『天雲星系・銀河の記憶』   作:DanhDu_Chronicle

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第44話 制御不能の奔流

土煙が……徐々に晴れていく。

 

大地は……大きく裂けていた。

 

水があちこちから噴き出している。

 

まるで……目覚めた生命の血脈のように。

 

その中心に――

 

バオ・ウエンが立っていた。

 

青と桃色の光が、彼女の身体を渦巻いている。

 

水流は……もはや、ただ彼女を守っているだけではない。

 

それは……反応していた。

 

「……ウエン……」

 

ヴィン・ティエンが後ろに立つ。

 

息が……重い。

 

彼は彼女を見つめ――

 

一瞬、動きを止めた。

 

「……まずい……」

 

バオ・ウエンは振り返らない。

 

両手が……わずかに震えている。

 

「……これ……は……」

 

足元の水流が……さらに激しく渦巻く。

 

ドォン!!

 

巨大な水柱が空へと伸びた。

 

風向きが……変わる。

 

空気が……重くなる。

 

向かいに立つ三人の黒殺団。

 

もはや……彼女を侮ってはいない。

 

盾の男が拳を強く握る。

 

「……あの女がこれ以上……」

 

速度の男が再び姿を現す。

 

赤い瞳が……燃えるように輝く。

 

「……続ければ……俺たちまで巻き込まれる。」

 

巨体の男が低く唸る。

 

「……なら、今すぐ殺す。」

 

シュッ!!

 

三人が――

 

同時に飛びかかった。

 

以前より速い。

 

以前より強い。

 

「ウエン!!」

 

ヴィン・ティエンが飛び出す。

 

だが――

 

ドォン!!

 

巨体の男の拳が、彼を真正面から捉えた。

 

ヴィン・ティエンの身体が空中で止まり――

 

そのまま後方へ吹き飛ばされる。

 

ドゴッ!!

 

地面を長く滑る。

 

「……ゴホッ……」

 

血が……口から溢れる。

 

「……近づかないで……」

 

バオ・ウエンの声が響いた。

 

だが――

 

さっきとは違う。

 

その声には……何かが欠けていた。

 

空っぽ……だった。

 

水流が……さらに高くせり上がる。

 

規則などない。

 

意識にも……従っていない。

 

「……ウエン……」

 

ヴィン・ティエンが、ゆっくりと立ち上がる。

 

「……止まれ……」

 

一秒。

 

二秒。

 

バオ・ウエンが……ゆっくり振り返る。

 

その瞳は――

 

もう完全には……彼女自身のものではなかった。

 

「……止まる……?」

 

小さな声。

 

「……でも……」

 

周囲の水流が……咆哮する。

 

「……これが……止まりたくない……」

 

ドォォン!!!

 

水が……爆発した。

 

巨大な波が……横薙ぎに押し寄せる。

 

三人の黒殺団が吹き飛ばされる。

 

盾の男が盾を構える。

 

ガキン!!

 

それでも……押し切られる。

 

身体が……地面を滑っていく。

 

速度の男が接近を試みる。

 

シュッ!!

 

だが――

 

渦巻く水流が……彼を捕らえた。

 

「……!!」

 

男がもがく。

 

だが、暴れるほど――

 

水流は……さらに締めつける。

 

巨体の男が吠え、真っ直ぐ突っ込む。

 

ドォン!!

 

拳が水流を……打ち破った。

 

仲間を解放する。

 

「……まずい……」

 

盾の男が後退する。

 

「……あの女……制御を失っている……」

 

遠くで――

 

ヴィン・ティエンが拳を強く握る。

 

瞳が……震える。

 

「……ダメだ……」

 

彼は歩き出す。

 

ゆっくり。

 

だが――

 

迷いはない。

 

「……ウエン……」

 

水流が……彼のほうへ振り向く。

 

まるで……生き物のように。

 

「……近づかないで……」

 

彼女の声が響く。

 

今度は……圧力を伴っていた。

 

それでも――

 

ヴィン・ティエンは歩き続ける。

 

「……俺は言っただろ……」

 

彼は彼女を真っ直ぐ見つめる。

 

「……お前を……一人にはしない。」

 

もう一歩。

 

水流が……彼の目の前で垂直に立ち上がる。

 

あと一歩進めば――

 

彼は……その中へ飲み込まれる。

 

「……これ以上進んだら……」

 

彼女の声が震える。

 

「……私……抑えられない……」

 

静寂。

 

ヴィン・ティエンは……小さく笑った。

 

血は……まだ流れている。

 

「……なら……」

 

彼は一歩……踏み出す。

 

「……俺がお前を……引き戻す。」

 

ドォォン!!!

 

水流が……一気に襲いかかる。

 

三人の黒殺団も――

 

左右から同時に飛び込んだ。

 

「……今だ!!」

 

三方向。

 

一つの標的。

 

バオ・ウエン。

 

水流は……完全に制御を失った。

 

風が……吠える。

 

大地が……激しく震える。

 

川の……はるか深く。

 

赤い瞳が……完全に開いた。

 

その頃――

 

潜水艦の中で、セキガン・ヘイリュウが……微笑んだ。

 

そして――

 

真っ直ぐにバオ・ウエンを見つめる。

 

「……そうだ……」

 

「……すべてを……壊してしまえ……」

 

「……お前が沈むのか……」

 

「……それとも、立ち続けるのか……見せてもらおう。」

 

戦場へ。

 

水流が……すべてを飲み込もうとした、その直前。

 

ヴィン・ティエンは――

 

バオ・ウエンの手に……触れた。

 

「……ウエン……」

 

ドォォォォン!!!!

 

巨大な爆発が――

 

すべてを飲み込んだ。

 

煙。

 

水。

 

光。

 

すべてが……一つになる。

 

誰も……分からない。

 

誰が……まだ立っているのか。

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