『天雲星系・銀河の記憶』   作:DanhDu_Chronicle

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第80話 不滅の殻に走る亀裂

「どうやら……少しは回復したようだな」

 

下にいた子供たちは、トゥエン姉ちゃんの後ろへ走って隠れ、みんな怯えた表情を浮かべていた。

 

「お姉ちゃん……怖いよ」

 

トゥエン姉ちゃんも怖がってはいた。

それでも、子供たちを落ち着かせるように、優しく励ました。

 

「大丈夫よ。お姉ちゃんがここにいるから。

誰にも、あなたたちを傷つけさせないからね」

 

一方、ヴァン・ティエンはヒュエン・ゴックの前に立ち、彼女を庇っていた。

 

今の彼の目には、もう楽しそうな表情はなかった。

 

真剣な眼差し。

 

その目は、真っ直ぐベリオスへ向けられていた。

 

その視線に気づいたベリオスは、口を開く。

 

「おやおや、そんな目で私を見るなよ。

怖いじゃないか」

 

下から、トゥエン姉ちゃんが大声で叫ぶ。

 

「あなたは一体、何者なのよ!!」

 

ベリオスも彼女に気づいた。

 

しかし、その目には強い侮蔑が浮かんでいた。

 

彼は指を前へ向ける。

 

すると――

 

指先から、電磁の光が少しずつ形を作り始め、小さな球体となった。

 

「お前のような下等生物に――

私の前で口を開く権利などない」

 

言葉が終わると同時に――

 

指先から電流が一直線に放たれた。

 

周囲には黒い電流が走り、トゥエンへ向かって一気に襲いかかる。

 

その速度は、あまりにも速かった。

 

電流が通り過ぎるたびに、周囲の空気までも黒い電気で満たされていく。

 

そして――

 

その電流は、トゥエンの目を狙って真っ直ぐ飛んできた。

 

まさに、間一髪。

 

一つの影が、彼女の目の前を駆け抜けた。

 

ヴァン・ティエンだった。

 

彼は両腕を交差させ――

 

電流を真正面から受け止めた。

 

「バチッ!!」

 

トゥエン姉ちゃんは無事だった。

 

ベリオスは――

 

「おお……」

 

驚きの声を漏らす。

 

ヴァン・ティエンは、ゆっくりと腕を下ろした。

 

その手首には、先ほどの電流によって焼け焦げた跡が深く刻まれている。

 

それでも――

 

彼は痛がる様子を見せなかった。

 

むしろ――

 

両手を、さらに強く握り締める。

 

その目には、はっきりと怒りが浮かんでいた。

 

そして――

 

ベリオスを真っ直ぐ睨みつける。

 

それを見たベリオスは、軽く拍手をしながら褒める。

 

「本当に驚かせてくれるな」

 

「なら――

先にお前から片付けるとしよう」

 

そう言って、彼は指を弾いた。

 

その瞬間――

 

操縦室の中にいた黒い兵士の一人が、ボタンを押した。

 

戦艦の上部から――

 

一本のアンテナが、ゆっくりと姿を現す。

 

そして――

 

周囲へ向かって、音波が広がっていった。

 

その音波が下にいる農民たちを通過すると――

 

彼らは次々と意識を失い、稲の上へ倒れていった。

 

音波はさらに広がり――

 

ヴァン・ティエンたちのいる場所へも届く。

 

子供たち。

 

そして、トゥエン姉ちゃん。

 

全員の意識が失われ――

 

その場へ倒れ込んだ。

 

それを見たヴァン・ティエンは叫んだ。

 

「トゥエン姉ちゃん!!!」

 

彼は振り向き――

 

怒りに満ちた目を、ベリオスへ向ける。

 

「お前……あいつらに何をした!!」

 

ベリオスは、ただ軽く両手を上げる。

 

「何って……」

 

「少し眠ってもらっただけだ」

 

「お前を殺した後は……」

 

「あいつらの番だ」

 

その言葉を聞いた瞬間――

 

ヴァン・ティエンの怒りが爆発した。

 

彼は地面を強く踏み――

 

そのまま跳び上がり、ベリオスへ一直線に突っ込んでいく。

 

そして――

 

強烈な拳を叩き込んだ。

 

拳がベリオスの顔へ迫った、その瞬間――

 

ベリオスは片手で、いとも簡単に受け止めた。

 

そして、ヴァン・ティエンをちらりと見る。

 

「まだまだ弱いな」

 

言い終わると同時に――

 

腕に力を込める。

 

そして――

 

ヴァン・ティエンの身体を横へ振り飛ばした。

 

「ドゴォン!!」

 

身体が戦艦の船体へ叩きつけられ――

 

深い穴が、その船体に刻まれた。

 

「ぐっ……!!」

 

まだ終わらない。

 

ベリオスはヴァン・ティエンの腕を強く掴み――

 

そのまま上空へ投げ飛ばした。

 

そして身体を低く沈め――

 

高く跳び上がる。

 

ヴァン・ティエンを追い越した瞬間――

 

