『天雲星系・銀河の記憶』   作:DanhDu_Chronicle

13 / 83
第13話 旧市街に残る衝撃

二人は、夜空の中で真正面からぶつかるように突っ込んでいく。

 

風が、古い屋根の間を激しく吹き抜ける。

 

ダン・ティエットの巨大なハンマーが、激しい赤い光を放っている。

 

ハンマーの上に浮かぶエネルギー球は――

 

すでに小さな太陽のように巨大化していた。

 

一方――

 

ヴァン・ティエンは、淡い青色に輝く腕を前へ伸ばしながら突進していた。

 

二人の距離は、あと数メートル。

 

ダン・ティエットが咆哮する。

 

「アイアン・ブレイカー――レッド・インパクト!」

 

巨大なハンマーが振り下ろされる。

 

ドォン!

 

二つの力が衝突した瞬間――

 

巨大な衝撃波が爆発した。

 

二人の足元にあった屋根が、完全に砕け散る。

 

瓦、木材、レンガが一斉に空中へ吹き飛ばされた。

 

古い建物が、通り一帯ごと激しく揺れる。

 

下の道路では――

 

何台もの車が一斉に警報音を鳴らし始めた。

 

ピーピーピー!

 

近くにいた犬たちも、けたたましく吠え始める。

 

「ワン! ワン! ワン!」

 

煙と埃が辺りを覆い尽くす。

 

その中で――

 

青い光が突然、強く輝いた。

 

ヴァン・ティエンは――

 

巨大なハンマーを、片手で受け止めていた。

 

腕を青いエネルギーのラインが走っている。

 

しかし今回の圧力は――

 

これまでとは比べ物にならないほど強かった。

 

ヴァン・ティエンの足元にある屋根が、次々と長い亀裂を走らせていく。

 

ダン・ティエットが大声で笑う。

 

「ハハハハ!」

 

「いいぞ……」

 

「なら、これはどうだ!」

 

彼はさらに力を込める。

 

巨大なハンマーが金属音を響かせる。

 

赤いエネルギーが、さらに強くなる。

 

ヴァン・ティエンの腕が、わずかに震え始めた。

 

首にかかった十字架のペンダントが、激しく点滅する。

 

ヴァン・ティエンは眉をひそめた。

 

身体の奥から――

 

何かが、今にも飛び出してきそうな感覚。

 

このまま続ければ――

 

自分では制御できなくなる。

 

ヴァン・ティエンは深く息を吸った。

 

そして――

 

ドォン!

 

彼の身体から、青いエネルギーが一気に爆発した。

 

凄まじい圧力が、巨大なハンマーを押し返す。

 

ダン・ティエットの身体が数歩後ろへ吹き飛ばされる。

 

足元の瓦が、粉々に砕け散った。

 

彼はヴァン・ティエンを見る。

 

赤い瞳が、興奮でさらに輝く。

 

「ハァ……」

 

「ハハ……」

 

「やはり……俺の期待通りだ!」

 

彼は巨大なハンマーを二回、回転させる。

 

ブンッ!

 

ハンマーを包んでいた赤いエネルギーが、徐々に消えていく。

 

「どうやら……今日はここまでだな」

 

ヴァン・ティエンは、その場に立ったままだった。

 

腕を包んでいた青い光も、ゆっくりと消えていく。

 

「……逃げるつもりか?」

 

ダン・ティエットが笑う。

 

「逃げる?」

 

「ハハハハ……」

 

彼は首を傾ける。

 

「もちろん違う」

 

「ただ……まだやらなければならないことがある」

 

「だから、お前とこれ以上戦うわけにはいかない」

 

ヴァン・ティエンが彼を見る。

 

「やらなければならないこと……?」

 

ダン・ティエットは笑う。

 

「今のお前に教えることはできない」

 

「だが……すぐに分かるさ」

 

彼は巨大なハンマーをヴァン・ティエンへ向ける。

 

「俺はお前のことが気に入ったぞ……ヴァン・ティエン」

 

「正直に言えば……」

 

「こんな相手に出会ったのは初めてだ」

 

彼は背を向ける。

 

巨大なハンマーを肩に担ぐ。

 

そして、振り返ることなく言った。

 

「俺たちは……また会うことになる」

 

「その時は……」

 

「全力を出して、お前と戦ってやる」

 

そう言った瞬間――

 

ダン・ティエットの身体が赤い光に包まれる。

 

彼の背後に、転移装置が展開された。

 

空間が引き裂かれる。

 

その向こうに、エネルギーの渦が現れる。

 

ダン・ティエットは、一歩後ろへ下がる。

 

そして、その中へ入っていく。

 

消える直前――

 

彼は冷たい笑みを浮かべた。

 

「せいぜい……生き残れよ」

 

「俺はまだ、お前を何度も狩りたいからな」

 

シュッ!

 

エネルギーゲートが閉じる。

 

ハノイの夜空は、再び静寂を取り戻した。

 

残ったのは――

 

壊れた屋根の間を吹き抜ける夜風だけだった。

 

ヴァン・ティエンは、一人で屋根の上に立っていた。

 

彼は静かに息を吐く。

 

首の十字架のペンダントから放たれていた光が、徐々に消えていく。

 

ハンマーを受け止めた腕には、まだ痺れが残っていた。

 

「……面倒な奴だ」

 

彼は街を見下ろす。

 

幸い――

 

戦いによって破壊されたのは、いくつかの古い屋根だけだった。

 

下にいる住民たちは、まだ何が起こったのか理解していない。

 

周囲の家々から、小さな話し声が聞こえてくる。

 

「何だったんだ……?」

 

「屋根が揺れたぞ……」

 

ヴァン・ティエンは屋根から飛び降りた。

 

ドンッ!

 

ホテル裏の路地へ着地する。

 

犬の鳴き声が、周囲の街へ響き渡った。

 

「ワン! ワン!」

 

ヴァン・ティエンは服についた埃を払う。

 

そして、小さく呟いた。

 

「……水を買わないとな」

 

「じゃないと、ミンにまた文句を言われる」

 

数分後――

 

ヴァン・ティエンはホテル近くの小さなコンビニへ入った。

 

彼は何事もなかったかのように――

 

水を二本買った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。