『天雲星系・銀河の記憶』   作:DanhDu_Chronicle

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第51話 崖っぷち

ドォン!!!!

 

二つの力が激突する。

青と桃色の光、そして赤黒い闇が空気を引き裂いた。

 

地面が裂け、水面が垂直にせり上がる。

 

ヴァン・ティエンと赤眼黒龍は、一歩にも満たない距離で向かい合っていた。

 

「……なかなかだ。」

 

赤眼黒龍の声が低くなる。

その眼差しには、もう試すような色はなかった。

 

「8%で、ここまで来るとはな。」

 

ヴァン・ティエンは答えない。

ただ、拳を強く握りしめる。

 

「それなら――」

 

ドン!!

 

彼が地面を踏み込む。

その身体が、黒い槍のように一直線に突っ込んでくる。

 

ブンッ!!

 

ヴァン・ティエンは身体をひねってかわす。

 

だが――

 

ドゴッ!!

 

横薙ぎの一撃が、脇腹を直撃した。

 

「……ゴホッ!!」

 

身体が吹き飛び、地面を長く滑っていく。

 

まだ止まっていない。

 

ブンッ!!

 

赤眼黒龍は、すでに彼の上空にいた。

 

ドォン!!!

 

ハンマーのような拳が叩き下ろされる。

 

地面が爆発し、煙と土埃が舞い上がった。

 

「……くそっ。」

 

煙の中から、ヴァン・ティエンが飛び出す。

 

身体を翻し、地面へ着地する。

 

荒い息。

口元から血が滴る。

 

それでも、彼は立っていた。

 

彼は小さく呟く。

 

「……まだ足りない。」

 

身体を包む光は、まだ消えていない。

 

遠くでは、赤眼黒龍が立っている。

その眼が……わずかに光った。

 

「……まだ立てるのか……」

 

彼は小さく笑う。

 

「……いい。」

 

「……ならば……」

 

ブンッ!!

 

一瞬で、ヴァン・ティエンの目の前に現れる。

 

拳を繰り出す。

 

ドゴッ!!

 

しかし、ヴァン・ティエンは腕で受け止めた。

 

拳を受け止めた腕が震える。

 

その力は……重い。

 

赤眼黒龍は笑った。

 

そして、ほんの少しだけ力を込める。

 

ドン!!

 

ヴァン・ティエンの身体が吹き飛ぶ。

 

地面を滑る。

 

だが、彼もすぐに立ち上がった。

 

赤眼黒龍を見据える。

 

そして――

 

一気に駆け出す。

 

拳を繰り出す。

 

ドゴッ!!

ドゴッ!!

ドゴッ!!

 

連続する拳が赤眼黒龍へ叩き込まれる。

 

だが、そのすべてを彼は防いでいた。

 

二人は、次々と攻撃を繰り出す。

 

ドン!!

バキッ!!

ガキン!!

ドゴッ!!

 

互いに一歩も引かない。

 

その後ろで、宝瑛は不安そうに二人を見つめていた。

 

首にかかったペンダントも、桃色の光を放ち始める。

 

川面は……激しく揺れ続けていた。

 

その時――

 

水面の下を、何かが一瞬だけ通り過ぎる。

 

鋭い先端。

 

動かない。

 

揺れない。

 

ただ……待っている。

 

まるで、それらは……ずっと昔から、そこに存在していたかのように。

 

水面の上では、ヴァン・ティエンと赤眼黒龍が、なおも攻撃を繰り返していた。

 

その時、ヴァン・ティエンが身を低くする。

 

下から蹴り上げる。

 

一直線に、赤眼黒龍の顔面へ。

 

だが――

 

赤眼黒龍は片手だけで、簡単に受け止めた。

 

彼が少し遊んでやろうとした、その瞬間――

 

「ピッ。」

 

彼の手元にある装置から、電子音が鳴った。

 

赤眼黒龍はそれを聞くと……笑った。

 

そして、ヴァン・ティエンを見る。

 

「……もう十分だ。」

 

その眼差しが、冷たく変わる。

 

「……遊びは、ここまでだ。」

 

「……は?」

 

ヴァン・ティエンが意味を理解できず、呆然とした瞬間――

 

ドゴッ!!

 

赤眼黒龍の蹴りが腹部へ叩き込まれた。

 

「ぐっ……!!」

 

身体が遠くへ吹き飛び、そのまま地面へ深く叩きつけられる。

 

宝瑛はそれを見ると、すぐに彼のもとへ走った。

 

煙の中。

 

ヴァン・ティエンは倒れていた。

 

立ち上がろうとする。

 

だが――

 

ガクッ。

 

膝から崩れ落ちる。

 

「アニ・ティエン!!」

 

宝瑛が駆け寄り、彼の身体を支える。

 

「アニ・ティエン……」

 

ヴァン・ティエンは彼女を見る。

 

「……大丈夫だ。」

 

そして、顔を上げる。

 

赤眼黒龍を見た。

 

奴は……空中に立っていた。

 

片手を高く掲げている。

 

「どうやら……時間のようだな。」

 

ヴァン・ティエンが叫ぶ。

 

「お前……何をするつもりだ!!」

 

赤眼黒龍は笑った。

 

「……すぐに分かる。」

 

その瞬間――

 

川面が激しく揺れ始めた。

 

ゴゴゴゴゴ……!!

 

水面に、いくつもの巨大な渦が生まれる。

 

渦は川の周囲へ広がっていく。

 

そして、その渦の中心から――

 

赤い光を頂点に灯した柱が、一本……また一本と、川面からゆっくりとせり上がってくる。

 

ヴァン・ティエンと宝瑛は、その柱を見つめる。

 

赤眼黒龍はゆっくりと降下し、自らの戦艦の上へ立った。

 

そして――

 

「開け。」

 

その一言と同時に――

 

すべての柱が、一斉に光り輝いた。

 

川の水が引き上げられる。

 

柱と同じ高さまで……水面がせり上がる。

 

そして中央で――

 

水が、ゆっくりと左右へ分かれていく。

 

その奥から――

 

ズズズズ……!!

 

一隻。

 

また一隻。

 

黒い戦艦が、水の中から次々と姿を現していく。

 

別の柱も水を押し上げ、川面を左右へと引き裂いていく。

 

そして――

 

さらに多くの戦艦が現れる。

 

一隻。

 

また一隻。

 

次々と。

 

やがて――

 

無数の黒い戦艦が、白藤江一帯を完全に包囲した。

 

赤眼黒龍はその光景を見つめる。

 

赤い瞳が……ゆっくりと輝きを増していく。

 

「戦争は……」

 

彼は言った。

 

「……今、始まったばかりだ。」

 

彼が両腕を広げる。

 

その背後には――

 

黒い艦隊が、川全体を覆い尽くしていた。

 

風が止まる。

 

残されたのは――

 

ただ一つ。

 

今、目を覚まそうとしている……戦場だけだった。

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