ベリオスは脚を引き上げ、身体を一回転させる。

 

そして――

 

ヴァン・ティエンの腹へ、強烈な回し蹴りを叩き込んだ。

 

「ドゴッ!!」

 

蹴りの衝撃でヴァン・ティエンの身体が折れ曲がり――

 

そのまま真っ直ぐ下へ飛ばされる。

 

「ドォン!!」

 

ヴァン・ティエンの身体が田んぼへ突っ込んだ。

 

煙が立ち上る。

 

ベリオスは脚を戻し――

 

空中に浮かびながら、下を見下ろす。

 

目を細め、煙の中を見つめる。

 

すると――

 

煙の中から、一筋の青い光が反射した。

 

それを見たベリオスは――

 

口元をわずかに吊り上げた。

 

そして――

 

笑った。

 

その下では――

 

ヴァン・ティエンが腕を横へ強く振った。

 

「ブワッ!!」

 

煙と土埃が、一瞬で吹き飛ぶ。

 

そこに――

 

ヴァン・ティエンが立っていた。

 

胸元の十字架のペンダントが、強く光を放っている。

 

彼は空中に浮かびながら――

 

静かに息を吐いた。

 

「10%」

 

その瞬間――

 

ヴァン・ティエンの全身から、青い光が一気に爆発した。

 

青い光が、彼の身体を包み込む。

 

彼は拳を強く握り締め――

 

ベリオスへ目を向ける。

 

そして――

 

「ドン!!」

 

ヴァン・ティエンが、空中に浮かぶベリオスへ一直線に飛び込んだ。

 

そして――

 

凄まじい威力を込めた拳を、ベリオスの顔面へ叩き込む。

 

ベリオスは、軽く頭を横へ動かした。

 

拳は空を切る。

 

ヴァン・ティエンはそのまま勢いで後ろへ飛び出すが――

 

すぐに身体へ力を込め、身体を一回転させる。

 

そして――

 

回し蹴りを、ベリオスの頭へ叩き込んだ。

 

「ドゴッ!!」

 

ベリオスは反応する暇もなく――

 

蹴りをまともに受けた。

 

身体が吹き飛び――

 

先ほどヴァン・ティエン自身が叩き込まれた、戦艦の船体の凹みに激突する。

 

ベリオスはすぐに身体を跳ね返し、凹みから離れる。

 

しかし――

 

体勢を整えるより早く。

 

ヴァン・ティエンが目の前に現れた。

 

そして――

 

青い気を纏った拳を、ベリオスの顔へ叩き込む。

 

だが――

 

今回は間一髪。

 

ベリオスは身体を横へ傾けて避けた。

 

拳は、そのまま戦艦の船体へ突き刺さる。

 

「ドォン!!」

 

ヴァン・ティエンの拳は、戦艦の船体へ深い凹みを作った。

 

ベリオスに反撃する隙を一瞬たりとも与えない。

 

ヴァン・ティエンはすぐに――

 

青い気を脚へ纏わせ、蹴りを放つ。

 

一発。

 

二発。

 

三発。

 

連続してベリオスへ蹴りを叩き込んでいく。

 

ベリオスは腕を上げて防御する。

 

蹴りの衝撃で、腕が身体へ押し込まれる。

 

反撃する隙など与えない。

 

ヴァン・ティエンは、今度は反対の脚から――

 

顔面へ向かって、次々と蹴りを放っていく。

 

ベリオスは素早く後ろへ下がる。

 

しかし――

 

蹴りの威力が戦艦の船体を次々と凹ませていく。

 

「ドォン!! ドォン!! ドォン!!」

 

ヴァン・ティエンが放つ一撃ごとに――

 

戦艦の船体が、深くへこむ。

 

ベリオスは後退し続け――

 

ふと気づいた。

 

自分の身体は――

 

もう戦艦の端まで追い詰められていた。

 

これ以上、下がる場所はない。

 

その瞬間――

 

ヴァン・ティエンが蹴りを放つ。

 

今度の一撃は――

 

これまでよりも、さらに強かった。

 

脚を包む青い気が、これまでとは比べものにならないほど濃くなる。

 

ベリオスは――

 

間に合わなかった。

 

蹴りが、真っ直ぐ顔面へ突き刺さる。

 

「ドゴォン!!」

 

その威力で、ベリオスの顔が大きく歪む。

 

口から血が吹き出した。

 

ヴァン・ティエンは身体を捻り――

 

腰を回す。

 

そして――

 

ベリオスを後方へ蹴り飛ばした。

 

身体はそのまま下へ落ち――

 

田んぼの上を、何メートルも引きずられていく。

 

「ゴロゴロ……!!」

「バキッ……バキバキッ……!!」

 

ベリオスの身体は地面を長く滑り――

 

ようやく止まった。

 

田んぼの一角は、大きく耕されたようにめちゃくちゃになっていた。

 

地面には深い溝が刻まれ――

 

数メートルにわたって伸びている。

 

日差しで灰色に乾き、色褪せていた表土がひっくり返り――

 

