『天雲星系・銀河の記憶』   作:DanhDu_Chronicle

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第53話 水を戦場へ導く(上)

ブンッ――

 

ヴァン・ティエンが突っ込む。

 

赤眼黒龍へ向かって、

拳を次々と叩き込む。

 

バフッ!!

 

奴は吹き飛ばされることなく、

その場に踏みとどまった。

 

「お前……」

 

ヴァン・ティエンは空中で腕を振る。

 

「俺のことを忘れるなよ。」

 

「俺が……お前の相手だ。」

 

それを聞いた奴は笑った。

 

ゆっくりと立ち上がる。

 

「ハハ……」

 

「俺に負けた奴が……」

 

「よくそんな口を叩けるな。」

 

奴はヴァン・ティエンを睨む。

 

「なら……」

 

「先にお前を殺してやる。」

 

奴が一気に飛び込んできた。

 

拳がヴァン・ティエンの身体へ叩き込まれる。

 

バフッ!!

 

ヴァン・ティエンはすぐに受け止めた。

 

だが――

 

その顔が歪む。

 

……重い。

 

奴の拳は、あまりにも強かった。

 

赤眼黒龍は彼を見て、

嘲るように笑う。

 

「どうした?」

 

「さっきまで、あれだけ威勢のいいことを言っていたじゃないか。」

 

ヴァン・ティエンは笑った。

 

その一方で――

 

宝瑛。

 

「……ティエン兄さん……」

 

声は小さい。

 

だが、もう以前のように震えてはいない。

 

ただ……

 

心配している。

 

ヴァン・ティエンはすぐには振り返らなかった。

 

宝瑛は興道大王を見る。

 

興道大王も彼女を見た。

 

「娘よ、恐れるな。」

 

「イェット・キエウが動いた以上、命を心配すべきなのは、あそこにいる外敵どもだ。」

 

「我らの者ではない。」

 

宝瑛はその言葉を聞き、

小さく頷いた。

 

それでも……

 

心配は消えなかった。

 

こちらでは――

 

ヴァン・ティエンと赤眼黒龍が、

なおも互いに攻撃を繰り出している。

 

二人が互いの攻撃を受け止め合っていた、その時。

 

ヴァン・ティエンの視線が、

一瞬だけ興道大王へ向いた。

 

だが――

 

その隙を逃さない。

 

赤眼黒龍の蹴りが、

ヴァン・ティエンの腹へ突き刺さる。

 

バフッ!!

 

身体が吹き飛ぶ。

 

そのまま地面へ叩きつけられ、

興道大王――陳国峻が立つ場所の近くへと突き刺さった。

 

「ティエン兄さん……」

 

宝瑛が声を上げる。

 

やがて――

 

舞い上がった砂埃が消えていく。

 

ヴァン・ティエンはふらつきながら立ち上がった。

 

口元から流れる血を拭う。

 

そして、

前へ進もうとした、その時。

 

背後から声が響いた。

 

低く……

 

厳かな声。

 

「勇士よ。」

 

ヴァン・ティエンがハッとする。

 

振り返る。

 

興道大王が彼を見ていた。

 

そして――

 

川へ視線を向ける。

 

そこには、

敵の船がまだ停泊し、

さらに奥へと進んでいる。

 

興道大王は静かに口を開いた。

 

「大魚が深い淵へ入るには、

水の流れに身を任せなければならぬ。」

 

「船の側面を流れる青い波に沿って進め。」

 

「決して……振り返るな。」

 

ヴァン・ティエンはその言葉を聞いた。

 

最初は……

 

意味が分からなかった。

 

だが、

ほんの少し考えた後――

 

彼はハッと理解した。

 

その意図を。

 

ヴァン・ティエンは興道大王を見て、

頷いた。

 

そして立ち上がる。

 

赤眼黒龍へ向かって……

 

一気に駆け出した。

 

興道大王の言葉が終わった、その瞬間――

 

深い川底から、

一筋の泡が巻き上がった。

 

小さな渦となって、

水の中を回転する。

 

イェット・キエウが腕を強く振る。

 

手にした鉄の槌が、

濁った水の中を一閃した。

 

眩い光の線が走る。

 

その軌道は――

 

まるで弓から放たれた矢のように、

水中に隠された杭の場所へ向かっていった。

 

こちらでは――

 

ヴァン・ティエンが突っ込む。

 

赤眼黒龍の腹へ、

蹴りを叩き込む。

 

バフッ!!

 

奴の身体が吹き飛ぶ。

 

奴はすぐに立ち上がり、

ヴァン・ティエンを見る。

 

「どうした……?」

 

「諦めたのか?」

 

ヴァン・ティエンはそこに立っていた。

 

まっすぐに奴を見る。

 

そして――

 

下にある船を見る。

 

次の瞬間。

 

そのまま川へ飛び降りた。

 

赤眼黒龍は、

何をしているのか理解できない。

 

ヴァン・ティエンは、

数人の兵士が乗っている船へ突っ込んだ。

 

バフッ!!

バフッ!!

バフッ!!

 

一人。

 

また一人。

 

蹴り飛ばされ、

兵士たちが次々と川へ落ちていく。

 

ヴァン・ティエンは止まらない。

 

別の船へ飛び移る。

 

その船に立っている兵士たちを、

次々と蹴り落としていく。

 

赤眼黒龍は空中から、

その光景を見ていた。

 

まだ理解できない。

 

だが――

 

次の瞬間。

 

奴の顔色が変わった。

 

ヴァン・ティエンが……

 

自分の指揮艦へ向かっている。

 

「……ッ!!」

 

奴はすぐに飛び降りた。

 

ヴァン・ティエンが兵士たちを殴り倒そうとした、その瞬間。

 

赤眼黒龍が割り込んだ。

 

ドゴッ!!

 

ヴァン・ティエンの身体を弾き飛ばす。

 

「お前……何をするつもりだ!?」

 

ヴァン・ティエンは答えなかった。

 

そのまま近くにあった小さな船へ飛び込む。

 

そして船へ乗り込む。

 

赤眼黒龍を見て――

 

手を振った。

 

「捕まえられるなら……」

 

「捕まえてみろ。」

 

そして――

 

小舟を走らせた。

 

赤眼黒龍は侮辱されたことに激怒する。

 

「全軍、聞け!!」

 

「水の中にいる奴は放っておけ!!」

 

「全員、ヴァン・ティエンを追え!!」

 

「全力で……奴を捕らえろ!!」

 

全軍が一斉に叫ぶ。

 

「了解!!」

 

そして――

 

全軍が、

ヴァン・ティエンを追って動き出した。

 

ヴァン・ティエンは走る。

 

敵を……

 

あの場所へ誘導するために。

 

赤眼黒龍とその軍勢は、

なおも背後から迫ってくる。

 

宝瑛は心配そうにその姿を見つめていた。

 

その隣で、

陳興道は威厳ある姿のまま、

静かに立っている。

 

こちらでは――

 

ヴァン・ティエンが、

敵軍に追われ続けている。

 

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