『天雲星系・銀河の記憶』 作:DanhDu_Chronicle
赤眼黒龍は眉をひそめた。
その目は、
新たに現れた男へ向けられている。
陳國寶将軍。
赤眼黒龍は歯を食いしばった。
「また死にに来た奴がいるのか。」
彼は身体を真っ直ぐ起こす。
そして、
前方を指差し、
叫んだ。
「全軍、聞け!!」
「奴らを全員殺せ!!」
「一歩でも退く者は――殺せ!!」
言葉が終わった瞬間。
赤眼黒龍の真っ赤な両目から、
二本の不気味な光線が突然噴き出した。
身体を包んでいた黒い竜巻が大きく膨れ上がる。
そして――
数万本もの赤黒いエネルギーの鎖へと変わり、
自軍の兵士一人一人へ絡みついていく。
強制的に流し込まれたエネルギーが、
部下たちの血管へ直接入り込む。
「グアッ!!」
「アァァァッ!!」
無数の苦痛の叫びが響き渡る。
エネルギーを受けた兵士たちの身体が、
次々と異形へ変わり始めた。
顔には黒い血管が浮き上がる。
目は、
狂気に満ちた真っ赤な色へ変わる。
闇の力がすべての細胞を刺激する。
心の中にある恐怖を――
極限の狂気へと変えていく。
先ほどまで後方へ逃げようとしていた兵士たちも、
一斉に振り返った。
もう理性はない。
武器を強く握り締める。
その武器には、
真っ黒な光が纏わりついている。
その目は、
血に飢えた獣のように、
ヴァン・ティエンと陳軍へ向けられていた。
遠くからその光景を見ていた陳國寶将軍も、
一瞬驚いた。
だが――
すぐに大刀を持ち上げる。
そして、
ヴァン・ティエンのいる場所へ向かって歩き出した。
ヴァン・ティエンは、
目の前の狂気に満ちた敵軍を見つめ続けていた。
その時――
ズン!!
巨大な鋼鉄の籠手が、
彼の肩へ重く振り下ろされた。
ヴァン・ティエンが驚いて振り向く。
「おい、新入り……」
「なぜ呆然と立っている?」
「怖くなったのか?」
ヴァン・ティエンはゆっくりと振り返る。
陳國寶へ目を向ける。
そして、
再び前方の凶暴な敵軍を見る。
「俺は……怖くない。」
「必ず……あいつらを全員倒します。」
陳國寶将軍は、
それを聞くと、
豪快に小さく笑った。
「ならば……」
彼はもう一度、
鋼鉄の籠手をヴァン・ティエンの肩へ置いた。
その瞬間――
将軍の身体から、
澄んだ青い光が爆発した。
その光は腕を走り、
そのままヴァン・ティエンの身体へ流れ込んでいく。
ヴァン・ティエンの青と桃色のエネルギーが、
すぐに共鳴した。
ドォォン!!
強烈な光が爆発し、
夜を切り裂く。
ヴァン・ティエンは感じ取った。
千年の時を越えて現れた将軍が、
自分へ与えたもの。
それは、
ただの純粋なエネルギーではない。
東亜の豪気。
七百年もの間、
民族全体に凝縮され続けた――
必ず戦い、
必ず勝つという意志。
ヴァン・ティエンの身体を流れる血が、
激しく煮えたぎっていく……。
「お前には、
この逆賊どもの包囲を俺とともに切り裂く度胸があるか。」
「新たな時代の末裔よ?」
ヴァン・ティエンは拳を強く握り締めた。
身体の中を流れる血が、
先人たちの気迫によって激しく沸き立っている。
そして叫ぶ。
「もちろんです!!」
「俺はいつでも準備できています、将軍!!」
陳國寶将軍の目が、
赤眼黒龍へ向く。
「奴らの総大将は、
邪なる力で残党どもと繋がっている。」
「この陣を破るには――」
「龍の首を斬るしかない。」
将軍がヴァン・ティエンをちらりと見る。
手にした大刀が、
凄まじい音を立てて唸る。
「お前の光だけが、
奴の邪力の核を抑えられる。」
「飛んでいけ。」
「奴の本陣へ直接突っ込め!!」
「そして――」
「この狂化した万軍の波は……」
「我ら陳軍の歩兵に任せろ。」
「すべて、すり潰してやる!!」
ヴァン・ティエンは小さく頷いた。
「はい。」
その頃――
赤眼黒龍は、
目の前の陳軍を見つめていた。
そして手を振る。
「全員、行け!!」
狂気に満ちた兵士たちが、
一斉にヴァン・ティエンと陳軍へ突撃する。
ヴァン・ティエンは拳を握る。
足を踏み下ろす。
身体の周囲から、
青と桃色の気が広がる。
そして――
地面を蹴った。
身体が空中へ跳び上がる。
そのまま、
赤眼黒龍へ向かって一直線に飛んでいく。
その背後では――
陳國寶将軍が大刀を前方へ掲げた。
「陳軍!!」
「盾を構えろ!!」
「岸の戦線を守れ!!」
「この逆賊どもを、
我らの手で叩き潰せ!!」
「殺ァッ!!!」
「殺ァッ!!!」
「殺ァッ!!!」
数千の兵士たちの叫びが、
一斉に響き渡る。
その声が、
川全体を震わせる。
彼らは古代の木製の盾を、
現代のコンクリートの路面へ力強く突き立てる。
一枚。
また一枚。
そして――
巨大で強固な戦陣が築かれた。
ガキン!!
ガキン!!
ガキン!!
