『天雲星系・銀河の記憶』   作:DanhDu_Chronicle

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第21話 神の誓い

ハノイの空は、まだ燃え続けていた。

破壊された戦艦の破片が、流星群のように次々と落ちていく。

 

古螺城の中央。

 

ヴァン・ティエンは神弩連珠の隣に倒れたまま、動かなかった。

 

呼吸は次第に弱くなっている。

 

身体はすでに限界を超えていた。

 

二度にわたって神弩を発動したことで、彼の生命力はほとんど枯れ果てていた。

 

空の上。

 

段鉄は両手で戦槌を握ったまま、恐ろしいほど冷たい目で彼を見下ろしていた。

 

「……一人の人間が。」

 

「……よくも俺の計画を台無しにしてくれたな。」

 

赤いエネルギーが、彼の身体の周囲で爆発する。

 

周囲の空間に、次々と亀裂が走った。

 

「殺してやる。」

 

しかし、彼が地上へ飛び込もうとした、その瞬間――

 

巨大な影が前へ出た。

 

神金亀。

 

その巨体が、段鉄とヴァン・ティエンの間に立ちはだかる。

 

ダム・ヴォン・コーロアの水面が、神金亀の身体を囲むようにせり上がった。

 

古代の瞳が、まっすぐ段鉄を見つめる。

 

「お前は……」

 

「……この子に触れることを、許さぬ。」

 

段鉄が嘲笑する。

 

「お前ごときが、俺を止められると思っているのか?」

 

彼は一気に地上へ突っ込む。

 

赤く燃え上がる戦槌。

 

「Iron Dominion!」

 

戦槌が振り下ろされる!!!

 

ドォォォォォォン!!!!!

 

神金亀の甲羅が、その一撃を真正面から受け止める。

 

衝撃波が古螺城全体へ広がる。

 

大地が激しく揺れ、土や石が舞い上がる。

 

しかし――

 

神金亀の甲羅には、傷一つつかなかった。

 

段鉄は数メートル後方へ下がる。

 

その瞳が細くなる。

 

「……古代の神獣か。」

 

神金亀が咆哮する。

 

グオオオオオオ!!!

 

青いエネルギーが一気に爆発する。

 

神金亀が口を開く。

 

巨大な青い光の柱が、空へ向かって放たれた。

 

ドォン!!!

 

段鉄の後方にいた戦艦の一隻が貫かれ、そのまま爆発する。

 

段鉄は横へ滑るように移動してかわした。

 

そして――

 

笑った。

 

「面白い。」

 

戦槌を振るう。

 

巨大な赤いエネルギーの刃が、神金亀へ向かって振り下ろされる。

 

ドォン!!!

 

湖面が爆発する。

 

大量の水が空へ舞い上がった。

 

しかし――

 

神金亀は、その場から一歩も動かなかった。

 

古螺城の外。

 

人々は空を見上げていた。

 

誰も、何が起きているのか理解できない。

 

それでも、彼らには見えていた。

 

一匹の神話の生き物が――

 

自分たちを守るために戦っている。

 

ミンは拳を強く握りしめた。

 

「兄さん……ティエン……」

 

瓦礫の中。

 

ヴァン・ティエンの指が、わずかに動いた。

 

ゆっくりと目を開く。

 

彼の目の前に広がっていたのは、炎に包まれた空。

 

そして――

 

巨大な神金亀の背中。

 

神金亀は、彼を守るために戦っている。

 

胸の奥から、何かが込み上げてきた。

 

それは恐怖ではない。

 

――意志だった。

 

神金亀の声が、彼の心の中に響く。

 

「少年よ……」

 

「私は奴を止めることはできる。」

 

「だが、この戦いを終わらせることはできぬ。」

 

ヴァン・ティエンが小さく尋ねる。

 

「……なぜ?」

 

神金亀が答える。

 

「これは……人間の戦いだからだ。」

 

ヴァン・ティエンの視線が、神弩連珠へ向く。

 

しかし――

 

彼の身体は、すでに力を失っていた。

 

もう生命力は残っていない。

 

彼は拳を強く握る。

 

「……もう……終わりなのか?」

 

その時――

 

彼の身体の周囲に、かすかな光が現れた。

 

それはエネルギーではない。

 

――感情だった。

 

古螺城のあちこちから。

 

人々から。

 

ミンから。

 

そして、祈りを捧げている人々から。

 

小さな光が、一つ、また一つと集まり始める。

 

まるで――

 

無数の星のように。

 

神金亀が振り返る。

 

その瞳が、静かに細くなる。

 

「……人間の意志。」

 

無数の光が、神弩連珠へ向かって集まり始めた。

 

神弩に取り付けられた神の矢が、再び輝き始める。

 

しかし今回は――

 

ヴァン・ティエンの生命力を吸い上げてはいない。

 

吸い込んでいるのは――

 

人々の意志だった。

 

空の上。

 

段鉄の動きが止まる。

 

彼は地上を見下ろした。

 

「……なんだ、これは?」

 

古螺城から青い光が立ち上っていく。

 

これまでとは違う力が――

 

生まれ始めていた。

 

神金亀が静かに告げる。

 

「立ち上がれ。」

 

「精力を宿す者よ。」

 

「次の一矢は……」

 

「最後の一矢となる。」

 

ヴァン・ティエンは神弩を見上げた。

 

街中から集まった光が、神弩へと集まり続けている。

 

彼は立ち上がった。

 

身体は血にまみれている。

 

それでも――

 

一歩。

 

また一歩。

 

神弩へ近づいていく。

 

そして、神弩の本体へ手を置いた。

 

その瞳に、強い光が燃え上がる。

 

「……ならば、この戦いを終わらせよう。」

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