『天雲星系・銀河の記憶』 作:DanhDu_Chronicle
の日の午後――。
物体が落下した田んぼには、まだ多くの人々が集まっていた。
現場の周囲には規制線が張られ、数人の警察が警戒にあたっている。だが、好奇心に勝てない村人たちは、そのすぐ外側に群がっていた。
「よく見ろよ…これ絶対に金属だぞ」
中年の男が声を上げる。
肉屋の女主人は腕を組んで叫んだ。
「ほら見ろって言ったでしょ!絶対に宇宙船だって!」
後ろでは若者たちがスマートフォンを掲げてライブ配信をしている。
「みんな見てくれ!現場から生中継!これ本物のUFOだぞ!」
ざわめきは止まらない。
だが、その中心で――
**ヴァン・ティエン(Vân Thiên)**はただ静かに立っていた。
視線は焼け焦げた宇宙船に釘付けになっている。
彼の頭の中には、朝から消えない映像が浮かんでいた。
星々の空間。無数の戦艦。爆発する惑星。
そして、遠くから呼ぶ声。
しかし、その声ははっきりと聞こえない。
「……俺は、どうしたんだ?」
ヴァン・ティエンは小さく首を振った。
「ヴァン・ティエン!」
背後から声がした。
振り向くと、父親が立っていた。
「お前、ずっとここにいたのか?」
「はい……」
父は宇宙船の残骸を見て、深くため息をついた。
「もう帰るぞ。あとは政府に任せればいい」
ヴァン・ティエンはうなずいた。
しかしその場を離れる前に、もう一度だけ振り返る。
その瞬間――
胸の奥に奇妙な感覚が走った。
まるで、それが彼を待っているかのよ
地球軌道上。
宇宙の暗闇の中。
巨大な戦艦が静かに浮かんでいた。
艦内の制御室では、赤い光が点滅している。
機械音声が響く。
「信号を確認」
「指揮級エネルギー反応を検出」
「識別一致」
モニターに文字が浮かび上がる。
艦隊司令官――確認完了
赤い瞳の男は無言で地球を見下ろしていた。
やがて、冷たい笑みを浮かべる。
「まさか……ここで再会するとはな」
彼は手を上げる。
その背後から、巨大な存在が現れた。
黒い金属装甲に覆われた異形の兵士。
赤く燃えるような瞳。
「主よ」
「地球へ降下し、対象を確認しろ」
「承知」
格納庫が開く。
小さな影が地球へと射出された。
その頃、ヴァン・ティエンは自転車で帰宅していた。
左右には広大な田んぼ。
夕風が穏やかに吹いている。
何も変わらないはずの風景。
しかし――風が止まった。
空気が重くなる。
「……?」
ヴァン・ティエンは顔を上げた。
空に――黒い点。
それは急速に落下していた。
「何だ……?」
次の瞬間。
――轟音。
ドォォォン!!
数百メートル先の田んぼが爆発した。
土砂と炎が吹き上がる。
ヴァン・ティエンは凍りついた。
「またか……?」
心臓が激しく跳ねる。
体は動かない。
煙の中から――何かが現れる。
黒い金属の体。
赤く輝く目。
それはゆっくりとヴァン・ティエンを見た。
「対象確認」
「抹殺プロトコル開始」
「……何だと?」
ヴァン・ティエンは息を呑んだ。
その瞬間――怪物は跳んだ。
地面が爆発するように砕ける。
そして一瞬で目の前に現れた。
拳が振り下ろされる。
――轟音。
空気が裂ける。
だがその瞬間、ヴァン・ティエンの腕が勝手に動いた。
「……ッ!」
拳を受け止めていた。
彼自身が理解できない動き。
体の奥から青い光が溢れ出す。
次の瞬間――
ヴァン・ティエンの瞳が青く輝いた。
ドン!!!
衝撃波が爆発する。
怪物は数十メートル吹き飛ばされた。