鋭い金属音が連続して響く。
陳代の長剣が、
鞘から一斉に抜かれる。
剣身には、
眩い護りの光が宿っている。
陳軍は、
巨大な鋼鉄の塊となって動き出した。
盾を一斉に押し出す。
剣を振り上げる。
狂気に満ちた敵兵へ、
正面から突撃する。
その後ろを完全に守りながら――
ヴァン・ティエンが、
空中を飛び抜けていく。
狂化した赤眼黒龍の兵士たちは、
すでに陳軍の目の前へ迫っていた。
だが――
陳國寶将軍は、
一歩も退かなかった。
ズドン!!
将軍がコンクリートの地面を強く踏みつける。
地面が大きくひび割れ、
無数の破片へ砕ける。
巨大な身体が、
澄んだ青い光へと変わる。
そして――
敵陣の正面へ一直線に突っ込んだ。
手にした大刀が振り上げられる。
巨大な半月の軌跡が、
夜を切り裂く。
ズバァッ!!!!
絶対的な威力を持つ一閃。
澄んだ青い光が通り過ぎる場所では――
狂化兵たちの身体を包んでいた赤黒い邪気が、
次々と粉砕されていく。
数十人もの敵兵が、
左右へ吹き飛ばされる。
そして――
戦場の中央に、
一本の道が開いた。
千年を生きた猛将の、
嵐のような力。
その圧倒的な威圧に――
赤眼黒龍の狂気の万軍でさえ、
恐怖に動きを止めた。
「トン!!!」
「トン!!!」
「トン!!!」
三度の太鼓が鳴り響く。
敵軍の混乱が、
さらに激しくなる。
それを見た陳國寶は、
大刀を高く掲げた。
「全陳軍、命令を聞け!!」
「進攻!!」
「殺ァッ!!!」
「殺ァッ!!!」
「殺ァッ!!!」
陳軍全体が、
一斉に突撃する。
その巨大な鋼鉄の塊の先頭にいるのは――
陳國寶将軍。
ズドン!!
彼が足を踏み込む。
現代のコンクリートの路面が、
大きくひび割れる。
青い炎のような光を纏った巨大な身体が、
敵陣の正面へ一直線に突っ込む。
手にした大刀が振り上げられる。
巨大な半月が、
横一線に夜を切り裂く。
ズドォン!!!
絶対的な威力を持つ一閃。
澄んだ青い光が通り過ぎるたびに、
狂化兵たちの身体を包んでいた赤黒い邪気が、
次々と粉砕される。
数十人もの敵兵が、
左右へ吹き飛ばされる。
その後ろから――
陳軍の古代木盾の壁が、
戦意を纏いながら一糸乱れず前進する。
そして、
目の前で道を塞ぐ敵兵たちを、
剣先で次々と貫いていく。
岸の戦線は――
完全に陳軍が圧倒していた。
白藤江の川底。
イェット・キエウも、
遅れてはいなかった。
総大将からの戦太鼓の合図を受けると――
彼は水中の蛟龍軍とともに、
巨大な錨鎖を力強く引いた。
バキッ!!!
ズドォン!!!
潮が、
さらに引いていく。
だが――
木の杭は、
ますますその姿を現していく。
鋭く尖った杭の先端が、
水面から次々と突き出す。
周囲の船の船底を貫き――
最後に残った戦艦の、
あらゆる移動経路を完全に封じた。
戦艦は、
完全に動けなくなった。
岸の兵士たちは、
次第にパニックへ陥る。
イェット・キエウと彼の軍勢は、
船の側面まで泳いでいく。
鉄の槌を船体へ突き立てる。
そして――
力いっぱい振り下ろす。
ドゴン!!
一撃。
船体が裂ける。
さらに――
ドゴン!!
丸い穴が開く。
白藤江の水が、
その穴から船内へ流れ込んでいく。
敵の戦艦は、
次々と水中へ沈み始めた。
赤眼黒龍は、
甲板の上に立っていた。
その顔に――
初めて、
はっきりとした動揺が浮かんだ。
彼は狂ったように咆哮する。
赤黒い邪力を必死に集め、
防御しようとする。
だが――
もう遅い。
空中。
ヴァン・ティエンは、
下を見下ろしていた。
先人たちの将軍が、
自分のために整えた――
完璧な水陸の戦場。
その光景を見た瞬間。
身体を押し潰していた圧力も。
心にあった恐怖も。
すべて消えていく。
代わりに――
東亜の血が、
激しく煮えたぎっていた。
ヴァン・ティエンは、
赤眼黒龍を見る。
拳を強く握る。
手の中の青い光が、
さらに強く輝く。
構える。
そして――
一直線に、
赤眼黒龍へ突っ込んだ。
その頃、
赤眼黒龍は混乱しながら、
兵士たちへ叫んでいた。
「混乱するな!!」
「奴を止めろ!!」
だが――
ドスッ!!
強烈な拳が、
赤眼黒龍の腹へ一直線に突き刺さった。
空間が歪む。
「グァッ……!!」
赤眼黒龍の身体が、
数メートル先まで吹き飛ばされる。
水面を滑る。
そして――
なんとか立ち上がった。
口元から、
血が流れている。
赤眼黒龍は、
自分の口から流れた血を見る。
ゆっくりと手を上げる。
血を拭う。
そして――
前を見る。
そこに、
ヴァン・ティエンが立っていた。
空中に浮かびながら。
冷たい目で、
真っ直ぐ赤眼黒龍を見下ろしている。
赤眼黒龍が眉をひそめる。
その目には、
血走った光が浮かんでいた。
顔には、
激しい怒り。
拳を強く握り締める。
腕の血管が、
大きく浮き上がる。
「お前……」