『天雲星系・銀河の記憶』 作:DanhDu_Chronicle
部屋で――
ヴァン・ティエンは、今も窓の外を流れる川を見つめていた。
バオ・ウエンは彼を見る。
「ティエンお兄ちゃん……何をそんなにじっと見てるの?」
ヴァン・ティエンは振り返った。
「何でもないよ。ただ、海を眺めたいだけ。」
バオ・ウエンはベッドに座り、足をぶらぶらさせている。
「でも、もうクアンイェンに来たんだから、二人でどこか遊びに行こうよ。」
ヴァン・ティエンは彼女を見る。
「じゃあ、どこへ行く?」
バオ・ウエンは立ち上がり、走って彼の腕に抱きついた。
「クアンイェンには、すごく特別なお寺があるって聞いたの……。」
「……『田んぼの中の寺』って呼ばれてるんだって。」
ヴァン・ティエンは驚いた。
「そんな名前、初めて聞いたよ。」
バオ・ウエンは彼の腕を揺らす。
「ねえ、二人で行ってみようよ。」
「いい?」
そう言いながら、彼女は甘えるような声を出した。
ヴァン・ティエンはそれを見て笑い、彼女の頭を優しく撫でる。
「分かった。じゃあ、二人で行こう。」
バオ・ウエンはとても嬉しそうに笑った。
二人はその後、外へ出た。
庭に置いてあった電動自転車を取り出す。
二人で自転車に乗り、バオ・ウエンは後ろの席に座ってヴァン・ティエンを抱きしめた。
ヴァン・ティエンは彼女を見る。
「じゃあ、行こう。」
自転車は家を出て、走り始めた。
クアンイェンの道を進んでいく。
しばらく走ると――
ヴァン・ティエンの目の前に、大きな橋が現れた。
赤橙色の鋼管アーチと斜張ケーブルを組み合わせた橋。
橋の前には――
「波に乗って、海へ出よう」
という文字が掲げられていた。
橋のたもとには、いくつもの店が並んでいる。
その近くには、かつての渡し場の跡もあった。
二人を乗せた自転車は橋へ上がっていく。
橋の中央まで来ると――
左右には広大なチャン川が広がっていた。
その水面には、多くの船や漁船が停泊している。
ある船は止まり、ある船は水面を行き来していた。
橋はかなり長い。
風がとても強い。
水面は激しく揺れ、荒々しい波が立っていた。
しかし――
水面の下では。
まったく違っていた。
静かだった。
とても静かだった。
その水中を――
黒と赤の戦艦が、今も移動している。
その船内、操舵室。
ホログラムの画面が点滅していた。
黒服の男が報告する。
「閣下、ターゲットが我々の近くまで来ています。」
赤眼黒龍は画面を見上げる。
手には、いつものナイフ。
それをゆっくりと回しながら、画面を見る。
「監視を続けろ。」
「了解。」
その瞬間――
彼の目が輝いた。
身体から放たれた殺気が、戦艦を突き抜ける。
そして――
海面へ一直線に叩きつけられた。
ドォォォン!!
海面が大きく盛り上がる。
数メートルにもなる巨大な波が発生した。
橋の上にいた人々が、一斉に振り返る。
ヴァン・ティエンとバオ・ウエンも、その波を見る。
ヴァン・ティエンの首にかかったペンダントが――
かすかに反応した。
バオ・ウエンが海を見る。
「すごい波……。」
しかし――
ヴァン・ティエンは感じていた。
この波には……
何かがおかしい。
自転車はそのまま橋を渡り、反対側のたもとへ下りていった。
橋を下りると――
二人の周りには、堤防沿いに続く道が広がっていた。
その先には――
広大な田んぼ。
そして、エビや魚を育てる養殖池。
バオ・ウエンは後ろからヴァン・ティエンを抱きしめた。
「ここがハナム島だよ。」
ヴァン・ティエンは周囲を見回す。
「綺麗だな……。俺の故郷と少し似てる。」
自転車はさらに走る。
しばらくすると――
大きな田園地帯へ入った。
遠くには――
赤い瓦屋根の寺が見える。
四方を青々とした水田に囲まれ、
まるで田んぼの中にぽつんと浮かんでいるようだった。
寺の前には、小さな道が一本。
その道は、まっすぐ寺の門へと続いている。
自転車はその道を進んでいく。
周囲には――
どこまでも続く広大な田んぼ。
そして寺の境内へ入る。
目の前には三門。
大きな木の柱。
そして、先端が大きく反り上がった屋根。
境内は広く、綺麗な石畳で整えられていた。
周囲には多くの観賞用の木々。
果樹。
そして特に目を引くのは――
空へ向かって真っ直ぐ伸びるヤシの木々。
二人は自転車を降り、寺の中へ入っていく。
寺の建物は――
柱。
梁。
横木。
そのすべてが、貴重な黒木で造られていた。
そこには――
龍。
鳳凰。
蓮の花。
それらの彫刻が、驚くほど細かく、精巧に刻まれている。
李朝――陳朝の様式。
そして――
その中に、一つの模様があった。
……杭のような形。
ヴァン・ティエンは目を大きく見開いた。
「……!」
二人は寺の中へ入っていく。
中に入ると、ヴァン・ティエンは――
線香と木の、ほのかな香りを感じた。
目の前には――
鮮やかな朱色と金色で彩られた仏像。
高く、広々とした空間の中に、厳かに安置されている。
そして――
ヴァン・ティエンは、二頭の虎の毛皮が、とても丁寧に祀られているのを見つけた。
彼は周囲を見回す。
その建築と空間に、驚きを隠せない。
その時、バオ・ウエンが彼の腕を揺らした。
「ティエンお兄ちゃん、もう見ないで。早くお線香をあげよう。」
「このお寺、すごく霊験あらたかなんだって。」
ヴァン・ティエンは頷いた。
二人は線香をあげる。
そして、部屋から外へ出る。
ヴァン・ティエンが門を通り抜けた、その瞬間――
風が……
突然、止まった。
寺の鐘が――
カラン……
と、かすかに揺れた。
しかし――
誰も触れていなかった。
一方――
川の下。
潜水艦の操舵室。
赤眼黒龍はホログラム画面を見上げる。
「準備はどこまで進んだ?」
黒服の男が前へ出る。
「閣下、すべて準備完了しております。」
赤眼黒龍は手の中でナイフを回す。
「よし。最後の段階へ移れ。」
「了解。」
赤眼黒龍は再び画面を見る。
「奴はどうしている?」
男が画面を確認する。
「閣下、ターゲットはまだ同じ場所にいます。」
赤眼黒龍はそれを聞き、笑った。
「そうか……。」
「なら、待っている間に、少し挨拶に行くとしよう。」
「黒殺団。」
その瞬間――
三人が同時に現れた。
三つの影は――
歩いて出てきたのではない。
空気そのものから……
溶け出すように現れた。
空間がわずかに歪む。
水面が震える。
温度が下がる。
「はい。」
赤眼黒龍が命じる。
「奴のところへ行け。奴はもうここまで来ている。」
「なら、こちらから少し挨拶してやろう。」
「了解。」
そう言うと――
三人の姿は消えた。
赤眼黒龍はホログラム画面を見上げる。
赤く光る瞳。
「どうやら……」
「面白くなってきたな。」
その頃――
バクダン川。
水面は、今も激しく揺れていた。
まるで――
何かが起ころうとしているかのように。
そして川底では――
一つの赤い目が……
ゆっくりと開いた。
そして今度は――
まっすぐに岸を見つめていた。