『天雲星系・銀河の記憶』 作:DanhDu_Chronicle
二つの影が、夜空の中で激突する。
ドォン!
最初の衝突によって衝撃波が屋根を横切り、古い瓦が雨のように空中へ飛び散った。
ヴァン・ティエンは屋根の上を滑るように移動する。
足が古い瓦の上をわずかに滑った。
ダン・ティエットはすぐに身体を回転させる。
巨大な金属製のハンマーが、大きな円を描くように振り抜かれる。
シュッ!
空気が切り裂かれる。
ヴァン・ティエンは身体を低くして攻撃をかわす。
ハンマーの一撃から生まれた風圧が、後ろの屋根を切り裂いた。
ドォン!
屋根瓦の一部が、粉々に砕け散る。
ダン・ティエットが大声で笑う。
「ハハ! 悪くない!」
彼は高く跳び上がった。
巨大なハンマーを頭上へ持ち上げる。
金属の腕の周囲に赤いエネルギーが点々と現れ、溶岩のような光の筋となってハンマーへ流れ込んでいく。
「こいつを受けてみろ!」
巨大なハンマーが振り下ろされる。
ドォン!
屋根全体が激しく揺れる。
その下にあるレンガの壁まで激しく震動した。
通りでは、何台かの車が一斉に警報音を鳴らし始める。
ピーピーピー!
しかし――
ヴァン・ティエンは、すでにその場から消えていた。
次の瞬間――
彼はダン・ティエットの左側に現れる。
「ブッ!」
横蹴りが装甲の脇腹へ直撃する。
ダン・ティエットの身体が屋根の上を数メートル滑っていく。
しかし、彼はすぐにハンマーを地面へ突き立てた。
ガンッ!
身体が止まる。
ダン・ティエットはヴァン・ティエンを振り返った。
赤い瞳が激しく輝く。
「なかなかの力だ……」
「だが、まだ弱すぎる」
彼が拳を強く握る。
金属製の腕から、ギギギッという音が響く。
そして、ハンマーの装甲の隙間が開いていく。
「戦闘モード――」
「アイアン・ブレイカー」
巨大なハンマーが震え始める。
赤いエネルギーの輪が周囲へ広がっていく。
空気そのものが、一気に重くなった。
ヴァン・ティエンは、わずかに眉をひそめる。
圧力が――
増している。
次の瞬間。
ダン・ティエットの姿が消えた。
シュッ!
その直後――
彼はヴァン・ティエンの頭上に現れた。
巨大なハンマーが、真っ直ぐ振り下ろされる。
ドォン!
屋根の一部が崩れ落ちる。
煙と埃が一気に舞い上がる。
大量のレンガが、下の路地へ落ちていく。
その煙の中――
一つの人影が立っていた。
ヴァン・ティエン。
彼は片手で、巨大なハンマーを受け止めていた。
ダン・ティエットが目を見開く。
「なに……?」
ヴァン・ティエンの手から、青いエネルギーのラインが走っている。
首にかかった十字架のペンダントも、先ほどより強く輝いていた。
ハンマーを受け止めてはいる。
だが――
彼の上腕は、わずかに震えていた。
ヴァン・ティエンの声が低く響く。
「……5%」
そして――
ドォン!
彼の身体から、強烈な力が一気に爆発した。
ダン・ティエットの身体が空中へ弾き飛ばされる。
彼は空中で身体を回転させ、そのまま反対側の屋根へ着地した。
ドォン!
足元の瓦が砕け散る。
ダン・ティエットは笑った。
しかし、今度の笑みには――
明らかな興奮が混じっていた。
「ハァ……」
「ハハ……」
「ハハハハハ!」
彼は巨大なハンマーを肩に担ぐ。
「ようやく……面白い奴に出会えたな」
ヴァン・ティエンは向かい側の屋根に立っている。
夜風が彼の髪を揺らす。
その瞳は、依然として冷静だった。
ダン・ティエットが首を傾ける。
「知っているか?」
「ファイア・フォレスト第4艦隊では……」
「俺は、強い生命体を狩ることを専門にしている」
彼は巨大なハンマーをヴァン・ティエンへ向ける。
「そして、お前は……」
「この小さな惑星で、俺が最も高く評価した存在だ」
ヴァン・ティエンは数秒間、黙っていた。
そして――
シュッ!
彼の姿が消えた。
次の瞬間――
ヴァン・ティエンは、ダン・ティエットの目の前に現れた。
ドォン!
拳が、真正面からダン・ティエットの身体へ叩き込まれる。
空気が圧縮される。
ギィィィン!
金属同士が擦れ合うような音が、周囲に響き渡る。
ダン・ティエットの身体が、二つの屋根を続けて突き抜ける。
ドォン!
瓦と木材が、あたり一面へ吹き飛んだ。
ダン・ティエットは瓦礫の中へ倒れ込んだ。
ヴァン・ティエンは、彼を見つめながら呟く。
「悪いな……」
「お前のくだらない話を聞いている時間はない」
彼は手をダン・ティエットへ向ける。
そして、軽く手を振る。
「早く……この戦いを終わらせよう」
ダン・ティエットは瓦礫の中から立ち上がった。
顔の装甲には、大きくへこんだ跡が残っている。
彼は手を伸ばし、そのへこみに触れる。
そして――
ヴァン・ティエンを見る。
「どうやら……」
「本気で死にたいらしいな」
彼は笑う。
「なら……」
「その願いを叶えてやる」
その頃――
路地の一角。
屋根から瓦が数枚落ちてくる音を聞いた老人が、窓を開けた。
「また猫が屋根の上を走ってるのか……」
老人は首を振る。
そして、そのまま窓を閉めた。
一方――
屋根の上。
ダン・ティエットはヴァン・ティエンを見つめていた。
彼はハンマーを一回転させる。
ブンッ!
ハンマーに宿った赤いエネルギーが、徐々に一点へ集中していく。
やがて――
巨大な光の核へと変化した。
「よし……」
「少し本気を出すとするか」
向かい側の屋根。
ヴァン・ティエンは静かに息を吐く。
首の十字架のペンダントが、何度も点滅している。
ヴァン・ティエンは拳を強く握る。
その向かいでは――
ダン・ティエットが巨大なハンマーを高く掲げていた。
赤いエネルギーが、ハンマーの上で巨大な球体となって集まっていく。
「この一撃を……」
「お前は受け止められるか?」
夜風が激しく吹き抜ける。
二人は、古い屋根の上に立っている。
その間にあるのは――
ハノイの夜空。
深く、暗い闇。
一秒の沈黙。
そして――
二人は同時に、互いへ向かって飛び出した。