『天雲星系・銀河の記憶』 作:DanhDu_Chronicle
だが――
敵兵は止まらない。
嵐のように押し寄せてくる。
十人。
二十人。
五十人。
百人。
一斉に……
押し寄せる。
ヴァン・ティエンは、
次第に深く地面へ追い込まれていく。
高い場所から見ていた宝瑛は、
不安そうに彼を見つめる。
さらに……
さらに追い詰められていく。
息が詰まるような圧力。
敵兵は、
なおも押し寄せる。
そして――
ヴァン・ティエンも、
ついに限界へ近づいていた。
その時。
バフッ!!
バフッ!!
バフッ!!
槍が次々と身体へ突き込まれる。
「ぐっ……!!」
ヴァン・ティエンの身体が吹き飛ぶ。
全身に傷。
腕から血が流れる。
彼は苦しみながら立ち上がった。
目の前には――
敵軍。
なおも嵐のように迫ってくる。
「殺せぇぇぇ!!」
ヴァン・ティエンはそこに立っていた。
身体は……
もう限界だった。
このまま……
死ぬ。
そう思った、その時――
風向きが突然変わった。
「トォン……」
一つの太鼓。
低い。
深い。
今という時代には存在しない場所から、
響いてくるような音。
すべてが――
止まった。
ヴァン・ティエンにも聞こえている。
だが……
それが何なのか分からない。
「トォン……」
「トォン……トォン……」
太鼓の音が続く。
遅い。
だが……
重い。
まるで胸そのものを、
内側から叩いているような音。
川が震える。
そして――
川の中央から、
一筋の光が浮かび上がる。
一枚の旗。
色はすでに褪せている。
布の端は、
長い年月によって擦り切れている。
だが――
その旗が風に舞った瞬間。
空間全体が……
頭を垂れた。
光が広がる。
水面へ触れる。
空気へ触れる。
「トォン……」
一つの人影が……
現れる。
「トォン……」
さらに一人。
「トォン……トォン……」
数十。
そして――
数百。
人影が次々と、
川の中から現れてくる。
顔は見えない。
姿もはっきりしない。
だが――
その腕には、
一人残らず二つの文字が刻まれていた。
「殺韃」
彼らが身に纏うのは、
何百もの壮絶な戦いを刻み込んだ、
古びた戦装束。
獣皮の胸当てが、
霧の中にぼんやりと浮かんでいる。
華美ではない。
だが……
圧倒的な力を感じさせる。
裾が海風に大きくなびき、
彼らの一歩一歩に合わせて揺れる。
それはまるで――
波の上に広がる、
銀色の絹の帯のようだった。
彼らの手には――
虎の顔が描かれた籐の盾。
そして――
長い槍。
数え切れないほどの槍が、
一斉に掲げられる。
その瞬間――
川面は、
銀色に輝く……
巨大な槍の森に覆われた。
その水中では――
イェット・キエウが、
水面から身体を現していた。
だが――
彼の後ろには。
さらに数百人もの勇士がいた。
上半身は裸。
黒い布を頭に巻き、
手には鉄の槌を握っている。
彼らは――
イェット・キエウと同じように、
裸の上半身に褌だけを身につけていた。
一人。
また一人。
静かに……
水面から姿を現す。
激しい流れの中に、
堂々と立っている。
水が、
たくましい胸を流れていく。
彼らは一列に並び、
微動だにしない。
誰もが――
錆びついた鉄の槌を強く握っている。
だがその先端には、
冷たく鋭い光が宿っていた。
叫び声はない。
掛け声もない。
ただ……
静かに隊列を組む。
そして逃げようとする船を、
完全に取り囲む。
川底は――
いつの間にか、
敵を待ち受ける……
巨大な露天の墓場へと変わっていた。
そして――
河畔の密生した木々。
ハマボウ。
マングローブ。
水辺の木々。
ジャックフルーツの森。
そして港。
造船所。
白藤江の川沿い。
そこに漂っていた白い霧が――
誰にも気づかれぬまま、
突然……
濃密になった。
その中から――
何千もの戦士の姿が現れる。
身体の下半身は水の中。
弓はすでに引き絞られ、
水面へ向けられている。
弓兵たちは軽装の鎧を身に着け、
頭には斧頭の布を巻いている。
その姿勢は――
岩のように静かだった。
呼吸の音すらない。
鎧が触れ合う音すらない。
ただ……
海風に、
衣の裾が静かになびいている。
全員が――
弓を引いた姿勢のまま。
数千本の矢。
もはや木や石ではない。
千年もの間に蓄積された霊気が、
矢そのものへと結晶化している。
黄金色の光が、
濃密な霧を突き抜ける。
だが――
そのすべてが、
前方を向いていた。
そして――
旗にも、
一つの文字が浮かび上がる。
「陳」
風に煽られ、
その旗が大きくはためく。
ヴァン・ティエンは目を見開いた。
「……これは……?」
その時。
低い声が響いた。
大きくはない。
だが――
その声は、
すべてを包み込むように届いた。
背後。
陳興道が立っていた。
「彼らが戻ってきたのではない……」
「……我々は、最初から一度も去っていなかったのだ。」
宝瑛の身体が、
小さく震える。
彼女は陳興道を見る。
「……あなた……」
「トォン。」
陳興道の手が、
静かに下がる。
そして――
「この川は……」
「一度たりとも、敵のものになったことはない。」
彼はヴァン・ティエンを見る。
「この戦いを戦う者は……」
「お前だ。」