『天雲星系・銀河の記憶』 作:DanhDu_Chronicle
翌朝。
朝の日差しが窓から差し込んでいた。
ヴァン・ティエンはゆっくりと目を開ける。
彼はベッドの上に横たわっていた。
目の前には、見慣れた天井。
「俺……家に帰ってきたのか?」
母親がすぐに駆け寄ってくる。
「まったくもう! やっと目を覚ましたのかい、このバカ息子!」
その後ろでは、父親が大きくため息をついた。
「昨日は本当に肝を冷やしたぞ。お前、俺を驚かせて死なせるつもりか?」
ヴァン・ティエンはゆっくりと身体を起こす。
「俺……どうしたの?」
父親が答える。
「昨日の夕方、田んぼでお前がぶっ倒れてるのを近所の人が見つけたんだ。幸い、村の公安の連中が車でお前を家まで運んできてくれた。そうじゃなかったら、本当にどうなってたか分からんぞ!」
ヴァン・ティエンは黙り込んだ。
昨日の夕方に起きた戦い。
その光景を、彼ははっきりと覚えている。
だが――
それを口にすることはできなかった。
母親が彼の額に手を当てる。
「きっと、空から隕石が落ちてきた騒ぎで、びっくりしすぎたんだろうね」
父親も頷いた。
「そうだな……あんな妙なことばっかり起きたら、聞いてるだけで頭が痛くなる」
しばらくして。
父親が突然口を開いた。
「まあ、もういい。あんまり考えるな。それより、そうだ……さっきトゥーおばさんが、みんなでハノイへ遊びに行かないかって誘ってきたんだ」
「ちょうどいい機会だ。気分転換にもなるし、お前も少し環境を変えたほうがいいだろ」
ヴァン・ティエンは目を丸くする。
「遊びに行くの?」
母親が笑った。
「そうよ。うち、まだ一度もハノイに行ったことないでしょう?」
「せっかくだから、向こうの市場がどんなところなのか見てみようじゃない」
昨日の戦いを思い出す。
ヴァン・ティエンは思った。
――少し遠くへ行って、昨日のことを忘れたほうがいいのかもしれない。
彼は小さく笑って尋ねた。
「じゃあ、いつ行くの?」
父親が答える。
「今週末だ。トゥーおばさんの家がもう車を手配してある。時間になったら乗るだけだ。何も心配するな」
ヴァン・ティエンは窓の外を見つめた。
遠くの田んぼを風が静かに吹き抜けている。
彼は小さく呟いた。
「……ハノイか……」
――そして。
週末がやってきた。
現在、朝の5時00分。
母親がヴァン・ティエンを起こす。
「起きなさい、起きなさい! 歯を磨いて、顔を洗って、早く着替えなさい!」
「トゥーおばさんの車、待ってくれないわよ。もうすぐ来るんだから!」
ヴァン・ティエンは眠そうに身体を起こした。
家の裏へ行き、歯を磨いて顔を洗う。
それから部屋へ戻り、Tシャツとジーンズに着替えた。
父親と母親も、すでに着替え終わっている。
準備を終えると、三人は家を出て、トゥーおばさんの家へ向かった。
朝の5時。
空はまだ薄暗く、完全には明るくなっていない。
田畑も、まだ薄暗い夜の中に沈んでいた。
しばらくすると、家族はトゥーおばさんの家へ到着した。
今回の旅行には、ヴァン・ティエンの家族とトゥーおばさんの家族だけではない。
バーおばさん。
ナムおじさん。
そして、バイおじさんも一緒だった。
みんなで楽しそうに話している。
やがて、車が到着した。
「おっ、来た来た!」
みんなが次々と車へ乗り込んでいく。
ヴァン・ティエンは車酔いしやすいため、父親と一緒に前の席へ座ることになった。
全員が乗り込むと――
車はゆっくりと走り出した。
いつもの見慣れた田んぼを、車が離れていく。
少しずつ、コンクリート造りの家が増えていく。
周囲を走る車の数も増えていった。
景色も、少しずつ変わっていく。
ヴァン・ティエンは窓の外を見る。
目の前を通り過ぎていくのは、頑丈なコンクリートの家々。