その下にあった黒く濃い土がむき出しになっている。

 

湿った泥の匂いが、辺りに立ち込める。

 

溝の両端には、柔らかな土が乱雑に盛り上がり――

 

細かく砕かれた乾いた藁が混ざっていた。

 

ベリオスは――

 

動かなかった。

 

ヴァン・ティエンは高い場所から地面へ飛び降りる。

 

そして――

 

ベリオスを倒したと思った。

 

その時――

 

笑い声が聞こえた。

 

「ハ……」

 

「ハハハハ……」

 

その声は――

 

ベリオスの方からだった。

 

ベリオスはゆっくりと立ち上がる。

 

そして肩を回しながら、息を吐いた。

 

「はぁ……」

 

その後――

 

身体についた土を軽く払い落とす。

 

「まったく……」

 

「私の服が汚れてしまったじゃないか」

 

そして――

 

ヴァン・ティエンへ視線を向ける。

 

「まさか、お前がここまで私を追い込むとはな」

 

「驚かせてくれる」

 

そう言って――

 

彼はヴァン・ティエンを指差した。

 

「推測するに――」

 

「それが、今のお前が使える全ての力なんだろう?」

 

ヴァン・ティエンは、その言葉を聞いて眉をひそめた。

 

「おや……どうやら当たったようだな」

 

「最初から全力を出して、ここまで私を追い込むとは……」

 

「本当に感動させてくれるよ」

 

「ならば――」

 

「私も、少し本気を出さなければならないな」

 

しかし――

 

ベリオスがそれ以上言葉を続ける前に。

 

ヴァン・ティエンは、すでに目の前まで迫っていた。

 

そして――

 

青い光を纏った、凄まじい威力の蹴りを放つ。

 

「ドォン!!」

 

今度こそ、直撃した――

 

そう思った。

 

しかし――

 

よく見ると。

 

今のベリオスの身体は――

 

全身を覆うような盾に包まれていた。

 

それは、極光色の青いエネルギーの殻のようだった。

 

身体に沿って走る静電気の溝が、眩しいほどに輝いている。

 

「パチ……パチ……」

 

絶え間なく、電気の音が響く。

 

ヴァン・ティエンの蹴りは――

 

その盾によって完全に止められていた。

 

ヴァン・ティエンは素早く一歩下がる。

 

そして――

 

再び踏み込み、盾へ強烈な一撃を叩き込む。

 

「ドォン!!」

 

しかし――

 

盾はびくともしない。

 

亀裂一つ入らない。

 

ヴァン・ティエンは目を大きく見開いた。

 

そして青い気を腕へ集め――

 

何度も盾へ拳を叩き込む。

 

一発。

 

二発。

 

三発。

 

拳を叩き込みながら――

 

同時に、強烈な蹴りも放つ。

 

それでも――

 

盾には、何の傷もつかなかった。

 

ベリオスは、ただそこに立っている。

 

そして――

 

必死に盾を破ろうとするヴァン・ティエンを、静かに見つめていた。

 

ヴァン・ティエンは――

 

ここで全身の力を、一つの拳へ集中させる。

 

周囲に青い稲妻が広がっていく。

 

その目は、真っ直ぐ盾を見つめる。

 

そして――

 

叫んだ。

 

「影気!!」

 

青い稲妻を纏った拳が――

 

真っ直ぐ盾へ向かって放たれる。

 

「ズドン!!」

 

ベリオスの盾が、大きく揺れた。

 

そして――

 

ほんの小さな亀裂が、一つだけ現れた。

 

ベリオスの目が大きく見開かれる。

 

その瞬間――

 

ベリオスは素早く電流を放った。

 

電流は――

 

盾へ拳を叩き込んでいたヴァン・ティエンの手へ直撃する。

 

「バチッ!!」

 

ヴァン・ティエンはすぐに腕を引いた。

 

そして後ろへ跳び――

 

距離を取る。

 

自分の腕を見下ろす。

 

ビリビリとした痺れ。

 

焼けるような痛み。

 

その感覚が腕全体を走り――

 

腕が小刻みに震えていた。

 

一方――

 

ベリオスも、先ほどの瞬間にはまだ驚きを隠せていなかった。

 

「本当に驚いたな」

 

「まさか――」

 

「私の盾に、ほんの小さな亀裂を入れるとは」

 

しかし――

 

盾の亀裂は、すぐに消えていった。

 

まるで――

 

最初から何も起きていなかったかのように。

 

ベリオスは拍手をする。

 

「お前は本当に、人を驚かせるのが上手いな」

 

「だが……」

 

「ここまでで十分だ」

 

「今度は私の番だ」

 

「お前を倒して――」

 

「この戦いを終わらせる」

 

「覚悟しておけ」

 

 

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( 皆さんにお知らせです。

第85章が終了した後、(この章をもって正式に「天王覚醒編」も完結となります)私は数週間ほどお休みさせていただきます。

お休みする期間と、その理由については、第85章の最後で詳しくお知らせします。

皆さん、ありがとうございます。 )

 

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