『天雲星系・銀河の記憶』 作:DanhDu_Chronicle
「トン!」
太鼓の音が響き渡る。
ただの一打ではない。
命令だった。
大旗――「陳」の旗が、風の中で大きく翻る。
古き光が広がっていく。
まるで見えない波のように、
大地に触れ、
水に触れ、
一人一人の戦士に触れていく。
ヴァン・ティエンは戦場の中央に立っていた。
息は重い。
血は、まだ流れている。
だが――
その目は、もう揺らいでいなかった。
「これが……本当の戦いだ。」
前方では、
敵軍がなおも押し寄せてくる。
だが今回は、
彼はもう一人ではない。
「トン!!」
陳興道が手を下ろす。
「進め。」
たった一言。
それだけで、
戦場全体が動き出した。
ズドォン!!!!
陳軍が一斉に突撃する。
叫び声もない。
混乱もない。
ただ、
迷いのない足音だけ。
まるで一つの意志の塊のように。
ズブッ!!
槍が一人の敵兵を貫く。
一人の戦士が剣を振り、
敵の武器を叩き折る。
バシュッ!!
残っていた船体。
岸へ足を踏み入れたばかりの黒い影。
そのすべてが阻まれていく。
それは単なる力ではない。
規律。
戦術。
そして――
かつて、
この川で勝利したことのある軍勢。
水中。
ズドン!!
一隻の船が、
方向を変えようとした。
だが――
引き戻される。
イェット・キエウ。
彼は自らの軍勢とともに、
まるで影のように水中を滑っていた。
鉄の槌が振り下ろされる。
バキッ!!
舵の軸が砕ける。
水が流れ込む。
船体が片側へ大きく傾く。
ズブッ!!
木の杭が川底から真っ直ぐ突き出す。
逃げ場はない。
岸では、
別の兵士たちが撤退し、
船へ向かって走り戻っていた。
だが――
ズブッ。
一人の胸に矢が突き刺さる。
その兵士は、
そのまま地面へ崩れ落ちた。
残った兵士たちは足を止める。
何が起きたのか分からない。
だが――
彼らが反応するより早く。
白藤江沿いの、
密集したマングローブの茂み。
スーの木。
ニームの木。
そして――
七百年以上の時を越えて、
この地に残る林。
白藤江沿いの港。
造船所。
そのあらゆる場所から――
魂を宿した無数の金色の矢が、
雨のように一斉に放たれた。
数百本の矢が、
敵軍へ向かっていく。
ズブッ!!
ズブッ!!
ズブッ!!
ズブッ!!
無数の兵士たちの胸に、
金色の矢が突き刺さる。
そして彼らは次々と倒れていく。
まるで刈り取られた稲のように、
その命を散らしていく。
その頃――
ヴァン・ティエンは敵陣の中央へ飛び込んでいた。
青と桃色の光が爆発する。
ドスッ!!
ドスッ!!
ドスッ!!
一撃。
一人が倒れる。
だが今回は、
彼は追い詰められていなかった。
なぜなら――
彼の背後には、
前進する巨大な陣形がある。
「陣形を崩すな!」
低い声が響く。
一人の戦士が振り返り、
仲間の代わりに攻撃を受け止める。
「隊列を維持しろ!」
彼らはヴァン・ティエンを、
「救世主」として見てはいなかった。
同じ戦場で、
共に戦う一人の戦士として見ていた。
ヴァン・ティエンは拳を強く握る。
もう無闇に突っ込まない。
呼吸を合わせる。
彼らと。
一歩。
一撃。
一つのリズム。
その遠くで――
赤眼黒龍は、
最後まで残った戦艦の上に立っていた。
その目には、
もう余裕はない。
「ありえない……」
「ありえない……」
彼は下を見る。
杭。
軍勢。
川の流れ。
すべてが、
繰り返されている。
「違う!!!」
ズドォン!!!!
