『天雲星系・銀河の記憶』 作:DanhDu_Chronicle
ドォン!!!!
二つの力が激突する。
青と桃色の光、そして赤黒い闇が空気を引き裂いた。
地面が裂け、水面が垂直にせり上がる。
ヴァン・ティエンと赤眼黒龍は、一歩にも満たない距離で向かい合っていた。
「……なかなかだ。」
赤眼黒龍の声が低くなる。
その眼差しには、もう試すような色はなかった。
「8%で、ここまで来るとはな。」
ヴァン・ティエンは答えない。
ただ、拳を強く握りしめる。
「それなら――」
ドン!!
彼が地面を踏み込む。
その身体が、黒い槍のように一直線に突っ込んでくる。
ブンッ!!
ヴァン・ティエンは身体をひねってかわす。
だが――
ドゴッ!!
横薙ぎの一撃が、脇腹を直撃した。
「……ゴホッ!!」
身体が吹き飛び、地面を長く滑っていく。
まだ止まっていない。
ブンッ!!
赤眼黒龍は、すでに彼の上空にいた。
ドォン!!!
ハンマーのような拳が叩き下ろされる。
地面が爆発し、煙と土埃が舞い上がった。
「……くそっ。」
煙の中から、ヴァン・ティエンが飛び出す。
身体を翻し、地面へ着地する。
荒い息。
口元から血が滴る。
それでも、彼は立っていた。
彼は小さく呟く。
「……まだ足りない。」
身体を包む光は、まだ消えていない。
遠くでは、赤眼黒龍が立っている。
その眼が……わずかに光った。
「……まだ立てるのか……」
彼は小さく笑う。
「……いい。」
「……ならば……」
ブンッ!!
一瞬で、ヴァン・ティエンの目の前に現れる。
拳を繰り出す。
ドゴッ!!
しかし、ヴァン・ティエンは腕で受け止めた。
拳を受け止めた腕が震える。
その力は……重い。
赤眼黒龍は笑った。
そして、ほんの少しだけ力を込める。
ドン!!
ヴァン・ティエンの身体が吹き飛ぶ。
地面を滑る。
だが、彼もすぐに立ち上がった。
赤眼黒龍を見据える。
そして――
一気に駆け出す。
拳を繰り出す。
ドゴッ!!
ドゴッ!!
ドゴッ!!
連続する拳が赤眼黒龍へ叩き込まれる。
だが、そのすべてを彼は防いでいた。
二人は、次々と攻撃を繰り出す。
ドン!!
バキッ!!
ガキン!!
ドゴッ!!
互いに一歩も引かない。
その後ろで、宝瑛は不安そうに二人を見つめていた。
首にかかったペンダントも、桃色の光を放ち始める。
川面は……激しく揺れ続けていた。
その時――
水面の下を、何かが一瞬だけ通り過ぎる。
鋭い先端。
動かない。
揺れない。
ただ……待っている。
まるで、それらは……ずっと昔から、そこに存在していたかのように。
水面の上では、ヴァン・ティエンと赤眼黒龍が、なおも攻撃を繰り返していた。
その時、ヴァン・ティエンが身を低くする。
下から蹴り上げる。
一直線に、赤眼黒龍の顔面へ。
だが――
赤眼黒龍は片手だけで、簡単に受け止めた。
彼が少し遊んでやろうとした、その瞬間――
「ピッ。」
彼の手元にある装置から、電子音が鳴った。
赤眼黒龍はそれを聞くと……笑った。
そして、ヴァン・ティエンを見る。
「……もう十分だ。」
その眼差しが、冷たく変わる。
「……遊びは、ここまでだ。」
「……は?」
ヴァン・ティエンが意味を理解できず、呆然とした瞬間――
ドゴッ!!
赤眼黒龍の蹴りが腹部へ叩き込まれた。
「ぐっ……!!」
身体が遠くへ吹き飛び、そのまま地面へ深く叩きつけられる。
宝瑛はそれを見ると、すぐに彼のもとへ走った。
煙の中。
ヴァン・ティエンは倒れていた。
立ち上がろうとする。
だが――
ガクッ。
膝から崩れ落ちる。
「アニ・ティエン!!」
宝瑛が駆け寄り、彼の身体を支える。
「アニ・ティエン……」
ヴァン・ティエンは彼女を見る。
「……大丈夫だ。」
そして、顔を上げる。
赤眼黒龍を見た。
奴は……空中に立っていた。
片手を高く掲げている。
「どうやら……時間のようだな。」
ヴァン・ティエンが叫ぶ。
「お前……何をするつもりだ!!」
赤眼黒龍は笑った。
「……すぐに分かる。」
その瞬間――
川面が激しく揺れ始めた。
ゴゴゴゴゴ……!!
水面に、いくつもの巨大な渦が生まれる。
渦は川の周囲へ広がっていく。
そして、その渦の中心から――
赤い光を頂点に灯した柱が、一本……また一本と、川面からゆっくりとせり上がってくる。
ヴァン・ティエンと宝瑛は、その柱を見つめる。
赤眼黒龍はゆっくりと降下し、自らの戦艦の上へ立った。
そして――
「開け。」
その一言と同時に――
すべての柱が、一斉に光り輝いた。
川の水が引き上げられる。
柱と同じ高さまで……水面がせり上がる。
そして中央で――
水が、ゆっくりと左右へ分かれていく。
その奥から――
ズズズズ……!!
一隻。
また一隻。
黒い戦艦が、水の中から次々と姿を現していく。
別の柱も水を押し上げ、川面を左右へと引き裂いていく。
そして――
さらに多くの戦艦が現れる。
一隻。
また一隻。
次々と。
やがて――
無数の黒い戦艦が、白藤江一帯を完全に包囲した。
赤眼黒龍はその光景を見つめる。
赤い瞳が……ゆっくりと輝きを増していく。
「戦争は……」
彼は言った。
「……今、始まったばかりだ。」
彼が両腕を広げる。
その背後には――
黒い艦隊が、川全体を覆い尽くしていた。
風が止まる。
残されたのは――
ただ一つ。
今、目を覚まそうとしている……戦場だけだった。