン・ゴックは目を閉じ――

 

一口かじった。

 

しかし――

 

すぐに目を開く。

 

「この味……!」

 

「お肉がすごく甘くて……」

 

「少し歯ごたえもある……」

 

「それに――」

 

「皮がパリッとしていて……」

 

「脂がとろっとして……」

 

「すごく美味しい!」

 

少女はヴァン・ティエンを見る。

 

「これ……本当に美味しい!」

 

ヴァン・ティエンは小さく笑う。

 

「ほらな」

 

「美味しいって言っただろ」

 

少女は頷く。

 

そして――

 

また食べ始める。

 

こうして――

 

みんなで収穫の真っ最中の田んぼで、焼いた野ネズミを味わった。

 

* * *

 

場面は――

 

そのまま宇宙へ移る。

 

戦艦の艦内。

 

ベリオスは艦内に立っていた。

 

両手を背中で組んでいる。

 

そこへ、一人の兵士がやってくる。

 

「司令官」

 

「すべての準備が完了しました」

 

「よし」

 

「すぐに展開しろ」

 

「了解!」

 

* * *

 

地上へ戻る。

 

ヴァン・ティエンたちも――

 

焼いたネズミを食べ終えていた。

 

トゥエンは立ち上がる。

 

「もうすぐ昼ね」

 

「私は帰ってご飯を作らないと」

 

「旦那さんのために?」

 

「旦那の頭を作るんじゃないわよ!」

 

「私は両親のために作りに帰るの!」

 

「そうなの?」

 

「てっきり旦那さんのために作りに帰るのかと思ったよ」

 

「まだ結婚式もしてないのに、旦那って何よ」

 

「じゃあ、結婚式はいつ?」

 

「たぶん……今年の年末近くかな」

 

「じゃあ、その時は俺も行った方がいいかな?」

 

「あなたが来なかったら――」

 

「分かってるでしょうね?」

 

「姉ちゃんの本気を見せてあげるわよ」

 

「ははは!」

 

「冗談だって」

 

「姉ちゃんの大事な日なんだから、行かないわけないだろ」

 

「その時は絶対来るのよ」

 

「うん、分かった」

 

「じゃあ、私は帰るね」

 

「うん」

 

トゥエンは手を振る。

 

その時――

 

ヒュエン・ゴックが、何かを感じ取った。

 

トゥエンが歩き出した――

 

その瞬間。

 

突然――

 

空が暗くなった。

 

「……え?」

 

周囲の人々も――

 

何が起きたのか分からず、空を見上げる。

 

田んぼにいた村人たちも、戸惑っている。

 

トゥエンも不安そうに空を見る。

 

「何……これ?」

 

すると――

 

空に、黒い渦が徐々に現れ始める。

 

ゴゴゴゴゴ……!!

 

その黒い渦の中から――

 

紫色の溝が走る巨大な黒い戦艦が――

 

ゆっくりと姿を現す。

 

そして――

 

戦艦の扉が、ゆっくりと開いていく。

 

その中から――

 

見覚えのある人影が現れた。

 

ヴァン・ティエンは目を細める。

 

そして――

 

戦艦の中から、ベリオスが姿を現す。

 

彼は真っ直ぐ――

 

ヴァン・ティエンを見下ろしていた。

 

「……ベリオス」

 

ヴァン・ティエンが呟く。

 

ベリオスは静かに口を開く。

 

「また会ったな……」

 

「今度こそ……」

 

「もう一度、お前を……」

 

「逃がすつもりはない」

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