赤眼黒龍が足を踏み鳴らす。
赤黒いエネルギーが爆発する。
周囲のすべてを吹き飛ばす。
「俺は……あいつらとは違う!!」
「俺は……ここで埋められたりしない!!」
彼が咆哮する。
全身が激しく震える。
その目の奥から、
赤い光が爆発する。
闇が竜巻のように彼へ絡みつく。
黒い竜巻が、
その身体全体を包み込む。
「俺は……お前らを全員殺す!!」
言葉が終わった瞬間――
彼が咆哮する。
周囲の衝撃波が一気に爆発した。
空間そのものが歪む。
近くにいた兵士たちは耐えきれない。
次々と衝撃波に吹き飛ばされ、
海へ叩き落とされる。
衝撃波はさらに広がっていく。
ヴァン・ティエンと、
陳軍が戦っている場所へ。
ズゴゴゴゴ……!!
ヴァン・ティエンも、
陳軍も、
一瞬動きを止めた。
凄まじい気圧。
いや――
圧倒的な殺気を含んだ衝撃。
その圧力によって、
彼らの足元の地面が裂け始める。
ヒビが走る。
広がる。
港全体へ。
そして――
ドン・ヴァン塩田まで、
その亀裂は伸びていく。
崖の上。
興道大王――陳興道は、
その光景を見下ろしていた。
亀裂は、
彼の立つ場所にまで届く。
だが――
彼は動かない。
恐れない。
その目は、
さらに厳しくなる。
ヴァン・ティエンは、
どうすればいいのか分からなかった。
その時――
「倒れるな。」
「踏ん張れ。」
声が響いた。
ヴァン・ティエンがハッとする。
陳軍も、
一瞬だけ動きを止めた。
ヴァン・ティエンは周囲を見回す。
今の声は――
どこから聞こえた?
すると――
深く走る亀裂の中から。
大地の奥深く。
クアン・イェンの大地。
七百年以上もの間、
古代イェンザンの杭の森と
ドン・ヴァン塩田が眠り続けていた場所から――
突如、
鮮やかな青い地脈の光が、
天へ向かって一直線に噴き上がった。
ズドォォォン!!!!
その場にいる全員が、
一斉にその光の柱を見上げる。
千年の泥土の下。
眠っていたものが、
突然目を覚ます。
地中深くに隠されていた、
古代の木の杭。
それらが一瞬にして、
純粋なエネルギーの柱へと変わっていく。
光の柱が集まり、
一つの巨大な影を形作る。
空間の裂け目から――
巨大な戦士が歩み出た。
その身には、
燃え盛る青い戦甲。
手には――
神龍古刀。
クアン・イェンの大地の魂を宿した、
神の大刀。
そして――
陳軍の将、
陳國寶の英霊が、
ついに戦線へと顕現した。
彼は巨大な大刀を、
現代のコンクリートの地面へ
力強く突き立てる。
ズドン!!
円弧状のエネルギーの壁が爆発する。
ハァン!!
黒龍の衝撃波と激しくぶつかり合う。
耳をつんざくような爆発音が響き渡る。
だが――
その壁は、
背後にいるすべての兵士を完全に守り抜いた。
そして――
その猛将の咆哮が、
港全体へ響き渡る。
怪物の咆哮すら、
かき消すほどに。
「陳軍!!」
「倒れるな!!」
「踏ん張れ!!」
言葉が終わる。
彼は大刀を前方へ振り抜いた。
護りの光が広がっていく。
兵士たちを包み込む。
そして――
ヴァン・ティエンをも包み込んだ。
「北方の賊どもは、
すでに川底にその屍を晒している!!」
「我ら歩兵は、
この岸で決して一歩も退かぬ!!」
「戦線を守れ!!」
その勇気に背中を押され――
陳軍の戦士たちが、
一斉に叫んだ。
「うおおおおおお!!」
彼らは盾を地面へ突き立てる。
一枚。
また一枚。
盾が連なり、
強固な城壁となっていく。
ヴァン・ティエンは感じていた。
先ほどまで身体を押し潰していた、
息苦しい圧力が消えていく。
そして――
彼の手に宿る、
青と桃色の光が、
今まで以上に――
強く、
激しく、
燃え上がった……。