『天雲星系・銀河の記憶』   作:DanhDu_Chronicle

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第46話 静かなひととき

――再び、あの田園へ。

 

バオ・ウエンも、

ヴァン・ティエンに慰められ、

少しずつ落ち着きを取り戻していた。

 

ヴァン・ティエンが彼女を見る。

 

「もう大丈夫か?」

 

バオ・ウエンは、

まだ彼の手を握っていた。

 

「うん……もう大丈夫……」

 

彼女は彼を見る。

 

「ありがとう。」

 

ヴァン・ティエンは、

優しくバオ・ウエンの頭を撫でる。

 

「お前が大丈夫なら、それでいい。」

 

彼は周囲を見渡し、

黙って考え込む。

 

高くそびえた水柱。

 

そして――

バオ・ウエンの制御不能だった力。

 

その光景が、

何度も彼の脳裏に焼き付いていた。

 

その時――

バオ・ウエンが彼を呼ぶ。

 

「ティエン兄ちゃん……

何を考えてるの?」

 

ヴァン・ティエンは、ハッとする。

 

だが、すぐに落ち着きを取り戻し、

彼女を見る。

 

「何でもない。」

 

「心配するな。」

 

バオ・ウエンは彼を見つめ、

少し俯く。

 

「もしかして……」

 

「……さっきのこと、考えてるの?」

 

ヴァン・ティエンは彼女を見て、

優しく頭を撫でる。

 

「そんなに考えすぎるな……」

 

「俺は言っただろ……」

 

「たとえお前が……」

 

「……どんな存在になったとしても。」

 

「俺は必ず、お前を守る。」

 

バオ・ウエンが彼を見る。

 

瞳が、きらりと潤む。

 

「……ティエン兄ちゃん……」

 

ヴァン・ティエンは、

もう一度彼女の頭を撫でる。

 

「考えすぎるな。」

 

「俺がここにいる。」

 

その言葉を聞いて、

バオ・ウエンの不安は少しずつ和らいでいく。

 

彼女は頷いた。

 

「うん。」

 

「私は……あなたが絶対に守ってくれるって信じてる。」

 

ヴァン・ティエンは笑い、

彼女の頭を撫でる。

 

「よし。」

 

「帰ろう。」

 

「うん。」

 

バオ・ウエンは頷いた。

 

二人はバイクに乗り込む。

 

だが――

走り出す直前。

 

ヴァン・ティエンのペンダントが、

淡く光った。

 

二人が寺へ続く道から遠ざかっていく。

 

すると――

 

先ほどの戦いでできた地面の亀裂が、

ゆっくりと塞がっていく。

 

砕けた大地も。

 

荒れ果てた地面も。

 

すべてが――

元の状態へ戻っていく。

 

まるで――

 

最初から、

何も起きていなかったかのように。

 

――その頃。

 

川底。

 

黒い戦艦の中。

 

赤眼黒龍は、

ホログラム画面を見上げていた。

 

「最終段階の進捗はどうなっている?」

 

黒衣の男が答える。

 

「はい、閣下。」

 

「最終段階は、まもなく完了いたします。」

 

赤眼黒龍が笑う。

 

「いい。」

 

「そのまま、計画の最終段階を完了させろ。」

 

「了解。」

 

赤眼黒龍は、

ガラス窓の前まで歩いていく。

 

外では、

水が静かに流れている。

 

「もうすぐ……」

 

「……その時が来る。」

 

「水は、もう動き始めている……」

 

「あと一押しだけだ……」

 

――一方。

 

ヴァン・ティエンとバオ・ウエンは、

橋の上を走っていた。

 

その時、

ヴァン・ティエンが口を開く。

 

「そういえば……」

 

「朝から俺たち、何も食べてないな。」

 

「どこかで飯でも食うか?」

 

後ろに座っているバオ・ウエンは、

彼をしっかり抱きしめている。

 

「それなら――」

 

「私、けっこう美味しいお店知ってるよ。」

 

「そこに行こう。」

 

「いいぞ。」

 

ヴァン・ティエンが答える。

 

バオ・ウエンは、

彼の背中に頭を預ける。

 

暖かい。

 

そして――

とても安心する。

 

バイクは橋を渡り切る。

 

そのまま、

クアン・イェンの道を走っていく。

 

しばらくすると、

バオ・ウエンが指を差す。

 

「あっ、あそこ!」

 

「あのお店だよ、兄ちゃん!」

 

「よし、じゃあ入ろう。」

 