そして――
見覚えのある建物が目に入った。
子供の頃に通っていた小学校。
タイ・ミー小学校。
昼の暑い日差しの中、何度も走り回った場所。
ヴァン・ティエンはしばらく、その学校を眺めていた。
やがて車は市場へと近づいていく。
まだ朝の6時前だというのに――
市場の周囲はすでに活気に満ちていた。
笑い声。
話し声。
エンジンの音。
そして、あちこちから聞こえてくる客引きの声。
「お兄ちゃん、魚買っていかないかい!」
「今日は空芯菜が最高だよ、チンさん!」
信号で車が止まる。
ヴァン・ティエンは、窓の外に広がる賑やかな光景を眺めた。
そして、心の中で呟く。
「……全部、いつも通りだ」
「まるで……昨日、あんな戦いなんて何もなかったみたいだ」
車は再び走り出した。
しばらくして。
ヴァン・ティエンが窓の外を見ると、景色はさらに変わっていた。
一階や二階建ての家々が、隙間なく並んでいる。
上を見上げると――
コンクリートの電柱の間を、無数の電線が複雑に張り巡らされていた。
車がクチ区へ入り、国道22号線の近くまで来た頃。
運転手が声を上げた。
「そろそろ朝飯の時間だぞー!」
「腹減って手が震えてる奴はいないかー?」
「食いたいもんがあったら、遠慮なく言ってくれ! この辺は美味い店を知ってるからな!」
トゥーおばさんが答える。
「運転手さん、美味しい店を探して、どこかに停めてちょうだいね!」
「せっかくここまで来たんだから、美味しいものを食べなきゃ!」
運転手が笑う。
「オーケー!」
しばらく走ったところで、運転手が一軒の店の前に車を停めた。
「着いたぞー!」
「みんな降りて、朝飯食ってからまた出発だ!」
「着きましたよ、みなさん! 全員降りて、温かいものを食べて腹を満たしましょう!」
ヴァン・ティエンが車から降りる。
顔を上げると、店の看板が目に入った。
――フォー・クイン・マイ
住所:256 QL22、タン・トン・ホイ、クチ。
店内は広々としていて、とても清潔だった。
一行は中へ入り、それぞれフォーを一杯ずつ注文する。
ヴァン・ティエンは、ネギ抜きのフォーを注文した。
みんなで食事をしながら、楽しそうに話をする。
しばらくして――
食事を終える。
何人かがトイレへ向かい、その中にはヴァン・ティエンもいた。
残った人たちは先に車へ戻っていく。
ヴァン・ティエンと数人がトイレから戻ると、運転手が声を上げた。
「全員乗ったかー?」
「まだトイレに引っかかってる奴とか、店に残ってる奴がいたら声かけてくれよー!」
トゥーおばさんが大声で答える。
「全員いるわよー!」
「運転手さん、出発してー!」
「了解!」
運転手がアクセルを踏み込む。
車は再び走り出した。
車は混雑した街中を進んでいく。
やがて、大きな橋を渡る。
ヴァン・ティエンが窓の外を見る。
橋の両側には――
巨大な川が広がっていた。
その上を、船や小型ボートが行き交っている。
その瞬間。
ヴァン・ティエンの頭の中に、一つの光景が一瞬だけ浮かんだ。
――艦隊の巨大な港湾施設。
だが、それはほんの一瞬だった。
次の瞬間には、もう消えていた。
車はそのまま空港へ向かう連絡道路へ入っていく。
しばらく走った後。
ヴァン・ティエンは前方を見つめた。
そして――
目の前に広がった光景に、思わず目を見開く。
巨大で壮大な――
ロンタイン空港。
なぜだろう。
その光景を見た瞬間。
ヴァン・ティエンの胸に、奇妙な懐かしさが込み上げてきた。
「……この感じ……」
「なんだ……?」
だが、その理由は彼自身にも分からなかった。
その頃。
車の荷物室。
一つのバッグが、かすかに震えていた。
その中で――
小さなチップが、赤い光を点滅させる。
そして。
機械的な声が、かすかに響いた。
「目標信号……ロック完了」