二人はバイクを、

サム・ヴオン・ティンという店の前に停める。

 

店内は素朴で、

どこか温かみのある雰囲気だった。

 

二人が入った瞬間――

 

聞き覚えのある声が響く。

 

「あら、ウエンちゃんじゃない!」

 

「ずいぶん久しぶりじゃん!」

 

バオ・ウエンは、

少し照れながら頭を掻く。

 

「はい……」

 

「ちょっと忙しくて、なかなか来られなかったんです。」

 

店員の女性は手を振る。

 

「いいのいいの。」

 

そして――

彼女はヴァン・ティエンに気づく。

 

「ところで……」

 

「このイケメンのお兄さんは誰?」

 

バオ・ウエンがすぐに紹介する。

 

「この人は、ティエン兄ちゃん。」

 

女性は、

ヴァン・ティエンを上から下まで眺める。

 

そして――

バオ・ウエンを引き寄せた。

 

「へぇ~!」

 

「やるじゃん!」

 

「まさかこんなイケメンのお兄さんを捕まえてくるとはねぇ!」

 

バオ・ウエンの顔が、

一気に赤くなる。

 

「お姉さん!」

 

「私はただ……」

 

「兄ちゃんのことは、お兄ちゃんとして見てるだけだから!」

 

女性は、

ニヤニヤしながら笑う。

 

「はいはい……」

 

「お姉さん、よーく分かったよ。」

 

その笑顔が、

さらにバオ・ウエンを赤くする。

 

「もう……お姉さんには言わない!」

 

「セット7の料理、お願いします!」

 

女性は指を一本立てる。

 

「はいよ!」

 

そう言って、

店の奥へ入っていく。

 

ヴァン・ティエンは不思議そうにバオ・ウエンを見る。

 

「知り合いなのか?」

 

バオ・ウエンは答える。

 

「スーお姉さん。」

 

「ここの知り合いなの。」

 

「ここの店主さんは、

私のお父さんの友達だから。」

 

「だから、よくここに食べに来るの。」

 

ヴァン・ティエンは頷く。

 

「そうか。」

 

「それなら安心だな。」

 

「こんなお姉さんがいてくれるなら、

俺も少し安心できる。」

 

バオ・ウエンは彼を睨む。

 

「それって……」

 

「お姉さんがいるなら、

もう私のことは心配しなくていいってこと?」

 

ヴァン・ティエンが固まる。

 

「いや……」

 

「そういう意味じゃない。」

 

「俺はずっと、お前のことを心配してる。」

 

バオ・ウエンは顔をそむける。

 

「……それならいい。」

 

しばらくして――

 

スーが料理を運んできた。

 

「はい!」

 

「セット7、全部そろったよ!」

 

「熱いうちに食べな!」

 

バオ・ウエンはすぐに言う。

 

「分かったから、もう中に戻って!」

 

スーが驚く。

 

「えぇ~?」

 

「イケメンのお兄さんを捕まえたと思ったら、

今度はお姉さんを追い返すのかい?」

 

「そういう意味じゃないってば!」

 

スーは、

我慢できずに笑い出す。

 

「冗談だよ。」

 

「こっちもまだ仕事が山ほど残ってるからね。」

 

「二人でゆっくり食べな!」

 

立ち去る前に、

スーはヴァン・ティエンを見る。

 

「ティエンくん。」

 

「ウエンのこと、ちゃんと見てあげてね。」

 

「こう見えても、

この子、けっこう泣き虫だから。」

 

「ちゃんと言葉を選んで、

優しく慰めてやってよ!」

 

バオ・ウエンの顔が赤くなる。

 

「もう、お姉さんったら……!」

 

スーは笑いながら、

店の奥へ戻っていった。

 

バオ・ウエンは、

赤くなった顔でヴァン・ティエンを見る。

 

「さっきのこと……」

 

「気にしないで。」

 

「お姉さんが兄ちゃんをからかっただけだから。」

 

「信じちゃダメだよ。」

 

ヴァン・ティエンは笑う。

 

そして――

二人は食事を始めた。

 

二人が料理に箸をつけた、その時。

 

コップの中の水が――

かすかに震えた。

 

ヴァン・ティエンが、ふと動きを止める。

 

「……風か?」

 

だが――

 

外には、

風など吹いていなかった。

 

遠くの川から――

 

小さく。

 

かすかに。

 

太鼓の音が響く。

 

そして――

 

奇妙な風が、

店の窓から静かに入り込んだ。

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